五条が認めたもう一人の最強   作:ぐちロイド

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第6話 仲間との休日

ある晴れた土曜日。2年生の教室には、いつになく弛緩した空気が流れていた。

 

 

真希「おい連、今日は任務もねぇ。……原宿行くぞ」

 

 

連「はらじゅく? ……あの一日の利用客数が呪いの数より多いっていう、あの魔境か?」

 

 

パンダ「ハハハ! 5年も山にいたからな、連は。いいか、原宿はクレープを食って服を見る、呪術師にとっての精神修養の場なんだよ」

 

 

棘「しゃけ、いくら」

 

 

というわけで、俺たちは私服に着替え(俺は真希に選ばれた、少し気恥ずかしいレザージャケットを着せられた)、竹下通りへと繰り出した。

 

 

 

人混みの中、堂々と歩くパンダ。

 

 

連「……おいパンダ。お前、せめてその『I ♡ 上野』って書かれたTシャツ脱げ。逆に目立ってるぞ」

 

 

パンダ「気にするな、連。都会の人間は他人に興味がない。俺のことは『クオリティの低い着ぐるみの中の人』だと思ってるさ」

 

 

案の定、女子高生たちが「あのパンダ、キモかわ〜!」と写真を撮っていく。連は咄嗟に「星の盾(ステラ・バックラー)」を不可視の出力で展開し、パンダに触れようとするマナーの悪い奴を優しく弾き飛ばす「護衛」に回る羽目になった。

 

 

棘が立ち止まったのは、お洒落な進化系おにぎり専門店。

 

 

棘「すじこ! こんぶ!」

 

 

連「……棘、それは『トリュフ香るクリームチーズ握り』だ。お前の語彙にはないぞ」

 

 

それでも嬉しそうに食べる棘を見て、連は「反転術式」を喉に回し、彼が安心して食事を楽しめるようケアを欠かさない。

 

 

 

真希「おい連、これ。あとこれもだ」

 

 

連「……真希。俺は特級術師であって、ショッピングカートじゃないんだが」

 

 

真希が次々と選ぶ服やアクセサリーの紙袋が、連の両腕を埋めていく。

 

 

連「(……仕方ない。これを使うか)」

 

 

連は人混みに紛れ、影から小さな「狼座(ルプス)」を数頭召喚した。

 

 

連「(ルプス、その紙袋を咥えて影の中を走れ。俺の腕を空けろ)」

 

 

影の中を並走する狼たち。傍から見れば連は手ぶらだが、影の中には特急呪具級の管理で守られたブランド品がぎっしり詰まっている。星の守護獣の、あまりにも贅沢な無駄遣いだった。

 

 

一通り買い物を終え、代々木公園のベンチでクレープを囲む。

 

 

真希「……悪くねぇな。たまにはこういうのも」

 

 

連「そうか。俺は修行空間で5年間、霞(かすみ)を食うような生活だったからな。……この『苺チョコ生クリーム』、正直、領域展開より衝撃的だ」

 

 

パンダ「大げさだなあ。……でも、連が来てから、この代は明るくなった気がするぜ。乙骨もいねーしな」

 

 

棘「しゃけ」

 

 

夕日に照らされた仲間たちの顔を見て、連は改めて思う。

5年間の孤独な修行は、この瞬間のためにあったのだと。

 

 

連「……そうだな。……次は伏黒や、これから来る1年生たちも連れてきてやるか」

 

 

真希「ハッ、あいつらが来たら、アンタの狼、パンクするぞ」

笑い声が夕暮れの公園に溶けていく。

 

 

明日からはまた呪いとの戦いが始まるが、今日だけは「星」も「影」も、ただの高校生として穏やかな光を放っていた。

 

 

 

原宿の喧騒を離れ、連が案内したのは、都内でも評判の老舗ステーキハウスだった。

 

 

真希「……おい。ここ、結構な値段するだろ。特級は給料いいのか?」

 

 

連「ああ。修行明けの初任務以降、五条先生が『連くんの口座に色をつけておいたよ』って言ってたからな。……今日は俺の奢りだ。好きなだけ食え」

 

 

パンダ「マジか! 連、お前はパンダにとっての神だ! すみませーん、450グラム追加で!」

 

 

棘「いくら! めんたいこ!」(※テンションMAX)

 

 

運ばれてきたのは、厚さ数センチはあろうかという極厚のサーロイン。鉄板の上で弾ける脂の音。立ち上る香ばしい煙。連は思わず、その圧倒的な「物質感」に圧倒される。

 

 

連「(……修行中の食事は、ナリアが用意した『栄養の塊』みたいな味気ないものだったからな。……これが、現世の熱か)」

 

 

真希「おい、連。感動してないでさっさと食え。冷めるぞ」

 

 

真希が豪快に肉を切り分け、口に運ぶ。連も一口食べると、溢れ出す肉汁に目を細めた。

 

 

術式で出す炎とは違う、人を笑顔にするための熱。連は改めて、この世界を守る意義を噛み締めていた。

 

 

銭湯:男たちの語らい、女子の休息

食後、パンダの強い要望で一行は銭湯へと向かった。

「広い風呂で足を伸ばすのが、呪術師の嗜みだ」とのことらしい。

 

 

【男湯】

 

 

パンダ、棘、そして連の三人が、立ち上る湯気に包まれていた。

パンダ「ふぅ〜……。染みるなぁ。……ところで連。お前、服の上からじゃ分からなかったが、えげつない体してんな」

連の体には、5年間の修行で刻まれた無数の古傷と、無駄のない筋肉が張り付いている。

 

 

連「……そうか? 向こうじゃ、常に眷属たちの攻撃を避け続けなきゃいけなかったからな。休む暇なんて、一秒もなかった」

 

 

棘「……(心配そうに連の肩の傷に触れる)」

 

 

連「大丈夫だ、棘。この傷の一つ一つが、俺が生き残った証だ。……お前たちを守るための、な」

 

 

パンダ「ハハハ。重いなぁ。だが、その自信がなきゃ特級は名乗れねーか。……おい棘、連に追い焚き機能の術式を頼むなよ」

 

 

棘「しゃけ」

 

 

 

【女湯】

 

 

一方、壁を隔てた隣では、真希が一人、広い湯船に身を委ねていた。

ふと、隣から聞こえてくる野郎どもの騒がしい笑い声。

 

 

真希「(……アイツ、あんな傷だらけの体で、よくあんな涼しい顔してられるな)」

 

 

真希は、連が自分に貸してくれる武器の「優しさ」を思い出していた。ただ強いだけでなく、使う者の癖を読み、負担を減らそうとする繊細な術式操作。あの傷だらけの5年間で、彼はどれほど他人を想う力を磨いたのか。

 

 

真希「……ハーゲンダッツ、もう一箱追加させてやろうか」

 

 

少しだけ赤くなった顔を、真希は熱いお湯に潜らせて隠した。

 

 

 

帰り道

 

 

 

湯冷めしないよう、連がさりげなく「反転術式」を全員の足元に回し、温かな風を纏わせながら高専への坂道を登る。

 

 

パンダ「いい休日だった。連、ごちそうさま!」

 

 

棘「しゃけ、おかか」

 

 

連「ああ。……また行こう。次は1年生も全員揃った時にな」

 

 

連の隣を歩く真希が、ポツリと呟く。

 

 

真希「……悪くなかった。……連、また明日から組手、付き合えよ。次は負けねぇ」

 

 

連「……ああ。望むところだ」

 

 

星が瞬く夜空の下。

転生者としての重荷を少しだけ下ろした連の横顔は、本物の高校生のように、穏やかに綻んでいた。

 

 

 

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