具体的に言うと、『八雲藍』、『八雲紫』、『燈』です。
今回はバッドエンドと言えるかもしれません。
前回同様、落差が激しいです。
お気を付け下さい。
燦々と、煌めく光が視界を埋め尽くす。
久々に日光に当たる感覚に、目眩を覚える。
何日、何カ月、何年経ったのか、それすら覚えていないほど時間が経っていた。
私のご主人様のご主人様は頭は良いらしいが中々に面倒臭がりな性格をしているので、ご主人様には色々と面倒な用事がまわってくることが多い。
ご主人様も頭が切れすぎてよく分からない程なのだが、偶に頭が切れるだけでは解決できない面倒が舞い込むことがある。
特に、ご主人様達のような強大な力を持つ存在がそこに居るだけで手出しができなくなるような面倒事は、私が単独で請け負うことが多い。
今回は、新たに開いたスキマが何故か無秩序に広がりかけたので、私が出向いてスキマのスキマの端の方の力のムラを修正したのだ。
と、いうわけで私は幻想郷に帰ってきた。
「ご苦労さま、休んでいいわよ」
私がスキマから出ると、私が出てくるのを見越していたご主人様のご主人様…『八雲紫』様が声を掛けて下さった。
なので、お言葉に甘えて、なんて言って、私はご主人様…『八雲藍』様の元に向かった。
藍様は割とすぐに見つかった。
というのも、『燈』がお使いから帰ってきた瞬間に、とても大声で叫んだのだ。
「藍しゃま、お使いから帰ってきました」
「ちぇえええん!よくやったぞ!」
「あと、お使いしたものを忘れてきました」
「ちぇえええええええええん!!!」
こんな風になる藍様は今までに見たことも無かった。
中々新鮮で、苦労した甲斐があったのかもしれない。
という訳で、藍様が燈を休ませたのを見計らって話しかけた。
「藍様、ただいま戻りました」
「…あ、あれ、ぁ」
どうした。本当に。
何故か、藍様の顔が赤いのによく分からない表情になっている。
「何故そのようなお顔をされるのでしょうか。先程の光景はいつも通りでしたよ」
「ぅぅああぁぁぁぁぁ…!」
やはり、さっきの燈とのやり取りを見られたく無かったようだ。
藍様は両手で顔を覆って呻きだしてしまった。
「いつ!帰ってきたんだ!」
私に対しては珍しく、すごい大声で捲し立ててくる。
「つい先程でございます」
「あああああああ!」
泣き出してしまった。
あまり創造的なことが得意ではない方で、それでも私なんかでは適わないのだが、人間味のようなものがあまり無いという印象があったのだ。
しかし、意外と、この方にも感情的な部分があるようだ。
「そんなぁ、なんでこんな時機に…」
「そこまで泣かれずとも、本当にいつも通りでしたよ。それに、いつも通りで良かったです。突然居なくなったりしたら、悲しいですから」
「…」
紛れもない本心だ。
藍様が居なくなるとは考えづらいが、もしそうなってしまったら、私は何を頼りに生きれば良いのか分からなくなってしまう。
「お、お前の前だけでも、主人らしく、振る舞いたかったのだ。なのに…」
「大丈夫ですよ。藍様は、藍様なのですから。私は、振る舞いとかよりも気持ちが大事だと思っていますし」
咄嗟に出た言葉を額面通りに受け取ってはいけないように、本当は何を思っているかの方が大事ではあるのだ。
「私は貴方の従者です。だから、ご安心下さい。何があっても、私は藍様から離れませんから」
「…ありがとう」
藍様はそうして、他の仕事をしに行った。
私も、暇になったので部屋に戻ろうとすると、上機嫌の紫様が通りかかった。
「あのスキマを直してくれてありがとう。やっと新しい冬眠の場所ができたわ」
ふふふ、と笑いながら紫様は私に感謝を伝えた。
それは良かったです、と言って、私は立ち去ろうとした。
「ねえ。藍のことなのだけど」
紫様はその一言で、私を引き留めることに成功した。
「何か御座いましたでしょうか」
「いいえ、ただ、」
「貴方が従者だって言葉が聞こえたけれど、」
それって本心?
実は、私は紫様が苦手だ。
胡散臭い上に、話題は気持ち悪いほどに的確で、話していられない。
今だって、触れて欲しくない逆鱗を言の葉でなぞっていく。
「『いいえ、私の主は藍様ではありません』」
「そうなの?なら、誰が主なの?」
「『紫様に御座います』」
「そうよね」
クスクスと笑いながら、紫様が私を
「貴方は里の爪弾き者」
「だから私が拾ってあげた」
「私の役に立つ限り、」
「貴方は此処に居てもいい」
「そうすれば、それだけで、
「『その通りです。私は貴方の役に立ち、此処に居場所を貰える。それで充分に御座います』」
ああ、この口を、この体を、我が身のみ省みるこの頭を、ぐちゃぐちゃにしてやりたい。
「それならいいわ。これからも、
「…」
私は、急いでその場を去った。
或いは傍から見ていれば、それは逃げる負け犬のようだったのかもしれない。
「私があの子を拾ってあげた」
紫が『貴方』を迷い家に連れ込んだ。
「あの子は
『貴方』は藍に恋をしていた。
里に下りた彼女に一目惚れをしていた。
「私は機会を与えたのよ」
『貴方』はもう充分だと言った。
会えただけで、話せただけで、充たされたのだと。
「もし、彼だけだったのなら、それまでだったのだけど」
『貴方』が彼女を想うように、
彼女はソレに、名前が付いていないけれど。
「それならそれで、使えばいいだけ」
紫は『貴方』を式にした。
生かすも殺すも、紫の自由だ。
「藍がソレを確かめるまで、彼を此処に居させてあげる」
紫から見て、藍はまだまだ未熟である。
故に必要だと思った。
誰かを想い、誰かを喪う、その情緒を理解することが。
「でも、もし藍が気付いたら、」
『貴方』はもう充分なのでしょう?
「さようなら」
それならもう、いいじゃない。
八雲藍が八雲たるための話。
八雲紫は妖である話。