ロック・リー転生伝 作:六亭猪口杯
超難産でした…序に過去一長い文章になりました…
※色々な捏造、時空の歪みがあります。ご注意下さい。
我愛羅に削がれた左腕の治療で医務室へと押し込まれた後。
医療忍術を間近で見る機会を得て治療の間じっくりと観察していたんだけども。
…これはちょっと覚えられそうに無いな?
今までのチャクラコントロールとは全くの別物だ。
何がどうなって治療に結びついてるのか皆目見当もつかない。
医者のチャクラが入ってきたと思ったらより細かく細分化して俺のチャクラと区別ができなくなった。
試しに動かしてみようとすると
『…治したいなら今は大人しくしなさい』
と注意された。
すみません、と頭を下げてなすがままに任せるしかなく。
その後は体内を流れるチャクラの動きに集中していたんだけど…繊細過ぎて掴みにくいなこれ。
例えるなら俺がやってた八門の制御は
医療忍術は少量のチャクラで血管の一つ一つを通し続ける様な繊細な技術だ。
螺旋丸の回転を抑える代わりに更に細分化した回転を個々に精密に動かす感じと言った方が良いだろうか。チャクラによる精密操作の極み…これはもう芸術と言っていいレベルだな。
それを他人の体内でやってるんだから脱帽モノである…これは使用者が少ない訳だ。
一人納得しながらも何とか切っ掛けを掴めないかと集中していると
「そんなに気になるのかい?」
じーっと見ているのを不安に思っているのと勘違いしたのか、心配しなくても直ぐに元通りになる。と続ける医者の先生。
「今回は運が良かった…真皮まで持ってかれた部分が少ないからね」
多少傷跡は残るだろうが戦闘に支障はないだろう?と冗談混じりに言う。
「左手の経絡系に少し負荷をかけ過ぎた様だけど…まぁこの分なら問題なく治るよ」
…五門まで開いた反動、と言うよりは最後の螺旋丸が影響してるっぽいな。最近では経絡系にまでダメージが残ったのは六門を開いた時だけだし。
「骨の方も罅が入ってる程度だから一月もあれば元通りさ」
関節が外れかけてたからそれも込みでね?と微笑む先生。
…見た目がスプラッタだったのにテキパキと貼られていく札で覆われた左腕は既に痛みが引いていた。
「凄いですね、先生」
これなら直ぐにでも殴り合えそうだ。と笑いながら答える。
添え木がちょっと邪魔だが使い方次第では左でも思い切り殴れるな。
「ハッハッハ!冗談がうまいな君は!」
そんな事をしたら次は完全に折れるぞ?と真剣な目で忠告される。
「全治一ヶ月が三カ月になっても良いなら別だがね?」
それは困る…確か三次選抜の本戦は一ヶ月後のはずだし。
「肝に銘じます…」
少なくとも一ヶ月は左腕の使用禁止か…とは言え我愛羅戦の代償としては破格である。
そういえば…
「砂隠れの…我愛羅くんは?」
流石に同じ部屋に通すわけにも行かない、と別室で治療を受けているって話だったけど大丈夫だろうか?
…主に情緒の面で。
そんな事を考えているのがバレたのか、少し眉を寄せながら答えてくれる先生。
「問題ないよ。今はお偉いさん方が話を聞いてる最中さ」
さぁ、もう行っていいよ。君のガールフレンドを待たせても悪いしね?と茶化す様な声と共に部屋を追い出されて廊下に出る。
ガールフレンド…?と首をかしげる間もなく。
「あ、リー!」
大丈夫だった?と廊下で待っててくれたテンテンが気遣ってくれる。
確かに
少し諧謔を楽しみながら答える。
「一ヶ月もすれば元通りだってさ。…ちょっと修行内容を考えないといけないな」
左腕だけ弱ったままじゃ木の葉崩しも…その後の君麻呂とやり合うのにも不足が過ぎる。
そんな事を考えながら顔に出さず続ける。
「あの後予選はどうなったの?」
「私と砂隠れのテマリって子だったよ」
勿論勝ちました!とVサインを向けてくるテンテンに笑いながら
「おめでとう!…相手は大丈夫だった?」
祝いの言葉と共に冗談混じりにそう聞くと。
「生きてるってば!…最後はちょっと麻痺毒で痺れてたけど」
後遺症は出ないはず…と続けるテンテンを見て苦笑を返す。
どうなるか分からない組み合わせだったけどテンテンが勝ったのか。口寄せに特化し始めてからはサプライズボックスみたいな存在に成りつつあるからそうなったのも納得出来る。
取り敢えず無事に終わった事にホッと胸を撫で下ろして他の試合がどうなったのか聞くと。
「リーが助けた…うずまきナルト?が
あれは凄かった…と呟くテンテン。
それでも何処か納得行ってない表情を見ると多分多重影分身の件なんだろうなぁ…
ナルトの化物地味たチャクラ量からくる物量攻撃はテンテンからしたら喉から手が出るほど欲しいだろうし、使い方にもどかしさを覚えそうでもある。
「あれだけのチャクラ量が有って初めて使用可能になる術…間違いなく禁術の一つだよね
凄く
そう呟くテンテンはどうでも良いけど…と言いたげな表情で続ける。
羨ましい…ってよりはあくまでも仮想敵として見てるだけだなこれは。
「今はまだ脅威じゃないけど…確かにリーが気にするだけはあるね」
膨大なチャクラ量に物を言わせられるなら自身の上位互換になり得ると言う考えからだろう。
…考えすぎ、とも言えないのが怖い所だが。
それにしても試合を一度見ただけ、それも犬塚家の子との一戦からそこまで見抜くか。
人とは変わるものだな、と感慨深くなりながら答える。
「…
原作でぶっ壊れたインフレに適応し続けた主人公だから当然の事だけど。
流石に口には出さないけど。
「それだけが理由じゃないけどね?」
本人の気質もあって話していて楽しいんだよ、と続ける。
多分ちゃんと話せばテンテンさんも気に入るんじゃないかな?
「そうなの?…ま、リーの物好きは今に始まった事じゃないか」
「今はテンテンさんも普通に話すじゃない」
苦笑しながら答えると
「それは勿論。大分話しやすくなったし」
肩をすくめながら笑うテンテン。
大分丸くなったよね…第三班を結成した時とは大違い!と感慨深く笑う彼女に
「違いない」
笑いながら続ける。
「それで、他の組み合わせは?」
「あれ?喜んであげないの?」
不思議そうな顔で友達なんでしょ?と聞いてくるが…
「ナルトくんなら勝つと信じてたからね」
相手がネジやテンテンさんじゃなければ。と笑いながら答える。
「まぁ良いけど。でもあの子…同じ班のサクラは負けちゃったわよ?」
相手が悪かったのもあると思うけど…純粋に力不足感は否めない感じだったわ。と続けるテンテン。
「そっか…相手は?」
「猪鹿蝶トリオの
…心転身の山中家か。
原作通りの組み合わせだな、と安心すると共に不安が募る。
この分だとネジの相手は…
「さもありなんだね…」
「こっちは随分とドライな事で」
呆れたような声のテンテンに別に友達って訳でもないからね、と苦笑しながら答えると。
後は奈良家の子が音隠れの奴に勝ったよ?特に見るべき所もなかったけど…と呟くテンテン。
「そうなの?」
てっきり頭脳戦であっと言わせたのかと思ってたけど…
「音隠れの奴が直ぐに降参したから。…次の秋道家の子は油女家の蟲使いに負けちゃったけど」
虫の速度はそれ程でもないけど奇襲性の高さは要注意って感じ。
私なら範囲攻撃で押し潰すか起爆札で吹き飛ばすかな?と感想を交えて話し続ける。
「後は砂隠れの傀儡使いが音隠れに勝って本戦出場したよ」
ギミックを披露する前に勝った…というよりは音隠れが棄権したから手の内は不明だけど。と続けるテンテン。
これで
「じゃあ次の試合が最後になるのか…」
嫌な予感はしていたけど、ネジの相手は…
「ちょっと休憩を挟んでネジと日向ヒナタって子だってさ」
やっぱり原作通り日向ヒナタか…ネジがどう出るか分からないな…
少し…というか大分丸くなってはいるが日向家の確執についてはどう思ってるのか一切聞いたことが無いし…
「そう…ネジの様子は?」
「?別にいつも通りだよ?」
ムスッとした感じ!と笑いながら答えるテンテンに苦笑を返す。
「そっか。…じゃ、応援しに行くとしますか」
「ネジが負けるとは思えないけどね〜」
気楽そうな声と共に歩き出すテンテンについて行きながら。
ネジの奴、熱くなりすぎなきゃ良いんだけど…
少しの不安と共に会場へと足を伸ばしたのだった。
会場に着くと既に準備万端といった感じのネジと、付き添いのガイ先生が待っていた。
「…来たか」
もう大丈夫なんだろうな?と目線で聞いてくるネジに
「全治一ヶ月だってさ」
笑いながら固定された左腕を軽く掲げる。
痛みがないから余り深刻に感じないな…気をつけないと普通に使っちゃいそうだ。
寧ろ五門を開いた反動の方が重く感じる…医務室で寝転がってた理由の大半は五門まで開いた反動のせいだしね。
そんな事を考えているとネジから少し安堵したような表情で
「そうか…まぁ心配はしてなかったが」
と言われた。
どういう意味?と聞き返すと。
アレだけ満面の笑みなら問題なかろうと思っていたらしい。
…そんなに笑ってたかな俺?
「そりゃもうニッコニコだったよ?」
あんな表情初めて見たもの。とからかってくるテンテン。
そうだったっけ?と頬を掻いて誤魔化していると
「リー!無事で良かった…!!」
ガイ先生から左腕に負担が掛からないように気を使ってくれたのか抱きついてくることなく軽く肩を叩かれる。
「ガイ先生…俺、やりましたよ」
まだ道半ばではありますが…と続ける。
「また一歩前進できました。…ありがとうございます」
そう言って頭を下げた。
「…お前の努力の結果だ。俺は少し手助けをしただけに過ぎん」
互いに譲り合っていると
「…俺の試合前だってことを忘れてるんじゃ無いだろうな?」
ムスッとした顔で呟くネジの声で我に返る。
「ごめんごめん、つい…」
「ッ!?すまなかった…!!」
俺は軽く、ガイ先生は平身低頭で謝る。
「別に構いやしないが…」
気が抜けるやり取りは後にしてくれ、と苦笑するネジ。
…これは思ってたよりも平気そう、かな?
「さて、そろそろ時間だな」
そう言うとネジは軽く伸びをして身体を解すと階下へと歩き出す。
その背中に向かって各々が応援の言葉を口にする。
「頑張ってね、ネジ!」
「お前なら出来るぞー!!」
「…負けないでよ?」
俺達の言葉を受けて後ろ手に手を振るネジ。
相変わらずクールな奴だ…
「…ね?いつも通りでしょ?」
「確かに。平常運転だね」
テンテンの呟くような声に答える。
さて、どうなるのかね…?
ネジ視点
3人の応援を受けて階下へと降りると少しボロくなった舞台でヒナタ様が待っていた。
舞台に関しては半分以上はうちの連中がやったんだが…後半になるにつれて見た目が悪くなって行ってるな此処。
ある程度足場は整えてあるが…と確認していると。
「ネジ兄さん…」
ヒナタ様は何を思ったのか声を掛けてくる。
「…なんでしょうか、ヒナタ様」
階上には軽く変装した日向家の当主、ヒアシ様の姿も見える。
…一般公開してない予選にまで態々足を運ぶとはご苦労な事だ。
目が合って互いに軽く会釈すると同時に目の前のヒナタ様から
「ま、負けませんから!」
宣戦布告された。
…そんな気概があるとは意外だったな。
「申し訳ありませんが…俺も負けるわけにはいきませんので」
チラリと第3班がいる方を見る。
俺の視線に気づいたのか手を振ってくるテンテンとリー、サムズアップしているガイ。
いつも通りの連中に少し頬が緩むのを引き締めながら続ける。
「
彼奴等に無様な所は見せられない。
「…勿論、そのつもりです」
俺を睨みつけてくるヒナタ様に以前まで感じなかった闘志の様なものを感じた。
下忍での生活を経て変わったのは俺だけではないと言う事か。
「双方とも、準備はよろしいですね?」
審判の問いかけに静かに頷く。
互いに同じ構えをとって向き合うが…
(…これは)
思わず眉を顰める。
「では…試合開始!」
審判の掛け声と共に距離を詰めるヒナタ様。
先手を譲ると柔拳の基本、チャクラを纏った攻撃が来るが軽くいなす。
互いに白眼を持った柔拳使い同士、動きは手に取るように分かる。
一回の攻防で力の差が分かってしまう程に。
(
内心でため息を吐く。
既に本気で相手をする気は失せていた。
本気を出したら文字通り瞬殺、殺してしまうだろう。
「…っこの!」
「甘い」
狙いが透けて見える突きを片手で払う。
それだけで僅かとはいえ身体が泳ぐ体幹の弱さ。
態とそう見せているわけでもない…単に隙を晒しているだけ。
リーの様に工夫や努力の跡が見えるわけでも、テンテンの様に隠し玉があるわけでもない。
…担当上忍は一体何を教えてるんだ?意外性もなく、技術もない。
これでは格上と出会した時に何も出来ずに死ぬだけだろうに。
連撃をいなし続けていると次第にざわつき出す階上。
そんな中から聞き覚えのある声が耳に入ってきた。
「あれじゃどうしようもないね…」
勝負にならないどころの騒ぎじゃなくない?と続けるテンテン。
「…差がありすぎて正直相手になってないレベルだよ」
ヤバいんじゃ無いかなあの娘…と呟くリー。
「まだわかんねーだろ!」
2人の言葉にかみつく…うずまきナルトと言ったか?
リーの友人とやらが反論している様だが…
「落ち着けウスラトンカチ。見たままだろうが」
それを止めるうちはサスケ。
噂に名高い写輪眼の前では実力差もわかりきってるだろうしな。
「でもよ…!」
まだ文句を言い足りない、と言った顔のナルトに向けて話し出すリー。
「ごめん…でも正直、あの子がネジに勝てるとは思えないよ」
そう続けた言葉に絶句するカカシ班。
ようやく飲み込めたのかうちはが口を開く。
「…聞き間違いか?お前が負け越してる様に聞こえたんだが…」
うちはが冗談だろ、と聞き返すも…
「それなら耳は正常だね。俺はネジに負け越してるから」
相性もあるだろうけど…と呟くリーに言葉を無くすカカシ班。
「白眼と柔拳はそれだけ厄介な組み合わせなんだよ…少なくとも
何か隠し玉があるなら話は別だけど…リーがそう話を結ぶと全員が黙り込んで俺達の方を見ていた。
いつの間にかカカシ班と合流していたようだな。
それにしても失礼な奴だ。
俺は
別に殺したい訳でもないんだからちゃんと手加減するさ。
でもその前に確認しておかねばならない。
「…これ以上は無駄です」
全ての攻撃を柔拳なしでいなし続けた後に。
勝負にならない。そう告げた。
「ッ!?そんなの、やってみなくちゃ…」
「分かります。貴女にも分かっているはずだ」
俺達には
「今の俺と貴女の間には埋めがたい差がある。それが分からないほど愚かではないでしょう?」
その差は大人と子供と言っても過言ではないレベルだ。
本気でやったら殺してしまいかねない。
手加減を望まないのなら結果はヒナタ様の死しか残らない。
「…死にたいのですか?」
軽く殺意を向けて覚悟の程を問う。
その事に気がついたのか少し震える声で。
「わ、私は…」
ヒナタ様が何かを言いかけた時、階上から声が響いた。
「負けるなヒナタ!!そんな野郎ぶっ飛ばしちまえ!!」
そう言った後に周りの班員から口をふさがれている。
「バカ!挑発してどうすんのよ!」
それでキレたら本当に殺しちゃうかもしれないじゃない!と続ける桃髪のくノ一。
…別にその程度で気分を害したりしないが。
軽く苦笑しながらチラリとヒナタ様へ視線を戻すと。
成る程…アイツがヒナタ様を変えた張本人か。
こんな状況でなければ純粋に微笑ましく見れただろうが…まぁ、覚悟の程は見れたから良しとしよう。
「…全力で防いで下さい」
次は俺から行くぞ、と宣言して柔拳の構えを取る。
死なないように加減はするが出来るものなら防いでもらいたいものだ…先程までの様子を見ると望み薄だが。
「私の忍道も、まっすぐ自分の言葉は曲げない事だから!」
私はネジ兄さんに勝ちます!
そう続けると先程と同じ構えを取るヒナタ様。
人は変わるものだな、と感慨深く思いながらこちらから攻める。
本気の一足で懐に飛び込んだ俺を見開いた眼で見るヒナタ様に告げる。
「その意気や良し。しかし…」
八卦二掌。
反応する事も出来ずに点穴を突かれたヒナタ様から苦悶の声が上がる。階上からヒナタ様を応援する声が上がった。
…もう少し遅くするか。
「その意志を貫き通すだけの力がない」
八卦四掌。
連撃がモロに入った。応援の声が悲鳴に変わる。
これでもダメか。
ここまで遅くすれば八門不使用のリーでも打点を外す位はしてくるんだが…
「その為の努力も才も足りていない貴女に」
八卦八掌。
変わらず全てが点穴へ突き刺さる。悲鳴がだんだん静かになっていく。
もう無理だな…次で終いだ。
「その
八卦十六掌。
抵抗する事も出来ずに経絡を分断されていく。
これで両腕は試合中は使い物にならないだろう。
会場が無言に包まれた。
「…まだやりますか?」
手を止める。これ以上は必要が無い。
既に立っているのがやっとのヒナタ様に話しかける。
「今は俺の方が強い。どう足掻いても俺が負けることはあり得ない」
静かに語りかける。
「棄権して下さい。これ以上やる意味はないでしょう?」
あの程度の速度に反応できないのであれば例え片手だろうと億が一にも負けることは無い。
手札が
「…ッまだ、負けてない…!」
気合いだけで立っている様な有様のヒナタ様がそう口にする。
意志は強くなられたようだが…それだけでは足りない。
「まっすぐ自分の言葉は曲げない…素晴らしい、立派な志です」
静かに聞き入る会場。
倒れることなく俺を睨むヒナタ様に向かって話し続ける。
「ですが…それなら何故その
そう言うと息を呑むヒナタ様。
階上が少し騒がしくなるが無視する。…今は聞く必要がない。
心底不思議でならないのだ。
自分の意思を貫き通すだけの力を持たないまま。
周囲に自分よりも強い連中が居るのに何故そのままでいられるのか。
第三班へと意識を向けるとこちらを見るリー達と目が合った。
…やっちまったよアイツ、と言わんばかりの顔だな。
これでも一応手加減しているんだが…?
再度、意識を目の前のヒナタ様へと向ける。
「俺の知っている者達はその様にしています。才能の有無に依らず、不断の努力で諦めを踏破してこの場に立つ権利を掴みとった」
貴女もご覧になったでしょう?
会場中の注目がリーとテンテンに向いて2人が少しあたふたしているのに内心で苦笑しながら続ける。
「リーには才能と呼べるものは無い。それでも僅かな
最近では寧ろ追い抜く勢いだが。
早々負けてやるつもりは無いとはいえ八門を本格的に使用し始めてからはイカれた成長速度だ。
…模擬戦では勝ち越しているが
「テンテンも同様です。工夫を重ねて俺やリーに置いていかれまいと日々試行錯誤しています」
テンテンの場合は純粋に力を鍛えるというよりは力の使い方で補う方向性だが…時折明後日の方向に吹き飛ぶのはどうにかして欲しいものだ。
それが奴の強さに繋がるから強くは止めないが。
…最近では新技の試し打ち相手にガイを選ぶようになって来たからな…不意打ちアリの何でもありなら俺もリーも負けかねない相手だ。
班員2人について考えを巡らせているとヒナタ様が口を開く。
「わ…私は…」
僅かに口籠るヒナタ様。
答えを待つもそれ以降は言葉に成らない様だった。
…話を続ける。
「…才能の多寡で言えば貴女は
そもそも白眼を持つならその他が平均以下でも十分過ぎるアドバンテージだ。
これは考えても意味のない例えばの話だが。
リーが白眼を持っていたのなら、既に俺では勝ち目を探すのが難しい程に成長していた事だろう。
あの努力の鬼、発想の天才なら俺には想像もできない方法で白眼や柔拳を使いこなすだろうことは想像に難くない。
テンテンが白眼を持っていたのなら、より凶悪な使い方を模索してより手がつけられなくなっていた事だろう。
…今のままでも白眼を持たせたらゲリラ屋として完成に近づく気もするが。
それ程の才能に恵まれた貴女が今はこうして目の前で立っているのがやっとの状態まで追い込まれている。
それは何故か?
「…私は、頑張って…」
「
血反吐を吐く程の修練や狂気の域に足を踏み入れつつあるチャクラコントロール、足りない部分を補う為の工夫や格上を倒す為の手段の構築。
何もかもが足りていないからそんな無様を晒している。
…あいつらを見ていると感覚が狂うが普通はあそこまで自分を追い込まないし、殺し技の開発に勤しまないんだろう。
それでもあの2人は
誰にでもやれば出来るなんてそんな甘い事を言うつもりは無いが…貴女にはその為の
「そのザマで俺を倒せますか」
貴女が勝ち残るには俺を倒すしかない訳だが。
先程までの攻防で傷一つ受けていない俺に。
先の攻防で既に両腕の経絡系が機能不全の貴女が。
仮に万全だとしても実力に天と地ほどの差がある俺に勝つ方法は…
「今の貴女が勝ち残るには無傷の俺が降参するしか無い訳ですが…他人の情けで得る勝利に意味があるとでも?」
そう言うと視線が地面に落ちた。
当然受け入れられないだろう。
"俺に勝つ"と豪語した上で"まっすぐ自分の言葉は曲げない"そうだからな。
敵の情けで得られる勝利など溝に捨てたほうがマシだろう…その考えには大いに賛成だ。
形振り構わないなら宗家に伝わる呪印の法を使えばまだ目はあるだろうが…
額当ての奥にある印を抑えるように触れて続ける。
「貴女に、俺を殺す覚悟があるか?」
貴女がこの状況から
それだけの覚悟が有るのなら。
恨みはすれど仕方がないと俺も覚悟を決めよう。
その言葉にだらりと下がった握り拳を解くヒナタ様。
勿論、その場合は
そんな気持ちから出た言葉だったが…やはり無理なようだな。
貴女は忍としては
コレが例えばテンテンなら。
隙を作るために態と使う素振り位は見せてくる。
…本気の殺し合いなら躊躇なく使うだろう事は想像に難くないが。
……少し考えが逸れた。
深呼吸をして思考を元に戻す。
何はともあれ今回の試合で
でも今は原石も良いところだ。
そんな相手に負ける俺ではないし負けてやる義理もない。
「貴女には足りていないものが多すぎる。それでは俺に届かない」
そう告げると限界が来たのか膝から崩れ落ちるヒナタ様。
…結局最後まで棄権しなかったか。
前に出てヒナタ様が倒れない様に受け止める。
その意思の固さは十分な武器だな、と軽く笑みが漏れると同時に。
「…勝者、日向ネジ!」
審判の宣言と共にヒナタ様の班員であろう連中が駆け寄ってくる。
心配そうな班員と担当上忍に
「点穴を突いているが急所は避けてある。…暫くは動けないだろうが命に別状は無い」
ヒナタ様を預けながらそう告げると踵を返して舞台を後にした。
後ろが少し騒がしくなったが…もう俺には関係のない話だ。
志は立派だが実力が不足しているなヒナタ様は…とため息を吐きたいのを我慢しながら。
階上へと上がる途中でヒアシ様と出会した。
目が合うと問いかけてくる。
「…やはり、ダメか?」
ヒナタ様の事だな。
忍に向いていない性格から当主はハナビ様に譲られるとの噂もあった。現に今回の一件でそれを見極めると仰っていたからな…
でも俺の答えは否だ。
「今は、ですね…しかし技術は拙くとも意思はありました」
最後まで棄権しなかった根性は良い。
俺という強者に正面から挑むガッツもある。
更に言えば白眼がある。柔拳も使える。
俺と同じ条件なら
「まだ決めるには時期尚早かと」
そんな考えから保留を提言すると
「…お前の班員と一度話してみたいものだな」
あのネジが此処まで成長するとは。と言外に言われた。
「そうでなければ今頃は貴方達への復讐心に燃えていたでしょうね…」
少し前の事を思い返す。
父の死んだ日から。
俺は一日たりとも宗家の連中を許したことは無かった。
それでも所詮は籠の中の鳥、その一羽に過ぎない俺は何れ父と同じ様に死ぬのだろうと諦めていたんだ。
そんな時、アカデミーで変な奴に出会った。
『その落ちこぼれが一泡吹かせてやると言ってるんだよ』
胡散臭い喋り方のソイツは模擬戦で俺に冷や汗をかかせた唯一の同年代で。
『次は勝つ』
何度倒しても努力を積み重ねて少しずつ追いかけてくるその姿に。
俺は何かを見出そうとしていたのかも知れない。
それは下忍になってからも腐れ縁のように続く、俺の日常に自然と溶け込んできた異物だった。
悪くない気分だったんだ。
アイツは天才だから、と一線を引かないその態度が。
本気で俺を追い抜こうとする奴は今まで居なかったから。
初めて引き分けた日の事を今でも良く覚えている。
『…なぁ、一つ聞いても良いか?』
珍しく浮かれていたアイツは不思議そうな顔で答えた。
『答えられる事なら良いけど…あ、今回使った技の事なら…』
と言いかけるのを制止して
『仮に全てが決まっているとして。それでもお前は努力を続ける事に意味はあると思うか?』
内容をぼかしたからか、いきなり哲学?と笑いながら答えられたその時の言葉を忘れることは無いだろう。
『俺は…そうだね。あると思うよ』
俺個人の考えだけど。と続ける。
『やってもやらなくても同じだって言いたいんだろうけど』
考えながら言葉を探し、口にするリー。
『俺は弱いからね…やらないでダメだった時にきっと後悔する』
あの時こうしていたらもしかして…だなんて考えちゃうねきっと。と苦笑しながら。
『例え結果は同じでもそれが全力を尽くした結果なら…悔しいだろうけれど納得は出来るだろうから』
納得のために努力するって感じかな?と難しそうな顔で続ける。
『それにつき合わせて悪いとは思ってるけど…これだけは譲れない』
俺は、
そう言って笑うリーが少し眩しく見えた。
それから考えた。
俺の夢はなんだ?目的は?やりたい事は?
宗家への復讐か?
分家からの解放か?
数日間考え抜いて出した答えは一つ。
父の死の真相。
まだ幼かった俺には詳細は告げられなかった。
ただ当主の身代わりとなった、と。
それを聞いた時は本家の代わりに殺されたのだと、身代わりにされたんだとそう思っていたんだが…本当の所はどうだったのか。
それを知らずに決められることでは無い。
その日の夜、ヒアシ様へと問い詰めるとようやく真相を知ることが出来た。
父は自ら選んだのだ。
兄のため自分が死ぬ事を提言したと聞いた時は俄に信じられなかったが…
『…弟の、ヒザシの遺言だ』
そう言って伝えられた言葉は。
"宗家を守るために殺される訳では無い。ネジ…お前や家族、兄弟を守るため、そして里を守るために自らの意志で死を選んだのだ"
伝えた後に深く頭を下げるヒアシ様を見ながら。
ようやく俺は納得出来たのだと思う。
あの日の納得が今の俺を再度形作る切っ掛けだったのは間違いない。
それからは徐々にヒアシ様ともそれなりに話す様に成ったし…今回の様に少し親バカな面を知ることも出来た。
…ヒナタ様への対応はちょっとどうかと思わなくもないが。
「…言っても詮無いことですが。ヒナタ様へお伝え下さい」
先で待つ。いずれこの貸しを利子付きで返しに来い、と。
「…確かに。しかと伝えよう」
頷くヒアシ様に軽く頭を下げてその場を後にする。
階上へと戻ると出迎えた3人が口々に喋りだした。
「「予選突破おめでとう!」」
「これでうちは全員本戦出場だな!!めでたい事だ!!」
騒がしい連中だ、と苦笑しながら答える。
「当然だ。次が本番だからな」
お前と当たるのを楽しみにしてるぞ?とリーと目を合わせて続けると。
「…そろそろ勝ち越したいからね」
本気でぶっ飛ばすよ?と笑って返された。
そうでなくては面白くない。
互いに笑い合っていると横からうずまきナルトが出て来た。
「……さっきは悪かったってばよ」
さっき?…あぁ、戦闘中の野次か。
「…何故謝る?」
別に悪いことはしてないだろうに。
「お前はヒナタ様の学友だろう?ならばそちらを応援するのは何も間違っていない」
俺だってお前とリーやテンテンが戦っていたら2人を応援する。
そう続けるとリーが笑いながら間に入る。
「…悪い奴じゃないんだよネジは。ちょっと言葉が強いだけで」
そんな事はない…と、思うんだが。
「さっきのやり取りだって終始日向さん…ヒナタさんを気遣ってたし」
要はここらで止めとかないと怪我じゃ済まないぞ?と言ってただけなんだよ…多分。そう続けるリーに頷くとナルトは俺の方を見て少し逡巡した後
「…そうみたいだな。悪ぃ…ちょっと頭に血が上ってたってばよ」
最後に軽く頭を下げてうちは達の元へと帰っていく。
何だったんだ一体…
「ナルトくんはさ、純粋なんだよね」
ぽつりと呟くリーの方を見ると後ろ姿を見送りながら続けるリー。
「人の言葉の裏を読まない。そのまま受け取っちゃうからさ」
さっきの試合でのやり取りが、ヒナタさんを苛めている様に見えたんだと思うよ。
そう続けた言葉を聞いて少し考える。
確かに一方的な内容に成っていたとは思うが…実力差を考えるとあんなもんじゃないか…?
「…そう見えたか?」
テンテンに聞いてみると
「見ようによっては?」
確かに煽ってる様にも見えたし。と続けるテンテン。
少し肩を落として壁に寄りかかる。
「そうか…激励しているつもりだったんだが…」
「「……あれで!?」」
2人に驚いた顔をされて少し自分を省みる事に決めた。
「ネジ…前から思ってたけど、君はその…少し言葉が強い時があるよ?」
俺達はもう慣れたけど。と続けるリーに強く頷くテンテン。
「…善処しよう」
これからは少し気をつける、と呟くと。
「〜!お前達!!」
ナイス青春!!!と笑顔で言うガイに全員が苦笑する。
青春か…俺には縁のないものだと思っていたが。
纏めて抱きしめようとしてくるガイをリーの方へと受け流すと嘘だろ…?という目で見られた。
リーが回避に失敗して感極まったガイに抱きしめられてタップしているのを見てテンテンが慌てて引き剥がそうとしている。
目の前の光景を眺めながら思わず口の端が上がった。
よく分からない感情だが…不思議と悪くない気分だな。
色々と考えた結果ネジは既に宗家と和解していた形になりました。
明確な時期は考えていませんが下忍時代〜中忍試験までの1年間の何処か、『下忍2年目の春』辺りまでで起きたイベントになります。
拙作では話を作る上でリーの視点をメインにやって行こう!と考えていた結果、ネジのイベントが裏で終わっちゃった感じですね…間に挟むタイミングを逃しまくった結果です…すみません。
ついでに何故かヒアシ様が観戦していますが、当主特権と言う事でどうかご容赦頂けますと幸いです…!
書き始めた時はまだ確執は未解決、実力差で潰して殺す直前で間にリー達が入る→ガイ先生に仲裁される、の流れで行く感じでしたが…
これだと木の葉崩し編まで書くのが苦手なギスギス展開が続きそうなのと、流れ的にネジの確執を解けずに離反しちゃいそうなのでボツに。
少し続きを考えた時にヒナタがちょっといたたまれないレベルでフルボッコになってしまい、ナルト達との敵対待ったなしになってしまいまして…今後の話が作れなくなりそうだなと判断して今回の流れになりました。
ギスギス展開は読む分には楽しいんですが書くのは凄く難しいですね…
追伸、感想欄にてファンアートを描いていただいたと報告頂きました!とても素敵なイラストありがとうございます!!
追伸の追伸、原作知識について誤っている箇所があるとのご指摘がありまして読み返した所仰る通りでした。ガバガバですみません…
「あぁ、コイツまた忘れてんな…」と思って頂けますと幸いです…