ゲートが開き、ウマ娘が揃って走り出す。
いつもは最初に若干加速して先頭に立つけど、今日は先行策だから、大体3、4番目くらいの位置をキープしに行く。
先頭にはハウンドレザー。私はそこから大体4、5馬身くらい離れた位置にいるけど…。
すごく気持ち悪い。意図的にペースを作っている感じがする。今3番手にいるのに足踏みしなきゃいけない状態だから、明らかにスローペースになっている。
あと少しで第一コーナーに差しかかるけれど、ハウンドレザーがペースを上げる様子はない。かといってペースが落ちているわけでもない。どっかで飛び出さないとダメだなこりゃ。
コーナーに入って、前を抜かす為に若干外に膨らむ。こうすると内側が空くけど、このスペースに今入り込む奴はいないはず。
そんな事を考えながら若干外に膨らんで行くと。
「ッ!?」
「あっ!ごめっ!」
内側にいた子が、私にぶつかってきた。いや、どちらかと言えばぶつかってしまったの方が正しいか。このコースは小回りだから、スローペースでも遠心力はだいぶ働く。だからある程度内側に重心をずらしてないとどんどん外に膨らんでいく。
私はたまたま膨らんだ先に居たから、衝突してしまった。
にしても、ちょっとまずい。
さっきまでは若干スリップストリームが貰えていたけれど、完全に外に出てしまったから空気抵抗をモロに喰らう位置になってしまった。しかもぶつかられたせいでバランスは崩れてしまった。
先頭にいたハウンドレザーは加速を始めて、2番手のウマ娘をどんどん引き離している。
こうなったら、ここからスパートかけて抜かすしかない。
私は無理矢理身体のバランスだけとって、そのまま加速していった。
私は最高速こそ普通だが、加速力だけは自信がある。だからこのまま最高速でゴールまで走っていってやる。
ハウンドレザーは第二コーナー中盤にいる。ここからまともに走ったって、追いつけるかどうかは怪しい。だから、博打を打たせてもらう。
『カサマツトレセンのコースはサラサラした川砂を敷き詰めたダートコースなんだ。だから、走るには強靭なパワーと走り方のコツが要る』
私は身体を内側に倒し、全速力で走り出す。普通に走れば、遠心力によって外側に膨らみ不利になる。だけど私は、普通に走らずに脚を滑らせていく。
要するに、ドリフトだ。
ドリフトをすると脚への負担がかかるけれど、先頭に追いつくにはこうするしかない。
そのままうまくコーナーを曲がりきれて、最終直線に入った。
とにかく脚を回せ。足で砂を掴んで、足首で蹴り上げろ。先頭とは5馬身程度。それくらいなら、私の有効射程内だ。
私はそのまま加速を続けて、先頭にいたハウンドレザーを抜かした。そのまま後ろを引き離して、私は1着でゴールした。
「はぁっはあっ。いっ…」
ドリフトした上に、無理矢理バランスを取って走ったから脚を痛めたみたいだ。ドリフト自体は前にした事があるからいいけど、身体を崩した状態ではやったことなかったからな。仕方ないのかもしれない。
少しして、オグリさんが駆け寄ってきた。
「レイダー!脚は大丈夫か!?」
「大丈夫ですオグリさぁぁぁああ!?」
オグリさんは私の返答を聞くが早いか、私を担ぎ上げて走り出した。
向かった先はもちろん保健室。俵担ぎをされた私は若干酔いそうになりながらもされるがままになっていた。というか下手に抵抗したとて力じゃ敵わない事は分かってるから、もう諦めてる。
オグリさんは保健室に着くなり、私を勢いよく椅子に座らせると、保健室の先生に詰め寄って捲し立てていた。
「やめんかいアホぉ!!」
「いだっ」
私はオグリさんの後頭部を軽く叩いた。先生困ってるじゃないの。驚きと困惑と喜びが入り混じってすんごい顔になっちゃってるよ。
「…えーと、結局、ご用件は…?」
保健室の先生がおずおず尋ねてきた。
「模擬レースでちょっと無茶しちゃって少し足が痛いだけ。放っておけば治る」
「あ、ちょ、ちょっと待って!足を痛めてるなら念入りに見ないと!もっと酷い怪我するかもしれないから!」
「そうだ。最悪二度と走れなくなるんだ。レイダー、一応見せてくれ」
「…わかりましたよ」
そう言われ、私は足首を見せる。
足首が少し赤く腫れていたが、それだけだ。
「おかしい…。なんで…、なんで
オグリさんがなんか呟いているけれど、あんまり聞こえない。保健室の先生は、少し足を触ったりしてから、保健室の中にある冷蔵庫に向かった。
「軽い
保健室の先生はそう言いつつ、保冷剤を取り出して、包帯で足と保冷剤を固定してくれた。
おー。確かに少しマシになったかも。
「ありがとうございます」
「いえいえ。これが私の仕事だからね〜」
「じゃあ失礼します。オグリさん、行きますよ」
「ん、ああ。わかった」
私はそう言って、保健室を後にした。
結果として私の初めてのまともなレースは、勝利はしたものの怪我をするという、なんとも言えない結果となった。
キャラクター紹介
ハウンドレザー
カサマツトレセンの特待生。特待生として入ったものの、不祥事が多いカサマツトレセンのレベルが低いと感じており、中央への編入を希望していた。その条件に今回の模擬レースで勝つことも含まれていたため、中央への編入の夢は叶わなくなった。また、ファントムレイダーの事を若干逆恨みしている。
保健室の先生
ちょうどオグリキャップの現役を生で見ていた。もちろん脳は焼け切れた。オグリキャップが保健室にやってきた時は、急にオグリが来たという驚きと何故ここに来たという困惑とオグリと話せている喜びで感情がぐちゃぐちゃになった。
オグリキャップの扱いが難しいと思う今日この頃。
この行動はアプリだとやる、シングレだとやらない、シングレのかんたんオグリならやるが混ざって、かえって扱いづらくなってしまった。