五条が認めたもう一人の最強   作:ぐちロイド

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第9話 謝罪と健康診断

岐阜県、多治見市の山奥にひっそりと佇む巨大な廃寺。

そこが今回の任務地だが、道中の「事件」のせいで、空気は氷点下よりも冷え切っていた。

真希は一言も発さず、俺が錬成した長刀すら受け取ろうとしない。

 

 

連「(……マジでなんでだ? 寝不足で粗相でもしたか? 全然思い出せん……)」

 

 

だが、思考に耽る時間はなかった。

境内の奥、本堂の天井を突き破って現れたのは、悍ましい「黒い泥」を撒き散らす特級呪胎に近い準一級呪霊。しかも、周囲に立ち込めるのは「炎」そのものを喰らい、無効化する黒い呪霧だった。

 

 

連「『星焔の創世宮』――火炎放射(ステラ・ブレス)!」

 

 

俺が放った青白い炎が、呪霊に触れた瞬間に「シュン……」と立ち消える。

 

 

連「なっ……火が通らない!? 炎を燃料にしてやがるのか」

 

 

真希「――チッ。どけ、連! 役に立たねぇなら後ろにいろ!」

 

 

真希が私物の大刀で斬りかかるが、呪霊の泥に刃を捕られ、逆に巨大な触手が彼女の肩を貫こうと迫る。

 

 

連「真希!!」

 

 

身体が勝手に動いた。俺は真希を突き飛ばし、代わりにその鋭い触手を左肩に受けた。

 

 

真希「……!? アンタ、何して……!」

 

 

ドロリとした黒い泥が傷口から入り込み、俺の肉体を内側から腐食させ始める。

激痛。だが、それ以上に「守らなきゃならない」という5年間の研鑽が俺を突き動かした。

 

 

連「……悪い、真希。炎がダメなら、別のやり方でいく。……修行以来、実戦じゃ初めてだが」

 

 

俺は腐りかけた左肩に、意識を集中させる。

炎(正の熱量)を反転させ、癒やしと停滞を司る「正のエネルギー」を生成する。

 

 

連「――反転術式、出力全開」

 

 

傷口から立ち昇ったのは、青白い炎ではなく、月光のように静かな銀色の光。

腐食した肉が瞬時に再生し、傷口を突き抜けていた触手ごと、その「正のエネルギー」で呪霊を浄化し、凍結させていく。

 

 

連「反転術式:『月魄の静止宮(げっぱくのせいしきゅう)』――月影の鎖」

 

 

俺の左手から伸びた銀色の光が、炎を喰らっていた呪霊を縛り上げる。炎を糧とする者にとって、正のエネルギーを帯びた「負の熱量」は毒でしかない。

 

 

呪霊「ギ、ギギィィィィッ……!?」

 

 

連「凍れ。……真希、今だ! その氷の隙間を叩け!」

 

 

真希は一瞬、俺の見たこともない「銀色の術式」に目を奪われていたが、すぐに戦士の顔に戻った。

 

 

真希「……言われなくてもッ!」

 

 

凍りつき、脆くなった呪霊の核を、真希の一撃が粉砕した。

黒い霧が晴れ、静寂が戻る。

 

 

連「……ふぅ。何とかなったな。……ごめん、真希。火が効かない相手で、少し焦らせた」

 

 

俺が肩の再生を確認しながら謝ると、真希は大刀を収め、そっぽを向いたまま歩き出した。

 

 

真希「……反転術式まで使えるなんて聞いてねぇよ。……そんな傷、一瞬で治るなら、さっさと謝りに来い、バカ」

 

 

連「……え? 謝る? ……やっぱり俺、何かした!?」

 

 

真希の耳が少しだけ赤いのを見て、連は「反転術式でも治せない謎の緊張感」に包まれながら、彼女の後を追いかけた。

 

 

 

高専の敷地内、夕暮れの校庭。

車から降りた後も口を利かない真希に、連は意を決して話しかけた。

 

 

連「……真希。今日は本当に悪かった。俺が寝不足で注意散漫だったせいで、怪我までさせて……」

 

 

連は、またしても深く頭を下げた。

 

 

真希「……」

 

 

真希はため息をつくと、顔を背けたままポツリと呟いた。

 

 

真希「……まあ、いい。命懸けの任務だったし、アンタの『銀色の術式』のおかげで助かった。……今回の件、貸し五つで許してやる」

 

 

連「貸し五つ!? 結構な額だな……って、許してくれるのか! ありがとな!」

 

 

連がホッと胸を撫で下ろすと、今度は疑問が湧いてくる。

 

 

連「……あのさ。俺、本当に何をしたのか全然思い出せないんだ。なんでそんなに怒ってたんだ?」

 

 

真希は一瞬固まり、顔を赤らめる。そして、連を睨みつけるようにして、怒鳴った。

 

 

真希「てめぇ……! 私の膝の上で寝た挙句、胸を揉んだこと、覚えてねぇのかこの変態特級がぁぁぁ!!」

 

 

その言葉が、頭の中でエコーする。

 

 

膝枕。柔らかい感触。夢の中の「ルプスより柔らかい」という感想。

 

 

連「…………アベシッ」

 

 

 

全てを察した連は、血の気が引いてその場に崩れ落ちた。特級術師、完全敗北の瞬間だった。

 

 

 

【五条との密談】

 

 

 

その後、医務室で硝子に傷を見せた後、連は五条の元へ向かった。

 

 

五条「よお連くん。任務お疲れサマンサー! 真希から『貸し五つ』の話は聞いたよ。……僕の予想だけど、その五つじゃ済まない気がするな」

 

 

連「笑い事じゃないですよ……。それより、硝子先生から聞いたんですが、急遽、全生徒の健康診断があるって?」

 

 

五条「そうそう。上層部のジジイ共がね、『特級相当の転入生』の存在を嗅ぎつけちゃってさ。実力は誤魔化せないから、せめて『健康診断』という名目で、君のフィジカルデータを正式に取るってわけ。僕がうまく誘導したんだけどね」

 

 

連「俺の身体測定のために、全校生徒が巻き添えですか……」

 

 

五条「気にしない気にない。連くんの『星の炎』が、規格外だってことを証明するチャンスだよ。……ほら、もう始まってるみたい。2年の教室、向かってな」

 

 

 

【健康診断へ】

 

 

2年の教室に戻ると、真希たちが準備をしていた。真希はまだ少し頬を赤らめている。

 

 

真希「……チッ。行くぞ、連。パンダ、棘」

 

 

パンダ「おー。健康診断とか、俺生まれて初めてだぜ!」

 

 

棘「しゃけしゃけ」

 

 

連「ああ。……真希、改めて、ごめん」

 

 

真希「うるせぇ! 貸し五つ、絶対忘れるなよ!」

 

 

四人揃って廊下を歩く。向かう先は医務室。家入硝子が待つその場所で、連の「異世界の肉体データ」が、呪術界の公式記録として刻まれることになる。

 

 

連「(……特級術師の肉体測定。どんな結果が出るのやら)」

 

 

連は、真希からの容赦ない組手と、これからの任務で鍛え上げられた肉体を携え、騒がしい仲間たちと共に、運命の健康診断へと向かうのだった。

 

 

 

 

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