2年生の教室に着くと五条が「ガラッ!」と勢いよく教室のドアを開ける。
五条「はーい、注目! 海外任務と修行で長らく不在だった、もう一人の二年生が今日から合流だよ!」
教室内には、独特の弛緩した、しかし鋭い空気が流れていた。
教壇に立つ五条の横に、俺は一歩踏み出す。
真希「あ?……誰だ、そのスカしたツラは」
最初に口を開いたのは、長い黒髪を一つに結び、鋭い眼光を向けてくる禪院真希だった。その手には大刀が握られている。
パンダ「おいおい、海外の分校にいたって例の奴か? 意外と普通っぽいな」
棘「しゃけ」
パンダと、口元を隠した狗巻棘がこちらを観察するように見つめてくる。
五条「紹介するよ、暁連くんだ。彼、5年間も向こうの山に籠もって修行してたっていうストイック野郎でね。実力は……まあ、僕の次くらいに強いかな!」
真希「チッ、相変わらず胡散臭いな。おい、連。修行してたってんなら、今すぐその実力を見せろ。乙骨がいなくなって退屈してたんだ」
真希が迷いなく大刀の切っ先を俺に向けてくる。
連「……構わないが、ここは少し狭い。それに、その刀じゃ俺の眷属(ペット)には傷一つつけられないぞ」
真希「あぁ? 言ってくれるじゃねぇか」
真希の呪力――いや、圧倒的な身体能力からくる威圧感が膨れ上がる。俺は軽く指を鳴らした。
連「『星焔の創世宮』――狼座(ルプス)」
ポケットに居れてある小石を1つ床に投げると床の影から、小石を依代に青白い炎を揺らめかせた岩石の狼が、低い唸り声を上げながら現れる。教室の温度が数度上がり、ピリついた熱気が空気を支配した。
パンダ「ほう、自律型の術式か? 呪骸とはまた違う、随分と密度の高い呪力だな」
棘「おかか!」(※警戒の合図)
真希「……面白ぇ。その岩、叩き割ってやるよ」
真希が踏み込もうとした瞬間、俺はさらに術式を重ねた。掌に青白い炎を収束させ、一振りの「炎の大太刀」を錬成し、真希の足元に投げつける。
連「真希、それはあんたへの挨拶代わりだ。手に取ってみろ」
大太刀が床に突き刺さると同時に、真希がそれを掴む。その瞬間、彼女の目が見開かれた。
真希「……!? 熱くない……どころか、私の動きに合わせて重心が変化してやがる」
連「それは俺の術式で作った『星焔の武具』だ。あんたの身体能力を100%引き出せるように調整してある。……五条から聞いてるよ、あんたが呪具使いだってことは」
五条「あはは、さっそくプレゼント? 気が利くねぇ」
俺は狼を消し、3人に向き直る。
連「暁連だ。階級は1級だが、この代の連中を死なせないために帰ってきた。……よろしくな」
真希は手の中の小刀を軽く振り、不敵な笑みを浮かべた。
真希「気に入った。特級並みの実力があるって噂、嘘じゃなさそうだな。……放課後、グラウンドに来い。その修行の成果、全部吐き出させてやる」
パンダ「ハハハ! 歓迎されてるな、連。よろしく。これ、お近づきの印のグミだ」
棘「つな、まよ」
乙骨がいなくなった寂しさを埋めるどころか、それを焼き尽くすような新しい風が、二年生の教室に吹き込んだ瞬間だった。
課後。夜蛾学長から許可(という名の、五条による「適当な」根回し)を得た俺たちは、第二体育館にいた。
真希「……教室じゃ随分と余裕だったな。ここなら遠慮はいらねぇだろ?」
真希は、俺が錬成した「炎の小刀」と私物の大刀、その二刀を構えて不敵に笑う。対する俺は、武器を持たず自然体で立つ。
連「ああ。……『星焔の創世宮』、出力を一段階上げる」
俺が指を鳴らすと、体育館の空気が一変した。
背後に浮かぶ四つの紋章から、青白い炎を纏った二頭の「狼座(ルプス)」が音もなく這い出す。
真希「……ハッ、最高だ!」
真希が床を蹴る。先ほど以上の速度。
彼女は大刀で一頭の狼を牽制し、その隙を突いて「炎の小刀」を俺の喉元へ突き出す。
連「『星の盾(ステラ・バックラー)』――二重展開」
俺は両手に最小限の炎の盾を発生させ、真希の二刀を同時に受け流す。金属が軋むような音が響くが、足元は一歩も退かない。
連「いい速度だ。だが、二手先が甘い」
俺の影から、炎の鎖「縛鎖(ばくさ)」が数本、蛇のように伸びて真希の四肢を狙う。
真希「そいつは厄介だな!」
真希は空中で体を捻り、鎖を足場にするかのように飛び越えた。そのまま俺の頭上から大刀を振り下ろすが、俺は回避せず右手を掲げた。
連「『虎座(ティグリス)』――剛腕」
俺の右腕に、巨大な岩石の虎の腕が重なるように具現化する。
ドゴォォォォン!!
真希の大刀と虎の剛腕が正面から衝突し、体育館の床が衝撃でひび割れる。
真希「(……なんて硬さだ。まともに打ち合えばこっちの武器が保たねぇ……!)」
真希は即座に後退し、距離を取る。しかし、そこには既に俺が放った「鷹座(アクィラ)」が上空から急降下していた。
連「追撃だ、アクィラ」
鷹から放たれる炎の羽(投剣)が、雨のように真希へ降り注ぐ。真希は炎の小刀を振るい、必死にそれを叩き落とすが、その隙を逃さず俺は肉薄した。
連「これでおしまいだ。――『星焔の創世宮:一対(ペア)』」
俺の手の中に、真希が持つ小刀と対になる「炎の大剣」を錬成する。
圧倒的な熱量と質量を伴った一撃。真希は反射的に大刀で防ぐが、その強大な圧力に膝が沈む。
真希「……っ……、あ……!!」
連「……そこまでだ」
剣を消すと同時に、守護獣たちも影へと消えていった。
体育館に残ったのは、焦げた匂いと、激しい息を吐きながら床に座り込む真希の姿だった。
真希「……ハッ、ハハハ……完敗だよ。手も足も出ねぇ……」
連「いや。最後の大刀の返し、あれが呪具じゃなく『魂を斬る刃』だったら、俺の腕は飛んでた。……あんたはもっと強くなる。そのために、俺がここにいるんだ」
俺は真希に手を差し伸べる。
真希はその手を取り、立ち上がると、不敵に口角を上げた。
真希「お世辞はいい。……でも決めたよ。連、アンタが卒業するまでに、そのツラに一太刀入れてやる」
パンダ「おーい、終わったか? 掃除用のモップ持ってきたぞー!」
棘「ツナマヨ!」
入り口で見守っていたパンダと棘が駆け寄る。
特級の実力を肌で感じた真希の瞳には、かつてないほど強い「向上心」の炎が宿っていた。
連「(……ああ。誰も死なせない未来は、ここから始まるんだ)」
俺は夕日に染まる体育館を見渡し、改めてこの世界に立つ覚悟を噛み締めた。
次にやって欲しい作品は?
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暗殺教室
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ワンピース
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僕のヒーローアカデミア
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ハイスクールD×D
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