空を舞う海賊   作:槇塚 憂淋

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二人の剣

 島の皆に別れを告げるため時間が欲しいとルカが言うため、ウェンディはそれならば、とルカにこの島で宝や金銀財宝、特異的な存在がないかを聞き出していた。ルカの話では島の北側にある山の中腹にある洞窟の中に刀があるという。

 

「宝の定番は辺境の地の奥底なのかな…」

 

 船からモロとの戦闘地域まで徒歩で2時間。モロとの戦闘地域から洞窟まで徒歩の数倍速い飛行で2時間も費やしていた。2時間も暇に飛んでいるとウェンディは独り言を発するようになる。

 

「これが洞窟かな?」

 

 島の北側にある山の中腹にある洞窟に到着した。

 

「本当に刀があるのかな?名刀以外お断りだよ。まったく…」

 

 洞窟の中は鍾乳洞になっていて狭い道をいく。寒いくらいの鍾乳洞で暗さで迷いながら足を進めていくとウェンディの視界に一本の光が見えた。薄い薄い光を発しているような存在がある。

 ルカの言う通り、刀があった。

 

「名刀…かな?」

 

 ウェンディは刀に触れ、その刀身を拝む。ウェンディはその刀の美しさにしばらく見惚れ、すぐに刀をしまい来た道を引き返す。空間把握にすぐれているウェンディは鍾乳洞の中の一本の刀は見切れなかったが、帰り道くらいは簡単に判別できていた。

 

「ふう、暖かい」

 

 太陽が西に傾いている。

 ウェンディは一息呼吸すると、眼前を睨みつけ、飛んだ。全力で飛んでもエネルギー切れするような距離ではない。ウェンディは地を蹴って高度数千メートルまで上昇し、ハンググライダーのような飛行角度で進んで行く。

 刀を持ち帰ったウェンディは挨拶回りを終えたルカと合流し、島を出発した。

 

「これがとってきた刀だな」

「ほお、美しい刀じゃのう」

 

 ウェンディは船首に立ち、舵をとるイッカクに話しかけていた。

 

「お前さんは刀でも突きに突出したレイピアの方が得意じゃろ?必要あるんか?」

「これからは剣技も習得しようかな」

「世界一の剣豪もついでに目指すんか?」

「あまり興味はないかな」

 

 ウェンディは剣をしまうと寝室に戻る。

 

「あの刀、恐ろしいほどの美しさじゃな」

 

 

 

 コノミ諸島に帰還した一行は、周辺海域への散策と海賊船をカモに資金を稼いでいた。その間、ルカに覇気を教わりながらウェンディとイッカクは修行に励んでいたが、二人が覇気に目覚めることはなかった。

 

「何故できぬ。察し、纏い、威圧するだけだろ」

「教師が悪いな」

 

 いわゆる天才的感覚で、生まれた頃からすべての覇気が使えたルカに教わるのは、なかなかに骨が折れる。ウェンディはもともと覇気がどういったものかわかっているが、今は持たない感覚を扱うことの難しさを痛感していた。ウェンディは頭を悩ませるのは好きではない。体を動かして感覚で鍛えられないか考えていた。そしてひとつの結論が生まれる。極限状態で覇気が使えるようになる可能性がある。それにかけるしかないが、もっとも平和な海、イーストブルーにウェンディと争える海兵や海賊は無に等しい。結論を出したウェンディは次の思考に気をとられる。

 今はルカがイッカクに教鞭を振るっている。

 

「まったくわからんぞ」

「このアホめ」

「何じゃと!?」

「やめんかみっともない!!」

「ふんっ」

「あいよ」

 

 イッカクとルカは言い争いを止める。ウェンディがココヤシ村から帰ってきたため、午後に差し掛かる前に出航だ。

 

「さあ、出航だ!」

 

 船は進み、コノミ諸島からどんどんと離れていく。舵はイッカクとルカに任せて、周囲を警戒するのはウェンディの役目になっていた。ウェンディは何かをしながらでも周囲を警戒できるため、レイピアの稽古に励んでいた。今の舵はイッカクなので、ルカはのんびりと丸まって寝ている。

 

「イッカク!」

「何じゃ?」

「1時の方角に船の影だ!」

 

 ウェンディの空間把握は以前よりも範囲が広がり、目視では到底見えない距離の船を感知した。ルカは飛び起き、船に備え付けられている双眼鏡で敵船を目視する。

 

「船が見えた。まだ、どんな船かわからない」

「それからそんお船の後ろにもう1隻あるぞ!」

「何!?」

 

 もう1隻がウェンディの警戒網に引っかかる。しばらくして見届けたのは海軍船2隻であった。ウェンディはそれを見過ごし、船に見つからないようにしばらく待機してから進路を進めた。

 

「次は商船だな」

「つっきれ」

 

 海軍とは無理に張り合わないが、商船ならビビらせておけばいい。ウェンディはそう考えていたため、商船の近くを通り過ぎる。ドクロを掲げた船が近くに行けば普通の商船であれば驚いて逃げる。しかし、その商船はカモフラージュであり、その実態は覆面海軍戦であった。

 意表をつけたと確信していた海兵たちはウェンディたちの乗る船に幅寄せするが、ウェンディの感覚は近ければ近いほど鮮明。商船に潜む人数が多すぎたために海軍戦かと疑っていた。海軍たちが白兵戦を仕掛ける前に、先手必勝、ウェンディは覆面海軍船のマストをレイピアで切り落とした。

 海兵立ちが慌てふためく隙に海軍船内にある刀や砲弾を回収し持ち去る。税金で買った装備を持ち去る別の意味で税金泥棒である。やはり外道である。

 

「いやあ、大漁大漁。海兵さんたち、じゃあね」

「何故こう育ったのじゃろうか」

「お前のせいだイッカク」

 

 返せクソガキー、と叫ぶ海兵たちを後にして、船は再び海を進む。

 ウェンディたちは進路を変え、海兵を突き放したが、先行していた2隻の海軍船が、ウェンディの襲った海軍船から連絡を受けたのか、ウェンディたちの進路は変更を余儀なくされた。一行は変更した進路から近い島に船を泊めることにした。その島にはひとつの村があり、その島では有名な道場がある。その村の名前は

シモツキ村。

 船内にイッカクとルカを残して、ひとりウェンディが上陸する。必需品の購入を手早く済ませて村を見回っていると、背後から子供が、子供を担いで走り抜けていった。背負う子供は珍しい髪色を持っていて、すぐにウェンディは誰だか気づいた。ゾロである。

 ロロノア・ゾロの幼少期の訓練光景を見て、走る方向に足を運ぶ。数分ののちに剣道場が見えてきた。こっそりと中を詮索すると、たった今走り抜けていったゾロがくいなに倒されたところであった。

 

「…さて、どうしたものか」

 

 くいなは仲間になれば、即戦力になる人材の候補である。あと3年ほどでコノミ諸島に侵略してくるアーロンに対処するため、ウェンディは何が何でもくいなを仲間に加えたかった。

 ゾロとの試合を終えたくいなはゾロに負けじと訓練を開始する。くいなが道場の裏で素振りを開始したところで、ウェンディは顔を出した。

 

「君強いね」

「…誰?」

「さっき、こっそりとだけど試合見せてもらったよ。あ、私はウェンディ。よろしく」

「…」

「名乗り損だよ」

「くいな」

 

 自分の名を淡々と告げるくいなはウェンディを睨みつけたままである。

 

「真剣、持ってる?」

 

 ウェンディはレイピアを抜いた。

 

「…やろうっていうの?」

「手合わせだよ」

「竹刀ならいくらでもあるわ」

「竹刀を振ったことはないよ」

「そう。死んでも知らないから」

 

 くいなはウェンディに背を向けて真剣を取りに、道場の倉庫に向かう。戻ってきたくいなは人目につかない場所に移動すると提案し、ウェンディはそれを承諾。先行するくいなの後をウェンディが付ける状態で数分。雑木林の広場のような場所に出た。

 

「ルールは?」

「まいったと言えば負け。確実に一本でも負け。死んだら負け。これでどう?」

「いいよ」

「お手柔らかに」

「手加減してあげようか」

 

 くいなは上から目線でウェンディを挑発する。ウェンディはどこ吹く風というようにレイピアを抜いて構えた。

 

「開始の合図は?」

「いつでもどうぞ」

 

 ウェンディの返答と同時にくいなはウェンディへと迫る。和同一文字を抜いてウェンディに縦切りをするも横に躱される。今度は横薙ぎをするが、ウェンディは体を引いてそれを避ける。くいなの剣はウェンディの予想よりも早かった。ウェンディは頰を切られてしまう。

 

「やるね」

「次は本当に斬るよ」

「やれるものなら」

「後悔しても遅いからね!!」

 

 ウェンディは再び飛び込んでくるくいなとの間合いを図る。くいなが切り込む一瞬でウェンディはレイピアで付き技を放つ。

 寸前のところでくいなは刀で切っ先をそらすことに成功するが、くいなの髪が少しばかり斬れ、宙を舞う。

 

「はあ!!」

「おっと」

 

 レイピアを弾いたくいなは弾いた刀を円状に軌道をとって、流れでウェンディに攻撃する。ウェンディは瞬時にレイピアを逆手に持ち直し、くいなの一閃を受け止める。

 

「はあ、はあ、やるじゃん!」

「どうも」

 

 ウェンディはくいなの呼吸を乱すタイミングで瞬時に踏み込む。またしても付き技だが、後方に移動しながら弾くことでくいなは避けることに成功する。ウェンディは瞬時にレイピアを引いて、再び突く。それをくいなは後ろに下がりながら躱して避ける。ついに木に背中をつけたくいなにウェンディのレイピアが迫るが、くいなはしゃがんで付き技を避け、斜め下から切り上げる形で刀を振るうが、ウェンディは木に刺さった剣の柄を片手に、逆立ちした状態で避けていた。

 地に足を付け、木からレイピアを引き抜くと、木は真っ二つになり、轟音を奏でて地面に横たわる。

 

「木を…なぎ倒した…」

「そろそろ本気で行くよ」

「なっ?!」

 

 ウェンディとくいなの距離は5m、それを一瞬で詰めてウェンディは一突き、くいなはなんとか避けることに成功する。状態を崩さないで避けるくいなは反撃に出る機会を探すが、ウェンディの剣筋をかいくぐる攻撃を放つ技量はない。

 

「こんの!!」

 

 くいなは押されている状態にしびれを切らし、ウェンディの剣を強く弾くと、そのままウェンディへと斬りかかる。剣を振り上げた時、くいなは気づいた。

 もうウェンディが剣を引いて、突く段階だった。

 

「迅陣剣!」

 

 くいなのすぐ横を剣技が突き抜けていく。木々をなぎ倒し、雑木林に不自然な傷跡を残した。木の破片が舞う中、くいなは刀を地に下ろした。

 

「…」

「私の勝ちでいい?」

「…」

「あらら、戦意喪失だよね?大丈夫?」

 

 くいなが元の状態に戻るまで、しばらくかかった。切り裂いた木々の近くの切り株に腰掛けた二人は顔合わせの状態になる。

 

「あれ、というか、これは何?」

「これ?」

「この惨状のこと」

「私の剣技だよ」

「だから、それが何かって聞いてるの!!」

 

 くいなは混乱が一周回って、キレていた。

 

「飛ぶ斬撃」

「意味がわからない」

「見たことないんだね」

 

 くいなはどうすれば斬撃を飛ばせるか懸命に聞いてきた。それにウェンディが答えるが、役に立つかは定かではない。

 

「ねえ、君も…世界一の剣豪を目指しているの?」

「いや、目指してないよ」

「え?どうして?そんなに強いのに?」

「私は海賊王を目指している」

「海賊王!?なんで!?なんで!?私よりも強いのに海賊王なんて!!」

「私の夢だから」

 

 ウェンディの表情はまっすぐで、言い切ったウェンディに気圧されるくいなは言葉を発せなくなっていた。

 

「世界一の大秘法ワンピースを見て見たい。グランドラインを旅してみたい。それってできるのは海賊王だけでしょ。目的が目標から作り上げられているから変だけど、結局のところ私は海賊王を目指している」

 

 くいなは俯く。ウェンディをまっすぐ見れなかった。

 

「くいなは世界一の剣豪を目指すのかな?」

「…わからない」

「まあ、この私に剣技を使わせるほど強いなら見込みはあるよ。第一に剣の才能は君の方が上だと思うよ」

「慰めはいらない。惨めになるだけ」

「剣を取りな」

 

 ウェンディは立ち上がり、くいなの真正面に立つ。くいなの頰に触れ、目尻に涙を浮かべるくいなの顔を上げた。

 

「立って」

「…」

「剣を構えて」

 

 立ち上がったくいなは和同一文字を構える。ウェンディはくいなの背後に回りこみ。くいなの手を導く。

 

「呼吸を整えて、そう。まっすぐ顔だけ前に向けて、目を閉じなさい」

 

 ウェンディの指示のもと、くいなは目を閉じて呼吸を整える。

 

「もっと静かに、呼吸が乱れている。まだ、そう、その状態を維持して」

 

 ウェンディが指示せずともくいなは目を開いて刀を振り抜いた。

 斬撃が空を駆ける。

 木にぶつかった斬撃は木をなぎ倒すまではいかなくても、木に切り傷をしっかりと残した。

 

「はあ、はあ」

 

 過度な集中が切れたため、息を荒げるくいなは地に手をつくほどに疲労した。

 

「できるでしょ?私が斬撃飛ばすのに一年かかったのに、一瞬でできちゃうなんて卑怯だよね」

「…」

「ねえ、私が君に近づいた理由わかる?まあ、海賊王の話をしたときからだいたいわかってたよね?仲間を探しているんだ」

「私に仲間になれと?」

「仲間になってくれないか?」

「…」

「まだ、迷っているならまた今度来るよ」

 

 ウェンディは雑木林を来た道を戻る。帰る途中、道場の門下生たちが騒ぎを聞きつけて林の中に入ってくる。その中にはゾロの姿もあった。ゾロが先頭を走り、轟音を奏でた場所から出てきたウェンディに近寄る。

 

「おい!お前!ここで何があった!?」

「くいななら無事だよ。見に行ってあげたら?」

「くいな!!」

 

 ゾロは駆け出し、その後を他の門下生が走ってついていく。ウェンディが道場の近くまで行くと、道場にはくいなの父、コウシロウが縁側に立っていた。

 両者の目が合うが、何もすることなく互いに視線をそらし、通り過ぎる。夕焼けが海に沈んでいく光景を見ながら、ウェンディは船に戻った。




本編入りたい
誤字多くてすみません。気が付いたら直していきます。
技名パクリあまりよくないし、厨二を患って自分で考えようかな。
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