渋谷の喧騒から切り離された地下空間。そこには、呪霊よりも醜悪な人間の業が渦巻いていました。
連が辿り着いた時、視界に入ったのは焼き焦げた肉の臭い。そして、横たわる二人の少女。
そこには、全身を焼かれながらも妹・真依の遺体を抱きしめる真希の姿がありました。真依の亡骸から溢れ出した呪力が真希へと溶け込み、彼女の「天与呪縛」が残酷な完成へと向かっていく――。
真希「……連。……遅かった、な……」
真希の瞳には、もはや絶望すら通り越した、底知れぬ「虚無」が宿っていました。
連「……あ。……あぁ……あぁぁ!!!」
連の喉から、獣のような嗚咽が漏れます。その背後で、真希を「出来損ない」と蔑み、実の娘を手にかけた男・禪院扇が、抜刀したまま冷酷に言い放ちました。
扇「五条悟のスペアか。騒がしいな。出来損ないの処分に部外者が口を挟むな。禪院家の完璧な秩序に、不純物は不要なのだよ」
その瞬間、連の中で「人間としての理」が完全に決壊しました。
連の周囲の空間が、ミシミシと悲鳴を上げながら歪み始めます。右目に「星焔」の蒼い業火、左目に「月魄」の銀色の殺意。
連「……秩序? 不純物? ……お前ら、まだそんな下らないものを守るために、真希を、真依を……!」
連の呪力が、かつてない密度で一点に収束していきます。領域という「閉じ込める空間」すら必要ない。ただ目の前の全てを、宇宙の終焉ごと消し去るための力。
真希「連、どけ。……こいつは、私が殺す」
立ち上がった真希。火傷の痕を残しながらも、その肉体からは「呪力」という概念が完全に消失し、代わりに「術師殺し」としての究極の物理的圧力が放たれていました。
連「真希……わかった。……でも、俺の怒りも、収まりがつかないんだ」
連は真希の横に並び、両手を広げました。周囲の瓦礫、鉄筋、そして大気さえもが連の術式の核(依り代)として取り込まれ、巨大な龍の形を成していきます。
連「極ノ番(ごくのばん)――『天の川崩落・永劫の星龍(エターナル・スタードラゴン)』!!」
連の全呪力を注ぎ込まれた、岩石と炎の超巨大な龍が顕現しました。それはもはや術式の範疇を超えた、移動する「災害」そのもの。
扇「なっ……!? 極ノ番だと!? 莫大な呪力量……正気か、この規模を一人で!!」
扇が恐怖に顔を歪め、迎撃の構えをとります。しかし、連の瞳に慈悲はありません。
連「――消えろ。一欠片も残さず」
連が指を指し示すと同時に、永劫の星龍が咆哮し、その顎から重力崩壊を伴う極大のブレスを放ちました。
それは「焼く」のではなく、存在そのものを「分子レベルで解体し、無に帰す」光。
扇「アガッ……ガ、アアアアア!!」
扇の叫びは、星の炎に飲み込まれ、一瞬で掻き消されました。彼が守ろうとした禪院家の誇りも、その醜い命も、連が放った「宇宙の終焉」の前では、ただの塵に過ぎませんでした。
星龍のブレスが通り過ぎた後には、扇の姿はおろか、地下施設の大半が円柱状に消滅した空洞だけが残されていました。
連「……終わったぞ、真希」
連は術式を解き、血を吐きながら膝をつきました。術式の過負荷で、自身の腕も炭化しかけています。
真希は、真依が最期に遺した刀を握り締め、震える声で呟きました。
真希「……ありがとう、連。……でも、まだだ。……全部、壊さなきゃいけないんだ」
真希の頬を伝う一筋の涙。連はそれを拭うこともできず、ただ完成してしまった「最強の怪物」の隣で、降りしきる灰の中に立ち尽くしました。
最強を継ぐはずだった二人が、その力と引き換えに失ったものの重さに、渋谷の夜はどこまでも深く、暗く沈んでいきました。
連「真希……動くな。今、治すから……」
連の指先から、冷たくも柔らかな銀色の光が溢れ出します。
反転術式:月魄(げっぱく)――『銀鷹(アクィラ)の慈光』。
真希「いい、連……。私はもう、痛みなんて……」
連「いいわけないだろ!」
連は声を荒らげ、真希の肩を強く掴みました。真依を失い、復讐の鬼と化そうとしている彼女を、せめて「人間」として繋ぎ止めておきたかった。
真希「……っ、あ……」
真希の全身を覆っていた凄惨な火傷が、連の放つ正のエネルギーによって急速に再生していきます。炭化した皮膚が剥がれ落ち、新しい肌が芽吹く。だが、連の顔色は紙のように白く、鼻からは絶え間なく血が滴っていました。
真希「連、もうやめろ。お前の脳が焼き切れる……!」
連「黙ってろ。……俺から、これ以上『仲間』を奪わせないでくれ」
数分後、真希の体から傷跡が消えました。しかし、天与呪縛によって完成した彼女の肉体は、以前よりもどこか冷たく、硬質な輝きを放っています。
連は荒い呼吸を整えながら、真希の正面に座り込みました。
連「真希。……真依のことは、俺も、取り返しがつかないことをしたと思ってる。俺がもっと早く来ていれば……」
真希「……やめろ。あいつが選んだことだ。私が……私が弱かったから、あいつは……」
真希は真依の形見である刀を抱きしめ、視線を落としました。
真希「連。私はこれから、全部壊しに行く。私を否定し、真依を殺した、あの腐った禪院家を……全部だ。お前は、止めに来たのか?」
連「止めるわけないだろ」
連は真希の目を真っ直ぐに見つめました。
連「俺も一緒に行く。……五条さんがいなくなって、野薔薇がああなって……俺はもう、『正義の味方』でいるつもりはない。俺の宇宙は、俺の大事なものを傷つける奴らを、一欠片も許さない」
連は真希の手を、血に汚れたままの手で握りしめました。
連「お前が『鬼』になるなら、俺は『魔王』にでもなってやる。だから、一人で行こうとするな。俺たちは二人で、最強なんだろ?」
真希「…………。お前、本当に馬鹿だな」
真希の瞳に、ほんの一瞬だけ、かつての彼女らしい光が戻りました。
真希「……最強のパシリだな、お前は」
連「ああ。パリで買ったバッグを渡すまでは、死なせないし、一人にもさせない」
降りしきる灰と雪の中、二人は立ち上がりました。
一人は呪力を捨て去った「術師殺し」。一人は神の如き宇宙を操る「星の主」。
絶望の淵で手を結んだ二人の最強が、呪術界の腐敗を焼き尽くすための進撃を開始しました。
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