.hack// Vol.SAO   作:imuka

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フェアリィ・ダンス編、第七話へも閲覧ありがとうございます。



第七話

 

 僕がログインすると、メールが一通入っていた。

 差出人はバルムンクで、急遽いかなければならないところができたため、一緒に行動できない、という旨のものだった。

 

 ログインはしているようだから、こっち(ALO)の知り合いに呼ばれたんだろうか。ま、でも今日は戦いは主体じゃないし、ミレイユ(深鈴ちゃん)と2人でも大丈夫のはずだ。

 そう考えた僕はバルムンクに”了解”と短く返事を返し、昨日手に入れたアイテム類の整理をしながら、ミレイユ(深鈴ちゃん)がログインしてくるのを待つことに。

 

 

 待つこと凡そ10分。

 見覚えのあるアバターがログインしてくる。彼女は周囲を見渡すと、僕に気が付き、少し駆け足で近づいてきた。

 

「久しぶりだね、ミレイユ」

 

「はい!カイトさん!お元気でしたか?」

 

 同じアバターなのにミストラル(お母さん)とは全然違う雰囲気を出すのは、VR技術のすごさなのか、それともこの親子がわかりやすいのか。―――そっくりな親子だと思うけど。

 

「うん。もうすっかり元気だよ。―――バルムンクから急用で外すって連絡が来てるから、今日はアルンの街を回ろうか」

 

「あ、それなら少し街外れに行ってもいいですか?」

 

「もちろん」

 

「ありがとうございます!このアルン周辺は各種族の領地でないこともあって、まだ完全には把握されてないんです。そこにきっとレアアイテムが・・・!」

 

「ミレイユもすっかりお母さんと同じトレジャーハンターなんだね」

 

「はい!ボクは”愛と勇気のレア☆ハンター”ですから!」

 

 そう言って胸を張る彼女を撫でる。撫でられた彼女は「えへへっ」と笑った。IQ200の天才少女と言われ、周囲から持て囃される彼女だが、ミストラル(真由美さん)にとっては娘で、僕にとっても友人の子供。こうして無邪気に笑う彼女が一番素敵だと思う。

 

 僕の考えを読み取ったのか、ミレイユはもう一度僕に笑いかけると、手を取り、妹が兄にねだるように、駆け出した。

 

「行きましょう!カイトさん!」

 

 彼女に導かれるように、僕も駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 結論だけを言えば、グランドクエストへの参加者を集めるのも、ミレイユのレアアイテムゲットも、見事空振りに終わり、僕たちはトボトボと街の中へと戻ってきていた。

 別のことだけど、わかったこととしては、ミレイユはミストラルよりゲームが上手いこと。フィールドに出た時に、モンスターやプレイヤーとの戦闘になったけど、彼女の立ち回り、魔法の選択、詠唱速度、すべてをとってもピカイチだったと思う。―――近接を立ち回れるメイジはズルいと思うよ。プレイヤーめっちゃ驚いてたもん。

 

 どうしようか。明日のグランドクエスト、ミレイユが問題ないなら彼女に参加してもらおうかな。ミストラル(お母さん)が許すのかはわからないけど。

 

 

 空振りだったのを、次こそは、と意気込んでいるミレイユを横目に、そんなことを考えていると、何を感じ取ったのか、自分でもわからないまま、不意に振り返って、遠く先に居るプレイヤーに目がいった。

 

「カイトさん?」

 

 ミレイユが僕を呼んでいるけど、足早にそのプレイヤーに駆け寄る。そして彼女(・・)の手を取った。

 

「アルゴ!!」

 

 直感的に彼女の名を呼ぶのと同時、被っていたフードが捲れ、特徴的なヒゲと耳が付いた彼女の顔が顕になる。彼女は少しポカン、と口を開けていたけど次第に僕を認識すると、目を潤ませた。

 

「カイト!!」

 

 飛びついてきた彼女を抱きとめ、抱擁を交わす。―――相棒。久しぶり。また会えて本当に嬉しいよ。

 

 

 

 どれくらいの時間アルゴと抱擁を交わしていたかわからないけど、ふと、視線を上げると、恐らく最初は空気を読んでいたミレイユが、僕たちの長い抱擁に、カメラを構えるかのように、指で長方形を作ってウィンクをしていた。

 いけない。つい、久しぶりの出会いを喜んでしまっていた。僕の肩で泣いていたアルゴの顔を覗き込む。

 

「アルゴ、落ち着いた?」

 

「ええ。ごめんなさい」

 

 アルゴはそう言いながら、目を拭う。そして周囲の視線があったことを思い出してかはにかんだ。

 

「えっと、カイトさん?」

 

「紹介するね。彼女はアルゴ。SAOで一緒に攻略してた仲間だよ。―――アルゴ、この子はミレイユ。仲間の子供で、彼女が生まれた時から知ってるんだ」

 

「ン”ン”・・・オイラはアルゴ。SAOでカイトの相棒として情報屋をやってたんダ、ヨロシク」

 

 そうロールして手を差し出したアルゴに、ミレイユは握り返した。

 

「ミレイユです。よろしくお願いします。―――面白いロールですね」

 

 先に素を見られたアルゴは困ったように、反対の手で顔を覆う。困っている彼女に、助け船ついでに話題を変える。

 

「アルゴはどうしてALO(ここ)に?」

 

 僕の問いかけに、アルゴは真剣な顔をして、熟考するように顎に手を持っていた。ミレイユの事を気にしている―――というよりは周囲かな?

 

「アルゴ、ミレイユ、こっちに来て」

 

 2人を連れて、僕は個々人で使えるプライベートエリアへ向かった。

 

 

 プライベートエリアに入り、料金を払った僕は、2人も中に入るように促し、扉を閉める。振り向こうとしたら、ミレイユが息を呑んだのが聞こえた。

 

「彼女はこのALOに囚われていたのよ」

 

 思わず勢い良く振り向いて、ミレイユが息を呑んだ理由は直ぐにわかった。

 

「アウラ!!」

 

「こうして会うのは久しぶりね。カイト」

 

「PoHの時以来だね。―――まって、アルゴはまだ現実世界に還ってきてないの・・・?!」

 

 それにアルゴは肯いた。拳を強く握る。

 

「でも、なんで、だとしたらアルゴはなんでここに?」

 

 熱くなる頭を冷やすために、一度、深呼吸を挟んで僕はアウラに聞く。

 

「私の手伝いのために。彼女なら深く事情を説明する必要はなかったから」

 

「手伝い・・・?それは僕たちは駄目だったの?」

 

「ずっと居る人でないといけなかったの。あと、彼女の眼が必要だった」

 

「眼?」

 

 僕が首を傾げると、アウラじゃなくてアルゴが答えてくれる。その瞳はあの時と同じように蒼く光っていた。

 

「スキル【未来視】ダヨ。こっちでは少し変わってるみたいだけどネ」

 

「それを使って探し物をしてもらっていたの」

 

 アルゴの眼を見ながら、彼女を一度、しっかりと見る。

 

「―――アルゴが抱えているものが、その探し物?」

 

 彼女を見ていて、感じた違和感をそのまま口に出すと、アウラは珍しく驚いた表情を見せた。

 

さっきの(アルゴに気がついた)事といい、この事といい、貴方は仮想世界にいて、第六感的なものが発達したのね。―――彼女が持っているものは”記憶”よ」

 

「「「記憶?」」」

 

 僕たちの声が重なる。アウラは肯いた。

 

「そう。世界樹に囚われている人達の記憶。―――現在、世界樹では人間の感情や思考、記憶をコントロールするための実験が行われてる」

 

「なっ!?」

 

 信じられない内容に絶句する。

 

「その実験の中で、記憶に関する情報がデータ化し、このALOに散った。実験している彼らは気がついてないでしょうけどね。―――このまま彼らを起こせば、記憶障害や精神障害に繋がるわ。だから散った記憶の収集を行っていた」

 

 アウラはアルゴを見る。

 

(AI)を介してしまえば、記憶の復元に時間がかかってしまう。だから”人”の力が必要だった。そこで、AIDAに対しても、ある程度接触があった彼女を選んだ」

 

「AIDA!?やっぱりAIDAはここにも存在するの?」

 

 大声を上げた僕に、アウラはあくまでも冷静に肯いた。

 

「ええ。ただ、そう邪悪なものではないわ。けれど、世界樹での実験は、AIDAも巻き込んでいたの。その結果、その人(被験者)の中で一番強く感情が動いた記憶が外へと流出した」

 

「AIDAの知的欲求・・・」

 

「そういうことね。でも逆にそのAIDAが知的欲求―――記憶と感情に興味を示してくれているおかげで、散った記憶に欠損はないと思う。ただし、研究員の知的欲求と融合してるでしょうから、AIDA感染者は多いでしょう」

 

「つまりは・・・何が何でも僕は世界樹内部にいく必要があるわけだね」

 

「ええ。AIDAを完全除去するために”腕輪”が必要」

 

 僕は右腕を、確かめるように掴む。うん、ここに”ある”。

 

「アウラ、ここにログインできるってことは管理者権限に近い権限があるんだよね?それで未帰還者達の所に・・・というかログアウトさせれないの?」

 

「可能不可能だけの話をすれば可能でしょうね。でも―――それにはリスクを伴うわ」

 

「リスク?」

 

「まずひとつは、管理者権限に近い、というだけで管理者権限ではない、ということ。

 もうひとつは、外部からやってきたプログラムが侵入してきて、勝手な操作をした場合、世間からどういう風に映るか、ということよ。―――特にSAO事件の影響でネットワーク機器類に対する目がさらに厳しくなっている。そうなった時、私達(・・)みたいなのは脅威として映るでしょう。問題が違う方向にシフトしてしまう可能性がある」

 

「ネットワーククライシス・・・・だから僕たちの手で解決する必要がある?」

 

 結論を問うと、アウラは微笑み肯いた。

 

「カイト、貴方の立場、役割からそれができる上に期待されているでしょう?それに残念だけれど、AIからの告発より、生きた人間からの告発の方が、信頼されるものですから」

 

「わかったよ」

 

 僕が肯くと、アウラはアルゴの方へと向いた。

 

「協力ありがとう。もう少しだけ、貴女の一部を間借りするけれど、それも直ぐに終わるわ。―――世界樹で待っている」

 

 アウラはそう言い残し、姿を消した。小さく息を吐くと、アルゴも同じタイミングで疲れた、と言った感じに吐き出す。

 

「息ぴったりですね」

 

 声を出したのはずっと黙っていたミレイユ。

 

「というか、カイトさんはまた、危ないことの渦中に居るんですね。お母さんとか―――皆にまた心配かけちゃいますよ?」

 

「お母さん―――ミストラルも、皆にも僕の”仕事”については、色々終わった後に言うよ」

 

「ということは、今ボクが聞いたことは他言無用ってこと?」

 

「できれば」

 

 ミレイユはそれを聞いてニシシと悪い顔をした。

 

「じゃあ色々終わった後で良いのでお店に連れてってください!」

 

「お店?」

 

「はい!行きたいケーキ屋さんがあるんです!」

 

 現実世界でも会いたい、という話だったし、それくらいは安い話だろう。

 

「うん。わかった。もちろん、僕の奢りだ」

 

「やったー!カイトさん太っ腹!!あ、アルゴさんも一緒にいきましょうよ!」

 

 両手を上げて喜んだミレイユは、アルゴの手を取って飛び跳ねだしたので、頬をかいて、少し苦笑い。アルゴの分も僕が―――奢らないといけないよね。

 

「アウラは言ってなかったけど、アルゴに他人の記憶を置いといて大丈夫なのかな?」

 

 ふと気になったことを口にすると、ミレイユが手を止めた。

 

「大丈夫だと思いますよ。人間の記憶は蓋ができるようになってますし、記憶量はとんでもない量だって論文を見たこともあります。たぶん整理のために使っているんじゃないですかね。データのフォーマットを合わせるため、みたいな」

 

 なるほど。ミレイユが言う事だし、納得もできる。今は彼女の言葉を信じるとしよう。

 

 事の整理が終わって、これからどうしようか―――そう言おうと思った矢先。メールの通知を受け取り、開く。

 差出人はバルムンク。内容は用事が終わったので合流しよう、という旨のメールだった。

 

「バルムンク、用事終わったってさ」

 

「あ、じゃあ合流します?」

 

「うん、向こうもそのつもりみたい」

 

「バルムンクって、あの”蒼天のバルムンク”?」

 

 アルゴの言葉に僕は肯く。彼女は「そりゃカイトが居るから居るのは当然か・・・」と呟きながら頬を軽く叩いていた。

 ま、The Worldやってたプレイヤー的には、伝説に近いプレイヤーに対して色々思う所はあるのは当然だよね。

 

 

 

 そうしてプレイベートエリアから出ると、ちょうどバルムンク―――後ろに誰か居る―――がこちらに向かって歩いてきていた。

 

「バルムンク!」

 

 僕が手を振り呼びかけると、彼は微笑んでくれた。

 

「今日は急に外してすまない。―――だが、その用事の際に、知り合いと彼と出会ってな」

 

 バルムンクの後ろを見ると、一人は恐らくシルフの女性と、隣にスプリガンの男性が居て、その肩には―――ユイがのっていた。つまり彼は―――

 

「キリト!!」

 

 僕は思わず駆け出して、彼の手を取る。キリトは驚きながらも強く握り返してくれた。

 

「カイト!!本当にカイトなんだな!!無事でよかった―――そっちは・・・アルゴ、か?」

 

「キー坊、相変わらずの格好(真っ黒黒助)ダナ」

 

 後ろからやって来たアルゴは、彼の変わらない格好に、少し呆れるように言う。

 

「けどよかった。ユイに聞いてはいたけど―――カイトだけ安否確認できなかったから」

 

「あー・・・。ま、少し色々あってねぇ」

 

 頬をかいて誤魔化す。

 

「キリトくん、知り合い?」

 

「あ、ああ。2人は別のゲームで知り合ったんだ。カイト、アルゴ。彼女はリーファ、ALOの案内をしてくれたんだ」

 

「・・・浮気カ?」

 

「違う違う!!」

 

「ジョーダンだ。けどアーちゃん泣かしたら、どんな目に合うか、肝に命じておけヨ」

 

 アルゴにジド目で見られ、慌てるキリトを笑いながらリーファに手を差し出す。

 

「僕はカイト。キリトをここまで連れてきてくれてありがとう」

 

「う、ううん。―――私はリーファ。バルムンクとも友達・・・なんだよね?」

 

「あ、そっか。バルムンク、シルフだもんね。うん、もう10年来の友達なんだ」

 

 そう返すとミレイユと話していたバルムンクが会話に混ざる。

 

「彼女―――リーファはシルフ内で上位に入る実力のプレイヤーだ。俺の用事には彼女も関係することでな。これもめぐりあわせなのか、キリトと共に居たので、協力をお願いした」

 

「そっか。よろしくね。―――キリト、君はあの画像を見てここに?」

 

「ああ、そうだ。エギルが教えてくれたんだ」

 

「エギルとも会ってるんだね。元気にしてた?」

 

「ばっちり元気だよ。―――カイト達も?」

 

「発端はそれじゃないけど・・・ま、同じだよ。というか良く皆の連絡先知れたね」

 

「総務省の役人に、色々を条件で教えてもらったんだ」

 

 総務省――”総務省SAO事件対策本部”か。拓海が無理難題ばかり言うとボヤいてた組織だ。そこと取引するなんて、危ない橋わたってなければいいけど。

 

「画像って?」

 

 アルゴが首を傾げた。そっか、アルゴはずっとALOに居るからアスナのこと知らないもんね。

 

「ユイ、画像って引っ張ってこれる?」

 

「はい!任せてください!」

 

 そう言って、彼女は一度光の粒子になると、直ぐに戻り、一枚の紙を僕に渡してくれる。

 

「これが、この世界樹の上層を無理やり撮られた画像」

 

 アルゴに写真を渡すと、リーファとミレイユが後ろから覗き込んだ。

 

「アーちゃん・・・!」

 

「うん、アスナに見えるよね」

 

「アスナ・・・?」

 

 僕がそう返事をすると、リーファが驚いたように目を見開いていた。そして震える声で喋りだす。

 

「この人が・・・キリトくんの大切な、人?」

 

「ああ。そうだ、だから、なんとしてもたどり着かないと・・・!」

 

 その言葉が何かの確信に繋がったのか、リーファはその手を口元へ持っていく。

 

「お兄ちゃん・・・なの?!」

 

「ぇ・・・直葉・・・なのか?」

 

 驚き方が違う2人。キリトは普通に驚いた、という顔。対してリーファは酷くショックを受けた顔だった。

 

「酷いよ・・・あんまりだよ・・・こんなの」

 

 リーファはそう言うと涙を零しながら、ログアウトした。

 

「スグ!!」

 

 キリトの手は虚しく空を切る。驚きが支配しているような、そんな顔をして固まってるキリトの背中を押す。

 

「キリト。追いかけな」

 

 事情はわからないけど、リーファがお兄ちゃん、と呼んだところをみれば、きっと二人は家族。ただ、SAOでの彼を考えれば人付き合いは苦手。それが起因しての問題なのか、それ以外か・・・けれど、SAOでの出来事が、アスナや僕達との関わりが、彼を成長させている。

 だから大丈夫だよね?そう想いを込めて、彼を急かすようにもう一度背中を押した。キリトは混乱しつつもログアウトしていく。追いかける先がわかっているなら大丈夫だね。

 

「どういう訳だ?」

 

 一連の流れを見ていたバルムンクが困ったように言う。

 

「リーファさんがキリトさんを指して、”お兄ちゃん”と。そしてキリトさんもリーファを”スグ”と呼びました。つまりお二人は兄妹なんでしょう。

 ただ、兄妹が同じゲームでたまたま出会った、という驚き方は、キリトさんの反応が普通でしょう。逆にリーファさんの驚き方は酷くショックを受けたように見受けられました。ここから導き出される答えは―――」

 

 ミレイユが指を一つ一つ指を立てながら状況を整理していく。

 

「答えは?」

 

「ずばり!リーファさんはキリトさんに恋をした!それが実の兄でショックを受けた!!」

 

 ミレイユの仮説に、バルムンクは少し呆れ、アルゴは「ゼロではない、かな」と濁し、ユイは「まぁ!」と言った顔をして直ぐに「浮気は駄目!」と声を上げる。

 ミレイユの仮説はいい線はいっている気もするけど、僕としては、それ以上のショックが彼女から浮かんでいたと感じた。

 

 

 どれにしても、仮説に過ぎないし、コレに関しては僕たちにできることは無い。もちろん、心配ではあるけどね。

 僕は一度、話を変えるためにわざとらしく咳払いをして、バルムンクに向き合う。

 

「彼女はアルゴ。SAOで、僕の相棒だった―――彼女がいる理由は・・・詳細は現実世界に戻ってメールで送る。一言で言えばアウラの導き。そして今回の問題の解決する糸口を持ってる」

 

「!・・・そうか。―――俺はバルムンク、”蒼天のバルムンク”だ」

 

 そう言って手を差し出したバルムンクに、アルゴも握り返す。

 

「名前はThe World時代から良く知ってるヨ。オイラはアルゴ。カーくん―――カイトとはSAOで一緒に行動してタ」

 

「よろしく頼む。――アウラの導き、ということは俺達のことは把握している、ということだな?」

 

「うん。キリトも含めて、一部の人たちには僕の事を、SAOで話したから」

 

「そうか。なら変に隠し事しなくていい」

 

 バルムンクは一息吐くと、これからどうする、と僕に視線をくれた。

 

「少し、自由行動で。キリトたちことも気になるし、一度様子見するにもあの二人には参加してほしいからね」

 

「わかった。ならその間に、一度ログアウトして、さっきの詳細を教えてくれ」

 

「うん。ユイ、アルゴと一緒に居て。――ミレイユはどうする?」

 

「ボクも残ってます!アルゴさん!お茶しながらお話しましょう!女子会です!」

 

 ミレイユはそういうと、アルゴの手を取り、歩き出した。ユイもアルゴの肩に乗り、女子会を楽しみにしているようだ。見送った僕達はログアウトする。

 

 

 

 

 いつもより早くに戻ってきた僕に驚いた晶良に、簡単に事情を説明して、アミュスフィアが繋がっているPCに手を伸ばす。メールアプリを起動して、あて先を"川崎 翔(バルムンク)"を選ぶ。そして本文。アウラから聞いた内容を簡潔にまとめ、送信。疑問点について幾つか質問が直ぐに返ってきて、何通かやり取りする。

 そんなやりとりをしながら、晶良から飲み物を貰う。

 

「ありがとう」

 

「いいことでもあった?」

 

 あ、わかる?さすが晶良。

 

「SAOでの相棒――アルゴに会えたんだ」

 

 一瞬眉が動いた晶良は、小さく息を吐いた。

 

「・・・そ。今度紹介しなさいよね」

 

 メールのやりとりが終わり、椅子からベッドへと移動する。

 

「もちろん!じゃ、行ってきます!」

 

 再びALOへ。

 

 

 

 

 ALOに戻ると、女子会と言っていたメンバーが待っていた。一時間くらいしか空けてないけど・・・。

 

「オ、戻ってきたナ。さっきキー坊がログインし直して、ファーちゃんと話すってサ。ファーちゃんもさっきログインしてきて、向かったよ」

 

「そっか・・・。上空でやり合ってるのがそうかな?」

 

 僕が指した先で、2つの影が斬り合っていた。

 

「・・・キリトさんとリーファさん。戦いで物事決着するタイプなんですかね?」

 

 ミレイユの言葉を否定してあげたい所ではあるけど、実際に斬り合ってしまっているのを見るとコメントがし辛い。

 そう思っていると2人は、互いに剣を受けるように武器を離し、影は一つになる。―――よかった、想いは通じ会っているんだね。

 

「大丈夫そうだし、ここで待とうか」

 

「パパ・・・浮気してませんよね」

 

「そんなのじゃないよ。アレはきっと家族愛、かな」

 

 少しむくれる彼女の頬を撫で、宥める。そんなことをしているとバルムンクも戻ってきた。

 

「すまない、少し遅れた。―――ん、皆ここに戻ってきたのか、どういう状況だ?」

 

「少し待ち、かな。―――キリトたちなら大丈夫だよ」

 

 目線を上に向ければ、そこにはもう2人の影は無い。なら、きっと並んで来てくれるはずだ。

 

 

 

 そして少し待つと。

 僕の考え通り、2人は並んで、戻ってきてくれた。リーファは開口一番、頭を下げる。

 

「ごめんなさい!!出会って直ぐに、こっちで揉めたりして!!」

 

「大丈夫だよ。―――仲直りは、できたんだよね?」

 

「ああ。大丈夫」

 

「ならよかった。それだけで十分だよ」

 

 キリトの頭を撫でる。妹の手前、少し恥ずかしいのか、いつもより困った顔のキリトに笑いながら、話題を切り替えた。

 

「じゃ、本題に戻ろうか。―――グランドクエストの挑戦は、明日で。他の仲間が合流できるのが明日になるんだ」

 

「ああ。その件だが、シルフ領主サクヤと、ケットシー領主アリシャ・ルーに協力をお願いした。約束は護るタイプだ。たぶん明日の戦列に加わるだろう」

 

「バルムンクの今日の用事ってそれだったの?―――ま、何にしても人数は多いほうが助かるね。とまぁ、なので今日は様子見だけ行こうか。僕たち(SAOプレイヤー)やユイの視点から見て何かわかることもあるかも知れない」

 

 僕の言葉に皆が肯き、バルムンク先導の元、世界樹の根元へと向かう。

 

 

 

 

 

 

「うーん・・・物量がとんでもないね」

 

 様子見、として挑んだグランドクエストは、とてもこの人数でどうにかできるようには思えない物量だった。前衛を僕、バルムンク、キリト。後衛にミレイユ、リーファ。指示役にアルゴとユイの布陣で挑んだけれど、全然前に進むことができず、あっという間に、眼の前は敵で埋め尽くされた。

 

「俺達シルフ隊が挑んだ時も、同じ様な状況だった。しかも上層に行けば行くほど物量が増える」

 

「ってことはチマチマ潰していくんじゃなくて一点突破、かな?僕、バルムンク、キリト―――あとは明日合流のメンバー次第かな―――で無理やりこじ開ける。上層にはアルゴも連れて行かなきゃいけないけど―――」

 

「オレっちは大丈夫。スキル【未来視】は、こっちでちゃんと動作してるみたいダ」

 

「じゃあ、僕たちへの指示はアルゴに任せるね。―――ユイ、これでたどり着ける可能性は?」

 

 まとめた話と、先程の戦闘を踏まえて、彼女は少しだけ考えると、顔を上げた。

 

「敵エネミーの増殖量のスピードが一定であったとして、現在のメンバーでの突破率は1%程度です。少なくとも、もう2人。突破するためのメンバー、それも皆さんの足並みを崩さない練度の人と組む必要があると思います。

 戦術は、お父さんの考えたものをベースに、メイジ隊が出現したばかりのエネミーを撃破。溢れたエネミーは一点突破隊が上手く捌きながら向かう、がいいと思います。遠距離支援の連携は難しいです。ただこれでも突破率は低いです」

 

「僕たちだけで1%もあるなら、十分可能性はあるよ」

 

 僕が少し楽観的に言うと、キリト、アルゴ、バルムンクは少し呆れたようにため息を吐いた。あれ?何か変なこと言った?

 

「カイトの期待が重いな。まったく」

 

「ほんとダネ」

 

「あっちでも変わらず、というわけだな」

 

 三者三様の言い分に、首を傾げる。そんなに変なこと言ったかな?

 

「まぁいい。どれにしても明日だ。今日はここまでにしよう。明日のまた同じ時間―――13時に集合しよう」

 

 バルムンクは、キリトとリーファのために時間を伝える。皆が肯いたのを確認すると、解散となった。ミレイユがリーファの手を取り、キリトがポツンとなったのを見てか、バルムンクが声をかけ、それぞれに歩き出す。

 

 僕はアルゴを見て、どうする?と聞こうと思いながらも―――彼女はログアウトできないことを思い出す。

 

「そんな顔しないでよ。明日が決戦。―――今度こそ、現実世界で会える、でしょ?」

 

「うん。そうだ―――そうだね。全部終わったら皆集めてオフ会しよう」

 

「他の仲間も紹介してよね。ミレイユとは一緒にケーキ屋さん行く約束してるんだから」

 

「もちろん。必ず」

 

 そう言って互いに、両手を握り合う。そうしたらユイが任せろ、と言わんばかりに胸を張った。

 

「アルゴさんには私が一緒にいます!お父さんのアミュスフィアは常にネットワークに接続されているのでお父さんがログアウトしても私単独でALOに居る続けることができます!」

 

「そっか。じゃユイ、アルゴをよろしくね―――また明日」

 

「アイヨ、相棒。また明日」

 

 僕たちは、別れを告げる。―――大丈夫、また絶対に会える。

 

 

 




いつも閲覧、感想、評価、ありがとうございます。

長くなりましたが、色々の事が判明したり、決戦前夜、といった感じの回でした。
次回は、ついに決戦です。登場人物が・・・登場人物が多い(汗)


ALO本編は後、3話程度で収めるつもりです。
ALO後はチョロチョロ、幕間を挟みつつ・・・な予定です。
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