Artificial deterrent ~ Effective concept arms ~ 作:Mr.凸凹
寒風吹き荒ぶ冬の夜空。
天蓋に輝く月が照らし出す少女は仏頂面で睨み付ける様にこちらを眺めていた。
「なあ、凛……立ち話もなんだし、
俺は睨まれる理由が今一つ理解出来ていないが、寒空の下に末若い少女を立ち尽くさせている事が出来ない。
こんなところも師弟揃って女誑しだとよく言われる所以だろうな。
「はぁ~……士郎、貴方もサーヴァントを召喚したんでしょ? なら、わたし達は言わば聖杯を巡る
腕を組みながら顔を逸らして言い放つ凛。
「もう、凛ちゃん! ツンデレもいい加減しなよ!」
ライダーは凛の横で腰に両手を当てながら覗き込む様に窘めている。
「だっ、誰がツンデレよ!!」
凛は顔を真っ赤に染めながら言い返している。
何だろう、この漫才みたいな空気は……凛の猫被り振りは知っていたつもりだが、これはまた意外な一面だな。
「ごほん……」
凛は俺の生暖かい視線に気がついて咳払いをして気まずそうに佇んでいる。
仕方ない。なかった事にして話を進めるか。
「まだ凛とは協力関係を解消したつもりもないし、出来れば争いたくないな……それに未だ参加表明をはっきりとした訳じゃないからさ。出来れば一緒に教会に出向いて欲しいんだよ。凛も未だなんだろう?」
そうなのだ。
教会にはあの
他人の幸福は無性に潰したくなる程のサディスト。
さらに毒舌で、人使いも荒い。
しかし壊れているとはいえ、その信仰心は本物だ。
その能力から傷ついていく躰を、ただ在るがままに受け入れることが出来る程に無心の祈りを体現している。
年下の少女に対して情けない事だが正直に言って苦手だ。
それに負い目もある。
出来れば会うのは避けたいが、そうも言ってられない。
「何よ。士郎も、あの娘苦手なの? ……って言うか、面識あったんだ?」
俺の表情から察した凛が瞳に憐憫の情を浮かべながら訊ねてきた。
「まあ、少なからず因縁はあるんだ。暫く会ってないけどさ……お願いするよ、凛」
俺はため息を吐きそうになるのを堪えて、両手を合わせて頭を下げながら懇願した。
「いいわよ……わたしも教会に参加表明しに行くつもりだったしね。それじゃあ、お邪魔するわね」
凛は一転して安心したような笑みを浮かべながら俺の肩を叩いてきた。
「ああ、いらっしゃい。大したおもてなしは出来ないけど寛いでくれ」
俺も若干未だに不安だが、安堵のため息を吐きながら凛とライダーを招き入れた。
自己紹介もそこそこにいそいそとおもてなしの準備をする。
「夕飯の残り物で悪いけど……」
「ううん、十分だよ。いただきま~す♪」
テーブルに並べられた家庭料理を掻き込む様に食べていくライダー。
「うん、美味しいね。今日、食べた中でも上位に入るよ♪」
しっかりと咀嚼してから、はにかみながら料理の感想を言ってくるライダー。
「セイバーも遠慮せずに食べてくれ」
「ワタシは魔力供給が事足りているので、特に食事を必要としてないのですが……」
「そうか……でも、せめて一口食べて欲しいな」
俺が悲しそうに眼を伏せるとセイバーは慌てて箸を取った。
「しっ、シロウがそこまで言うならば、ご相伴に預かりましょう……では、いただきます」
しっかりと手を合わせてから箸を伸ばすセイバー。
一口食べるとその眼を驚きで見開いている。
ライダーに比べればゆっくりだが、こくこくと頷きながら美味しそうに食べていくセイバー。
どちらも料理人擬きとしては嬉しい限りだ。
「サーヴァントって皆こんな感じなのかしら?」
レニーは呆れた表情を浮かべている。
「半人前の士郎が最優のセイバーを引き当てたのは悔しいけど……これを見ると和むって言うか、どうでもよくなるわね」
凛は湯呑を持ちながら苦笑している。
綺麗さっぱりと片付いた料理の皿を一通り洗ってから改めて凛と向き合った。
「それで、士郎はどこまで聖杯戦争の事を理解しているの?」
凛は自分の湯呑にお茶を注ぎながら訊ねてきた。
「『―――その杯を手にした者は、あらゆる願いを実現させる。聖杯戦争。最高位の聖遺物、聖杯を実現させるための大儀式。儀式への参加条件は二つ。魔術師であることと、聖杯に選ばれた寄り代である事。選ばれるマスターは七人、与えられるサーヴァントも七騎。聖杯はただ一つ。奇跡を欲するのなら、汝自らの力を以って、最強を証明せよ』……要約するとこんなところかな。要はどんな願いをも叶えるっていう聖杯を巡って七人の魔術師がサーヴァントを使役して争うんだろう」
俺は自身の左手を掲げ上げて令呪を睨み付ける様に見詰めながら答えた。
「何か不満みたいね、士郎」
凛は無表情を装いながら訊ねてきた。
「ああ、不満さ……未だ魔術師達が秘匿に専念して一般人を巻き込まないんならいいさ。だが、実際はどうだ! 己が欲望を叶えるために私利私欲のままに行動しているじゃないか!!」
《ビィキン!!》
思わず右手に持っていた湯呑を握りつぶしてしまった。
「大丈夫、シロウ? 火傷してない?」
レニーは冷気を生み出しながら俺の手を癒す様に握ってきた。
「ああ、大丈夫だ。ありがとう、レニー」
俺は左手でレニーの髪を梳く様に撫でた。
レニーは嬉しそうに眼を細めている。
「うぉほん! ……相変わらずの正義馬鹿っ振りね。そう言う士郎は聖杯に託す願いはないのかしら?」
凛は俺とレニーの間に流れた穏やかな空気を一掃する様に咳払いをしてから訊ねてきた。
レニーは舌打ちしながら手を離した。
「ない! 願いは自身の努力で叶えるものだからな。聖杯なんていらないさ」
俺はきっぱりと言い放った。
それに俺の願いは
確かに俺の願いは自身から湧き出たものでなく
だがその願いは綺麗なものなんだ。
例え間違っていると言われても、俺は貫き通す。
「なっ!!? それは困ります、シロウ!! 貴方には聖杯戦争に勝ち残って、何としても聖杯を手に入れてもらわなければいけません!!」
セイバーは烈火の如く気迫を込めて詰め寄ってきた。
そのお陰でループしていた思考に区切りがついた。
「そうだな……セイバーは聖杯に託す願いがあるからこそ俺の召喚に応じてくれたんだよな。分かった、セイバーのためにも負けられないな」
俺はにっこりと微笑みながらセイバーを見詰めた。
「あっ、ありがとうございます、シロウ……」
セイバーは鬼気した表情を一変させて花が綻ぶ様に微笑んだ。
「それで凛には聖杯に託す願いなんてあるのか?」
「わたし? 別にこれといってないわよ。聖杯を手にするのは遠坂家として生まれ持った使命だから、聖杯は手に入れるけどね。だからやっぱり士郎とは
凛は肩を竦めながら苦笑している。
「出来れば凛とは最後まで争いたくないけどな」
俺は無意識に苦笑していた。
「それこそ心の贅肉よ……まあ、一つだけ士郎と争うことなく聖杯を手に入れる方法が無い事もないけど……」
凛は耳まで真っ赤に染まりながらこちらをちらちらと見詰めてきている。
「本当に争う必要がないなら教えてくれ、凛!」
俺は思わず凛に詰め寄ってその両手を握り締めた。
そして凛の瞳を覗き込む様に見詰めている。
「ちょっ!!? ちっ、近い! 近いってば!! ……って、言うか乙女から言わせる気っ!!? 漢なら察しなさいよ!!」
何やらパニクった凛は全身真っ赤にしながら逆ギレの様に怒鳴ってきた。
なんでさ!!?
俺はただ争わないでいい方法を聞いただけなのにな。
「止めなくていんですか?」
「ほっときなさい。あれくらいならまだ可愛気があるくらいよ。それに乙女心を察せないシロウが悪いわよ」
「凛ちゃんも、もっと素直になれるといいのにね」
助けを求めて視線を横に向けると、レニー達はこちらを無視する様に静かにお茶を啜っている。
「いい加減に放しなさいよ、馬鹿士郎!!」
「へぶぅっ!!?」
凛から意識を逸らしている隙に蟀谷に膝蹴りを喰らってしまった。
気を失うほんのちょっと前に凛のスカート中が見えた気がした。
うん。黒のレースか。
悪くはないけど、凛には少し大人っぽ過ぎる気がするな。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
ここから教会までは大分距離がある。
何時もなら愛車のSUZUKI GSX400Sカタナの出番だが、如何せんバイク一台では五人揃って移動できない。
レニーと二人ならよくツーリングに出かけていたんだけど、これからは移動方法を検討し直さなければならないなかな。
もう一台のYAMAHA V-MAXカスタムが有る事は有るんだけど、あまりにモンスターマシン過ぎて俺の手には負えない。
って、言うか、魔改造し過ぎで一般人は元より魔術師にも手に負えないんだけど、
まあ、欠かさず整備だけは行っているから今でも現役で乗る事が出来るけど、乗り手がいるんだろうか?
それとセイバーが霊体化出来ないらしく、鎧姿では目立つので服を探す事になった。
セイバーは未だ英霊の座に召し上げられているわけではなく、死の寸前で『聖杯を手にすること』を求めて世界と契約し、生きている状態のまま様々な時空間に呼び出されているらしい。
聖杯を手にして、世界との契約が達成された暁には本来の時間に戻り、願いを叶えた後にそのまま死を迎えて、はじめて正式に英霊となることになるとの事だ。
そのため、生者である彼女は霊体化することが出来ないらしい。
どんな願いかは知らないが、セイバーをそこまで駆り立てるモノは俺と同様に歪なモノの様な気がする。
何時か問いただして、間違っていたらマスターの俺が正してやらなければならないかもしれない。
まあ、歪な俺が出来るかどうかは分からないが、出来る限り力になろう。
思考を中断して
「確か
無意識にセイバーを解析して身長やスリーサイズ等は把握しているので間違えない。
何故ぴったりのスーツが有るのかといえば、セイバーは十年前の聖杯戦争に参加していたらしい上に、態度を省みるに
「えっと……この棚だったよな……おっ! これだ!」
古い防虫剤の臭いが少しきつい気がするが、着れない事はなさそうだ。
だが、このままセイバーに着せるのは可哀想だ。
「悪い、セイバー! 男物の
「いえ、構いませんが……やはり、これはあの時の……」
セイバーは
「セイバー?」
「はっ!!? きっ、着替えますね!」
誤魔化す様にセイバーはぎこちない笑みを浮かべながら鎧を解除した。
そして徐に服も解除して裸になった。
「ちょっ!!? せっ、セイバー!!? せめて人目のないところで着替えてくれ!!」
俺は慌てて体事セイバーから視線を逸らした。
心臓が早鐘の様に鼓動している。
「はうわぁ!!? すっ、すいません、シロウ!」
見た訳ではないが感じられる気配や衣擦れの音から、真っ赤になったセイバーがスーツで裸体の前面を隠している様だ。
俺はあまりの事態に固まった様に動けない。
どっ、どうしよう!!?
女性の裸体を見るのは初めてではないが、こんな反応をされると新鮮で緊張してしまう。
動け! 俺の足!!
俺が足を動かそうと必死になっていると、身も震える様な絶対零度の声が聞こえてきた。
「……何をしているのかしら、シロウ?」
錆び付いた様な首をゆっくりと動かして視線を上げると、
うぉ!!? まっ、不味い!!?
普段なら女性と遊んでいる時もレニーなら眼は笑っていなくとも表情は笑顔だったんだけど、これは非常に怒っているって事か!?
「あっ、あの~レニーさん?」
俺は恐る恐る声を掛けてみた。
レニーはぷるぷると震えながら俯いてしまっている。
「しっ、シロウの……しっ、シロウの……浮気者ぉ~!!」
「みぎゃぁ~!!?」
俺は迫り来る氷の襲撃に為す術もなく飲み込まれた。
普段なら直撃を受ける様なヘマはしないのだが、レニーの瞳に溜まっていた涙を見て避ける気が起こらなかった。
「へくしょ~ん! うぁ~まだ寒気がする」
俺は身体を摩りながら震えている。
凍りついた普段着から魔術礼装に着替えたとはいえ、冷え切った身体は直ぐには暖まらない。
今度、発熱・保温の魔術文字も刺繍しておこう。
レニーはヘソを曲げたままだが、子猫の姿で俺の懐に入り込んでいる。
だが首元を撫でてやると機嫌良さそうにごろごろと鳴いている。
「大丈夫、士郎? 無理して風邪なんかひかないでよ」
凛が呆れながらも心配そうに顔を覗き込んでくる。
「すいません、シロウ……ワタシの不注意で……」
セイバーは捨てられた子犬の様な表情で俯いている。
「大丈夫さ、二人共……これでも鍛えているからさ」
俺は力瘤し作りながら微笑んだ。
「まあ、何とかは風邪ひかないって言うから大丈夫じゃないかな?」
ライダーが含み笑いをしながら面白そうに言ってきた。
「ひどぉ!!?」
俺が大げさに傷ついた振りをすると笑いが沸き起こった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
夜の冬木大橋を二台のバイクが併走して走り抜けていく。
俺のSUZUKI GSX400Sカタナの後部座席には凛が座っている。
何時もはそこはレニーの定位置なのだが、人数オーバーの加減でレニーは子猫姿で俺の胸元から首だけを出している。
横を並走しているYAMAHA V-MAXカスタムはセイバーが運転しており、後部座席にライダーが座っている。
セイバーはあのモンスターマシンを持ち前の騎乗スキルで軽々と乗りこなしている。
あのモンスターバイクの乗り手の疑問が解消された訳だが、この割り当てにはセイバーは当初不満だらけだった。
いくら休戦中とはいえ、セイバーがライダーと一緒に乗るのは強い拒否が見られた。
それならライダーが運転して凛が後ろに乗る手も有るにはあったが、如何せんライダーの見た目では到底普通自動二輪免許取得可能な年齢には見えず、敢え無く断念した。
まあ、セイバーも無免許運転な訳だが、ライダーは見た目からしてアウトだから警察に要らぬ静止を掛けられてしまうだろう。
だがしかし、やはりバイクで夜道を走り抜けるのは気持ちがいい。
他に交通量が少なく自分の思い通りのコース取りで走り抜けるのは爽快だ。
最近ご無沙汰だが、また冬木の道を走り抜けるのもいいだろう。
聖杯戦争が落ち着いたらセイバーとツーリングに行くのも悪くはなさそうだ。
暫くバイクを走行させて教会の前にやってきた。
「ふぅ~やっと着いたわね。初めてバイクに乗ったから肩凝っちゃたわ」
凛はヘルメット脱いで髪を振り乱す様に首を回しながら身体を解す様に大きく伸びをしている。
「でも気持ちよかったわ。ありがとう、士郎♪」
凛は頬をやや朱色に染めながら上目遣いでお礼を述べてきた。
「どういたしまして、気に入ってもらえたなら幸いさ」
俺はヘルメット脱ぎながらはにっこりと微笑んだ。
「さあ、着きましたよ、ライダー……早く降りて下さい」
セイバーは若干むっとした表情で言い放っている。
「もう! セイバーってば! 今は休戦中なんだからもっと楽しまないと損だよ!」
ライダーは頬を膨らましながら窘める様にセイバーに言い聞かせている。
セイバーが男装しているせいか、傍から見ると嫌がる兄を無理やり連れ出した妹との兄妹に見えて微笑ましかった。
久し振りに言峰教会までやってきた。
俺は眼の前の教会が伏魔殿の様に感じられてたじろいでしまっている。
だが、何時までもここで迷っている暇はない。
意を決して一歩進むと教会の敷地から一人の少年がやってきた。
「あれ? お兄さん、お久しぶりです。あっ! セイバーさんもご一緒って事は聖杯戦争に参加するんですね。そちらのお姉さんも参加者ですか?」
見た事もない少年はにこにこと微笑みながら、こちらを知っているような口振りで佇んでいる。
セイバーやライダーは少年から感じられる気配に戸惑いつつも臨戦態勢を取っている。
レニーも俺の懐から飛び出して人間形態になって、俺を庇う様に佇んでいる。
俺も空かさず干将・莫耶を投影して構えている。
凛は驚きに眼を見開きながら干将・莫耶を見詰めている。
「ああ、ご心配なく……ボクは此度の聖杯戦争に基本的に関与しませんから♪」
少年はあっけらかんと微笑みなながら、敵意を受け流している。
俺は無意識に少年を解析してその正体に気が付いた。
「お前! ギルか!? その姿は、どうしたんだ!?」
「さすがはお兄さんですね……いえ、青年体のボクが
ギルは肩を竦めながら、やれやれと首を振っている。
「何か性格が違いすぎないか、お前……別人って言っていい程だぞ」
俺はギルから敵意が感じられないので、干将・莫耶の投影を解いて両手を上げながら訊ねた。
「あははははは……ボクもそう思います。青年体のボクはどうしてああなったのか自分でもわからないほど理解しがたいひどい人ですからね」
いや、まあ、ひどい人には同意するけど笑い事じゃない気がする。
「あっ、あの~シロウ? ……この子は?」
セイバーは俺の態度から警戒レベルを落とした様だが、未だに臨戦態勢を解かずに訊ねてきた。
「え~と……セイバーは十年前の聖杯戦争で会っている筈なんだけど……彼はその……
「はぁ……
セイバーはギルの正体を知るや否や切り掛ろうとした。
「ふぅ……物騒ですね、セイバーさん……まあ、ボクがした事を考えると理解できますけどね」
ギルはため息を吐きながらも、セイバーに向けて
「ボクは敵対する気はないですが、身を守るために攻撃は辞さないですよ」
満面の笑みを浮かべながらセイバーを見詰めている、ギル。
「剣を引け、セイバー……ギルに敵意はない」
俺は令呪を翳しながらセイバーを窘めた。
言う事を聞かなければ令呪の使用も辞さないと脅しを掛けた。
「くっ!!? わっ、分かりました、シロウ……」
セイバーは渋々といった様子で剣を下ろした。
「良かったです。無益な争いは悲しいですからね」
ギルも胸を撫で下ろして
「ちょっと、士郎! 前回の
凛は俺の胸倉を掴みながら問い詰める様に言い放ってきた。
「そこからは弟子に代わって俺が説明しよう……よろしいか、遠坂の当主よ?」
聞き覚えのある声に振り返るとそこには見間違える筈のない人物が佇んでいた。
「貴方、誰?」
凛は俺の肩ごしに声の主を睨み付ける様に見詰めている。
「これは失礼した。俺の名はロバート・L・C・神条……尤も
多分セイバーを始めサーヴァント達に自分の実力を隠すことなく晒すことで、話を円滑に進める気だろう。
「
凛は俺から手を離して、
「話すと長くなりそうだから、教会の礼拝堂で話そう……それとシロウ! 君を待っている人がカレン以外にも居るから楽しみにしてるといい♪」
「ふはぁ~……まさか、あんな大物が出てくるなんて……今回の聖杯戦争は一筋縄ではいかないって事なのかしら? 」
「彼は相変わらず普通の魔術師とは一線を博していますね。さすがはお兄さんと一緒にボクと綺礼を下した存在ですね。出来ればもう二度と争いたくないですよ」
ギルは乾いた笑みを浮かべながら頬を掻いている。
「まあ、
俺は苦笑しながらも
「謙遜は美徳ですが行き過ぎるとよくありませんよ、お兄さん。仮にも英雄王を下した一人なんですから胸を張って下さい」
ギルは俺の胸を叩きながら真面目な顔で見上げてきている。
「そうだな……謙遜するとギルに失礼だよな」
俺は罰が悪そうにしながらも、胸を張ってギルに微笑みかけた。
「あの~、シロウ? 聞き間違えではなかったら
セイバーが恐る恐る確認する様に訊ねてきた。
「ああ……昔、ちょっとな。レニーと二人掛りだったけどな……詳しい説明は
俺はセイバーとレニーの手を取って歩き出した。
「はぁ……分かりました、シロウ」
セイバーは未だ混乱した様子で手を引かれている。
レニーは未だに機嫌の悪そうな表情を浮かべているものの、俺の腕に抱きつきながら着いてきている。
「ちょっと、待って……
後ろで凛が驚愕の表情を浮かべながら叫ぶ様に、俺の正体に気づいた様だ。
あちゃ~出来ればもう少し隠したかったけど、バレちゃったものは仕方ないか。
この時、凛に自分が
少しでもその事に気が回っていればこれから起こる女難の大騒ぎは回避出来ただろうか?
徒でさえカレンと会うのも気が重いのに、更なる試練は俺の許容範囲を易易と超えてきた。
正義の味方って言っても時には無力なものなんだと実感する羽目になったんだ。