Artificial deterrent ~ Effective concept arms ~   作:Mr.凸凹

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~ prologue ~ 『遠坂 凛編 01』

 

 

 

 

 

 夢を観ている。

 それは十年前の出来事。

 懐かしい人、大きな背中の彫りの深い顔立ち。

 わたし達が知る限り一度として冗談を口にしなかったお父さま。

 わたしと桜の頭を撫でている。

 いや、ちょっと違ったか……力加減が上手く掴めずに頭を鷲掴みにしながらグリグリと回している、そんな感じだった。

 桜なんか少し涙目になっていたし……けれど、それも仕方ないことだと思う。

 なにしろ、わたし達姉妹がこの人に頭を撫でられたことはこの時だけだった。

 あの時、これが最後だと知っていたならば、取って置きの冗談で笑わせてあげたのに。

 何時も仏頂面のこの人を笑わせようと桜と一緒に笑い話の練習をしていた。

 それが一度も披露できないのが悲しかったといえば、悲しかった。

 まだ、幼さの残るわたし達を心配しつつ、矢継ぎ早に今まで教えてくれなかった事を話す姿を見て、子供心に気付いてしまった。

 多分、この人はもう帰ってこないだろうと。

 戦争が起きたのだ。七人の魔術師が一つの聖杯を奪い合う聖杯戦争と言う名の戦いが始まったのである。

 この人はその参加者の一人として、殺し殺される運命にあるのだ。

 

「凛、桜……いずれ、聖杯は現れる。アレを手に入れるのは遠坂家の義務であり、何より魔術師で在るならば避けて通れない道だ」

 

 もう一度だけわたし達の頭を撫でて、その人は去っていった。

 それが最後。マスターの一人として聖杯戦争に参加し、帰らぬ人となった、師であり父であった人の最後の姿。

 

「「いってらっしゃいませ、お父さま」」

 

 わたし達は声を揃えて、行儀良く送り出した。

 自分が泣きそうだったが我慢した。

 横で必死に涙を堪えている桜のためにも涙を流さなかった。

 わたし達はあの人の事が好きだった。

 父親として優れ、魔術師としても優れた人。

 魔術師は偏屈者しかいない。その世界に於いてあの人ほど優れた人格者はいなかった。

 彼は師としてわたし達を教え導き、そして魔術師は普通後継者を一人しか決めないのに父として分け隔て無く愛してくれた。

 だから、決めていたのだ。

 あの人が何を遺すかで、わたし達の進む道を決めようと桜と決めていた。

 彼は最後の最後で、父親としてでなく魔術師としての言葉を遺した。

 だから、その言葉を遺してくれた時にわたし達の道は決まった。

 

「よし! それじゃあひとつ、気合い入れて一人前になるわよ、桜!!」

「はい、姉さん!!」

 

 弟子が師匠の言葉に応えるのは当然のこと。

 それから色々、紆余曲折あったがお互いに切磋琢磨しあい、わたし達姉妹は成長した。

 あの日から十年。

 この時を待ちこがれているわけではなかったが、気持ちは知らず逸っていた。

 それも当然。十年間一度も忘れなかった聖杯戦争(イベント)はもうすぐ始まるのだから―――――

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

《バタァ~ン!!》

 

「たっ、大変ですぅ~~姉さ~ん!!」

 

 惰眠を貪っていると桜が扉を蹴破らんとする勢いで部屋に駆け込んできた。

 

「……ふわぁ~何ぃ~桜ぁ~?」

 

 わたしは前当主であり、魔術の師であった父の遺した遺言を解読するため、昨晩は夜半まで作業していたために寝不足だった。

 平時でも朝は弱いのに今日は特に駄目っぽい。

 

「うみゅ~朝ご飯はいらないからぁ~もう少し寝かせてぇ~よぉ~」

「おっ、起きてください、姉さん!! ちっ、遅刻しちゃいますぅ~!!」

 

 桜はわたしの肩を揺さぶりながらおろおろと狼狽えている。

 

「……遅刻ぅ~? 何の話しぃ~まだ、時間はぁ~~」

 

 桜が突きつけている目覚まし時計を眺めながらわたしは首を傾げた。

 

 『AM 7:28』―――――

 

 えっと……何時も習慣の起床時間は六時半だから一時間程遅いという訳だ。

 

「ハイ? シチジニジュウハチフン……? 嘘ぉ~~!!?」

「そっ、そうなんですぅ~~!!」

 

 桜は涙目になりながら更に狼狽えていた。

 

「どっ、どうしてぇ~!!?」

「すっ、すみませ~ん~~わっ、わたしが起きたのも何時もより遅かったみたいなんですぅ~姉さんを起こそうとして初めて気付きましたぁ~~!!」

 

 最早、完全な涙目になって上目遣いに見上げてくる、桜。

 かっ、可愛い。我が妹ながらなんて―――――

 

「……って、そんな場合じゃあなぁ~い!!」

 

 わたしはベッドから跳ね起きてパジャマを脱ぎ捨てて着替え始めた。

 

「…………」

「よし、着替え完了!! 次は髪を梳かさなきゃ……桜、玄関で待ってて!!」

 

 わたしは桜の返事も待たずに洗面所へと走っていった。

 ちらりと見えた桜の顔は何故か真っ赤に染まっていた気がした。

 

 

 

 

 

「あははははは♪ それで今日は慌てて走ってきたのか♪」

 

 お茶を片手に弓道部の主将でわたしの友人-美綴綾子-が膝を叩いて大笑いしている。

 

「笑い事じゃあないわよ……」

「でも、どうして屋敷の時計が軒並み早まっていたんでしょうか?」

 

 そうなのだ。慌てて桜と走って登校すると何やら途轍もない違和感がしたのだ。

 何時もなら『どんな時でも余裕を持って優雅たれ』と言う家訓の下、走って登校するなど言語道断な訳だが、道中に全く他の生徒の姿が見あたらなかった。

 最初は恥ずかしい姿を見せずに済んで喜んでいたが、校門の前で綾子に出会った時、その喜びは霧の様に消え去り、代わりに虚無感が沸き起こった。

 そももそ日が昇りきっていない時点で気づかなきゃいけない事なんだけどね。

 我ながら慌てすぎていたんだろう。

 

「まあ、済んだことを悔やんでも仕方ないさ。貴重な体験が出来て良かったじゃないか♪」

「まあ、在る意味貴重な体験よね」

「二度はいりませんよね」

 

 わたし達は姉妹揃って深々とため息を吐いた。

 

「で、話は変わるけど凛……単刀直入に聞くけど調子はどう? いい加減、頼りになる相棒は見つかった?」

 

 綾子は他に誰もいないのをいい事にとんでもないことを聞いてきた。

 

「ふぅ~本当、貴女はいきなり本題に入るのね。その様子だとそっちはもう見つけたんだ?」

「えっ!?そ、そうなんですか!?」

 

 桜が身を乗り出して綾子に詰め寄った。

 

「ノーコメント。凛が手を明かすまではこっちも秘密さ。で、そっちはどうなの? その疲れた顔を見ると脈ありって感じだけど?」

「ほ、本当ですか、姉さん!?」

 

 今度はわたしの方に桜が詰め寄ってきた。

 

「こっちもノーコメント……って、言いたいけど綾子には隠しても見破られるか。残念ながらまだよ。綾子は? お互い、のんびりしていられる余裕はないわよ?」

「そうなんだけど、あたしも雲行きは怪しいわ。取りあえず取り繕う事は出来るけど事が事だし、この先の命運が掛かっているんだから妥協は出来ないしさ」

「ふぅ~ん。簡単に決めて負けるのがイヤ?」

「もちろんさ。あたしにとって重要なのはアンタを負かす事だもの。何が手に入るとか、何を手に入れるかは二の次よ」

 

 綾子は不敵に笑いながら言ってのけた。

 微妙に哀愁が漂っている気がするけど―――――

 

「……はぁ~似たもの同士ね。わたし達」

「ああ、初めて会った時に言ったでしょ。アンタとはそういう関係だって」

 

 そう言えば、言ったわね。『アンタとは殺す殺されないの関係までいきそうだ』と初対面で言われて、わたしも本気でびっくりした。

 要するに『とことんまで殴り合わないとおまえとは友情が芽生えない』ということだ。

 それはわたしも同意見で、こうして友人兼天敵(ライバル)な関係を続けている。

 

「ところで、桜はどうなの?」

「そうだな、凛も()に負けるわけにもいかないもんな」

「えっ!? わっ、わたしですか? そっ、その……あっ、あの……」

 

 自分に矛先が向けられるとは思っていなかったのか桜は耳まで真っ赤になりながら俯いた。

 

「ふむ、その様子だと気になる(ひと)はいるけど告白する勇気がないとみた」

「桜ぁ~♪ お姉ちゃんが相談に乗ってあげるからきりきり吐きなさ~い♪」

「ノォ~コメントですぅ~~!!」

 

 朝の弓道場に桜の叫び声が響いた。

 

 

 

 

 

 桜を一頻りからか……いや、相談に乗った後、朝練の時間に差し掛かったため、二人に別れを告げて校舎へと向かった。

 

 校舎の裏側から向かう。

 弓道場からはこちらの方が近いのだ。

 その途中、一人の男生徒と遭遇した。

 

「やあ、遠坂。お早う♪」

「……お早う、間桐くん。その腕、どうしたのかしら?」

 

 目の前の優男-間桐 慎二-は右腕を指の先までギブスで覆っている。

 

 まさかとは思うけど―――――

 

「お探しの令呪(モノ)なら左の掌(ココ)にあるよ♪」

 

 臆面もなく目の前に令呪を掲げるマキリの魔術師。

 

「安心しなよ、聖杯戦争が始まるまでは手出ししないから♪ 遠坂も早くサーヴァントを呼び出すといい。何なら妹もサポートに着けて二人で召喚してもいいさ」 

 

 慎二は嫌らしい笑みを浮かべながら弓道場へと歩いていった。

 

「……上等じゃないの。遠坂家(わたしと桜)に喧嘩売ったことを後悔させてあげるわ」

 

 わたしは去りゆく背中を一睨みしてから校舎へと歩いていった。

 

 

 

 

 

 廊下を歩き、教室へと向かう途中―――――

 

「……げっ!!? 遠坂」

 

 生徒会室の前で人の顔を見るなり、失礼なことを口走る輩に遭遇した。

 

「あら、生徒会長。こんな朝早くから校舎の見回り? それとも各部室の手入れかしら。どっちでもいいけど、相変わらずマメね、そういうトコ」

 

 機嫌が悪いために何時も以上に突っ掛かっているのを自覚しながら目の前の男に話し掛ける。

 

「ふん……そういうおまえこそ何を企んでいる。部活動もしていないおまえが、こんなな朝早くに何の用か」

「桜の付き添いで早く来ただけよ」

「……一つ聞いておくが、最近夜遅くまで校舎にいた事はあるか、遠坂」

「ないわね。わたしが帰宅部だって知っているでしょう、柳洞くんは……」

「当然だ。生徒会長を任された以上、全生徒の情報は把握している」

 

 辺り廊下の空気の温度を下げながらお互いに腹の探り合いをしていると背後から第三者が声を掛けてきた。

 

「悪い一成、遅くなった!!」

 

 この声は()()()か。

 あれ? 何だか汗の匂いに混じって何かの薫りが―――――

 

「朝、早いんだな遠坂」

「衛宮くんこそ……それでは失礼します」

 

 わたしは心の動揺が表情に出ない様に笑顔を浮かべながら歩きさっていく。

 

「衛宮、今朝は少し遅かったな……ふむ、何やら汗の匂いに混じって()()()の様な香……」

「はっ、早く修理に取りかかろう、一成!!」

「……ああ、時間がないな。それでは頼む」

 

 背後から何やら慌てた気配と共に大声が響いてきた。

 

 うん。大丈夫。

 朝から一目会えただけで照れたりなんかしないんだからね。

 

 それにしてもあの香りは何か疼く匂いだったわね。

 何時もより彼を少し強く意識していたわね。

 こんな感情以前なら感じなかったわ。

 これはやっぱり世間一般で言うところのアレなのかしら?

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

 屋敷に帰ってくると留守番電話のランプが点いていた。

 ため息を吐きそうになるのを抑えてボタンに指を伸ばした。

 

 いくらわたしでもこれくらい楽に操作出来るわよ。

 まあ、覚えるまで桜に頼りきっていたのは、今となってはいい思い出だわ。

 

「……わたしです。そろそろ期限が近づいてきていますが、参加の意思があるなら早めに召喚を行うことですね。しないなら教会で丁重におもてなし……」

 

 全てを聞く前に再びボタンを押して続きを遮った。

 これ以上聞いているとあの女狐はまるで聖歌を歌う様に罵詈雑言混じりのお小言を浴びせいてくるだろう。

 あの父にしてこの娘ありを地でいっているものね。

 父娘揃って不倶戴天の敵よね。

 

「分かっているわよ。残りの枠はセイバー、アーチャー、ライダー……絶対に最優のサーヴァントのセイバーを引き当ててみせるわよ」

 

 わたしは自分を鼓舞する様に思わず手を握りしめた。

 握り締めた手を掲げて浮かんでいる令呪を眼に入れる。

 

 うん。決行は今夜。

 絶対に召喚を成功させるわよ!

 

 

 

 

 

 夜の帳が降りて、間も無くわたしの生命力(魔力)が最高潮に達する時間が近づいてきている。

 

 外は嵐の様に雷が鳴り響いている。

 丸でこれからする召喚が力強いものとなるかの様に感じられる。

 

 わたしは宝石と血を混ぜて魔法陣を構築していく。

 

 準備完了。さあ、遠坂 凛。一世一代の晴れ舞台の幕を上げましょう!

 

「『素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。祖には我が大師シュバインオーグ。降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。みたせ。みたせ。みたせ。みたせ。みたせ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する―――――Anfang(セット)――――告げる。――――告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!』」

 

 よし! 手応え十分! 最優のサーヴァント(カード)を引き当てたわ!

 

 わたしは得意げに頷きながら魔法陣に眼をやった。

 

「……あっ、あれ? 何もない? そっ、そんな馬鹿な事あるわけ……って、しまった! 時計、ちゃんと桜が合わせ直してくれてたの忘れてた!!」

 

 ズレをわざわざ計算して時間を間違えちゃった!

 

 わたしは自分のうっかりに思わず頭を抱えた。

 

《ゴロゴロ!! ガシャ~ン!!》

 

 一際大きな雷が鳴り響いて屋敷が大きく揺れた。

 

「はい? ここ地下なのにこんなに揺れるなんて……」

「キャァアァ~~~!!」

「って、桜!!? まずい! 無事かしら!」

 

 桜の悲鳴に慌てて地下から駆け出して一階へと駆け出した。

 

 

 

 

 

「ちょっ!!? 何これ! 扉が曲がって開かない! 桜!! 無事!!」

「姉さん!!? はっ、はい、無事です!」

 

 桜の返事に安堵のため息を吐くも開かない扉に腹が立ち思いっきり八極拳の技を繰り出して扉をこじ開けた。

 部屋に飛び込んで眼に入ったのは、滅茶苦茶になった部屋と少し煤けているものの見た感じ大きな怪我のない桜、そして父さん秘蔵のワインを浴びる様に飲んでいる少女の姿だった。

 

「貴女、わたしのサーヴァントかしら?」

 

 わたしは蟀谷をひくつかせながら少女に訊ねた。

 

「ぷはぁ~♪ 中々いけるじゃん、この酒♪」

 

 少女はわたしの問いかけにも答えずにぐびぐびとワインを飲んでいる。

 

 駄目だ、キレそう。

 落ち着け、わたし。

 どんな時でも余裕を持って優雅たれ。

 遠坂家の家訓じゃないの。

 よし、深呼吸して気持ちを落ち着けよう。

 

「ねえ、もう一度聞くわね。貴女がわたしが召喚したサーヴァントで間違えないかしら?」

「おっ! こっちも美味いな」

 相も変わらずワインを飲み干していく少女。

 桜はわたしと少女を代わる代わる見詰めながらおろおろとしている。

 

 アハハハハ……いい度胸じゃないの!

 

「あったま、きた!!……わたしの話を聞けぇ~!! 『―――――Anfang(セット)……! Vertrag……! Ein neuer Nagel……! Ein neues Gesetzl Ein neues Verbrechen―――!』」

「ちょっ!!? ねっ、姉さん!!?」

 

 桜が慌てふためきながらわたしを止めようとするも頭に血が昇っていたわたしには声が届かなかった。

 

 後悔先に立たずってね。やっちゃたわ。

 

 わたしは自己嫌悪に陷りながら腕を組みながら少女を睨んでいいる。

 

「ひっく……いきなり令呪を使用するなんて剛気なマスターね。まあ、嫌いじゃないね……ボクのマスターに相応しいかもね」

 

 少女はどこか呆れた表情をしながらもけらけらと笑っている。

 

「じゃあ、契約の締めといきますか……いいかな、マスター?」

「ああ……名前の交換ね」

 

 わたしは若干呆気に捉えられながらもその事に直ぐに行き着いた。

 

「ところで、マスター。この娘はマスターの仲間なのかな?」

 

 少女は桜を値踏みする様に見詰めながら訊ねてきた。

 

「この娘は桜……わたしの妹よ」

「なら問題ないかな……先ずはマスターの名前を聞いてもいいかな?」

「ええ……わたしの名は遠坂 凛よ」

「可愛らしい名前だね。じゃあ、凛ちゃんって呼ぶね。ボクはクラス、ライダーのサーヴァント。真名はフロールリディ……雷神トールの分御霊を宿した者だよ」

「はぁ~選りに選ってライダーのサーヴァントか……って、雷神トールの分御霊を宿しているですってっ!!?」

 

 ライダーのクラスなんて外れかなと思っって思わずため息が漏れたが、聞き捨てならない内容に思わず眼を見開いてライダーに掴みかかってがくがくと揺さぶった。

 

「うぷっ……酔いが回るぅ~」

「ねっ、姉さん落ち着いて下さい!」

 

 ぐるぐると眼を回しているライダーを庇う様にわたしから引き離す桜。

 

 その後、吐きそうになっているライダーを介抱する羽目になってしまったが、召喚とサーヴァントの維持に生命力(魔力)を大量に消費したわたしは、朝に響きそうだから寝て下さいと桜に部屋へと追いやられてしまった。

 仕方なしに寝巻きに着替えてベッドに潜り込むと直ぐに睡魔に襲われた。

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 目が覚めると先ず体のだるさに気がついた。

 

 やっぱり生命力(魔力)が低下しているわね。

 

 目を瞑って意識を集中させると、因果線(ライン)が繋がっているのが感じられた。

 

「おそよう、凛ちゃん。桜ちゃんは疾っくに起きて学校に行ったよん」

 

 ライダーがベッドの傍でワインを飲みながらこちらを眺めていた。

 

 目覚まし時計に眼をやると既に遅刻確定の時間だった。

 

「桜も起こしてくれたら良かったのに……」

「起こしには来てたけど、凛ちゃんが声を掛けてもうんともすんとも返事しないから、寝かせてあげておいて下さいって言ってたよ」

 

 あちゃ~、思っているより消耗しているみたいね。

 これだけ維持に生命力(魔力)を消費するなんて嬉しい誤算だわ。

 ライダーは文句無しの一級品のサーヴァントだわ。

 彼女に恥じない様に行動しないといけないわね。

 

「今日は学校休みましょう……ライダー、折角だからこれから戦場となる街を案内するわ」

「OK~♪ 先ずは腹ごしらえしに食べ歩きツアーを開催しようよ」

「貴女、食べる必要あるの?」

 

 わたしはジト目でライダーを睨み付ける様に見詰めながら訊ねた。

 ライダーはそんな視線も気にせずにけらけらと笑っている。

 

「まあ、基本的には食べなくても大丈夫だけれど……凛ちゃんの生命力(魔力)消費を押さえる意味合いも兼ねてるからね」

「……で、本音は?」

「知識としては知ってるけど現代の料理に興味があるんだよね。やっぱり、知識だけじゃなくて自分の舌で味わってこそ本当に理解出来ると思うんだよね♪」

 

 天真爛漫な笑みを浮かべなら宣う我がサーヴァント。

 実年齢は分からないけど、見た目の年齢相応に可愛らしくて思わず抱きしめたくなった。

 まあ、ワイン片手に微笑んでいるのが大分減点対象だが、それを上回る可愛さだ。

 

 やばいわね。わたしって百合(ソッチ)の趣味は無いつもりだけど、気を抜くと堕とされそうになるわね。

 って、そうじゃないでしょ遠坂 凛。

 

「……食べ歩きなんて心の贅肉よ。徒でさえサーヴァント同士だと気配で分かるんでしょ? それにそんな格好で街を出歩いたら他のマスターにだって一発でサーヴァントだってバレるわよ」

「えぇ~!!? 別に隠す事ないじゃん。真名がバレる訳じゃないしさ……ねぇ~凛ちゃん。いいでしょ?」

 

 上目遣いに涙目で頬を朱色に染めながら見詰めてくるライダー。

 

 何この可愛らしい生物はっ!!?

 本当に英霊なのっ!!?

 

「……しっ、仕方ないわね。着替えを用意するから、それに着替えるなら許可するわよ。それに予算はそんなに取れないからね。いい? 飽く迄戦場の把握が第一目的だからね」

 

 わたしは顔を逸らしながら答えた。

 

 うん。我ながら有り得ない考えだわ。

 

 わたしは誤魔化す様にクローゼットの奥にしまっていた服を取り出してライダーに手渡した。

 あの父娘の毎年のプレゼントが役に立つ事があるなんて、ある意味この服も報われるだろう。

 

「やったぁ~♪ 凛ちゃん、大好きだよ♪ チュ♪」

 

 ライダーは服を受け取る際にわたしの頬に接吻(キス)をしていった。

 

 わたしは頬を抑えながら熱に魘されたかの様に固まっている。

 鼻歌交じりに着替えるライダーを無意識に見詰めながら、わたしは何故か脳裏に浮かんできた()()()に言い訳をまくし立てる様に頭の中で謝罪していた。

 その事に気づいて、更に赤くなった自身の表情が鏡越しに見据えながらどうしていいか分からず更に思考の海へと沈んでいった。

 

「着替え終わったよ、凛ちゃん。どう? 似合ってるかな?」

 

 目の前でくるりと回りながら訊ねてくるライダーの声に思考の海から浮上できた。

 

「えっ、ええ……とっても似合ってるわよ」

「あはぁ♪ ありがとう、凛ちゃん。ボクこんな女の子らしい格好した事あまりないから嬉しい」

 

 目の前の少女は屈託のない笑みを浮かべながら小躍りしている。

 

「さてと……わたしも着替えるから先に玄関で待っていてね、ライダー」

「ほぇ? 何で? 着替え手伝うよ?」

 

 本当に不思議そうに首を傾げているライダー。

 

「……なら手伝ってもらおうかしら」

 

 べっ、別にライダーの可愛らしさに絆された訳じゃないからね!

 本当だからね!!

 

 わたしってばまた()()()に無意識に言い訳しているじゃない。

 これって重症かしらね?

 

 そんなこんなで多少ドタバタしながら準備が整った。

 

 さあ、いざ往かん! 冬木の街へ!

 

 

 

 

 

 




書いている内にライダーのキャラが固まってきたんですが、ナニこの可愛らしい少女はっ!!?
オイラの趣味丸出しなのかな?
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