Artificial deterrent ~ Effective concept arms ~   作:Mr.凸凹

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~ prologue ~ 『ロバート・L・C・神条編 01』

 

 

 

 

 

 夢を観ている。

 それは最初で最後にアイツ-キリツグ-が俺に頼ってきた時の記憶。

 今でも思う。俺は心友(キリツグ)の真の願いを叶えてやれているのかと―――――

 

 

 

 

 

「……で、わざわざこんな英国の小島まで何の様だ?」

 

 俺は読みかけの本から眼を逸らすことなく、屋敷に訊ねてきた男-キリツグ-に尋ねた。

 

「冷たいね。久々に旧友が遠路遙々、訪ねてきたのに……」

 

 訊ねられたキリツグは苦笑しつつ、隣まで歩み寄ってきた。

 

「ふぅ~それで用件は何だ?」

「『無限の書庫(エタニティー・ライブラ)』……君に会って欲しい子がいるんだ」

「会って欲しい子? もしかして、『()()()()』の生き残りでお前が引き取ったっていう……」

 

 俺は顔を上げて、眼鏡越しにキリツグの表情を眺めた。

 その表情はどこか悲しそうに遠くを観ている様だ。

 あの惨状を思い出しているのだろう。

 

「ああ、僕の義理の息子……士郎だよ。強化より投影魔術(グラデーション・エア)の方が簡単らしい」

「ほぉ~それはまた異端児だな」

「僕としては魔術師にはしたくないんだけどね。だけど……」

「会ってみないと判らないが……多分魔術使いだろうな。それに『全て遠き理想郷(アヴァロン)』の影響が計り知れないだろうからな」

「お願い出来るかい?」

「ああ、興味が出てきた……」

「恩に着るよ、ロイ……あの子は……」

 

 キリツグは安心した様に微笑みながらも眼にどこか迷いを生じさせていた。

 

 

 

 

 

「ただいま~士郎~♪」

 

《ドタドトドタァ~!!》

 

「お帰り~♪ ……って、お客さん?」

 

 キリツグの声に奥から走ってきた少年-シロウ-は不思議そうに俺を見上げている。

 

 心なしか顔が赤い様だが気のせいか?

 

「初めまして、俺の名はロバート・L・C・神条……ロイって呼んでくれ」

「はっ、初めましてロイさん。衛宮 士郎です……ところでロイさんも魔法使いですか?」

「魔法使いか……厳密にはちょっと違うが、そうさ」

 

 俺ははニッコリと微笑みながら士郎の頭を撫でた。

 うむ。想像以上に撫で心地がいいな。

 

「以外だな……ロイは子供好きだったのかい?」

 

 その様子を見ていたキリツグは不思議そうに訊ねてきた。

 

「さあ? 自分でも判らん……それより上がって良いかな、シロウ?」

「はい、どうぞ♪」

 

 シロウは嬉しそうに微笑みながら来客用のスリッパを差し出してくれた。

 

「おいおい……家主は僕なんだが……」

 

 俺はキリツグの声を背に受けながらシロウに案内されて居間へと歩いていった。

 

「ロイさん、何を飲みますか?」

「そうだね……久々の日本だから日本茶(グリーン・ティー)をお願いするよ」

「は~い、分かりました。切嗣(じいさん)は?」

「僕は麦し(ビー)……」

「家に昼間から出す酒は置いてない」

「僕も緑茶で……」

 

 キリツグは憮然とした様子で机に突っ伏しながらため息を吐いた。

 

「ハハハ……なかなかしっかりしてるじゃないか♪」

「ああ、僕には勿体ないくらい出来た息子さ……で、どうだい?」

 

 俺はキリツグに促されると眼鏡を外し、士郎を見詰めた。

 右目の白銀の魔眼で士郎の能力(ステータス)解析す(読み取)る。

 

「属性・剣……魔術回路(マジック・サーキット)・27……っと、しかもこれは神経自体が回路か? それに……」

「何ですか?」

 

 シロウはお盆にお茶とお茶請けを人数分乗せながら歩いてきて、不思議そうに首を傾げながら訊ねてきた。

 妙に様になっていて思わず笑みが零れたほどだ。

 

「いや……シロウ、後で君の修練を見学しても良いかな?」

「えっ~と、切嗣(じいさん)……」

「ああ、見てもらうと良い……ロイは士郎にとって適切な助言(アドバイス)をくれるはずだよ」

「判った……お願いします、ロイさん」

 

 シロウは深々とお辞儀をしながら嬉しそうに微笑んだ。

 

「覚悟しておきなよ~こう見えてもロイは結構厳しいからね♪」

 

 キリツグは含み笑いをし、シロウを見詰めながらお茶請けのどら焼きに齧り付いた。

 

「おっ、お手柔らかにお願いします」

 

 シロウは先ほどとは打って変わって、冷や汗を流しながら再び頭を下げた。

 

《ガラガラガラ~!!》

 

「ただいま~士郎ぅ~御八つ~♪ ……って、この靴は!?」

 

《ドタドタドタ、スパァ~ン!!》

 

 かなりの勢いで障子戸が開け放たれるのと同時に居間の中に活発的な女学生が飛び込む様に入ってきた。

 

「お帰りなさ~い、切嗣さん♪ っと……おっ、お客さんが居たんですか」

 

 少女はキリツグに抱き付く様に歩み寄ろうとして、俺に気が付いて耳まで真っ赤に染めた。

 

「ただいま、大河ちゃん♪ 彼は僕の旧友の……」

「ロバート・L・C・神条です。ロイと呼んでください、お嬢さん(フローライン)」 

「おっ、お恥ずかしいところをお見せしました、ロイさん……ふっ、藤村 大河です」

(タイガー)? 勇ましい名ま……」

「うわぁ~~ん、タイガーじゃないもぉ~ん!!」

「すっ、すみません……お嬢さん(フローライン)……」

「おっ、落ち着いて大河ちゃん……」

「ロっ、ロイさんも悪気があった訳じゃないから、藤ねぇ……」

 

 地雷(NGワード)を踏んだ俺だけでなく、キリツグとシロウも彼女を宥めるのに四苦八苦しながら日が暮れていった。

 この時、余りの取り乱し振りに二度と彼女を(タイガー)と呼ばない様にしようと心に固く誓ったものだった。

 

 

 

 

 

《ギィギギギィ~!!》

 

 夜半。土蔵に士郎に付き添って入っていった。

 

「はぁ~失敗した……ミス・フジムラには悪いことをしたな」

「大丈夫ですよ。取りあえず、藤ねぇもロイさんの料理を食べて機嫌が直りましたから……本当に美味しかったですよ♪」

 

 シロウは気落ちしている俺を励ます様に微笑みを浮かべながら座布団を差し出してきた。

 

「有り難う……口に合って何よりだ」

「それにしてもかなりの腕前でしたけど、どこで覚えたんですか?」

 

 シロウが尊敬の眼差しで俺を見上げながら訊ねてきている。

 

「アハハハハ……師父がかなり味に煩い人でね。中途半端な食事を出そうものなら、私刑(オシオキ)が待っていたから必死に上達したのさ」

 

 俺は乾いた笑みを浮かべながら敬愛する(?)師父の顔を思い浮かべた。

 今となっては良い思い出……な訳あるかぁあ~~~!!

 

「そっ、そうなんですか……」

 

 シロウは引きつった笑みを浮かべながら後ずさりをしていた。

 

「さて、気を取り直してシロウの修練を始めようか?」

「はい、よろしくお願いします」

「それじゃ、取り敢えず強化を俺に見せてくれ」

「はい……」

 

 シロウは結跏趺坐(けっかふざ)の姿勢を取って、呼吸を整えた。

 意識を内面へと向け、自己暗示を掛ける様に呪文(スペル)を唱える。

 

「『同調(トレース)開始(オン)』」

 

 そして集中を高めて自己を変革させ、背骨に熱した鉄棒を突き刺す様に魔術回路(マジック・サーキット)を形成している。

 

「『基本骨子、解明…‥構成材質、解明……基本骨子、変更……っ、構成材質、補強……』は~~~ぁ、はぁ、はぁ、はぁ~あ~~!!」

 

 荒い息をするシロウの手の中で鉄パイプが砕け散った。

 

「失敗か……それじゃ今度はコレを解析して投影してみてくれ。その際に創造の理念を鑑定し、基本となる骨子を想定し、構成された材質を複製し、製作に及ぶ技術を模倣し、成長に至る経験に共感し、蓄積された年月を再現すれば上手くいくはずだ……出来るかな?」

 

 俺は背後に回した手を前に出して一本の短剣(ナイフ)を差し出した。

 シロウはその短剣(ナイフ)を受け取り、俺のアドバイス助言を反する様に眼を瞑った。

 

「はっ、はい……やってみます……『投影(トレース)開始(オン)……創造理念、鑑定……基本骨子、想定……構成材質、複製……製作技術、模倣……成長経験、共感……蓄積年月、再現……っつ、投影(トレース)完了(オフ)……』ぜ~はぁ~ぜぇ~~はぁあ~~~でっ、出来ました……」

「どれ、見せてくれ」

「はっ、はい……どうぞ」

 

 シロウは全身から汗を流して荒い息のまま土蔵の床に倒れ込んだ。

 俺は手渡された短剣(ナイフ)解析す(読み取)る。

 

「ふむ……(やはり、これは厳密には投影魔術(グラデーション・エア)ではないな……しかし、一段階降下しているとはいえ……これなら宝具(ノウブル・ファンタズム)も……)」

「あっ、あのぉ~」

「うん?どうした、シロウ?」

「いえ……その……」

 

 シロウは眼を逸らしながら頬を掻いている。

 

「ああ……上出来だよ♪」

 

 俺は微笑みながら士郎の頭を撫でた。

 シロウの顔が耳まで真っ赤に染まった。

 頭で湯を沸くことが出来そうだな。

 

「この短剣(ナイフ)は記念にプレゼント進呈しよう」

 

 俺は手本にした短剣(ナイフ)を手渡しながら再びシロウに微笑みかけた。

 

「えっ? 貰っていいんですか?」

 

 シロウは目を丸くしながら聞き返してくる。

 

「遠慮するな。この短剣(ナイフ)は『小さな白い柄手(Carnwenhan)』……彼の『アーサー王(Arthurian)』が使っていたとされる物だ」

「えぇえぇ~~~!? 『小さな白い柄手(カルンウェナン)』!? 『アーサー王』ですか!!?」

「喧しいぞ!! 時間を考えろ!!」

 

《ボカァ!!》

 

「痛ぁあ~~~!? なっ、何も殴らなくても……」

 

 シロウは涙を浮かべながら上目遣いで俺の顔を見上げ、叩かれた頭を押さえている。

 

「ったく……今日の修練はここまでとしよう……明日から本格的に扱いてやるからな」

 

 俺は苦笑を浮かべながら、再び士郎の頭を撫でた。

 

「はい!! 有り難うございました、師匠(マスター)!!」

師匠(マスター)……?」

 

 俺はオウム返しの様にシロウに聞き返した。

 

「はい!!」

「さっさと風呂にでも行って来い!!」

「あれ、師匠(マスター)? 照れてます?」

 

 シロウは顔を逸らした俺の表情を覗き込む様に首を伸ばしてきた。

 

「先に行くぞ!!」

 

 俺はシロウから逃げる様に土蔵から走り去った。

 

 

 

 

 

「やあ、ロイ……ご苦労様。こっちで一杯やらないか?」

 

 キリツグがお猪口を片手に訊ねてきた。

 久々にキリツグと酒を酌み交わすのも悪くないな。

 

「月見酒か……いいな、付き合おう」

 

 俺はお猪口を受け取ると一気に呷った。

 

「……士郎の素質はどうかな?」

「ああ……コレが今日の成果さ」

 

 キリツグにシロウが投影した『小さな白い柄手(Carnwenhan)』を手渡した。

 

「良く出来ているね……で、どうするのかな?」

「キリツグ……俺はシロウを徹底的に鍛えるぞ。シロウの素質は危うい。だが……」

 

 俺は再びお猪口を傾けて満月を見ながら応えた。

 

「『固有結界(リアリティ・マーブル)』……まさか、士郎がね」

「事実だ……ところでシロウはわざわざ魔術回路(マジック・サーキット)を作り直していたが……」

「ああ……殆ど何も教えていなかったからね」

 

 キリツグはばつが悪そうに眼を逸らしながらお猪口を傾けている。

 

「まあ、かなりリスク危険が高いがシロウの魔術回路(マジック・サーキット)を鍛えるには丁度良いさ」

「まったく、魔術回路(マジック・サーキット)まで特別とはね……ロイ、あの子の事をよろしく頼む」

 

 キリツグは不意に真剣な表情になって深々と頭を下げてきた。

 

「安心しろ、キリツグ……お前は自分の体を労って、少しでも長生きしてくれ」

 

 満月が見守る中、俺達は杯を交わした。

 

 あの時の酒の味は今でも忘れられない。

 弟子(シロウ)の修業を開始してから約二年後。キリツグは『この世全ての悪(アンリ・マユ)』に蝕まれてこの世を去っていった。

 シロウには自身(キリツグ)の志を遺し、俺には子供達(イリヤとシロウ)への想いを託し、微笑む様に息を引き取った。

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

 

「……懐かしい夢を観たな」

 

 不意に眼が覚めて窓から月を眺めた。

 空にはあの時と同じ満月が上っている。

 

「……で、君は何をしているのかな、サツキ? 入っておいで……」

 

 扉越しに感じる気配-魔力-の持ち主に声を掛けた。

 

「しっ、失礼します……あ、あの……そっ、その……」

 

 寝室の扉が開き、そこには女中(メイド)姿のサツキが顔を染めて俯いていた。

 

「もしかして、夜這いに来たのかな?」

「ち、違いますぅ~ねっ、寝顔を見に来ただけですぅ~~!!?」

 

 いや、まあ……冗談だったのだが、サツキは耳から蒸気を吹き出す勢いで全身が真っ赤に染まった。

 かっ、可愛いな。

 

「それもなかなか、はしたないことだと思うが……」

 

 手招きするとサツキは全身を真っ赤に染めたまま、側までやってくる。

 

「サツキ……」

「はっ、はい♡」

 

 俺はあまりの可愛さにサツキを抱きしめてベッドに押し倒していた。

 

「あうぅ~~ごっ、ご主人さま(マっ、マスター)……♡」

「そんなはしたない女中(メイド)は、オ・シ・オ・キしないとね♪」

 

 俺は嫌らしい笑みを浮かべてサツキをベッドに押し倒したまま耳元で囁いた。

 

 

 

 

 

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師匠    :「ストップゥ~~~!!」

弟子一号  :「ここの内容は十八歳未満の青少年には内緒っス!!」

師匠    :「前回(~ prologue ~ 『衛宮 士郎編 01』)に引き続き、またエロスを……」

Mr.凸凹 :「違うぞ、師匠!!」

師匠    :「どこが違うのよ?」

Mr.凸凹 :「今回は前回(~ prologue ~ 『衛宮 士郎編 01』)と違い、始めから(ロイ)が主導権を……」

師匠    :「一緒でしょうがぁあ~~~!!(♯`∧´)」

Mr.凸凹 :「それは違うぞ、師匠!!そもそも……」

弟子一号  :「作者と師匠(バカ達)は無視して続きをどうぞっス♪」

 

 

 

 

 

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 いつもの様に書斎で読書していると突然の来客があった。

 まあ、この人が来るのは何時も突然だ。

 

「……師父、せめて玄関から入ってきてくれませんか?」

 

 ため息混じりに無駄と知りつつも窺ってみた。

 この人は何時も直接、俺の眼の前に現れる。

 まあ、この人にはこの島の結界など意味がないと判っているが―――――

 

「すまんな、まあ気にするな。ところでお主に頼みたいことがあるのだが……」

「窺いましょう。サツキ、お茶を頼む」

 

 側に控えていたサツキにお茶の用意を頼んだ。

 

「はっ、はい!! しょっ、少々お待ち下さいませ」

「慌てなくて良いから……」

 

 ドタバタと書斎から出ていく背中に声を掛けたが、果たして聞こえただろうか。

 彼女は少し……いや、かなりのどじっ娘だ。

 まあ、そこが可愛いのだが―――――

 今朝方まで魔力補充という大義名分があったとはいえ、少し戯れ過ぎた。

 サツキは夕方まで足腰が立たなかったし……少し、自制しないといけないな。

 

「ふむ、彼女は確か……」

「ええ、三咲町の事件時に知り合いまして、その縁でうち屋敷の女中(メイド)として雇っています」

「それだけか?」

 

 師父は含みのある笑顔を向けながら訊ねてきた。

 

「……で頼みとは?」

 

 聞かなかったことにして話を聞くことにした。

 なるべく、無表情で返したつもりだが師父には内心の動揺が伝わったらしく、更に破顔していた。

 

青の魔法使い(マジック・ガンナー)には教えた方が良いかの?」

「構いませんよ。既に彼女も承知済みですから……」

「なんじゃ、つまらん」

 

 こっ、この人は……

 また、あの時の様なことは勘弁願いたい。

 何故、現存する魔法使いの一人と命がけの鬼ごっこを世界規模でする羽目になったと―――――

 

「お主の浮気心が原因じゃろうが……まあ、過ぎたことを何時までも気にするな。で、頼みじゃが……」

 

 師父はそれまでの雰囲気を一掃してまじめな口調で語り出した。

 

 

 

 

 

「聖杯戦争……まだ、十年しか経っていませんが再び行われるようですね」

 

 サツキが煎れた紅茶を飲みながら疑問を口にした。

 サツキも紅茶を煎れるのが上手くなったものだ。

 

「前回の聖杯は衛宮 切嗣(勝者)が使用することなく破壊したからの……それほど魔力を消費しておらんかったのだ」

「俺に調査、その結果如何によっては根本から破壊(解体)しろと……よろしいのですか?」

 

 俺は師父の表情を読み取る様に見詰めながら訊ねた。

 

「構わん。大聖杯は『この世全ての悪(アンリ・マユ)』に染め上げられておる。再びあの悪夢を繰り返させる訳にはいかん」

「『この世全ての悪(アンリ・マユ)』に染まったとはいえ、願望機……いえ、世界に穴を空けるのには十分かと思いますが……」

「儂の意見はよい……お主の意見が聞きたい。魔術師としてではなく、『Artificial deterrent』として……いや、一人の人間としてのな」

 

 師父は俺の真意を測る様に眼を逸らさず、覗き込む様に訊ねてきた。

 

「俺個人としてもあの悲劇を繰り返させるわけにはいきません。心友(キリツグ)弟子(シロウ)のためにも……」

「ならば迷うことはあるまい……大変じゃと思うが頼む」

 

 師父は深々と頭を下げながら俺の答えを待っている。

 

「頭を上げてください、師父……この依頼、お受けします。協会並びに教会、それに退魔組織にも少数ですが俺と弟子(シロウ)の賛同者が居ます。彼等と協力すれば上手く立ち回れますよ」

「彼等ではなく、()()()の間違いではないのか? ……相変わらず師弟共々、女殺しじゃな♪」

 

 師父は含み笑いをしながら文字通り消える様に去っていった。

 

「まったく……さてと、まずは現状把握だな」

 

「『検索(access)』」――――

 

 深層意識を地脈に接続して現状況を読み取る。

 脳裏に様々な情報の羅列が浮かび上がり、事態を理解した。

 

「ふむ……なかなか面白い状況になっているな。後は()()に協力を要請すれば……だが日本の、しかも冬木の地だからな。まあ、弟子(シロウ)のためなら協力してくれるか……」

 

 俺は椅子に深々と座りながら天井を仰ぎ見て、彼女の顔を思い浮かべながら苦笑した。

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

「本日はお招き頂き、誠に有り難うございます。earl」

 

 眼に前の少女が微笑みながら会釈を行った。

 

「すまないな。突然、このような辺鄙な所にお招きして……レディー・ルヴィアゼリッタ」

「それで、ワタクシに彼の地の調査に同行してもらいたいとのことですが……」

 

 ルヴィアは紅茶に一口、口を付けると、徐に本題を切り出した。

 

「ああ、彼の地-冬木-にて第五次聖杯戦争が始まるのはご存じかな?」

「ええ、存じております……」

 

 ルヴィアは少し眉を顰めながら答えた。

 

「無理を承知で頼みたい……この通りだ」

 

 深々と頭を下げつつ、彼女の答えを待つ。

 彼女の家-エーデルフェルト家-は少なからず彼の地で行われる聖杯戦争……いや、()()()と確執がある。

 馬鹿弟子(シロウ)魔術の名門(エーデルフェルト)天秤(賭け)に掛ける割合(レート)は、普通ならば限りなく分が悪い。

 しかし、彼女ならば或いは勝負になるはずだ。

 

「頭をお上げ下さいearl……詳しくお話をお聞かせ願えますか?」

 

 取りあえず、第一段階は乗り切った。

 後は彼女のシロウへの想いが如何ほどかに掛かっている。

 

「ああ、もちろん……それと、ここには他の者は居ないからいつもの様に呼んでくれ、ルヴィア」

「判りましたわ、ロイ」

 

 ルヴィアはにっこりと年相応の笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

「……という訳だ。お願い出来るかい?」

「『この世全ての悪(アンリ・マユ)』ですか。俄には信じがたいですわね」

 

 ルヴィアはため息と吐きつつ、こちらを真っ直ぐに見つめている。

 

「冗談なら、それが一番だが……アレの所為でキリツグは……」

 

《パキィン!!》 

 

 手にしていたティーカップが怒気に乗って発せられた魔力の負荷に耐えられず、粉々に砕け散った。

 

「失礼した……サツキ」

「はい、ご主人様(マスター)。お怪我はございませんか?」

 

 一見職務に忠実なだけに見えるも、サツキの表情は愁いを孕んでいた。

 

「ああ、大丈夫だ。すまないな……」

「いえ……それではこちらを処理いたしますので……」

 

 サツキは割れたティーカップを持って応接室から退室していった。

 

「見苦しいところを見せてしまったね」

「いえ、お気になさらずに……」

 

 暫く気まずい空気が流れ、会話が止まってしまった。

 その沈黙を破ったのは彼女の声だった。

 

「あの……キリツグとは、確かシェロの……」

 

 おずおずといった感じで訊ねてくるルヴィア。

 

「ああ、義理の父親さ。これがなかなか食えない男でね。何度、煮え湯を飲まされたことか」

 

 重くなった空気を払う様にキリツグとの思い出を彼女に面白可笑しく伝えていった。

 

 

 

 

 

「おほほほほ……何だか楽しそうですわね♪」

「アハハハハ……なんだかんだ言って奴とは腐れ縁だったからね。どことなく憎めない奴だったし……」

 

 一頻り、思い出話に花を咲かせた後、話を元に戻した。

 

「……それで、頼めるかな?」

「はい、他ならぬロイの頼みですもの♪ 謹んでお請けいたしますわ♪」

 

 ルヴィアは一見真剣そうな表情を浮かべているものの、その端々からは恋する乙女の感情が見え隠れしている。

 

「有り難う、ルヴィア……でも、俺のためではなく、シロウのためじゃないのかい?」

 

 含み笑いをしながら彼女の表情を眺めていると、当然といった笑みを返してきた。

 

「勿論シェロのためでもありますが、ロイには色々と借りがありますからね」

「別に俺は貸しとは思ってないよ。所謂先行投資ってやつだよ」

「それでもです。返せる時に返して置かないと落ち着きませんわ」

「分かったよ。無理の無い程度に扱き使わせてもらおう」

「お手柔らかにお願い致しますわ」

 

 ルヴィアは俺の台詞に苦笑しながらも楽しそうな雰囲気を醸し出している。

 

「さて……退魔組織にはルヴィアの入国許可の申請を(()())出しているが、今暫く掛かると思う。すまないがそれまでは屋敷(うち)に滞在してもらうことになるが、良いかな?」

 

 そうなのだ。フリーランスの自分は兎も角、正規の魔術師である彼女の入国にはそれなりの手順を踏んで行わないと、後々面倒なことになる。

 出来れば、今すぐにでも彼の地に駆けつけたいが、自分の都合で彼女に迷惑を掛けるわけにはいかない。

 

「はい。よろしくお願い致します」

 

 ルヴィアは年相応の笑みを浮かべながら頷いている。

 

「サツキ……彼女を部屋に案内してあげてくれ」

「はい、ご主人様(マスター)。お荷物の方はすでに部屋へと運んでおりますので……」

 

 ルヴィアはサツキに伴って、応接室から退室していった。

 

「さてと……賭けには勝てたか。羨ましいぞ、馬鹿弟子♪ 女殺しな所まで義父(キリツグ)にそっくりだな♪」

『君に人のことが言えるのかい?』

 

 ―――――何故か、キリツグの声が聞こえた気がした。

 

 

 

 

 

 




剣舞の騎士の性技の軌跡(novel.syosetu.org/39836/)に今回の十八禁の部分を投稿しています。
良い子は見ないでね。
悪い子はどうぞお召し上がり下さいませ。
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