カサマツの二番星   作:美涼

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(シングレが完結した故の書き直しと色々細かい部分も書き直したので実質)
初投稿です。

1月末に投稿すると言ったな。あれは嘘だ。


第1章 カサマツ編
Let’s begin the Generation.


「印象に残っているウマ娘、か」

 

 

オグリキャップはその答えを出すまでに、多くの時間を必要とした。

 

カサマツトレセン学園から中央トレセン学園への編入を果たし、スーパークリーク、イナリワンと共に「永世三強」。そして「カサマツの星」「芦毛の怪物」と称されるウマ娘。

 

彼女の残した功績は大きく、その最たるものがクラシック登録制度に関してだろう。

また、それ以外でも重賞を6連勝するなど、彼女の異質さは計り知れない。

 

彼女はトレセン学園卒業後、トレーナーになった。

トレーナーになってから十数年、数々の優秀なウマ娘を育てたとして現役時代以上に名を残している。

そんな中で受けた雑誌の取材で、そう聞かれた。

 

 

「やっぱり、私と共に『永世三強』と呼ばれたスーパークリークやイナリワン。

あと、タマ…タマモクロスはやっぱり入れたいな。今でもよく連絡をしているんだ」

 

 

ヤエノムテキさんはどうですか?と記者に聞かれ、オグリはハッとする。

 

「そうだ。ヤエノもいたな。それにアルダンにチヨノオーも。みんな強かった」

 

ただ、とオグリは続ける。

 

 

「ただ、トレーナーとして育ててきたウマ娘をあげるなら、1人だけになる」

 

 

そう言うとオグリは目を瞑り、僅かに笑みを浮かべる。その表情は、かつて自らが育てた教え子との思い出を懐かしんでいるように見えた。

 

 

「記者の人。今日は時間はあるか?」

 

 

オグリにそう聞かれ、記者は頷く。

 

 

「じゃあ、今日は彼女の話をしよう。『史上最悪のウマ娘』『道化師』、そして…」

 

 

一息空けてから、オグリは続ける。

 

 

「『第二のオグリキャップ』と呼ばれたウマ娘。ファントムレイダーについて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は、いわゆる転生というものをしてしまったらしい。

死んだ記憶はない。なんなら一番最後の記憶は友人と電話をしていたタイミングだったはずだ。

 

「ヘルプミー。マイフレンド」

 

「今何時だと思ってんのよ…。……え待って、まさかこの時間まで仕事?」

 

「YES」

 

「おおう。もう辞めたらその職場。もう10年くらい勤めたんでしょ?そろそろ冗談抜きで死ぬよ」

 

「でも今辞めても就職できる気がしない…」

 

「安心しな。そんときゃあたしが養ったげる」

 

「たのもしー。まあこんな時間にごめんね」

 

「いいよいいよ。身体に気をつけてね」

 

とかそんな会話をして、2時間も寝れないことに絶望しながら寝たんだっけ。

どうやら友人の警告は正しかったらしく、私はぽっくり逝ってしまったようだ。

 

しかし、気がつけば幼女になっていた。明らかに人間ではない耳と尻尾がついている、「ウマ娘」なる種族として。

 

ウマ娘とは、基本的な身体構造は人間とほぼ同一であるものの、時速60kmを超える速さで走れる等の、驚異的な身体能力を持った種族のようだ。

しかも私は前世の人間としての記憶も残っている。

 

本来混乱するところなんだろうけど、なんか情報量が多すぎて一周回って冷静になってしまった。

 

とりあえず私は、ウマ娘として新たな人生…いや、ウマ娘だからバ生の方が良いのか?を歩む事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウマ娘は、本能的に走りたい、勝ちたいという意欲が強いらしい。

なぜ急にそんな話をしたかというとだな。

 

 

「走りたい…もうどこでもいいからとりあえず満足するまで走りたい…」

 

 

現在進行形でその本能に悩まされているからなんですヨネー。

 

私が転生してから、10年の時が経った。

私は両親に捨てられていたらしい。物心ついたころには、孤児院で暮らしていた。

 

ここはウマ娘を育てるのは初めてらしく、私も職員さん達も試行錯誤しながら生活していた。

 

ウマ娘の規格外の食欲や身体能力に、最初は苦労したけれど、今はもう慣れっこだ。

ただ、この走りたいという欲望だけは、どうしようもなかった。

 

どこか走りに行くにしても、私1人の為だけに職員さんの手を煩わせるわけにはいかない。けれど、ランニングマシンを買う金銭的余裕なんてとても無かった。

 

だから、ずっと我慢していた。ただ、食欲を我慢したところで、いずれ限界が来るように、日に日に走りたいという欲望だけが溜まっていった。

 

 

そして、ある日。

私は我慢できずに、夜中に施設を抜け出した。

 

向かったのは、孤児院からそう遠くない位置にある団地。山を削って作ったらしく、坂が割と急だったりする。

日付が変わるころにこんな所に来た理由は1つ。

 

 

「あ?なんでこんなとこにガキがおんねん」

 

「ここは子供の遊び場やないんや。早く家帰り」

 

 

道路の真ん中で屈伸をしたりして体をほぐしていたであろうウマ娘達が、私に気づいて、そう声をかける。その威圧感に少し緊張したけれど、目の前にいる相手は私よりも年齢が低いんだと言い聞かせ、相手に堂々と言った。

 

 

「今日のレース、私も出させて」

 

「「はぁ?」」

 

 

この周辺は夜中になると人1人出歩かなくなる。更にいえば、車も全く通らない。だから、ここで毎週、ウマ娘達がレースをしているのだ。

 

私が転生する前の世界で例えるなら、走り屋や暴走族というイメージが近いだろうか。ひとつ違うところを挙げるなら、ヤのつく怖いお兄さんとかが一切関わってこないことくらいだろうか。

 

準備運動をしていたウマ娘達が、私を見て、お互いを見て、また私を見る。

栗毛の長い髪をした人が、ため息を吐きながら私に問いかけてきた。

 

 

「親はどうした」

 

「いない。孤児」

 

「トレセン学園に入っとらんのか」

 

「そんなお金ない」

 

「……今まで全力で走ったことは」

 

「ない。大人に迷惑かけられないから」

 

 

栗毛の人は、もう一度深いため息を吐いた後、私に背を向けて、このレースの主催者であろう人に声をかけた。

 

 

「おいヒトミミ野郎。参加者追加だ。このガキ入れとけ」

 

「急になんじゃホーク。ここはガキの遊び場ちゃうんやぞ」

 

「わーっとるわんなもん。コイツには賭けなし。順位はコイツ除いて決定。これなら文句ないやろ」

 

ホークと呼ばれたウマ娘は、主催者であろう人とそう話すと、私の方に向き直り、話し始めた。

 

「これから好きなだけここで走りゃあいい。その代わり、誰にもここのことは言わんこと。ええな?」

 

若干脅しも入っていただろうが、その時の私は、脅しよりも好きなだけ走れる喜びの方が勝っていた。

 

「わかった。これからよろしく」

 

「おう。そういや名前聞いとらんかったな。名前は?」

 

「ファントムレイダー」

 

「私はナイトホーク。せいぜいへばらんことやな」

 

 

こうして私は、ここで毎週走ることになった。

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