ONE PIECE
空を舞う能力者_6 名もなき狼
メガパイソンはウェンディと戦うには浪費が激しいと考え、もともと体の大きいイッカクへと標的を変更した。時速100キロ近くの速度でジャングルを突き進むメガパイソンを必死に追いかけるウェンディだが、距離は少しずつ離されていく。一方で
「ふう、ふう、ふう!…うっぷ、ふう、ふう、ふう…ウ、ウェンディ!大丈夫か!?」
イッカクは自身を追いかけてきたと勝手に思っていたウェンディに心配の声をかけるが、近くにウェンディはもちろんいない。
「どこじゃウェンディ!…まさか」
イッカクの脳裏にはウェンディがメガパイソンに食べられてしまった状況が浮かび上がる。
「嘘じゃろ…、ウェンディ!ウェンディ!!」
「シャー!!」
「はうあ!?」
イッカクは轟音と威嚇とともにして、目の前に突如と現れたメガパイソンに腰を抜かしてしまう。口を開ければ体長5mを越すイッカクでも一口で飲み込んでしまうほどに巨大な蛇である。そして口からは血を流していた。
「まさか、ウェンディを?!」
ウェンディを食べられてしまったと、我先に逃げ出したことを後悔するイッカクは、後悔と同時に、メガパイソンに明確な敵意を表した。
「ウェンディの仇!!!二千枚瓦正拳!!!」
大技を繰り出すと、衝撃波を察知して回避行動に出たメガパイソンだが、音より早い衝撃を避けきる前に受けて後方に吹き飛ぶ。吹き飛んで体勢を整えようとするメガパイソンに連撃を繰り出そうと、イッカクはメガパイソンをめがけて突っ込む。
「二千枚瓦掌底!!!」
イッカクの掌底で吹き飛ぶメガパイそだが、空中でバランスをとり、木を伝って素早くイッカクの背後に回りこむ。
「早すぎじゃろ!?」
イッカクはメガパイソンのことは噂と本の資料で事前知識を持っていたが、素早く動けることと猛毒、体長は10mを越すものとしか認識していない。時速100キロの速度と体長20mは想定外であった。
「打水!」
打水を背後にいるメガパイソンに投げつけるが、メガパイソンはイッカクの動作を予測して打水を回避する。そして器用に回避と同時に尻尾で攻撃を放ち、イッカクを弾き飛ばした。
「ぐえっ、…これまでか」
メガパイソンは二本の牙からイッカクに向けて毒液を放ち、それを地面に叩きつけられたイッカクは衝撃を受けた直後で動けず、毒液を避けることはできない。しかし、毒液は軌道が上にずれてイッカクを外し、イッカクの背後の樹にかかる。
「腰抜け、腑抜け、ど阿呆、木偶の坊、言いたいことは他にもあるが、お前の二つ名は何がいい?チキンか?うん?何か言ってみ!!」
「ウェンディ!生きておったのか!?」
「勝手に殺すな、タコ」
「わしはクジラじゃ」
倒れているイッカクの前にウェンディが降り立つ。またしても仕留め損なったメガパイソンはウェンディを睨みつけ、襲いかかる気を伺う。ウェンディは圧縮した空気を手に持ちながらメガパイソンに特攻を仕掛ける。メガパイソンは空中での回避行動を一回自ら減らした特攻を好機と見て、ウェンディに直接噛み付いた。
「空間固定、解除(リリース)!」
ウェンディがメガパイソンに向かって投げつけた空気の玉は、中に閉じ込められていた分子の運動が再開。密集した空気の分子は瞬時に広がる。
爆発が起きた。
口内で爆発したため、メガパイソンは大きく吹き飛んだ。反動でウェンディと反対側の地面に後頭部をぶつける。
「よし、ざまあみやがれ」
「これ、ウェンディ!口調が崩れておる」
「うるさいわ!腑抜けに言われる筋合いはない!」
「うっ…」
ウェンディの攻撃を受けたメガパイソンは巨大な牙を二本とも折られて吹き飛んだが、それでも闘志は尽きない。ウェンディを睨み上がるよう首を持ち上げる。
「まだ立つか…、ならこれでとどめだ!」
レイピアを抜いたウェンディがメガパイソンの脳天にレイピアを突き刺すべく、舞う。メガパイソンは大ダメージで判断が鈍くなっていた。もしかしたら目も見えないかもしれない。ウェンディはとったと確信していた。
しかし、
ウェンディの剣は止められた。
「下がれ、ヴァイプ!」
ウェンディの剣を止めたのは一匹のヒトの言葉を話せる狼であった。前足でウェンディのレイピアを押さえつけている。
「何者じゃ?というか、しゃべったのか!?」
「名もなき狼だ」
イッカクは言葉を話す狼を見て驚愕、ウェンディはイッカクとは対照的に静かに今の状況を観察した。そして狼への警戒心を跳ね上げる。狼の後ろでメガパイソンが縄張りに戻ったとしても、目の前の狼がメガパイソンを命令で動かしたことにウェンディは警戒を緩めない。この状況から見ても、メガパイソンよりも目の前の2mほどの狼の方が強いと示されている。ウェンディは疲労を蓄積していて、イッカクでは相手にならない可能性がある。ウェンディは回復も兼ね、探りを入れるために狼に話しかけた。
「ねえ」
「…」
「何であの蛇は私たちを攻撃してきたの?」
「…」
「答える必要はないってわけ?」
「…」
ウェンディの質問に狼は沈黙で答える。ウェンディの交渉は決裂した。
「去れ!」
狼から一言発せられると、ウェンディたちは大きな波動に飲まれるかのような殺気とはまた別の何かを感じ取る。
イッカクが気絶した。
「イッカク!?」
「気絶しないか………貴様は覇気のことは知っているようだな」
「今度は見聞色ね」
ウェンディにとって知識を考えることは危険につながる。もっともエピソード記憶がないため、知られてまずい記憶はないが、知られるとまずい単語はいくつも持っている。ウェンディはなるべく戦闘に集中するように心がけ、腰を低くし、突撃する構えをとる。ウェンディの強攻姿勢に狼も戦闘態勢に入る。ウェンディの闘争心に火がついた。
「敵に背後は見せられないな」
「ならば立ち去るチャンスはもう与えん。行くぞ」
淡々とした口調で狼が攻め込んでくる。咄嗟にレイピアを抜き放ち、狼にカウンターで突き刺すが、狼は武装色の覇気でそれを防ぐ。
「浮遊(フライ)!」
近距離から上向きの力を使い、狼を宙に浮かせて身動きを取らせないようにする。
「幻爪(げんそう)」
狼が前足を空中で薙ぎ払い繰り出した技を、ウェンディの視界は攻撃として見てとれなかったが、ウェンディの空間内の運動量視野ではっきりと捉えていた。空中に爪の斬撃が浮かび、それがウェンディを切り裂いた。避けることはできなかった。
ウェンディは衝撃と痛みから狼を捉えていた浮遊を解除される。地に足のついた狼は瞬時にウェンディへと飛びかかった。ウェンディは地面にある枝を足で振り上げる。それを狼が前足でかがむウェンディへと叩きつけるが、ウェンディは後方に飛び避ける。
「なかなかやるな」
「っ!?」
声がかかったのは後方に避けた先からだった。バックで飛んでいるため、背後からの声である。メガパイソンといい、狼といい。ウェンディたちは速度で圧倒的に負けている。
「浮遊(フライ!)」
今度は自身に浮遊をかけて、向かい打とうとしていた狼の攻撃は空を切る。
「変わった力だ」
「悪魔の実だよ」
「悪魔の実?」
「知らないのか?」
「ああ」
「なら教えてあげるかわりにくたばれ!」
「交渉する気があるのか?まったく…」
狼は見聞色の覇気でウェンディの行動を見切る。 武装色の覇気を纏った前足で飛んでくるウェンディを迎え撃つが、ウェンディは浮遊で上空に回避する。
「幻爪(げんそう)」
「その技はもう効かない」
「そうでもない」
上に回避したウェンディを幻の爪による斬撃が襲うが、ウェンディはそれを見越して回避する。寸前で無傷に避けたウェンディの体勢は悪く、すぐに動けるような状態ではない。
「夢幻撃」
空にもう一匹の狼が動き始める。ウェンディは空間把握でそれを知ることができたが、並大抵の人では対処すらできないだろう。空中で無理やり体勢を整えたウェンディは真下と真上から飛び込んでくる二匹の攻撃を避ける。しかし、実態を持つ狼の方が空中の足場になり、幻影の狼がウェンディに飛び込んでくる。生きていないものに対してウェンディはほぼ無双できる力を持つ。
「空間固定(ゼロ・ワールド)!」
幻影は動きを止めて空中で静止した。
「何をした?」
「答えるとでも?」
「面白い」
狼は覇気を本格的に纏い、ウェンディに特攻をする。ただ愚直にまっすぐに、その速度は警戒して距離を置いているウェンディのガードが間に合わないほどに早かった。肩口を噛み付かれたウェンディはカウンターで狼の腹にレイピアを突き刺すも、覇気を纏っている毛皮を突き破ることはできない。
「降参しろ」
「なめるなよ。私は海賊王になる人間だ!」
「残念だ」
噛みちぎった
狼は確かに手応えがあった。
しかし噛みちぎったのは太い木の枝であり、ウェンディの手ではなかった。
「はあ、はあ、はあ」
「何をした?」
木を口から吐き出して、樹木の枝の上で荒々しく呼吸するウェンディに狼が問いかける。
「ソラソラの実の能力。第三の能力で、多次元へ干渉する力を動かしただけだ」
「…」
「わかりやすく言おうか、枝の位置と私の位置を入れ替えたんだよ」
「瞬間移動か!」
「そういうこと!!」
今度は破片となった枝とウェンディは自分の位置を入れ替える。3次元を超えた次元干渉をするには膨大な集中力がいる。2回。たった2回で気を失う。ウェンディは察していた。これが最後の一撃だということを、最後までウェンディは足掻いた。動かない思考で、レイピアを握りしめ、幾度と繰り返してきた技を繰り出した。
「牙突!」
覇気登場
ウェンディ覚醒
技名はパクリばかり