ロック・リー転生伝 作:六亭猪口杯
すみません、次は中忍試験編と言いましたが間に少し挟ませて頂きます
下忍になってから暫くして。
今はほぼ日課に成りつつある日向との模擬戦を行っている。
日向との模擬戦もこれでもう何回目になるだろうか。
下忍になってからも暇があれば挑んでいたから優に100は超えているだろうが…
少し思考がズレ始めた俺を日向の声が引き戻す。
「それで終わりか?」
日向が白眼を発動した状態で俺を睨む。
既に数分やり合っているが俺の攻撃は全て見切られて回避、迎撃されている。
相手の柔拳も俺を捉えられてないからお相子と言った感じだが…制限時間のある俺の方が不利なのは間違いない。
「…まだまだ!」
開門状態でチャクラの流れを加速させた俺の踏み込みを見切った日向が軽くいなしながら柔拳を打ち込んでくる。
…ここだ!
「なっ…!?」
打ち込まれた指先を体表に薄く張ったチャクラの膜に巻き込んで逸らす。
当初の目的であった仙術チャクラを感知することは出来なかったが開門状態での瞑想による副産物として得た技術。
体表を薄く順転するチャクラによる急所外しである。
開門を使用してチャクラ量が増加している状態でしか使えないが相手の狙いを外せるというのは相手によっては大いに役立つ。
まぁ完全に逸らせる程の威力はないし、使用中は俺の拳も微妙に狙った所からズレると言う欠点もあるが…剛拳による外部破壊なら多少のズレは許容範囲内だ。
でもお前みたいな内部破壊の
「ッ甘い!」
間断なく打ち込んだ左拳を肩に薄く張ったチャクラの流れを組み合わせていなす日向。
今さっき見せたばっかりだってのに…!
「器用な奴だな」
「お前に出来るなら俺に出来ない道理は無い!」
互いに軽口を叩きながら距離を取って一息つく。
「流石に一筋縄じゃいかないか」
それだけに越える価値がある。
そんな思いを込めた言葉に不敵に笑いながら答える日向。
「当然だ」
その程度ではまだ届かない。
言外にそう告げる日向だが…
「それならコイツはどうだ」
再度突貫。左拳で相手の防御を軽く払う様にジャブ。
…さっきのチャクラを回転させる技術は使ってこないか。
それでも余裕で凌がれるが…本命は右の螺旋掌だ。
「それも見えている」
呆れた様な声とともに回避行動を取る日向。
螺旋掌…螺旋丸と同じように直撃させられなければ不発に終わるという欠点。
それを今までの模擬戦で良く分かっている日向には簡単に回避された。
でもまぁ避けられるのは想定内だ。白眼相手じゃいくら発動を早めても狙ってること自体がバレてしまう…だから使い方を変える。
と言ってもコイツには既に一度見せているが。
「何ッ…!?」
俺の右掌のチャクラを見た日向が驚いているが…その体勢じゃ気づいたところでどうしようもないだろ?
掌で回転するチャクラの塊を日向が躱した瞬間に炸裂させた。
下忍試験の時は両手に其々組み上げたチャクラの塊を互いに叩きつけて無理矢理破壊する様にしか使えなかったが、今は片手でも任意の場所で起爆可能だ。
…といっても目標地点でチャクラ量を急激に増やして制御を手放して解放してるだけなんだけど。
直撃と違って強制的に浮かす程の威力は出ないが…
起爆というより暴発に近いそれに引っ張られる様に体勢を崩した日向に踏み込みながら追撃を行う。
「木の葉旋風!」
上下段の連続回し蹴りが隙を晒した日向へと向かうが…
「…舐めるな!」
爆発する様に日向が放出したチャクラが異常な速度で体と共に回転した。
開門で強化された木の葉旋風を逸らせるのか!?
八卦掌・回天。
日向宗家の秘技である絶対防御の一つ。
実物を見たことがないから確実にそれだと判断できるわけではないが恐らくその原型に近い技を披露されて思わず笑みが漏れる。
互いに弾かれて再度距離が離れた。
肩で息をする日向を見て後一歩だったな…と思うと同時に。
奥の手を出させたという事実に、日向へ指先が掛かり始めてると感じた。
「それは俺の真似か?」
そうでない事は百も承知で挑発する。
…回転の技術である事は間違いないからこう言っても問題ないだろ、多分。
「バカ言え…オリジナルだ」
多少は参考にさせてもらったが。と憮然とした表情で答える日向。
「この技は全てを弾く。…お前に勝ち目はないぞ、リー」
そう告げる日向の構えは次で決めると宣言しているように思えた。
「面白い…今の俺が届くかどうか試させてもらう!」
開門の維持もそろそろ限界だ。
次で決めてやる…!
「来い!」
日向の言葉を皮切りに一気に踏み込んだ。
全力の踏み込みで飛び込む
要は懐に飛び込みながら掌底を打ち込む自分を弾丸とした特攻技だが…
「螺旋掌!」
先程弾かれた感触からして今の俺が回天で迎え撃つ日向とぶつかっても押し負けない方法は
回転する日向のチャクラにぶつかった右の掌打が軌道を逸らされそうになる。
流石に片手じゃ込めたチャクラ量の差から押し負けるか。
それを見て勝ちを確信したようだがまだ終わってないぞ日向!
「二段ッ!」
チャクラを集中・回転させる技術においては俺に一日の長がある。
その練度においては今はまだ俺の方が上だ。
逸らされた腕とは反対側の手にチャクラを集中。
身を以て知った日向のチャクラの回転方向へ逆らう様にチャクラを回す。
少し顔が強張った日向へ左掌に形成した螺旋掌を打ち込む。
逆回転のチャクラの奔流が受け流そうとする日向のチャクラと噛み合った。
一瞬の均衡の後、1発目で僅かに鈍った日向の回天と共に左手の螺旋掌も解ける…それでも俺の掌底は止まらない。
開門状態とは思えない程に速度が弱められた掌底が日向に直撃した。
「ッ!?」
驚きの表情に変わる日向…少し押されてよろめいた程度か…これじゃダメだな。
次はもっと腰を入れて…と考え始めた辺りでチャクラの流れが澱み始める。
「…降参!」
両手を上げて自分の負けを宣言する。
開門を閉じて反動に耐えているとこちらに向かって歩いてくる日向。
「さっきのはなんだ?」
そう言うと俺をじっと見つめてくる。
さっきのと言うと…
「最後の奴?」
螺旋掌で回転を無力化したアレの事か。
「それだ。なんで俺の防御を抜けた?」
理屈は分かるが…と不思議そうな顔をする日向。
「お前、他人のチャクラの回転方向なんて見えないだろう」
白眼や写輪眼でもあるまいし、と続けるのに対して
「一回食らえば回転方向は分かるよ」
チャクラの回転方向に関しては個々に得意な方向が決まっている。
これはカカシ先生が言っていた事だから間違いない。
さらに言うなら…
「後は…そうだな。日向くんの防御技って体ごと回転する必要があるよね」
腕ごと全身を回転させてるのが丸見えだし。
1発目でチャクラの回転方向と身体の回転方向に齟齬がない事を確認してついでに日向の回転を弱める。
2発目の逆回転させた本命の螺旋掌で撃ち抜いてぶっ飛ばそうとしたんだけど…思っていた以上に日向の回転の完成度が高く、本来とは逆回転の螺旋掌では威力が足りず相討ちになった。
その様なことを言うと度し難いものを見るような目で見られる。…お前も大概だろうに。
「…付け焼き刃では防ぎきれないか」
「それはこっちのセリフだよ…」
完全に無力化とは言わないもののもっと深く入ると思ってたわ。
これから日向の完成度が上がるにつれてさっきのやり方じゃ通らなくなる…また別の手が必要だな。
さてどうしたもんか、と回天を破る方法を考え始めた俺に日向が質問してきた。
「悔しいがチャクラのコントロールに関してはお前に一歩劣る。…何か、回転のコツがあるのか?」
珍しい…俺に助言を求めてるのか?
そんな思いが顔に出ていたのかそっぽを向きながら続ける日向。
「そんなものが無くても俺は負けやしないが…優れているやつから吸収するのは強くなる近道だからな」
…まぁ、構わないけど。
味方が強くなる分には大歓迎だし。
と言ってもコツって程のモノは…あ、アレかな?
「チャクラの回転方向については知ってる?利き手みたいなものがあるって言うのは…」
「勿論知っている」
なら言えることはもう無いんですが。
木の葉の里の名家である日向家ならその辺の事は常識として学ぶのかな?
…流石にそれだけじゃ悪いと思うので自分の修行内容を伝える。
「…それ以外だとコツなんてものは無い、かな。強いて言うなら体内でも同じように循環しているそれを表に出す。それを常に意識しながら生活すれば良いよ」
俺の場合は開門状態での回転を安定させるために行なっている修行だ。
開門を使っていない状態でも常に意識して回している。
…まぁこれに関しては重りをつけているからと言うのもあるけれど。
「やけに整ったチャクラだと思ってたらそんな事してたのか…」
修行バカが…と日向がバカを見る様な目で見てくるけども。
「俺の素質じゃそれぐらいしないと無理だからね」
後はまぁ…他の人が忍術や幻術に割く時間を全て体術やチャクラコントロール周りに注ぎ込めるからってのもある。
精神面でのコツ…と言うかモチベーションを保っている理由は近い未来に襲いくる脅威に対処するためには手を抜ける訳がないっていう後ろ向きなものだし。
まぁこれは言えないけれど。
そんな事を考えていたからか、日向の次の言葉を聞き逃した。
「努力の天才、か…」
ぼそっと呟いた言葉は良く聞き取れなかったが、納得したような表情に変わる日向。
「日向くん?」
コツを聞いたのに努力あるのみ!みたいな根性論を言ったから呆れたのか?
「…ネジでいい。日向だと他にも大勢いるからな」
そう言えば下の学年に日向ヒナタがいるんだっけか。
ナルトと同学年で卒業するヒロイン…まさかの正妻になるとは思わなかったけど、うずまき一族+日向一族って生まれる子の血統が最強過ぎだろ…
考えがとっ散らかったが、折角名前呼びで良いって言ってくれてるし有り難く呼ばせてもらうとしよう。
「そう…じゃ、ネジくんで」
やっぱり短い方が呼びやすくて良い。
「その胡散臭い言葉遣いは…」
胡散臭いとか思われてるのか!?
精一杯丁寧に喋ってるつもりなのに…
「一応気をつけてるんだけどね」
人間誰しも雑に扱われるよりは丁寧に対応された方が良いでしょ。
と言い訳する様にそう言うと
「そうか…まぁ、どうでもいい」
喋り方なんて個人の自由だしな。と続ける日向。
「そう言ってもらえると助かるよ…ごめん、あまり役に立てなくて」
チャクラのコントロールやコツについてはガイ先生に聞いたほうが良いと思うよ、と話を結んだ。
「ガイに?」
…普段の行動を見てると疑うのもわからなくもないけど、あの人上忍だよ?
「体術が主軸とはいえそこまでに積んだ経験値が桁違いだから」
人が良いというのも加味するとあの人以上の師匠はいない。
「チャクラコントロールなり忍術なり、あの人に教えられない事はないと思う」
今の俺達レベルなら間違いなく。
なんなら中忍試験編後でもあの人だけで完結しかねない位には知見が深い。
「とてもそうは見えないが」
未だに納得がいってない様子のネジに苦笑を返しながら
「人は見た目に依らないものだよ」
ガイ先生の場合は特に…
現木の葉の里における最大戦力の一角と言っても過言じゃない。
「…強いのは確かだな」
下忍試験の時に2人がかりで行ったのに手加減されてなお直撃とれなかったしね。
時間が許すならあの人の後を追うのが一番の近道なのが間違いないくらいにガイ先生は体術における理想形だ。
…肝心の時間が無い俺はあの人とは別の頂を作らなきゃ行けない訳だが。
「いずれ超えなきゃ行けない壁の1人だね」
まだまだ頂は遠そうだ…と遠い目になる俺の目の前で不機嫌そうに鼻を鳴らすネジ。
「…俺に勝てないなら夢のまた夢だがな」
流石に失礼だったな…
頭を下げて軽く謝罪してから口を開く。
「それはそうだね…次はその防御、打ち抜くから」
覚悟しておくように。
そう言うと何時もの不敵な笑みを浮かべながら
「お前の奇妙な技術を知った俺に隙はない」
次は寸分違わず点穴を突いてやる。と宣言された。
とまぁ、そんな感じのやり取りで模擬戦を終えた訳だけども。
大抵の場合は俺が新技を披露して、ネジに対処されて負ける事が多い。
最近はぶっ飛ばされるんじゃなくて開門状態の維持限界でタイムアップする事が多いけど…今日は一発入れる事が出来た。
白眼と柔拳を使うネジに。
回天らしき技を引き出させる事も。
絶対防御…最初の関門だな。
さてどうしたものか…と考えながらその日は解散した。
後日、日向の呼び方がネジになった事で先生たちから生温い視線を受ける事になってネジが少しキレたのはまた別の話。
普段はあまり出ないけど、年相応な所があるんだよな…