空を舞う海賊   作:槇塚 憂淋

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土日くらいしか更新できないのに風邪ひいてしまう。
なんとか更新。
ゆえに拙いです。
あっ
いつものことか


孤独

 静かな心地よい森林の中で、そよ風が頬を撫でる。ゴツゴツとした地面に横たわっていたため、体を起こしたときにその痛みが襲う。ウェンディは上体を起こして周囲を見回す。

 

「起きたか?」

 

 不意に背後からかけられた言葉に少し驚くが、ウェンディはゆっくりと背後を見る。そこには倒れ伏している狼の姿があった。

 

「…」

「ふん、どっちが勝ったかわかっていないな」

「うん」

「お前の勝ちじゃないか。俺は立てそうにない」

 

 狼は左半身に一筋の切り傷がある。そして狼の足元には大きな血だまりがあった。

 

「そうだね。あまり勝った心地がしない」

「お前は気絶していたからな。俺はずっと起きていたが、回復に努めることしかできない。体がずいぶんと重たい」

 

 狼は皮肉気味に話し、持ち上げていた頭を地に下ろす。地に顎をつけた状態でも会話はできるようだ。

 

「もう死に体も同然。煮るなり焼くなり好きにしろ」

「そう…」

 

 ウェンディは狼から視線を外してイッカクを探す。すぐ近くに気絶したイッカクが横たわっていた。図体が大きい分見つけやすいというもの。ウェンディはイッカクの無事を確認すると、立ち上がり狼に近ずく。そして無言で眺めると、すぐに出血している場所に手を当てる。

 

「空間固定(ゼロ・ワールド)…ダメか」

「何をしている?」

 

 出血を止めようとするが、生物の構成する血液という要素もまた能力の範囲外であり、ウェンディが狼の出血を止めることはできない。ウェンディは狼を後にしてイッカクを起こす。

 

「ここは…ウェンディ!生きておるか!」

「勝手に殺すな。タコ」

「クジラじゃ」

 

 イッカクは飛び起きてウェンディの無事を確認し、メガパイソンのヴァイプがいないか周囲を見渡して狼を視界に入れる。

 

「あれは…」

「イッカク、あいつを治療してくれ」

「ん?どういうことじゃ?」

「つべこべ言わず治療しろ!船長命令だ!」

「あいよ」

 

 イッカクは状況が読み込めていないが、ウェンディの頼みとあれば断ることはない。イッカクは狼の傷の状態を確認し、持っていた薬草や治療道具を使って応急処置をするが、出血量が多く、しばらくは安静にしていなければならないとのこと。

 

「腹減った。飯でも取ってくるか」

 

 ウェンディの何気ない一言で狼が気力を振り絞って立ち上がる。全身の血は足りずとも気力だけで立っていた。

 

「やめろ」

「何がお前を奮い立たせる」

「勝負は…俺の…負けだ。だが、………この島の…奴らに手を出すのは…許せない…」

「…話を聞こうか」

 

 ウェンディは狼の前であぐらをかいて座る。座り方にイッカクが注意をしようとするも、ウェンディの睨みで何も言えなくなってしまう。

 

「何が言いたいか私にはわからないな。何故お前は私に負けた。再び対峙する理由がこの島のものに手を出すなと………仲間がいるということか?私は狼を襲うつもりではないぞ」

「野うさぎだろうと許さん…、ねずみだろうと…」

「…まるで親の仇のようだな。野うさぎなどお前の獲物のようなものだろう」

「俺は!!…がふっ…がふっ…俺は、奴らを飯だと思ったこともない…そして食べることもしない…」

 

 狼はこの島で木の実や果物、魚類以外を食にしたことがないという。肉食動物であるにも拘らず陸上の動物を食することがほとんどない。あっても昆虫とのこと。ウェンディは話すことができる狼が隣人を攻撃できない理由を知り、なるべく身の引き締まった魚類を取ってくる。海獣といわれる生物だ。おそらく狼と対話はすることができる海獣だが、気絶され、焼かれてしまえば何も言えない。狼の知る獣でなければウェンディはあっさりと食物にする。弱肉強食の世界を獣よりも人間が正しく認知している絵になっていた。

 

「ほれ、食べな」

「…かたじけない」

 

 狼はウェンディが取ってきた海獣の肉を喰らう。狼が食し、寝るのは日が陰った後である。ウェンディは島の中では、いくら狼がいようとも他の獣や蛇などに襲われる可能性があるので一旦、自陣の船に帰還していた。

 

「あの狼をどう思う?」

「あれはなかなかに不器用な奴じゃな。わしはウェンディの意見に従うとしよう」

「今日はやけに殊勝じゃないか」

「…言い訳もできんわい」

「あいつの話はいいとして、…ソラソラの実の第3の能力に到達できたんだが、どうにも上手く使いこなせん。あいつとやりあった時は我武者羅ながらできたんだが…」

 

 ソラソラの実の能力。

 ソラソラの実が与えるのは力。それは対象を限定し、それにかかる力を操作するもの。第1の能力が対象に重力の反対、上向きの力を与えるもの。第2の能力が生物以外の対象にかかる力を保存する。解放されると再び動き出す。そして第3の能力が、素粒子まで対象として次元を歪めるほどの力を扱うということ。第1の能力の数十倍難しいのが第2の能力であり、第2の能力の数百倍難しいのが第3の能力である。

 そして第3の能力を使いこなすのは一生かかっても不可能といわれるほどの難易度を誇る。

 ウェンディが第2の能力を使いこなせてはいるが、第3の能力に至るには何もかもが足りない。ただ、足りていたのは本人の素質と、物理法則の知識と覚悟であった。それをウェンディが知る術はなかった。

 

「わしに聞かれてものう。第一にソラソラの実の能力を使うたこともないしのう」

「そうだな」

「それほど第3の能力は難しいんじゃろか?」

「針に糸を通すという甘いものじゃない。高い山から小石を投げて麓の湖の底にある小さな枠に入れる感覚のように難しいものだ」

「そんなの時の運じゃろ」

 

 いくら考えたところでウェンディは使いこなせることができない。ウェンディは能力のことに思考を割くのをやめて、寝ることにした。

 

 

 

 翌日。

 ウェンディとイッカクは再び島に上陸した。そして、狼を寝かせつけた場所に戻ると、そこには狼が立っていた。傷は完治していないものの、十分に歩けるくらいには回復している。

 

「もう大丈夫か?」

「ある程度はな」

「お前に話があってきた」

「そうか」

 

 ウェンディは切り株に腰掛けると狼は距離を少し詰めたところで腰を落とす。

 

「話とはなんだ?」

「お前はこの島にずっといるのか?」

「…俺をどうしたいんだ?」

「仲間にしたい」

「第一に俺はお前らが何者で、何をしているのか、さっぱりとわからないんだが?」

「海賊をしている。まあ、外道だな」

「ふん、何かと思えば外道か、俺は外道にも劣る存在だったか」

「そうだな」

 

 狼の皮肉にウェンディが肯定すると、狼はイラついたのか、犬馬をむき出しにしてウェンディを威嚇する。

 

「俺はお前の仲間になることはない!自ら外道になるなど愚の骨頂だろう!」

「じゃあ、いつまでこの生活を続ける気だ?」

「海賊とやらになるのと、この島に永住するのと、どちらかを選べと言われれば俺はこの島に残る」

「また知り合いが、知り合いに食われたとしてもか?」

 

 狼は激しく動揺した。ウェンディへの威嚇をやめ、その目は揺れ動いていた。

 

「自然は弱肉強食。いくらお前が友と思っていても、食わなければ死ぬ。この島に居続ければお前が狂うのは時間の問題だ」

「そんなことはわかっている!!」

 

 ウェンディが諭したところで狼には響かない。

 

「わかってて、それでいて弱者を襲わないと?」

「ああ、俺は俺の正しいと思うことを成すだけだ。その己の先が崖であってもだ。俺も頭がおかしいと自覚している。それでも話せば分かり合えるのであれば!俺は!!」

「一人にならないで済む、か?」

「なっ!?」

 

 図星をつかれた狼は言葉を発することができなくなる。

 

「この島にお前と同じ種族は他にいない。私の悪魔の実の能力でそれはわかった。そしてお前が一人にならないで済むようにと採った方法も、そう行動した理由も私にはわかる。一人は辛い。辛いものだ。…話は戻るけどさ、確かに海賊とは外道だ。でも仲間はかけがえのない存在だ。イッカクは大人面して偉ぶるバカだけど、私は見捨てたちはしない」

「…」

「私は仲間は殺さない。外道の道だけど、例外はつきものだ。私は別段外道なことは行ってきたつもりはない」

 

 本人の目の前で財宝盗んだがな、と横槍を入れるイッカクはウェンディの睨みにひるむ。

 

「私はお前に仲間になってほしい。それでもこの島に残るというなら諦める」

「俺は…」

「もう一人じゃない」

 

 ウェンディの言葉に狼は俯けていた顔を上げた。

 

「そうだろ?」

「…いい、のか?」

「いいよ」

「俺の前で仲間に手を出したら許しはしないぞ!」

「私も許しはしない!」

「…」

「もう一度聞く。仲間になってくれるか?」

「ああ」

 

 そして3人目の仲間が加わった。

 

「ウェンディに…イッカクだな」

「うん」

「そうじゃ」

「今日から仲間に加わらせてもらう。俺は………俺には名はない」

「名前ないのか?」

「ああ」

「どうしたものかのう?」

「船長はウェンディだろ?なら、ウェンディに名前を考えてもらいたい」

 

 ウェンディは頭をひねる。ウェンディの中では狼といえば、名前の筆頭に浮かび上がるのは目の前の狼のイメージとは大きく違うものであった。第一に雄である。ウェンディは次に浮かんだ名前に近い名前にすることした。

 

「ルカだ」

「ルカ?」

「ああ、私の記憶にはルカという名の男は一騎当千の猛者というイメージが強い。実際にそのルカにあったことはないんだがな」

「そうか。ならルカと名乗ろう」

「いいのか?割とイメージだけで名前を決めたようなものだぞ?」

「名前にこだわることはない。個に識別を与えるだけのものだろう」

 

 ルカにはあまり名前にこだわることないという。イッカクも単純明瞭でも構わないというスタンスだ。ウェンディは自分から名前を提案しておきながら、あまり納得はいっていない。

 

「本人が良ければいいんじゃろ」

「そうだな」

「…ところで、ルカという名に一騎当千の猛者なんておったか?」

「気にするな。とある物語の話しだ」




うまく書けない。

ルカって名前はルカ・ブライトから取られています。
皆はルカといえば巡音ルカかな?

ようやく3人(匹)目

ちなみにウェンディの狼といえばで思い浮かんだ順番
モロ(もののけ姫)
リュカオン(ギリシャ神話)
フェンリル(北欧神話)
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