五条が認めたもう一人の最強   作:ぐちロイド

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第22話 終焉の星、逃亡の影

連「……いい加減、その余裕な面を剥いでやるよ」

 

 

連の両眼に、銀河のような輝きが宿る。指を複雑に交差させ、内なる宇宙を外側に引きずり出す。

 

 

連「領域展開――『万象流転・無尽の星淵(ばんしょうるてん・むじんのせいえん)』」

 

 

一瞬にして、廃村の景色が消えた。

上下左右の概念すら曖昧な漆黒の宇宙空間。足元には渦巻く銀河、頭上には燃え盛る恒星と凍てつく惑星が混在する、終末の光景。

 

 

偽夏油「……ほう。これほど完成された空間を構築するとは。五条悟に並ぶという言葉、誇張ではなかったか」

 

 

偽夏油が感心したように呟くが、その体には既に領域の「必中効果」が牙を剥いていた。

 

 

偽夏油「『熱量収束』……っ、体温が奪われると同時に、内側が焼けるか。実に対照的で厄介な術式だ」

 

 

連「感心してる暇なんてないぜ。この領域内では、あんたの呪霊も、あんた自身も、俺の眷属の『依り代』だ」

 

 

連が指を弾くと、偽夏油が召喚していた巨大な呪霊の肉体が、ボコボコと不気味に隆起した。内側から「狼座の熾火」と「月狼」が強制的に生成され、その肉体を食い破って現れる。

 

 

偽夏油「ぐ……ッ!」

初めて偽夏油の顔に焦りが浮かぶ。連は間髪入れず、領域の中心に浮かぶ巨大な重力の塊に手をかざした。

 

 

連「これで終わりだ。……『天の川崩落・永劫の星龍(エターナル・スタードラゴン)』!!」

 

 

領域内の全エネルギーが一点に集約し、宇宙を飲み込むほどの巨大な星の炎龍が顕現した。龍がその顎を開き、重力崩壊を伴う極大のブレスを放とうとした、その時。

連の視界が、急激に暗転した。

 

連「……っ、がはっ……!?」

 

 

心臓が、握りつぶされたような激痛に襲われる。

 

 

連(……クソっ、反転術式で誤魔化してたけど、限界か……!)

 

 

特級との連戦、そして初めての完全な領域展開。連の肉体は、宇宙の質量を維持するための呪力消費に、ついに底を突いた。

パリン、と硝子が割れるような音と共に、壮大な星空の領域が霧散していく。

 

 

連「……あ、あ……」

 

 

連は膝をつき、激しく血を吐き出した。視界が揺れ、指一本動かすことができない。

 

 

偽夏油「……惜しかったね。あと一秒、維持できていれば、私のこの肉体は消滅していただろう」

 

 

土煙の向こう、服がボロボロになり、半身を凍傷と火傷で焼かれた偽夏油が、肩で息をしながら立っていた。彼もまた、連の領域によって致命的なダメージを負っている。

 

 

偽夏油「だが、このデータは収穫だった。連……君はやはり、獄門疆(ごくもんきょう)で封印すべき対象だ。今日はここまでにしておこう」

 

 

連「待て……逃げ、るな……!」

 

 

連が震える手を伸ばすが、偽夏油は影に沈むようにして、その場から消え去った。

静寂が戻った廃村。

連は一人、冷たくなった地面に横たわり、夜空を見上げた。本物の星空は、自分の領域よりもずっと遠く、静かだった。

 

 

連「……負け、たな。……あいつらに、なんて言えば……」

意識を失う直前、連の脳裏に浮かんだのは、怒った真希の顔と、「寿司奢りなさいよ!」と笑う野薔薇の姿だった。

翌朝、現場に駆けつけた五条悟が見たのは、地図から消えるほど破壊し尽くされた廃村の跡と、そこで力尽きながらも、どこか満足げに眠る弟子の姿だった。

 

 

廃村での死闘から数日。連は高専の医務室で、かつてないほどの虚脱感に包まれていました。特級呪霊を凌駕する力を見せつけながらも、あと一歩で「黒幕」を逃した悔しさが、彼の心に重くのしかかっていました。

 

 

真希「……目が覚めたか。この大馬鹿野郎」

 

 

聞き慣れた低い声に目を開けると、そこには腕組みをして椅子に座る真希がいた。隣では、野薔薇がリンゴをこれ以上ないほど不機嫌そうに剥いている。

 

 

連「真希……野薔薇……。俺、また医務室か」

 

 

野薔薇「当たり前でしょ! 呪力を使い果たして、肉体はオーバーヒート寸前。五条先生が連れて帰ってこなかったら、あんた今頃お星様になってたわよ!」

 

 

野薔薇は剥き終えたリンゴの切れ端を、無理やり連の口に押し込んだ。

 

 

連「……んぐっ。悪かったよ、二人とも」

 

 

真希「……逃がしたんだってな、額に縫い目のある男を」

 

 

真希の言葉に、連は沈痛な面持ちで頷いた。

 

 

連「ああ。領域まで出したのに、俺の出力が持たなかった。……『最強』なんて、まだ程遠いよ」

 

 

真希「当たり前だ。お前はまだ二年生だろ。一人で背負って勝てるほど、呪術の世界は甘くない」

 

 

真希は立ち上がり、連の頭を無造作に撫でた。

真希「次は私たちがいる。……次は逃がさねえぞ」

 

 

野薔薇「真希さんの言う通りよ。あんたが一人でカッコつけて死んだら、私のバッグの代金、誰が払うのよ。……だから、次は絶対、私たちが後ろにいてあげるわ」

 

 

野薔薇の不器用な励ましに、連の胸の奥に溜まっていた澱(おり)が、少しだけ軽くなった気がした。

その後、連が退院して最初に向かったのは、五条悟のいる学長室前だった。

 

 

連「五条さん。……特訓、お願いできますか。俺にはまだ、圧倒的に何かが足りない」

 

 

扉から出てきた五条は、目隠し越しでも分かるほど満足そうに口角を上げた。

 

 

五条「いい顔になったね、連。……敗北を知った最強は、もう誰にも止められないよ」

 

 

五条は連の肩を叩き、一枚の古い写真を差し出した。

「上層部は君を危険視して、次は『海外』の任務に飛ばそうとしてる。でも、それを逆手に取ろう。向こうには僕の知人がいる。そこで、君の『創世宮』を完成させる最後のピースを探してくるんだ」

 

 

連「……最後のピース?」

 

 

五条「今の君の領域は、まだ宇宙の一部でしかない。宇宙が膨張し続けるように、君の術式もまだ進化する余地がある。……今の君に足りないのは、『自分を愛するエゴ』だ」

 

 

五条の言葉の意味を考えながら、連は再び前を向いた。

偽夏油との再戦、そしていずれ訪れるであろう「渋谷」の惨劇。それを塗り替えるための、連の本当の修行がここから始まる。

 

 

連「(待ってろよ、縫い目の男。次は、俺の宇宙で跡形もなく消してやる)」

 

 

その日の晩、連は「景気づけだ!」という野薔薇と真希に連れ回され、退院早々クレジットカードの限度額を心配する羽目になった。

しかし、その騒がしい日常こそが、連が『星焔』を燃やし続ける、最大の理由だった。

 

 

 

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