ロック・リー転生伝   作:六亭猪口杯

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努力と天才と…

 

 

ガイ先生と邂逅してからしばらくして。

何時も通りアカデミーで授業を受けた後、いつもの修行場へと向かう途中でナルトを見掛けた。

 

そう言えばナルトって留年してんだっけか…と同学年になった時に思い出した。そのくらい修行に集中してたとも言うが。

 

(何をしてるんだ?)

 

ペンキっぽい何かを担いでえっちらおっちら歩いている。

それを見て遠巻きにヒソヒソと話している大人達。

 

(…やっぱ胸糞悪い光景だわ)

 

自然と顔が歪んだ。

里ぐるみで排斥するくらいならとっとと放逐でもなんでもすれば良い。そうでないならせめて見えない所でやるくらいの知恵を見せろよ…深呼吸を一つ。精神を落ち着かせてから声を掛ける。

 

「うずまき君、何をしてるんだ?」

 

突然話しかけられて驚いたのか持ってるものを取り落とすナルト。

 

「え、あ、俺!?」

 

「君に向かって話しかけてるんだよ?」

 

落としたモノを拾うのを手伝いながらそう言うと。

 

「そりゃまあそうだってばよ」

 

何か納得してないような、嬉しいんだか困惑してんだか分からない顔で答えるナルト。

 

「で、それは?家の塗替えでもするのか?」

 

ペンキ缶を指差しながら問いかける。

…それにしては色が派手すぎる気もするけど。

 

「あー…これは…」

 

バツが悪そうな顔で言い淀む。

…悪戯用か。

 

「…あまり派手にやらないようにな?イルカ先生いつかハゲちゃうよ」

 

良い先生なのは間違いない。間違いないんだけどちょっと優しすぎる気もする人だからあんま心労を掛けないようにしたほうが良い。

そんな感じの事を淡々と言うと。

 

「…関係ねーじゃん」

 

「そりゃまぁそうだけども」

 

そっぽを向いてむくれるところを見ると言われてる程ヤバい奴とは到底思えないんだけどなぁ…まぁこれは主人公だと知ってるからかもしれないけど。少し贔屓目に見てしまうのは許してほしい。

 

「じゃ、俺はもう行くから」

 

修行に遅れが出るのは不味い。

1日の遅れは3日掛けないと取り戻せないのだから。

 

「あ、あのさ…」

 

ナルトが立ち去ろうとする俺を呼びとめる。

 

「なに?」

 

振り返って用件を聞く。

何か言い難そうにしてる…ってよりは照れてんのかこれ?

少しの間待っていると意を決したように少し大きな声で

 

「ありがとうな!」

 

お礼の言葉を口にした。

 

「どういたしまして」

 

別に落としたモノを拾った程度だし。

と、そのまま立ち去るのも何だと思って最後に一言つけ足した。

 

「じゃ、また明日」

 

「!おう!また明日!」

 

嬉しそうな声を後にしながら今度こそ修行場へと足を向ける。

…周りのヒソヒソ話が俺にも向く様になった。

ちょっと話しただけでこれかよ…と辟易しながら無視して歩き続ける。

 

アイツ(ナルト)、良くこんな連中を許したよな…

俺がそんな立場なら火影になった時に粛清の嵐だと思うわ。

胸の中のモヤモヤを発散させるために走り出す。

 

(こいつらも後数年で手の平返すんだろうか)

 

そんな嫌な事を考えながら。

 

 

 

 

 

「聞いたぞリー!青春してきたらしいじゃないか!」

 

いつもの様に身体を苛め抜いて居るとまたガイ先生が顔を出してくれた。いつの間にか後ろに居るのは止めてほしいな…心臓に悪い。

 

「すみません、心当たりがまるでないんですが…」

 

ちょっと考え込んだがガイ先生の言うような青春らしいことなんてしてないぞ?

先生の言う青春って河原で殴り合いとかそう言う奴でしょ?

 

「照れてるのか?学友と一緒に話してたんだろう?」

 

あー…あれか。

ナルトと少し話した件。

あの後の気分の悪さを思い出して少し顔が歪んだ。

 

「別に…普通の事でしょう」

 

そう、普通の事だ。

クラスメイトと偶々会ったから声を掛けた。

それだけの話。

 

「それもまた青春!偶には修行を休んで楽しむのも悪くないぞ!」

 

そう言うとウンウンと頷くガイ先生。

暑苦しい人だなぁ…嫌いじゃないけど。

 

「お気持ちだけ受け取っときます」

 

そう言うと再度丸太に突きを繰り返す。

 

俺にはそんな暇は無い。

人より努力しなければ身にならない俺は他の連中が休んでる間も努力してようやく追いすがれるのだから。

 

「うーん…これは重症だな…」

 

小さな声で呟くガイ先生。

別に困ってないんだし良いじゃん…

 

ようやく拳にチャクラを集中させるコツが掴めて来たんだ。

今日中にある程度はモノにしたい。

 

「フッ、ハッ!…別に遊んでない訳じゃないですよ」

 

拳を叩きつけながら返答する。

 

「アカデミーの休み時間には読書なんかもします」

 

基本的に体術関連の書籍だけど。

体の動かし方なんかは変に我流でやるよりある程度型があった方が身に付きやすい。

 

「それは遊ぶとは言わんぞ?」

 

溜息をつきながら近づいてくるガイ先生。

 

「もっと周りに目を向けろ。青春時代は短い!」

 

だからこそ!と声を張るガイ先生。

 

「学ぶだけでなく楽しめ!」

 

ニカッと笑う先生に。

 

「俺はコレ(修行)が楽しいんで」

 

昨日の自分より僅かでも強くなっていると実感出来るから。

牛歩の歩みにもどかしさを感じることはあっても。

停滞していないと言う事実が俺に成長している実感をくれる。

そんな事を途切れ途切れに返答すると。

 

「…全く、努力の天才だな」

 

呆れた様な声でそう言うガイ先生。

天才、天才ね…

 

「俺に才能は有りませんよ…そんなものが少しでも有ったのなら此処までやってません」

 

他の綺羅びやかな才能の原石達を観ているとつくづく思う。

俺に彼らの半分でも才能があればと。

 

「そういうことじゃ無い…やり続けられる事、それが一つの才能だって事さ!」

 

それなら尚更俺には才能なんか無いんですよ先生。

 

「だとしたら、やっぱり俺には才能が無いんですよ」

 

俺があの同学年の天才、日向ネジになってたとしたら。

多分此処まで修行漬けな生活にはなってない。

今の半分でも十分過ぎる程に伸びるだろうから。

 

「皆の半分…少しだけでも良い。才能が有ったなら此処までやれてません」

 

人より努力しなければ身に付かない。

原作並みに強くなれたとしても物語の途中で戦力外になる程度。

だから死に物狂いで修行しているだけ。

 

「こんな状況に置かれたら誰だって…」

 

そう言いかけた時、視界がふさがった。

目を白黒させていると

 

「それでもお前は努力している。…それは誇っていい事だ」

 

ようやく今の自分が抱き締められている事に気付いた。

…背後から来たはずなのにいつの間にか対面してる形にされてる。

本気の速度だと何をされてるのかすら分からないとは…

 

「誰にでも出来る事じゃない」

 

実力の差に愕然としているとポンポンと背中を叩かれる。

 

「リー。それはお前の才能だ」

 

……今までの努力は間違ってない。

そんな事は俺自身が分かっている。

それでも…

 

「ありがとう、ございます」

 

他人からソレを認められたのは初めての経験だった。

上手く言葉が出てこない。

何を言うべきなのかも。

 

「良し!修行が一段落したら夕飯を奢ろう!」

 

なんでも好きな物を食っていいぞ!暑苦しい笑顔と共に抱擁を解く先生。…解放される時に少しだけ。本当に少しだけ寂しさを感じたのは気の所為だ。そうじゃなきゃ俺が寂しがりやみたいじゃないか。

心の中でそう言い聞かせながらガイ先生に向き直る。

 

「…なんでも良いんですか?」

 

「男に二言は無い!…あまり高い所は無理だが」

 

最初と違って少し情けない先生の様子に少し笑みが溢れた。

 

「お、今笑ったな!?」

 

「笑ってません。…ありがとうございます」

 

丸太を見つめながら照れ隠しの様に修行を再開する。

丸太を叩く音だけが響く。

無言の時間が不思議と居心地の良いものに感じていた。

 

 

 

「ガイ…上忍。少し良いですか?」

 

暫く…1時間程だろうか。丸太を叩き続けていた手を止めてガイ先生に話しかける。

思わず先生と呼びそうになったのを訂正したが気付かれただろうか?

 

「どうした?」

 

それに気付いただろうに何も聞かず答えてくれる。

ありがたい人だ。

 

「チャクラを拳に通わせる時のコツは有りますか?」

 

まだ師弟の間柄でもないのに図々しいとは思うが恥を忍んで聞く。

 

どうにもある一定ラインから進めなくなった。

拳を振り始めるタイミングでは問題ないのにインパクトの瞬間には半分以下になってしまっている。何度も試して見たがどうしても最後まで維持できない。

 

「ふむ…要は拳が当たる時に集中し切れて無いからだな」

 

そんな俺に気にした様子もなく応えてくれる先生。

つまりだな、と実演を始めた。

…キレイな突きだ。態と見やすい速度で振ってくれているのが分かる。拳が丸太に当たった時の音も俺のものとほぼ変わらない…力加減を合わせてくれているのか。

 

「リーのやり方も間違ってはいない。防御と攻撃を両立するなら常に通わせた方が良いのは確かだ」

 

その歳で大したものだ!と褒めながら。

でも…と再度拳を振り抜く先生。

さっきと違って力みが少ない、のか?

丸太に当たった時の音と衝撃の質がハッキリと変わった。

 

「そのやり方は謂わば応用に近い。基本的なやり方はインパクトの少し前に集中させるんだ」

 

コレなら消費するチャクラも半分以下で済む。と続ける先生。

 

「…寧ろそっちの方が応用に聞こえるんですが?」

 

「常に均等に通わせるというのはそれだけ集中力を必要とするからな!その歳でそこまで使えているのが不思議なくらいだ!」

 

俺でも戦闘中常にはやらん!と笑う。

 

「水の上に立ち続けながら殴り合うより踏み込む一瞬だけ集中する方が楽だろう?」

 

結果としては同じだ。と説明を受けて納得した。

 

確かに、さっきまでの俺はチャクラのコントロールに気を取られ過ぎていた。その上で拳を繰り出すと言う2つの動作を同時に並行してやっていたのだから当然の結果だと言える。

 

「成る程…ありがとうございます」

 

聞いて応えてくれる人がいると言うのは非常にありがたい。

 

丸太に向き直って集中する。

拳を握って何千、何万回と繰り返して来た突きを繰り出す。

丸太に当たる瞬間だけ…!

先程までとは全く違う感触に目を見開いた。

 

「…!できた…!」

 

「素晴らしい!良くやったなリー!」

 

ようやくモノになった!

喜びを噛み締めながら再度拳を振り抜く。

先程と同じ感触を得て自然と笑みが溢れる。

 

この感覚か!コレならほかの部位にも応用しやすい!

 

「出来た!出来ましたよ先生!」

 

あなたのお陰です!と喜びを隠さずに伝えると

 

「お前の努力が実を結んだ結果だ!」

 

自分の事かのように喜んでくれるガイ先生。

 

「これでまた一歩前進だ!」

 

成長を噛み締めていると。

 

「そうだ!一歩ずつ、ゆっくりでも良いから進み続けるんだ!」

 

暑苦しい笑顔と共にサムズアップする先生に。

自然と俺もサムズアップを返していた。

 

「…っ!これはその、違くてですね!」

 

できる事が増えてついテンションが上がってしまったというか!と言い訳する俺を見つめながら

 

「ハッハッハッ!恥ずかしがる事は無いさ!嬉しい時はそうと示して良い!」

 

ようやく年頃らしい顔を見せてくれたな!と豪快に笑うガイ先生にバツが悪くなってそっぽを向きながら言う。

 

「からかわないで下さいよ…」

 

「からかってなんかないさ!ありのままの自分を出してくれたのが嬉しいんだ!」

 

そう言いながら俺の肩を叩くガイ先生。

…良い人だよ本当に。

 

「そろそろ時間も遅い。約束通り飯でも食いに行こうか!」

 

そう言うと先生は俺を先導するように歩き出す。

少し遅れて歩き出す俺に歩幅を合わせて歩いてくれている。

 

…もし、俺に親がいたとしたら。

こんな感じだったんだろうかと少し感傷に浸ってしまった頭を振って変な考えを追い出す。

そんな感情は邪魔なだけだ。修行に役立たない事は捨て置かないと。

 

強くなる。それ以外の事を切り捨てて行かなくちゃ俺は皆に追いつけない。

今日得た技術だって日向ネジやうちはサスケなら難なく使える程度のモノに他ならない。

 

俺にはそんな暇(余裕)は無いんだぞ、ロック・リー。

アカデミー卒業、下忍を経て中忍試験までもうそんなに時間は残されていないんだから。

 

そんな事を考えながらガイ先生の後に続いて歩いた。




少し続きました。
チャクラとスタミナの関係と忍術・幻術と体術の関係がちょっと分からなかったのと、スタミナオンリーであの身体能力は無法では?という感覚で拙作では身体強化=チャクラを使う。とさせて頂きます。綱手やサクラの場合はその精度がズバ抜けて精密になっている想定です。謂わば筋繊維一本一本にチャクラを通わせて強化してる感じですね。
一般忍者はなんかこの辺に通わせとこ。って感じの適当加減だと思っていただけますと幸いです。
…そうですね。念能力の強化系みたいなイメージになってます。

また、原作でのリーに家族の描写が無かったため天涯孤独になってしまっています。
ご容赦頂けますと幸いです。
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