ロック・リー転生伝 作:六亭猪口杯
下忍になって。
日向やテンテンとのスリーマンセル、ガイ先生を含めたフォーマンセルに慣れてきた頃の事。
何時もの修行を終えた時だった。
「そろそろか…」
ガイ先生の意味深な呟きを聞いて首を傾げる。
「何がそろそろなんですか?」
クールダウンしながら聞き返す。
足の重りは着々と重量を増している。既にチャクラによる強化抜きでは走れないレベルだ。
流石に今これ以上増やされると日常生活に支障をきたしますよ先生?
「開門の使用を解禁する!」
しかし!と続けるガイ先生。
「開門までは実戦での使用を許可するが…それ以上は俺との修行時のみだ」
開門だけでも許されるってのは大きい。
試したいことをやるチャンスでもあるから…
「…リー、あくまで実戦での使用だぞ?」
徒に使用して良いものじゃない。と釘を刺される。
「はい。…勿論そのつもりです」
実戦に備えるための実験だ。
俺の考えが正しいなら此処から伸ばす方向性が決まる。
「なら良いが…」
早まったか?と呟く先生。
大丈夫ですよ無茶はしませんから。
「では、今日はここ迄としよう!」
俺は2人の様子を見てから帰る。と飛び去るガイ先生を見送った。
「…後一年も無いのか」
下忍試験から数ヶ月。
アレから低ランクの任務をいくつか熟して修行漬けの日々を送る事により今は第三門・生門まで開けるようになった。
…まぁ、生門開くと数歩動くだけで反動がヤバいことになるから休門が実戦に耐えうる限界だけど。
「…っし!早速試してみるか…!」
第一門・開門、開!
全身に巡るチャクラ量が跳ね上がる。
…最初はこれでぶっ倒れてたものだが、今となっては少し反動がキツい必殺技程度にまでなっている。
その状態を維持したまま胡座をかいて瞑想の態勢に入る。
全身を巡るチャクラの流れを俯瞰する様に追い続け、経絡系に負担が掛かりそうな部分をその都度押し流す様に調整。
自分が一つの流れになった様な錯覚を得る様に体内のチャクラを回し続ける。
回転方向さえ間違えなければ暫くは持ちそうだな。
コレを攻撃手段に昇華するのは骨が折れそうだけど…
八門によるチャクラ量のブースト…これをある程度維持することが出来れば。
運が良ければ仙術チャクラの一端を掴めるかもしれない。
アレのコントロールには自身のチャクラ量が豊富である必要があるが、八門状態なら俺のチャクラ量も跳ね上がる。
そう考えての座禅を組んでのチャクラコントロールなんだが…
あくまで可能性として考えていた事。
妙木山の仙人蛙は"動かない事"が重要であると言っていた。
先ずは
自身は動かず、外部からのエネルギーを感じ取って自分のものと混ぜるイメージだとすれば。
仙術チャクラとは謂わば自然のエネルギー、外部チャクラの総称だと仮定する。
自分のチャクラ以外のモノであればどれだけ少なくとも身体に入ればその違和感から気づけるはず。
で、あれば…
(自身のチャクラを増幅、周囲ごと巻き込むように回せば…と思ってたんだけどなぁ…)
一向に変化が見られない。
この線は余り期待出来ないかも知れないな…
それでも最終的には仙術チャクラか
「…八門遁甲に振り切ったほうが良い、か」
キッカケになるようなモノが掴めたならこの線で行く事も考えていたんだが…俺の才能では二兎を追って一兎も得ずになる可能性が高い。
当初の予定通り螺旋丸+体術で何とかするしかないな。
所々流れが淀み始めたチャクラの回転を止めて開門を閉じる。
「…まぁ、難易度が上がったってだけの話か」
そもそもが使用者の少ない仙術チャクラ。
それを見様見真似で再現しようと言う方がどうかしている。
「んー…でもま、今のは続けるか」
コントロールの練習としてはこの上ない。
先生が居なくても回転の練習を積めるし…
「開門状態での螺旋丸習得の足掛かりになる」
膨大な(当人比)チャクラをコントロール下に置く訓練だと思えば無駄にはならない。
…正直通常状態でも未完成の術に何を言っているのかというところだが、中忍試験編以降は恐らく八門+αがなければ付いて行く事は不可能だろう。
「あの
体術の完成形がガイ先生なのは間違いない。
でもこのままじゃ正直時間が足りないっぽいんだよな…
何かしらの
術に関しては螺旋丸で良いとして…
(単純に考えるなら八門の反動軽減か出力強化…後者は身体能力を強化する事で可能だとして)
八門遁甲の反動軽減。
それに関してはガイ先生も知らない…と言うより考えたこともないとの事。
これは限界を超えて一時的に強くなる術という認識だからだろう。
リミッター解除である八門は通常時では使用できない領域のチャクラを使用する裏技染みた術。
制限されている理由は身体中に走る経絡系に多大な負荷が掛かるからだと思われるが…
ざっくり思いつく方法は二つ。
経絡系の補強、或いは限定的な使用。
ガイ先生は使用する内に自然と耐えられる様になると言っていた。
その点で言えば俺は恵まれている。
まだ下忍でしかないのに開門の使用を許可されたのだから。
「当然、負荷を掛ける」
重りと同じだ。
出来る限り使用して日常を送る事で経絡系に負荷を掛けて無理やり強化する。
限定的な使用については…
「…先生が無理なら俺じゃちと難しいか」
考えとしては悪くないと思ったんだが…そもそも
ぶっちゃけ、一度発動したなら使い続けて時間内に相手を殴り倒す方が効率が良いぞ!
とはガイ先生の言葉である。
(まぁ何にせよやれるだけやってみるだけだ)
この仙術チャクラを感知する修行モドキも。
螺旋丸の完成を目指す修行も。
体術に関する諸々も。
俺に許される全てを以って。
「俺は
そう覚悟を決めて再度開門を開いて瞑想に入った。
日向ネジの場合
あの馬鹿、無茶苦茶してやがる…
ガイに言われて様子をみるためにリーの修行場へと足を運んだ先で見たものは俺を絶句させるのに十分すぎた。
(表蓮華…開門を開けた状態で維持?何を考えてるんだあのバカ)
動かないとしても経絡系にダメージが入る術だ。
ジワジワと毒が回る様に蓄積されるそれはアイツが自覚する頃には経絡系をズタズタにしている事だろう。
(流石に止めるか)
この馬鹿野郎、と止めるために近づこうとした時に気がついた。
コイツ、チャクラの流れを作って全身に満遍なく負荷をかけているのか?
下忍試験の際に見た状態とは大きく違うそれに思わず息を飲んだ。
(バカな…白眼も無しに)
感知系だとしても無謀に近い。それこそガイですらやろうと思わないであろう荒業。
下忍試験の後で聞いた表蓮華の仕組みと内容を聞いた時以上の驚きがあった。
表蓮華、経絡系の門を外す外法に近い術の欠点。
扱いきれない…と言うよりは普段使用しているチャクラの倍以上のチャクラが止めどなく溢れ出る状態に強制的にしてしまう事。
完全にコントロール出来るはずもない。
試験の際に見た時は所々で行き詰まった逃げ場のないチャクラの奔流が経絡系を痛めつけているのがありありと分かった。
出力が調整不可能、常に許容最大値以上のチャクラが体内を暴れ回る状況で8秒持ったのも驚きだが…今の状態はそれを逸脱しかけている。
流石に普段と寸分違わずとは言えないものの、坐禅を組んだ後は上手い事チャクラを回し続けている。
まるで普段と同じ様な、勢いだけが倍以上で回転し続けるチャクラの流れを見つめていると。
体内限定かと思いきや、薄く体表を覆い始めているのに気づいて冷や汗が背中を伝った。
あれは…絶対防御か?
日向流柔拳法にもない、俺が編み出したオリジナルの柔拳。
回転するチャクラで敵の攻撃を逸らす絶対防御の技。
リーの…螺旋掌とか言ったか?あの掌で回転させるチャクラの塊を見て完成に至った技が…
(お前の後追いになるのか?)
自然と拳を握り締めた。
努力が才能を凌駕するなんて事があるものか、と日向に居て自身の運命に辟易していた自分の足元に罅が入った様な気分だ。
悔しいが、術の想像力において俺はコイツに一歩劣る…!
もしも、お前が…と意味もない事を考えた時に振り返ったリーと目が合った。
「日向くん?何か用でも?」
いつもの様に何でもないような顔で
「ガイが、な。お前が無理をする可能性があると…」
念の為見てきてくれってよ。と伝えると苦笑しながら答えるリー。
「…信用がないね?まぁしょうがない事だけども」
現に試してたわけだし、何も言えない…でもこれは暴走の心配も、倒れる心配も無いんだよ。と頭を掻きながら続けるリーに思わず聞いてしまった。
「…お前は、なんでそこまで努力するんだ?」
正直お前にはそこまで才能が無い。
忍術、幻術は言わずもがな。
体術にしてもそこまで秀でているわけでもない。
「お前が俺に勝てる確率は0%に近い」
いくら表蓮華を会得したところで。
白眼から逃れられないレベルの体術では封殺して終いだ。
螺旋掌とやらも白眼の前では発動までの準備が丸わかりのため回避も容易い。
…考えれば考える程、お前に負ける要素が無い。
そう話を結ぶと黙って聞いていたリーが口を開いた。
「それが諦める理由になるのか?」
淡々とした口調で。
いつもの胡散臭い丁寧語が外れているのにも気づかずに
「確かに今は勝ち目が薄いだろう。でもな…」
続けられたその言葉に込められた自信と事実に気圧される。
その牛歩の歩みとも、誤差とも言える進歩でお前は歩み続けられるのか?
そんな考えが分かった訳ではないだろうが、それに対する答えが返ってくる。
「諦めなければ必ず叶う…なんて事を言うつもりはない。隔絶した実力差では無理な事もあるだろう。…でも諦めた奴にはそのチャンスすらないんだ」
俺はそのチャンスを死ぬ気で掴むつもりだから鍛え続けている。
断固とした口調で言い切るリー。
「日向くんが何を言いたいのかイマイチわかんないけど。俺は
そう言う奴の目は真剣なもので。
…その
「…言ってろ。お前が言う天才の壁がどれほど高いものかを教えてやる」
本気で追いかけてきた奴はお前が初めてじゃない。
…でも、今もなお追いつこうとしているのはお前だけだ。
この気持ちをなんというべきかわからないが、悪くない。
「せいぜい努力しろよ、リー」
その努力ごとねじ伏せてやる。
そう言うと何故か嬉しそうな顔になるリー。
「勿論そのつもりだとも。首を洗って待ってろよ日向くん?」
いずれその目線に並び立ってやる。
言外にそう告げる視線を受け止めながら思う。
もし、お前が俺の立場なら。
俺と同じように折れるのだろうか?
宗家への恨みを募らせて、それでも抜け出せない鳥籠に諦めを覚えるのか?
それとも、鳥籠の中だろうと関係ないと努力を積み続けるのだろうか?
もし、お前が本当に俺を超えられたのなら是非聞いてみたいものだ。
…そんな時が来ればの話だが。
捏造祭りwithネジ視点です。
八卦掌・回天をいつ習得したのか不明だったので螺旋丸モドキを見て完成に至ったと言うことに。
さらに謎の坐禅開門を見て勘違いが少し加速した感じですね…
次は中忍試験編まで話が飛ぶ予定です…少し時間がかかるかと思いますが楽しんでいただけたなら幸いです。
追記、八卦掌回天の記述を絶対防御に変更したしました…確かに技名を知っているのは不自然ですね。ご指摘、ありがとうございます。