空を舞う海賊   作:槇塚 憂淋

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どうでもいいお話です
あまり期待せずに読んでください


悪魔の実の能力と巨大貝の真珠

 ウェンディはイッカクを仲間に加えてからといって普段と何ら変わりのない生活を送っている。朝は走り込み、畑仕事。朝食を食べてからはイッカクの漁師の手伝い。昼飯を挟んで近隣の村へ物資の売買、それが終わるとウェンディは夕飯まで能力の向上に努める。

 

「くぅ…、おっも…」

 

 ウェンディは自身の船を海上から持ち上げる。海面より高く持ち上げられれば成功だ。血管が切れそうなほど額に青筋を立てて歯をくいしばる。表情は非常に険しい。

 

「浮いたぞ」

 

 西日に差し掛かる海で視界が良好とは言えないため、イッカクに修行を海から見てもらっていた。ウェンディはゆっくりと船を下ろす。自分たちで作った船を手荒な真似で寿命を縮めたくはないからだ。もっとも理想のアダムの樹を使ってできたわけではない船ではあるが、すでにウェンディには愛着が生まれていた。

 

「浮遊はもういいのか?」

「ああ、1日1回、そのノルマさえ、達成できれば、それでいい」

 

 ウェンディは落ち着かない呼吸でイッカクに答える。汗だくになりつつも船を持ち上げることができたのだ。ウェンディは呼吸を整えると次の修行に移る。浮遊でテイク14の練習だったにもかかわらず、休憩挟まずに空間固定の修行に入る。イッカクはまた何度も失敗するウェンディの姿を思い浮かべる。生き急いでいるようで生き急いでいない。イッカクは歯がゆい感情を胸の奥にしまい込みながら、まだウェンディのやりたいようにやらせることにした。

 

「あ…」

 

 ウェンディは力を込めるが、空間を固定できず、海に入るための空気の玉を作ることができない。

 

「…はああ!!」

 

 それにもかかわらず、ウェンディは再度能力を行使する。ウェンディの能力は空間を掌握し固定を開始するが、空気が集まってこない。空間が拡散しているのがわかるのだ。ウェンディは空気を固定しようと力を込め続ける。

 

「くそっ!」

「こら、汚い言葉を使うんでない!」

「っ!」

 

 イッカクの教育という邪魔が入り、ウェンディの能力に乱れが生じる。またしても固定していた空気が逃げ出してしまい。圧縮された空気の作成に失敗する。圧縮した空気を生み出すための空間固定の連続重ねがけは普段のウェンディであればいともたやすく行うことができる。しかし、今、ウェンディは疲労困憊状態での空間固定は非常に不安定である。もっとも、不安定な状態で鍛えなければ能力の向上はもってのほかとウェンディは考える。

 

「………っ……」

 

 集中して重ねがけができるようにとウェンディは空間固定を行うが、重ねがけに失敗する。

 

「その辺でいいじゃろ。もう五時を回った」

 

 イッカクの静止でウェンディは体を休める。極限状態での能力使用がまったく成果を上げていない。ウェンディは何がいけないのかを考える。何を成せば次の段階へ進めるのかと考える。

 いつも通り反省のために自分の世界に引きこもるウェンディを見守りながらイッカクは今日の漁での収穫を晩ご飯とした。

 

 

 

 毎日を修行と生活に明け暮れる生活はまさに灰色な世界である。変わらぬ日常に少しずつストレスを抱えていたウェンディを心配して、イッカクはウェンディの気をひきそうなものを探していた。森の中、鉱山、そして海をも捜索した。

 大陸棚から降りて深海を彷徨うイッカクの目の前に巨大な魚類が出現する。

 

「すまんな、どっかへ行っておれ!」

 

 海流を発生させてその魚類を遠くへと運ぶ。イッカクはさらに探索を進めていくと、魚人島ではあまり見なかった生物などを次々と発見していき、心を躍らせた。目的のすり変わりが起きているが、イッカクはウェンディも喜ぶだろうと、深海のグロテスクな生物を持ってきた。

 

「誰が食うか!」

「食物を粗末にするでない!」

 

 イッカクは決して食べようとしないウェンディの説得を諦めて一口食べる。とてもまずいらしく吐き出した。イッカクはこそこそとその深海生物の姿焼きを処分する。ウェンディはもちろん見ていたが、それを咎めることはしなかった。

 

「イッカク、それよりもだ。明日はちゃんと私の修行に付き合え!船長命令だ!」

「あいよ」

 

 心なしかイッカクの声に覇気がなかった。

 明くる日。

 イッカクが起きる頃にはウェンディの鍛錬が終わり、朝食を用意している彼女の姿が目に写る。とても6歳の少女とは思えない。イッカクは毎日感じるウェンディの違和感を無視する。ウェンディはウェンディである。イッカクはウェンディを詮索することはしない。思考を別のことに移すために考えることは昨日の件だ。ウェンディの興味を引く何かを見つけたい。

 イッカクは本日の漁を早めに切り上げて海底へと散歩をすることにした。ウェンディはその間、鉱山で能力を用いた鉱石集めを行う。イッカクはただ1人暗闇の深海世界を歩き回る。そして海底へと到着するほど深く潜ったイッカクの目の前にはとても巨大な二枚貝が存在していた。

 巨大だ。

 イッカク以上の大きさの貝を目にしてその形状からシャコ貝の一種と判断する。ただのシャコ貝とは大きさが違いすぎ、大きいもので10mを軽く超越するシャコ貝もある。イッカクはそのシャコ貝を運ぼうとするが、とても嵩張り、一つしか運べない。見つけた中で一番大きいものを運び出すことにしたイッカクは来た時間以上の時間をかけて自分の家に帰る。

 

「ふぅ、疲れたわい…」

 

 家からはとてもいい匂いが漂ってくる。サザエを焼いている匂いとイッカクは判別して家に入る。案の定ウェンディが昼食の支度をしていた。ウェンディに見て欲しいものがあると昨日と同じ手口でウェンディの気を引こうとするイッカクに疑いの視線を投げかけるウェンディだが、結局はイッカクの言葉に従うことにした。

 家の外には家の高さ以上の大きさを誇るシャコ貝がウェンディを迎えた。

 

「なにこれ?」

「シャコ貝だ!」

「シャコ貝ねえ…」

 

 この貝の処理をどうしたものかと呆れながら思考していたウェンディは能力に引っかかりを覚えることになる。空間を把握するソラソラの実の能力のデフォルト能力が一部の場所で機能しないことを察していた。それはシャコ貝の中にある。ウェンディは気になってシャコ貝の中を覗く。そこには巨大な真珠が存在していた。悪魔の実の能力を無効化する真珠。ウェンディは聞いたことがなかった。

 かくしてイッカクの企みは成功を告げる。ウェンディはこのシャコ貝に興味を持った。もっとも興味があるのシャコ貝の中にある真珠であり、シャコ貝には毛ほどの興味も示さない。ウェンディはさっそくシャコ貝から真珠を取り出す。

 黄金色に輝く真珠というのも知識にはない。金でも含んで着るように思えるが、実際は含んでいない。とはいえウェンディたちの知ることではない。ウェンディはさっそく実験を開始した。真珠に対して浮遊の能力を行使するが、真珠は飛行しない。それどころかウェンディは能力を奪われるような錯覚に陥ることになる。

 

「なんだこれ」

「浮かせられないのか」

「ああ、まるで能力を吸収しているみたいだ」

 

 どんなものかわからないものに、ウェンディは興味津々に近づく。そして手を触れると一気に力が抜けていく。

 

「うわっ!?」

 

 ウェンディは力を奪われる感覚と真珠が金色に光った二つの要因で驚きの声を上げる。イッカクには真珠が光りだしたことだけが認知され、イッカクもまた真珠に興味を示す。

 

「なんじゃろうな」

 

 顎に手を当てて考えるイッカクだが、ウェンディの中ではこれに似た状態を海楼石という存在を知っていた。端的に言ってしまえば海の力を持つ石。しかし、石とは違い真珠である。海楼石の作られ方は不明だが、もしかしたらこの真珠が海楼石に埋め込まれているのかもしれない。はたまた海楼石を体内に取り込んだシャコ貝が真珠に海楼石の成分が入り込んだのかもしれない。憶測はいくつも立てているが、ウェンディはまだ試したいことがいくつかあった。

 

「イッカク、離れてろ」

「何をするんじゃ?」

「能力をぶつける」

 

 疲労困憊でもないウェンディはすぐさま空間固定を連続して同空間で行い圧縮された空気を作り出した。締めに解放と固定をして終了だ。時間にして6秒、圧縮された空気の塊を真珠に向かって解き放った。

 大地が割れ

 海が弾けた

 海まで弾かれた真珠だが、本体のシャコ貝は見るも無残な姿に変わり果てている。対して真珠は無傷だった。ウェンディは浮遊で真珠を拾おうとするが、能力が吸収されていく。

 

「イッカク…」

「はあ…しょうがないのう」

 

 娘のようなウェンディに頼まれてしまえばイッカクは断れない。真珠を拾ってきてもらうとウェンディは今度は真珠を巻き込みながら空間固定を開始する。何度も何度もウェンディは真珠に能力をぶつけていた。そして最後には直接手で触れることにした。

 

「ところで先ほど真珠が光ったのは何故じゃ?」

「手で触れれば真珠は光るだろう。でも、私の体の中から力が一気に抜けたんだ」

「そんな効果があったとはのう」

「やってみる価値はある」

「あまり推奨はできんぞ」

「それでもだよ」

 

 ウェンディは真珠に手を伸ばした。

 真珠に力を奪われる感覚がしてなおウェンディは真珠から手を離さない。光は直視するには強すぎる光を放っていた。

 

「くぅ…」

「目を開けられん…」

 

 およそ3分。

 真珠から光が収まった。

 ウェンディは肩で息をしながら真珠を眺めていた。

 

「はあ…はあ…ぅ…はあ、っすー…はー」

 

 呼吸を整えたウェンディは真珠を見やる。真珠は光り輝いていた。力を加えたときほどの強烈な光ではないにしろ素晴らしいほどに光り輝いている。

 

「…なるほど」

「何かわかったんか?」

「これは悪魔の実の能力の保存ができるみたいだ」

「ほう?」

 

 ウェンディが真珠の特性に気がつくのは早かった。普段から空間感覚というソラソラの実の能力者に備わる新しい感覚に作用する人物が自分以外に存在しているからだ。その根源がシャコ貝の真珠である。悪魔の実の能力を保存する力。これは戦力になる。ウェンディがそう考察するが、次なる問題はこの真珠の制御方法であった。

 

「まだ何か問題でもあるんか?」

「どうすればこの真珠から能力を取り出せるのかってこと」

「ふむ…まあ、なんじゃ力でも吸収してみ」

「…どうやって?」

「それは何かあるじゃろ、何か」

 

 イッカクが適当なことを言うが、ウェンディは力を取り出すには何か作用させるものが必要、自分の力との共鳴、考えるだけ考えても答えはどうせ出てきはしない。

 

「ものは試し、当たって砕けろってことでしょ」

 

 ウェンディは真珠に能力をぶつけてみる。

 浮遊した。

 

「おい、浮いとるぞ?」

「…吸収限界を超えたってことかな。まあ、力の取り出し方がわからないんだけどね」

 

 ウェンディは次に真珠をとって地面に叩きつける。

 

「おりゃあああ!!!」

 

 地面が大きく陥没するが真珠は無傷である。

 

「むむむ…」

「考えておるようで、あんまり考えておらんじゃろ」

「うぐっ」

 

 イッカクの指摘を受けてウェンディは口を紡ぐ。

 

「ウェンディよ、お主はどうやって悪魔の実の能力を使っておる?それと同じようにすりゃ真珠から力を取り出せるんじゃないかのう?」

「うーん…、私は感覚的に力を使っているからな。どうにもならん。自分の体ではないし、この真珠をどうすればいいのやら…」

 

 ウェンディは能力の行使、真珠の能力の行使を考えていると一つのアイデアが浮かんできた。

 

「この真珠を操縦する何かがあればいい。それが私でなくても、何かしらの装置か」

「装置か。はて、どういったものじゃろうか?」

「そうしてウェンディは頭を抱えたのであった」

「これ、現実逃避するんでない」

「何もアイデアが思い浮かばないのだから仕方ないだろ」

「それを考えなければ、いつまでたってもこれを使えんぞ」

 

 あきやすい。この年頃の少女にしては持った方かもしれないが、イッカクにしてみればウェンディは特別な少女、この程度で年相応な行動をとるとは思えなかった。ウェンディもまた口では愚痴を放っているが、まだ解決の糸口を頭の中で探していた。毎日変わらない日常にもたらされたイッカクからのスパイスはウェンディの興味をちゃんと引いていた。

 結局その日は真珠に力をチャージするだけで終了してしまう。

 

 

 

 次の日。

 ウェンディは日課を済ませて真珠のことをどうしたものかと試行しながら魚のスープを作っていた。早起きすぎるウェンディにとって寝坊助なイッカクが匂いにつられて起き上がる。

 

「早いのう」

「おはよう。すぐできるぞ」

 

 朝食を済ませたウェンディはいつものように午前の日課に入る。イッカクの漁の手伝いだ。ウェンディはここで真珠に対する行動で基本的なことをしていないことを思い出した。

 

「そうだ。チャージ完了してから海につけてない」

「うん?どうしたんじゃ?」

「いや、なんでもない」

 

 今は自分の能力の練習を兼用している漁の仕事をするべきだと考えて、空気を纏い、海に飛び込んだ。魚を空気を使ってとらえていき、力の練習がてら自由に泳ぎ回る。ウェンディの動きは泳ぐというよりは飛んでいるという方が正しい。収穫を終えたウェンディは昼食をイッカクに任せて海岸に真珠を持っていく。ひとすくい海水を救って真珠にかけた。

 爆発が起きた。

 

「何事じゃ!?ウェンディ!!ウェンディ!!」

「私は大丈夫だ」

 

 間一髪で空間固定を行ったウェンディは真珠の爆発的暴風の直撃は避けられた。しかし、今度は真珠本体が爆風の影響で海に飛ばされた。まだ真珠は光り輝いている。心なしか光は少しだけ弱まって見えた。

 もしも真珠の力の解放が海だとしたら

 もしも真珠の力の上限が光量で決まっていたら

 もしも今飛んでいる真珠が海に落ちたら

 ウェンディは最悪の事態を瞬時に想像して、今の真珠の位置に力が及ぶまでの時間が残されていないこともはっきりと判断できた。後手に回っても被害は抑える。ウェンディは集中した。海を大きく能力の範囲に入れる。

 真珠は着水するとともに内部に蓄えられていた能力が暴走する。それは爆発を生みだして、巨大な津波を作った。このままではコノミ諸島全域を津波が襲ってしまう。ウェンディはそれの解答例を持っていた。

 

「空間固定(ゼロ・ワールド)!!!」

 

 津波は止まった。

 海が固まったのだ。

 

「っ…はあ…はあ、力を一気に使いすぎた…」

 

 一度に大きく力を使ったウェンディは頭が割れるような痛みに襲われる。

 

「気絶するでないぞウェンディ。お主が力を解けば津波は再び動き出してしまう」

 

 固まった海とはよそに、他の海は動いている。イッカクは固まった海を海底に沈めるために海へと飛び込んだ。

 それから一時間後。地上に戻ってきたイッカクが海底に固定した海を沈めたというのでウェンディは固定した海の運動量を解放した。すると地震のような衝撃を受けたが、コノミ諸島に被害はない。

 

「すまん。助かったイッカク」

「誰も怪我せんだし大丈夫じゃろ。遅いが昼食の支度をするぞい」

「真珠か…」

 

 名前もわからない。おそらくは名前も付けられていない真珠を見て、ウェンディはイッカクの後を追う。いつかはあの真珠を使いこなせるようにできれば戦力になる。イッカクとの共通見解である戦力となる真珠をどうするか。

 

「私の力になれよ」

 

 真珠は鈍色に輝いていた。




後にウェンディたちの武器となる真珠のお話
大きさはナメック星のドラゴンボールサイズ
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