五条が認めたもう一人の最強   作:ぐちロイド

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第21話 最強の報酬と、重なる不運

あれから数日が経つ

 

五条「――というわけで連、君は今日から『特級』に推薦されることになったよ。おめでとう!」

 

 

高専の廊下で、五条が相変わらずのノリでとんでもない報告をしてきた。上層部が連の「星系崩壊」を危険視し、監視下に置くための強制的な昇級だ。

 

 

連「……面倒なことになりましたね。それ、実質『死ぬまで働け』って言われてるようなもんでしょ」

 

 

五条「正解! さすが僕の教え子。でね、お祝いに上層部の経費で最高級のパフェを食べに行こうと思って。連の奢りで」

 

 

連「……は? 逆でしょ。あんたが俺に奢れよ、最強の先生なんだから」

 

 

五条「えー、僕はお金持ってないよ。全部お土産代に消えちゃうからね」

 

 

連「嘘つけ! その時計一本で俺の学費一生分だろ!」 

 

 

結局、五条の「無限」を貫通する勢いで連がゴネ倒した結果、その晩は五条が銀座の超高級寿司を連、悠仁、伏黒、野薔薇、真希、パンダ、狗巻の全員分奢ることで手を打つことになった。

その翌日。昨夜の贅沢すぎる食事(と、五条の自慢話)の疲れが抜けぬまま、連は寮の廊下を歩いていた。

 

 

連「(……喉乾いたな。自販機行くか)」

 

 

寝ぼけ眼で角を曲がった、その時。

 

 

 

 

野薔薇「真希さん、昨日の寿司のせいで少し浮腫んだ気がしない?」

 

 

真希「気にするな、お前は元がいいだろ。ほら、背中のマッサージしてやるよ」

 

 

女子寮の共有スペース前。朝のトレーニングを終えたばかりの真希と野薔薇が、薄着のままでリラックスしていた。

運悪く、その場所は床のワックスが塗りたてで、しかも野薔薇がこぼしたスポーツドリンクで滑りやすくなっていた。

 

 

連「……あ」

 

 

真希「ん? 連、おま――」

 

 

真希が気づいた時には遅かった。

連の足が面白いほど綺麗に滑り、慣性が彼の体を二人の方へと加速させる。

 

 

連「ど、どけ――!」

 

 

野薔薇「きゃっ!?」

 

 

真希「うわっ!」

 

 

ドガシャァァン!! と派手な音を立てて三人は重なり合うように倒れ込んだ。

 

 

連「……っつぅ……。悪い、二人とも大丈夫――」

 

 

謝りながら顔を上げ、自分の手の位置を確認した連の思考が停止した。

右手の掌には、昨日よりもさらに柔らかく、温泉で磨かれた野薔薇の胸の感触。

そして左手は、トレーニングウェア越しでも分かる、真希の鍛え上げられたしなやかな太ももをガッシリと掴んでいた。

さらに最悪なことに、連の顔は真希の腹筋のあたりに埋もれている。

 

 

真希&野薔薇「………………」

 

 

静寂。

野薔薇の顔が急速に茹で上がったタコのように真っ赤になり、真希の眼鏡の奥の瞳が、特級呪霊を殺す時よりも冷たく、鋭く光った。

 

 

真希「……連。お前、昨日の寿司で『死刑執行』を一日延ばしてやったつもりだったんだがな」

 

 

真希の声が地を這う。

 

 

野薔薇「……ねえ連先輩?。あんた、私の『尊厳』、サブスク契約か何かしてるわけ?」

 

 

野薔薇が、背後に呪いのオーラを背負いながら微笑む。

 

 

連「……ち、違う。これには重力と摩擦係数による不可抗力が――」

 

 

真希&野薔薇「「問答無用!!」」

 

 

連「アベシッ!」

 

 

「星焔の創世宮」でも防げない、女子二人の物理的な怒りの合技が爆発した。

数分後、自販機の前でボロボロになって転がっている連を発見した伏黒は、「……自業自得だろ」とだけ言い残し、冷たいコーラを自分の分だけ買って去っていった。

連の特級呪術師としての初日は、全治一週間(自己再生込み)の重傷から幕を開けるのだった。

 

 

 

五条「……生きてる?」

 

 

カーテンをシャッと開けて入ってきたのは、苦笑いを浮かべた五条悟だった。

 

 

連「見ての通り、死にかけですよ。身体は反転術式で治せますけど、精神的なダメージは全回復には程遠い……」

 

 

五条「ははは! 真希たちの怒りは、ある意味宿儺の指より猛毒だからね。でも、残念なお知らせ。ゆっくり寝てる暇、なくなっちゃった」

 

 

五条が差し出したのは、蝋封された重々しい封筒。呪術界上層部からの「特級特定任務」の指令書だった。

 

 

連「……内容、見ました?」

 

 

五条「うん。君を高く評価(警戒)している老人たちが、君の『底』を見るために用意した特製メニューだ。単独での特級呪霊の連戦、および未登録の領域化が疑われる廃村の調査」

連は溜息をつきながら起き上がった。

 

 

連「あいつら、俺が死ぬか、あるいは呪力不足でボロを出すのを待ってるわけだ」

 

 

五条「そういうこと。でも、今の君ならお釣りが出るくらいの結果を出せるでしょ? ……あ、そうそう。野薔薇が『寿司だけじゃ足りない、退院祝いに新作のバッグ(昨日壊した服の代わり)』って言ってたよ」

 

 

連「……あいつ、本当に俺の財布を呪霊か何かだと思ってないか?」

 

 

 

数日後、連は一人、任務地である人里離れた山奥の廃村に立っていた。

上層部の狙い通り、そこには歪な呪力が満ちており、明らかに罠に近い気配が漂っている。

 

 

連「……さて。星焔を全開にするには、ちょうどいい場所か」

連が印を結ぼうとしたその時。影の中から、不気味な声が響いた。

 

 

?「――ほう。君が、悟が可愛がっている『もう一人の最強』か」

 

 

現れたのは、額に縫い目のある男。偽夏油だった。彼の背後には、先日消滅させたはずの花御に劣らぬ呪気を放つ、新たな特級呪霊たちの影がある。

 

 

連「上層部のジジイたちに情報を流したのは、あんたか」

 

 

夏油「察しがいいね。君の『星系崩壊』は、私の計画にとっても想定外の不純物だ。ここで、じっくりと観察させてもらうよ」

 

 

連「……観察料は高いぜ?」

 

 

連の周囲に、青白い星の炎が吹き上がる。

『星焔の創世宮』が展開され、夜でもないのに廃村の空に星々が瞬き始めた。

 

 

一方その頃、高専では。

 

 

野薔薇「……なんか、連先輩がいないと静かすぎて調子狂うわね」

 

 

真希「ああ。野薔薇、お前がアイツをパシリにしすぎるからだろ」

 

 

真希と野薔薇は、連に買い取らせる予定のカタログを眺めながら、不吉な予感に眉をひそめていた。

野薔薇「……あいつ、絶対無傷で帰ってきなさいよ。まだ、バッグの代金払ってないんだから」

 

 

野薔薇の呟きに呼応するかのように、遠く離れた山奥で、夜空を焦がすほどの蒼い流星が爆発的に輝いた。

連の「真の特級」としての戦い、そして彼を巡る呪術界の巨大な陰謀が、本格的に動き出そうとしていた。

 

 

 

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