.hack// Vol.SAO   作:imuka

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フェアリィ・ダンス編、第四話へも閲覧ありがとうございます。




第四話

 

 目的地であった洞窟前の村に到着した僕達。

 領地内であるミストラルは即ログアウトすることが可能だったけど、領地外である僕とバルムンクはログアウトに時間がかかってしまうため、宿をとることになった。

 

「また、明日も同じ時間に」

 

「うん。今日はありがとう、バルムンク」

 

「礼など不要だ。お前に協力するのは当然だからな」

 

「バルムンクさん!ありがとうございました!」

 

 ユイも、僕の肩から顔を出してバルムンクにお礼を言う。そんな彼女を見て、バルムンクは指先で彼女の頬を撫でると部屋へと入っていった。部屋の扉が閉まるのを確認して、僕も自室に入る。

 

「明日までお別れですね」

 

 部屋に入って扉を閉めると、ユイが本来の姿に戻り、寂しそうに俯いた。

 

「明日は今日より早くにログインするよ。出発前にいくつか確認したいことあるから」

 

 ユイの頭を撫で、その手を引いて一緒にベッドに横になる。

 一緒のベッドに入ったことに嬉しそうに微笑む彼女を横目に、僕は通称≪寝落ち≫の設定をする。これは仮想世界と現実世界との感覚に大きな差異が出ないように、仮想世界で寝て、現実世界で起きる、ということらしい。

 

「SAOではこうやってキリトたちと寝てた?」

 

「はい。パパとママの間で」

 

「そっか。じゃあ、それがまたできるように、アスナを早く助けに行かないとね」

 

「パパはどうしているでしょうか・・・」

 

「どうだろう・・・。少なくともSAOでの最後は一緒のフロアにいたし、無事ログアウトできているか、もしくはアスナ同様に未帰還者になってるか・・・。ごめん、僕が仲間達の情報を集められてればよかったんだけど」

 

「いいえ。お父さんが情報制限されている理由は私もヘルバさんから聞いています。謝ることなんてありません。例え、どっちであってもママを助ければ、また会えること繋がることに間違いないですから!」

 

 ユイを慰めるつもりが僕が気を使われてしまったみたいだ。でも――そうだね、ヘルバに頼んで、仲間達の安否を追ってもらおうかな。

 そんなことを考えているうちに、僕は瞼の重さを感じ始めた。ユイの声が少しずつ遠くなっていく。

 

「お父さん、また明日」

 

 

 

 

 

 

 

 目を開けると、そこは数時間前に見た天井。起き上がろうとすると晶良が僕の顔を覗き込んできた。

 

「調子はどう?どこか違和感あったりする?」

 

 僕はアミュスフィアを外して、身体の感覚がおかしくないかを確認する。

 

「大丈夫、問題ないよ。ただいま」

 

「ならよかったわ。おかえりなさい。――お客さんが来てるわよ」

 

 そういった晶良の言葉に合わせるように一人の男性――土屋さんが入室してきた。

 

「土屋さん。――あれ、ヘルバは?」

 

「ヘルバなら”石頭が来るから退散するわ”て一時間前に出ていったわ」

 

 晶良のヘルバの真似が少し似ていて笑うと、土屋さんは少しだけ面白くなさそうに頭をかいた。

 

「それじゃあ今日はこれで帰るわ。あんまり遅くならないうちに晩御飯食べなさいよ」

 

 晶良はコートとマフラーを着て、僕にそう言うと、部屋をでるために扉へ向かったので慌てて立ち上がる。

 

「晶良!!今日はありがとう!!明日からもよろしく」

 

「お礼なんていらないわよ。――どうしても気になるっていうなら、諸々終わった後ケーキでも奢りなさい」

 

「うん、わかった。必ず」

 

 晶良はニヤっと大きく笑って、手を振りながら扉を閉めた。

 

 

 そうして僕と土屋さんだけになった部屋で、椅子に座りなおす。

 

「では、今日の報告をしてもらおうか」

 

「うん。まずは――」

 

 こうして土屋さんがわざわざ僕のところに来ているのは、僕がALOにログインしてSAO未帰還者の調査をすると、事前に伝えてあったから。もちろん、”VRテロ対策室”の仕事として。

 話をした直後は、”絶対反対です”て顔をされたけど、話を重ねて納得してもらった。代わりにログアウト後にすべて包み隠さず報告することが条件に入ったけれど。

 

「SAOのコピーサーバーか・・・かなり厄介なことになっているな」

 

「うん。でも逆に言えば突破口もそこにあるかもしれない」

 

『いい着眼点ね』

 

 僕達の会話に混ざるように突然近くのモニターがつき、そこにはヘルバ――未だにThe Worldのアバターなのは気に入っているかな?――が映し出された。

 

「どういう意味だ、ヘルバ。――というか会話に参加するならここに居ればよかっただろう。なぜ、わざわざ回りくどいことをする」

 

『なぜ貴方の前に姿を晒さないといけないわけ?』

 

 さも当然のように言うヘルバに、土屋さんは眉間に指先を置いて、大きくため息を吐いた。

 

「まぁいい。それで?どういう意味だ?」

 

『あら。すっかり石頭が柔らかくなったのね。――突破口よ。ALOはSAOのコピーサーバー、つまりはSAOの要素を多大に含んでいるのよ』

 

「SAOの要素?・・・・・・まって!もしかして・・・!」

 

『ええ。海人、貴方がログインした時からデータを解析させてもらって確認できたわ。貴方は”腕輪”を所持している』

 

 僕と土屋さんは今日一番の驚きの顔をしていることだろう。

 

「まて!だとすると・・・!」

 

『ええ。未帰還者である”結城明日奈”が世界樹上部で撮られたことから、あそこで何かしらの実験をしていることは間違いないでしょうね。となれば、すべての物事はALO内で作業していることになる。

 つまりは、世界樹内のシステム的に管理者がロックしてるところが、今回の諸悪の根源である可能性が濃厚。腕輪を使って、ゲートハッキングしていけば暴けることでしょう』

 

「まって!それは中にいる人のリスクはないの?」

 

『ロックがかかっている扉を開けるだけなのだからなんの問題もないわ。SAOでも隠された壁をハッキングしたでしょう?』

 

 焦った僕をヘルバは変わらないトーンで答えてくれて、少し気持ちが落ち着く。

 

『それから私からも1つ報告。――サルベージしたアウラがALOにログインしたわ』

 

「「え?」」

 

 今日一番の驚きが即更新されて僕の目はきっと点になっていることだろう。

 

『正直に言ってしまえば彼女に対しては特にプロテクトも何もしてなかったのが実状よ。本来の彼女―――超AIにかかってしまえば、閉じ込めておくことなんて出来ないから』

 

「つまり―――アウラは自らALOへと向かった・・・?」

 

『間違いなく』

 

 でも、なんでわざわざ・・・?―――まって”SAOのコピーサーバー”・・・?”腕輪”もある・・・てことは・・・!

 

「ヘルバ!!ALO接続プレイヤーの中で精神的不調を訴えた人は!?」

 

『今の所確認されてない。でもわざわざアウラが向かった、と考えると―――』

 

「まて、いったいなんの話をしている?!」

 

 主語を抜いて話す僕たちに土屋さんが待ったをかけた。

 

「SAOのコピーサーバーであるなら”AIDA”がいる可能性が高い」

 

「な・・・にぃ?」

 

『アウラが向かったことを考えれば、その説は十分ありえるでしょうね』

 

 土屋さんは苦々しい顔をしている。きっと僕も同じ様な顔をしている。このままじゃ何も知らない誰かが危険な目に合うかもしれない。今すぐ再ログインして―――

 

『落ち着きなさい、海人』

 

「でも・・・!」

 

『落ち着きなさい』

 

 ヘルバの下がったトーンに、少しだけ驚いて、一度深呼吸する。

 

『ALOが稼働して1年弱。少なくともAIDAが関係すると思われる事象は確認されていない。バルムンクやCC社もチェックに入っている。報告漏れがあったとは考えづらいわ』

 

「・・・・・・そう、だね。ごめん、軽率だった」

 

『少なくとも現時点では実害は出ていない。ただ、それはあくまでも一般プレイヤーに限った話の可能性はあるわ。世界樹の中で何が行われているかわからない以上ね』

 

 ヘルバの言葉に僕は強く右手を握る。そうしたら土屋さんが大きくため息を吐いた。

 

「はーぁ・・・。結局、海人の力が絶対に必要になったわけだな」

 

『ええ、そうよ、リョース。”腕輪”はカイトでないと使うことができない力。貴方はテキトーなところで切り上げるつもりだったかもしれないけどね』

 

「こうなっては仕方ない。私の方からも人手を集めよう。幸いALOにログインしている連中はそれなりにいるからな」

 

 僕はお願いする形で頭を下げる。

 

『海人。まだ、あくまでも可能性の域を出てないことも忘れないで。焦れば足元を掬われるわよ』

 

「うん、わかったよ。一歩一歩確実に、だね」

 

 ALOで思ったことを口に出して反復する。どうもこちらに戻ってきてから気持ちがはやることばっかりだ。だからもう一度深く呼吸をして、現実世界にはない、けれど”その存在”を確認するように僕は右腕を掴む。

 

 できることなら”腕輪”を使うことがないことを祈りつつ、心を鎮めた。

 

『海人、まだいくつか話すことがあるわ』

 

「まだなにか?」

 

『いいえ。これはALOには関係ないことよ。――まずは貴方を”ここ”に移動させた理由から話しましょう』

 

 体勢を整えて、椅子に座り直す。

 

『端的に言えば”倉持 海人”は現在、生死消息不明になっているわ』

 

「うぇ・・・?」

 

 ヘルバの言葉が理解できなくて思わず変な声を出してしまった。

 

『あくまでも記録上、よ。そうでもしないと貴方のところに人が押しかけられる可能性、最悪は命の危険があった』

 

「どういうこと・・・?」

 

 僕が首を傾げると、隣の土屋さんが答えてくれた。

 

「”第二次ネットワーククライシス”、そして”.hackers”の真相を知っている人物は意外といる、ということだ。そして君が”黄昏の腕輪”所持者であることも、な。

 そして、SAOにアウラ(超AI)がいたことは周知の事実だった。SAO内の君については公開されていないがな。 そこから逆算されることは”腕輪”再来。

 そうなったとき、”カイト”。君はこの世界のありとあらゆるネットワーク機器に対して初期化、もしくはハッキングの力を持っていることになる。ましてや表向きの技術では突破不可能だったSAOサーバー産の”腕輪”となってしまえばなおさらだ」

 

『そしてそれは各方面からは脅威として写ってることでしょう。それに対応するために、良くて隔離。最悪は暗殺。しかも今だ300人は意識不明。事故に見せかけて殺す、なんて容易いことだわ』

 

 あまりにも突拍子もない話に、僕の口は半開きのまま閉じない。

 

『300人が意識を取り戻すまでは・・・と言ったのは、少なくとも全員が帰還してからなら、大っぴらには動けなくなるから。後は時間をかけて関係各所への根回しね』

 

「まってよ!”カイト”はあくまでも僕のゲームアバターであって別に――」

 

『いいえ。あれはただのアバターではないわ。貴方のための、貴方にしか使うことができない、そういうものなのよ』

 

「・・・・・・・・・・突拍子もない話になっていない?」

 

「そうでもない。”VRテロ対策室”についても、このための延長だ。仮にあの時断っていたら、本当に今後ネットワーク関連には関わらせないつもりだった」

 

「・・・方針として、大層なことが書いてあったのもこれのため?」

 

「そうだ。あくまでも我々は――否、カイトは中立であり、そして人命のために尽くす。それを周りに示すためにな」

 

 突然告げられた真実に、僕の脳は少し受け入れがたい気持ちになっていたけど、それを無視して無理やり納得するために頬を叩く。

 

「わかった。僕は、僕の責務をちゃんと全うするよ」

 

『無理に気負う必要はないわ。貴方は貴方の思うままに、行動すればいい。それが道を外すことはないと我々は確信しているのだから』

 

 過大評価に聞こえるその考えに、応えたいと思う反面、僕も欲望に負けることがある普通の人間だよ、とも思ってしまう。

 

『この話はここまで。いずれにしても未帰還者が意識を取り戻せば、日常には戻れるわ。――そして最後にもう一つ。茅場晶彦の死亡を確認したわ』

 

 茅場晶彦が死んだ・・・?でも最後の時、彼はまだ生きて・・・。

 

『海人の言いたいことはわかるわ。彼、もともとゲームがクリアされた時点で死ぬつもりだったのよ』

 

「なっ・・・!」

 

『死ぬつもりだった、は正確ではないわね。SAOクリア時に組み込まれているシークエンスの一つに”シークエンス0404”というものがあるわ。これは”VRマシンを使って脳に大出力のスキャニングを実行。精神をデータ化する”というものよ』

 

「馬鹿な!そんなことをすれば・・・!」

 

 土屋さんが声を荒げて立ち上がる。

 

『ええ。当然、肉体は耐えることができず死亡する。それでも彼はそれを組み込んだ。精神がデータ化される一縷の望みにかけてね』

 

「茅場晶彦の精神は?」

 

『それは私にもわからない。でも仮にデータ化に成功しているのであるなら・・・』

 

「そう遠くない未来に、また会うことになる」

 

 僕の呟きにヘルバは肯いた。

 

『彼は”.hackers”にご執心だったようだし、その可能性は大いにあることでしょうね』

 

「わかった。頭の隅に残しておくよ」

 

 右手を強く握り、一度目を閉じる。

 ”黄昏の腕輪”所持者としての責任。そして、あるかもしれない邂逅。色々考えたり、思うこともあるけれど、まずは皆を現実世界に帰すことが最優先。

 だから一度、色々考えるのは止めよう。”良いと思えることをやっていく”、いつだって変わらない、この想いを一番に行動する。

 

 

 だから、待っていてほしい。頼もしい仲間たちと一緒に。必ず、皆を助けに行くから。

 

 

* * *

 

 

「・・きて・・・起きて・・・・・・起きなさい!」

 

「わ!―――ん?え?」

 

 知っているいつもの優しい声が、初めて聞くトーンで私は驚いて飛び起きた。

 周りを見ると、知らない景色。ここはどこ?どうやってここに来たんだっけ?この前には何をしていて・・・うっん・・・頭が痛い。思い出したくないって拒絶してるみたいな・・・。

 

「無理に思い出さないほうがいいわ」

 

 痛む頭を触りながら、声のする方を見ればそこには白い女性―――アウラが居た。

 

「アウラ・・・?―――カイトが茅場晶彦を倒したのは夢・・・?」

 

 長い夢を見ていた気もする。ん・・・やっぱり頭が痛い。

 

「いいえ、夢ではないわ。茅場晶彦は倒され、SAOはクリアされた。それは事実よ」

 

 浮いていたアウラは私の隣に立つと、手鏡を差し出した。そこに映るのはSAOで見慣れた私ではなくて、猫科に見える耳がついた私。え、と驚いていると尻尾もついていることが確認できる。カイトなんかが見れば”やっぱりあのヒゲは猫だったんじゃない”とか言って、からかわれるかもしれない。

 

「なに・・・?この格好?ていうか、クリアされたならなんで私はまだ仮想世界に居るの?!」

 

 思わずアウラに詰め寄ると、彼女は少し困った顔をしている。

 

「SAOが終わる、その時を待っていた者が居た。貴方達はそれによって再び”ここ”に囚われることになった」

 

「たち・・・?―――そうだ!カイトや皆は!?」

 

「カイトは現実世界に帰っているわ。囚われたのは300人ほど。カイトは貴女を含め、その300人を救出するために頑張っている。でも、今回はカイトだけではすべてを解決できない。

 だから捕らえられていた貴女を無理やり外に出した。きっと今頃一人居なくなって大慌てでしょうね」

 

 そう言ったアウラは少し頬を緩めた後、私に向き直った。

 

「”帆坂・カリーナ・朋”―――いいえ、”鼠のアルゴ”。私に協力して」

 

 

 

 私の戦いはまだ終わっていない。でも―――貴方に、また会うために頑張るね。カイト(相棒)

 

 

 

 




.hackの設定上、カイトやハセヲ達碑文使いの腕輪は同一のもの、とありますが本作では、完全にカイト専用の特別性の腕輪です。
故にカイトだけが世界へ影響を与えかねないイレギュラー。様々な方面から目を付けられている、というお話です。


漸くSAO側のキャラを出せました。
ここ数回は.hackメンバー主体でしたが、当然SAOキャラも登場していきますのでクロスオーバー要素をお楽しみに。

沢山の閲覧、感想、評価、大変嬉しく感じております。ありがとうございます。
(急にアクセス数増えて驚いてます)
頑張って執筆を続けますので楽しみにしていただければ幸いです。

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