ロック・リー転生伝 作:六亭猪口杯
前回で次から中忍試験に入ると書きましたがまた少し捏造回を挟みます…
火影の執務室にて。
「最近の子は末恐ろしいの…」
三代目火影として任期を終えて。
四代目が九尾の暴走により亡くなってから再就任して早十年と少し。
大きな争いも無く、平和な時代と言って差し支えない十余年だった。
過去の様に大戦がある訳でも、里同士で戦争をしているわけでもない。小さな火種は各地にあるがもう血で血を洗う時代ではないのだ。それなのに…
「まさか二代目様の術理に近い発想の者が現れるとは…」
合理的に相手を殺す。
そのための手段として練り上げられた術の数々。
大半は禁術絡みのため世に出ることはもう無いと思っていたのだが…
「口寄せの術からたどり着くか」
互乗起爆札。二代目火影、千手扉間が得意とした忍術の1つ。
起爆札を媒介に2つの起爆札を連続して口寄せする文字通り乗算で増え続ける全体爆破の術法。
かつて穢土転生と併用して各里を恐怖のドン底に陥れた二代目を象徴する技術群の1つ。
「流石に止めざるを得まいて」
起爆札を纏めて叩きつけて大爆発を起こしたガイ班のテンテンのため策定された同時起爆枚数の制限。
その数日後に訪ねてきたテンテンに見せられた術。
『…どうですか!?これなら同時じゃないですよね!』
ニッコリと笑うその無邪気な笑顔に薄っすらと冷や汗を掻きながら。
『そうじゃのう…余計に悪くなっとりゃせんかこれ?』
何せ倍々ゲームで爆発力が上がっていくのである。
これならまだ纏めて爆破してくれた方がマシだろう。
…流石に口には出さないが。
『規制は破ってませんよ?』
ほら、最大で16枚までに収めてますし。と爆心地を見せられる。
『…儂の目がおかしくなければクレーターではなく穴が空いてるように見えるんじゃが?』
通常の互乗起爆札ではこうはならない。
まるでそこだけ集中的に爆破した様な独特な爆発跡である。
『はい!そこが肝なんですよ!』
これは
『その点この連続口寄せ方式なら呼ぶ度に起爆時間を僅かにズラせばある程度一点集中で爆発させられる事に気付きまして…これなら周囲に与える被害も少なくすみます!』
要は常に
『良く思い付いたものじゃ…だがのぅ』
と頭に手を置きながら言い含めるように伝える。
『この術は使用を禁ずる。…すまんがの』
えぇー…とがっかりした様子のテンテンを見て苦笑しながら説明を始める。
『これは二代目火影、千手扉間様が使用していた術の1つ。名を互乗起爆札と言う』
そう言うと驚いた表情で興味深そうに聞き入り始める。
無理もない。自分が見つけたと思った方法を既に先の火影が使用していたのだから。
『先の大戦で大いに使用されての。…他の里からの恨みも未だ根深い』
二代目の時代はまだまだ争いが絶えなかった。
里を守るためとはいえ非道な術も数多く使用されていた時代。その中で猛威を振るった術の片割れ。
使用後の結果は異なるが…どうしても
少なくとも今後二十年、戦争時に生きた者たちがいる内は表に出すわけにはいかん…
『恨みを買うことになるやも知れん』
そしてそれは木の葉の里全体への恨みへと容易く変わるじゃろう。と真剣に語ると息を呑むテンテン。
『故に禁術としておる…すまんの』
…この子は生まれる時代が違えば大成しただろう。
柔軟な発想から合理的な殺し方へ導くのに長けている。
この平和な時代にはそぐわぬ才能に少し哀れみを覚えるが…
『そうですか…』
とションボリしてしまったテンテンに
『代わりと言ってはなんじゃが…2つ程、取っておきの術を伝授しようかと思っとる。…興味はあるかの?』
そう告げるとまたもやパッと顔を上げるテンテン。
こういう所は年相応で可愛いものだ。
『それは勿論!三代目様は忍術のエキスパートですもんね!』
その…ともじもじしながら続ける。
『あの、綱手姫の使っていた術なんかは…』
綱手か…あれは医療忍術に長けた良い忍であった…今頃何処で何をしているのやら。
『医療忍術はちと難しいの…』
あれは適正がモノを言う。
その上で根気と時間を必要とする高等忍術故に使用者も限られている希少な術だ。
残念ながらこの子には然程適正が無いように見える。
…いや、時空間忍術への適正の方が高いと言うべきか。
『そうですか…いえ、大丈夫です!』
少し落ち込んだ様子だったがすぐに立て直した。
ナルトと違って大人びておるの…と感心しながら
『お主には時空間忍術への適正が見て取れる。これは大変希少な特性での…マトモに扱えたのは二代目と四代目火影のみじゃ』
当然ながら儂も全ては使えん。とカラカラ笑いながら続ける。
『儂も
この子の才を考えるといずれ
故に、今伝授する術は1つだが。
『二代目が考案した忍術…影分身を伝授しようではないか』
影分身。ただの分身と違って実体を伴う分身術。
性質変化を伴わない特有の分身術である。
…まぁ、色んな所でパクられた結果、ただの高等忍術になってしまっているが。
『分身の術、ですか…?』
やや不満そうな顔をするテンテンに要点を説明する。
この子ならそれで伝わるだろう。
『影分身は実体を伴う。この意味が分かるかの?』
つまりは手数を増やせると言う事だ。
そう言うよりも早く質問が飛んできた。
『ソレは自分だけですか?』
装備も分身されますか?と。
やはり頭の回転が速い。
『勿論、装備品も。…慣れれば忍具だけでも出来るとも』
ほれ、と適当に苦無を取り出して木に向かって投げる。
飛んでいる最中に印を結んで術を発動。
3本に増えた苦無が其々木に突き刺さった後に本体以外を消す。
木に空いた3つの穴が実体を伴っていた証明として残った。
『この様に応用も利く。どうじゃ?』
そう問いかけると少し目を見開いて感激…いや、アレは使い方を考えている顔じゃな?
幼い頃の大蛇丸を思い出して少し感慨に耽る。
アレも新しい術を目の前にするとこんな感じだった…
少しの間待つと、我に返ったのか慌てて答えてくる。
『…是非!その術を教えて下さい!』
これがどう転ぶかは分からないが…忍が自分で考え抜き、作り上げた術を取り上げるのだ。それなりのモノを対価として出さねば不公平だろう。
『よろしい!ではまず印の結び方から…』
あの日から業務の後に少しの間教える時間を作っていたが…比較的早くに自身の影分身を作れるようになっている。
あの子は少しチャクラコントロールに難があるが致命的ではない。
潜在チャクラ量もギリギリ多重影分身が発動できるレベルにはあるから難易度は上がるにせよ手裏剣影分身くらいなら使えるようになるだろう。
何よりも
多少チャクラコントロールが下手でも無理矢理発動できるという点が利点であり欠点でもあるのだから。
あの子もそうだが今年の中忍試験は豊作になりそうだ、と手元の書類に目を通しながら思う。
ガイ班…第3班の中忍試験受験のための提出書類だ。
日向ネジ。
日向の分家にして既に宗家の後継ぎを超える天賦の才を見せる新進気鋭の忍。
血継限界の白眼と柔拳の組み合わせもさることながら現場での適切な判断から来るリーダーシップが班の要として重要な役割を果たしている。
「少し性格に難はあるものの最近は軟化してきている、と…」
ガイからの報告を合わせてみると既に下忍にしておくには惜しい程に優秀だ。
家のしがらみから来る因縁は未だ燻ぶっているのか定かではないが…このチームメイトに恵まれてそれがどう転ぶのか、注意深く見ておかねばな。
テンテン。
言わずと知れた問題児その1。
最近になって2つも規制をかけ直す事になった原因の子。
里の周辺被害の大きさで言えば近年稀に見る破壊者でもある。
口寄せをメインに据えてからはサポートだけではなく攻撃にも転用し始めたという二代目の術理に迫った娘。
「発想が柔軟なのは良いことなのだが…」
規制を掛けても明後日の方向に潜り抜ける思考がどのように花開くのか。
今後が楽しみでもあり、恐ろしくもある。
ロック・リー。
問題児その2である。
…初めて存在を知った時は目を疑った。
まさか下忍にもなっていないアカデミー生が八門を開くとは。
その後の経過を聞くに現在では五門まで、負担を考えないなら六門まで開けられる可能性がある体術の
この子に忍術の才があったのなら…と思わずにはいられない発想の柔軟さが大きな武器になっている。
四代目の螺旋丸を会得したとの情報もあるゆえチャクラコントロールに於いても下忍の中では頭1つ抜けていると見て良いだろう。
…テンテンの話を聞くにどうも連続口寄せの発想はこやつから得たようであったし。
「そう考えると一番の問題児じゃな?」
八門を開いた当時、四代目の術理に偶然とはいえ到達しかけていたのもあって上層部でも意見の分かれる存在だ。
ガイの報告によれば班が上手いこと回っているのはこの子の存在も大きいとの事だが…
「…本来なら研究職に就いて貰いたいくらいだの」
あの歳で二代目と四代目の術理に到達する発端を掴める才。
現場で使うには些か惜しい…が。
「もうその様な時代でもない、か」
里の未来を背負う子供達に行先を強制しなければならない様な時代ではない。
才能如何によらず成りたいものを目指せるというのは平和なこの時代ならではの贅沢と言えるだろう。
なによりもそのために我々は尽力してきたのだから。
その様な事を考えていると執務室の扉がノックされた。
「火影様、例の子供が来ておりますが…」
通してもよろしいでしょうか?と護衛の忍から声が掛かる。
「通して構わん。…ちょうど一段落したところじゃ」
そう告げると件の娘、テンテンがロック・リーを伴って入室した。
「三代目様、少しお時間頂いてもよろしいでしょうか…?」
申し訳なさそうな顔で聞いてくるテンテンに
「構わんとも。して、今回は何の用かね?」
珍しく連れ合いもおるようじゃし。と続けると
「例の術について、リーの考えが正しいのかを知りたくて…」
と隣の少年…ロック・リーを促すと。
「…三代目様。影分身について少しお聞きしてもよろしいですか?」
何やら不安そうな顔じゃが…
「構わんよ。…口外することは禁止じゃが」
そもそも他里にも知れ渡っていることだから知られたところで大して痛くもないが。
一応木の葉の秘術につながるため釘を刺す。
「それは勿論です。…聞きたい事は術の解除時に関することなんですが…」
つらつらと聞かれた疑問の要点をまとめると。
影分身の術を解除するとその体験は本体に還元されるならそれを利用した修行は可能か?
そして経験が引き継がれるなら…仮に自爆などをした際はそれもフィードバックされるのか?
以上の二つに集約された。
影分身が優れている点はまさに一つ目のそれに尽きる。
経験を情報として回収できる故に使い捨ての斥候としてとても有用なのだ。
しかし…ふむ、修行への利用は考えつかなんだ。
確かに経験を積むだけなら効率は単純に倍になる。
数多の失敗を短時間で積めるし、成功体験を即座に吸収できるからの。
筋力などには効果はないがチャクラコントロールなどの技術に関しては確かに有用な方法である。
しかし…それは影分身を長時間維持出来るだけのチャクラがあってこそ。
テンテンのチャクラ量では短時間で切れてしまうだろう。
そう答えるとどこか納得した様子のリー。
学者気質だのう…
その隣で聞いているテンテンは次の質問が重要なのだと言わんばかりに聞き入っている。
…また何か良からぬことを考えておるな?
「…二つ目の質問に関しては…仮に消されるほどのダメージを受けても本体には然程影響はない。この術の優れている点は
どこそこで爆発した、という情報だけを受け取る形になるだろう。
そういうと満足そうに頷くテンテンと不味い…といった顔のリーが礼を言ってくる。
「お答え頂き、ありがとうございます!」
「ありがとうございます…」
「後輩の質問に答えるのは先達として当たり前じゃ。気にせんで良い…じゃが」
何を考えているのかは教えて貰っても?と聞くと良くぞ聞いてくれました!と言わんばかりに語り出すテンテン。
「実はですね…」
ネジ達との修行中に考えた事なんですが…と続ける。
「組み手している相手がいきなり自爆すれば初見ならほぼ通るんじゃないかと!」
満面の笑みで答えるテンテン。
確かに目の前の相手が突然爆弾に変わったら大抵の相手はダメージを負うだろう。
…肉体的にも、精神的にも。
「起爆札を仕込んでおけば使い捨ての人間爆弾が完成すると言う訳です…」
少し引いた様子のリーが続きを話しだす。
無理もない…仲間がいきなり自爆する戦法をやろうとしているのだから。
「影分身なら消費はチャクラのみで済みますし。起爆札の装備だけは本物を積む必要がありますが…」
その内起爆札ごと影分身しそうだな…と呟くのを見て少し絶句した。
一体何がこの子をそこまで突き動かすのだ…?
「…理論上は確かに可能じゃの。倫理観は欠片もないが」
ようやく絞り出した答えに
「ほら!イケるじゃないの!」
と隣のリーに肘打ちしながら言うテンテンを見て
「ちゃんと話聞いてた?倫理観が無いって言われてるよテンテンさん…」
少なくとも味方に使う術じゃない。と断言するリー。
「…ダメかな?」
「ダメでしょ。流石にネジくんもブチギレるよ…」
仲間との模擬戦で使う気だったのかと戦慄する。
いきなり仲間が自爆する様を目の前で見せられるとか酷過ぎて目も当てられん…
「悪いことは言わん。止めておきなさい」
真剣に注意する。
流石にこれを見過ごすわけにもいかん。
互乗起爆札よりもヤバい使い方をさせては本末転倒だろう…
「ほら、三代目様もこう言ってることだし」
その使い方は止めとこう?と宥めるリー。
それを聞いて渋々頷くテンテン。
「わかったわよ…三代目様、申し訳ございませんでした」
頭を下げる2人に対して微笑ましいやら末恐ろしいやら…
どうやら発端はリーの方でもアクセルを踏み抜くのはテンテンの方だったようだ。
「気づいてくれたのなら良い…リーよ、テンテンを良く見てやってくれ」
後半は耳打ちするように告げる。
ブレーキを踏む人間が居なくなったらどうなるかわからん…
「…かしこまりました。できる限りはそうします」
その返答と同時にそろそろ…と護衛の忍が声を掛けてきた。
「おっと、もうこんな時間か。すまんがお開きとさせてくれ」
次の予定が詰まっておるようじゃ。と笑いながら言うと。
「はい…本日はありがとうございました!」
と頭を下げて退室する2人を見送って少し考える。
ガイの奴め一体どういう教育をしておる…
影分身とはいえ自分を人間爆弾にする策を思いついて実践しようとするか…?
それこそ穢土転生と起爆札の相性の良さを知ってのことだとしか思えん発想だ。
「少しはやまったか…?」
影分身を伝授したのは互乗起爆札を禁止する対価としての事だったのだが…余計に禁術方面に近寄るとは思わなんだ。
「扉間先生…あなたならどうしましたか…」
少し感傷に耽りながら考える。
きっと大いに褒める事だろうと思い少し笑みがこぼれる。
あの人は厳しいようでいて子供に甘い人だったから。
それにあの子が大蛇丸の様になるとも思えん。
先程テンテンを宥めていたチームメイトの1人、ロック・リーを思い出しながら笑う。
あの様な友人が居るのなら。
きっと正しい道を歩き続けてくれるだろう。
…ブレーキをかけるのが切っ掛けを作ったであろう張本人であろう点が若干不安だが。
現状を三代目が知った場合こんな感じになるかな…と言う想像からこんな形になりました。
多分二代目の時代なら褒められたことでしょう…平和な現代においては異端に近いですが。
他の里の感情を考えると互乗起爆札も禁術指定されてて然るべきな気がしたので禁術とさせて頂いております。穢土転生と併用してたっぽいので印象も最悪でしょうし…
テンテンに禁止カードが2枚追加されただけの話になってしまいましたがご容赦頂けますと幸いです…