ロック・リー転生伝 作:六亭猪口杯
あかん…話が中々進まない…
今話も捏造がございます。ご注意下さい。
中忍試験第三次選抜予選終了からしばらくして。
猿飛ヒルゼンは自分の執務室で一人頭を悩ませていた。
「…どうしたものか」
執務室で一人頭を抱える。
今年の中忍試験、現段階での第三次選抜出場者のリストを前に唸る。
「うーむ…」
例年であれば豊作だと大いに喜べる粒揃いなのだが…
目の前に広げた三人の書類を見て。
「こやつらがなぁ…」
第一試合、ロック・リー対我愛羅。
八門使いに対してまさかの砂隠れの人柱力と言うカード。
砂隠れがしれっと中忍試験に混ぜてきたのには少し思う所が無くはないが、うちも
他の里で行われる中忍試験に人柱力を参加させるとは…砂隠れは何を考えているのか?
まさか木の葉に対する宣戦布告でもあるまいが…少々軽率に過ぎると言わざるを得ない。
ナルトの場合は自里で行われるからこそ参加を許可したのだから。
いざという時は儂やカカシ、ガイ等の上忍達で抑え込めると見込んでのこと。
それをたった一人の上忍と封印術のみで参加させる?
風影殿は尾獣の脅威を軽く見すぎている様に思えて仕方ない。
…今考えても仕方がないか。
それよりも今は第三次選抜だが…
「まさか抑えきるとは思わなんだ」
それをいくら完全顕現ではないとは言え下忍が一人で、それもほぼ完全に抑え込んでの勝利。
「…誇らしいと同時に末恐ろしいの」
確かに八門遁甲は格上に対して効果を発揮する類の禁術ではある。
それでも最後の砂嵐の時点で一尾が半分顔を出しかけているのを見て血の気が引いた。
完全顕現した尾獣に対して封印術が効くまで弱らせるなら各里における最上級の上忍が複数人、もしくは各里の影クラスの忍が必要。
それでも尚周囲に与える損害を抑えられんと言う災厄。
そんな化物を不完全顕現とはいえたった一人で抑えつけた下忍…
壁に叩きつけられた我愛羅から砂の一尾が完全顕現しようとしているのを間一髪で上忍…バキといったか…が封印し直して事なきを得た故、用意していた封印術は無駄に終わったが。
砂嵐が止んだ時、我愛羅が鎮圧されるのが後数秒遅ければその場の上忍全員が介入していたレベルの災害。
それに普通なら勝ちようのない相手に木の葉の若者が勝ったのだから喜ばしい事のはずなのだ…本来であれば。
(アレはいかん…相手にできる者がいない)
他の参加者で相手を出来る者が居ない…それ程に隔絶した実力差になってしまっている。
本気でやらせるなら一瞬で片が付いてしまう。
かと言って手加減をした状態では周辺へのアピールの意味が無くなる。
「そう思ってたんだがの…」
チラリと二枚目の書類に目を通す。
第二試合、テンテン対テマリ。
影分身で相手を欺き、口寄せで風遁への対策を行うと同時に次の動きのための囮に使うとは。
大岩に安易に飛び乗った砂隠れのテマリを不注意であるとは言えまい。
下忍が口寄せした無機物から更に口寄せを行えるなど普通は考えられないのだから。
「頭の回転は申し分無し。手札が増える度に強くなるタイプじゃな」
不意討ちの練度こそ下忍相当ではあるが、それ以外は上忍相手でも通じかねん。
その後投網で動きを封じたのには少し違和感が有ったが…後から思えばあれで終わらせる事も出来たのだろう。
巻き付かせた投網に毒を仕込むか
二つ目の大岩を態々送還したのと合わせると間違いない。
あくまで
「いい方向に進んでいるようでなによりじゃ」
上手いことブレーキ役が働いているのか、はたまたチームメイト全員のお陰か。
なんにせよ、大蛇丸の二の舞にはなりそうもない。
しかしまぁ…
「組み合わせ次第ではあるが…口寄せ契約がある以上、テンテンに対してリーはかなりの不利を背負ったの」
あの子は認めた相手に対しての容赦がなくなりやすい様に思う。
ネジに対して影分身爆弾をやろうとしていたのも、起爆札を背中に簡易口寄せで張り付けたと聞いたのも合わせて考えると…
「此処までなら耐えられるだろうと考える
普通は死ぬ様な術の使い方でも難なく防ぎ切るメンバーばかりに囲まれて少し基準が狂っている様に思える。
…その辺は今回の試合で少し改善が見られたが、リーやネジ相手では容易に吹き飛ぶだろう事は想像に難くない。
「極めつけは…」
残る問題児…新たに増えた頭痛の種その三。
最終試合、日向ネジ対日向ヒナタ。
木の葉の誇る血継限界の宗家と分家。
血統だけ見るなら共に同格の試合だったが…
「あれでは底を見せられんだろうな…」
現状で全力のネジを相手にできる下忍が何人いるのか。
我愛羅との試合を制したリーもそうだが少なくとも中忍レベルではない。
寧ろ下忍としてならヒナタは良く鍛えられている方だと感じる。
それでも…
(まるで稽古をつけているかの様だった…)
底を見せるどころか手加減したまま勝ち切ってしまった。
アレを見せられてまだ心が折れない下忍がどれだけいるんだという話である。
あの試合の後、戦意を折らずにいたのは…同じ班であるリーとテンテン、後はカカシ班のサスケとナルト位なモノだ。
「少なくとも
そして
「ロック・リーか…ギリギリでサスケかテンテンくらいなものじゃな」
ほとんど身内で固まっとる…と嘆息する。
柔拳に対処出来るだけの体術に関してはリーなら問題なくやり合える…はずだ。
ガイからの報告を見るに模擬戦での勝ち星も無くはない。
一番丸い選択肢ではあるが…第1回戦でそれをやるとその後が手抜きに見られかねんと言うデメリットもある…
白眼に対しては正直対処できる者が居ない。
写輪眼なら或いは…とも思うが
そもそも現状ではネジの動きを見切れるかも怪しいものだが。
何にせよ一番勝負の形に出来るのがリーなのは間違いない。
その場合は両者共に満足のいく試合にはなるだろう。
周辺被害やその後の試合を考えるならあまり考えたくない組み合わせだが。
テンテンの場合は手持ちによるが…
「…全てを解禁するなら目がある…か?」
少なくとも互乗式以外の封印を解く必要がある。
その状態でヨーイドンなら先にアクションを起こした方が勝つ…結果は会場ごと更地になるかテンテンが気絶させられるかの二択だが。
「リーに対してもそれは変わらんが…」
テンテンが何かする前に殴れれば勝てる。それ以外では纏めて死ぬ。
八門を開いた状態で始めるならリーが有利だが…
「口寄せ契約があるからのう…」
テンテンとリーの間で結ばれた口寄せの契約。
本来なら容易に対抗できるソレはあの子にとっては強制呼び出しの権利を与えたのと同義である。
テンテンと口寄せ契約をしたと報告を受けた時の事を思い出す。
『…それで、どうしたいんじゃ?』
テンテンが他の生き物と契約を結ぶ口寄せを
それを死体で行い始めたら禁術…穢土転生への一歩のため油断は出来ないが。
テンテンには絶対に魂関連の術は教えん様にしよう、と心に決めてリーへ問いかける。
『…三代目様、これどうにかなりますか?』
リーが訪れ、口寄せの契約を交わしたと言った後におずおずと尋ねられた。
契約を交わした後にどうにも出来ない様な術であれば禁術待ったなしであると分かっておろうに…態々確認するという事は仕様を確かめたいんだろうが…と苦笑しながら答える。
『対抗できる術はある。破棄する術も同様に。しかし…』
それらは忍術だ。そう告げると肩を落とすリー。
『それじゃ俺には無理ですね…』
早まったか…と軽く天を仰ぐリーを見て
『テンテン側からの契約破棄は可能じゃよ』
頼めば良かろうて…あの娘なら無下にはするまい?と笑うと少し考え込んでから
『………いえ、中忍試験中はこのままにしておきます』
考えて見ればデメリットばかりでもない。と呟くリー。
『俺達の中で一番脆いテンテンさんの防衛にすぐ回れると言うのは大きな利点ですから』
このまま継続します。と言い切ったリーへ再度確認する。
『本当に良いのかの?例年通りであれば個人戦もあり得るぞ?』
その場合、好きなタイミングで呼び出せるソレは致命的な隙になるが?と聞くと。
『…もし、中忍試験で少しでも死ぬ可能性があるなら』
それは俺で有るべきでしょう。と言い切った。
…確かに死亡者が出ない類の試験ではない。
運が悪ければ死ぬ可能性もあるし、実力が足りずに亡くなるパターンも多い。
それでも途中で無理だと思ったらリタイア出来る手段は用意されている…と言いかけると同時に
『第三班の前衛は俺ですから。後衛が先に殺られるなんて間抜けすぎるでしょう?』
俺はあの班における最前線要員ですし。と笑うリー。
『それは自分を軽く見てはいないかの?』
そもそも死ぬ可能性を潰すのが忍として有るべき姿であろう。
その言葉にもっともですね。とリーは苦笑するが。
『最善を尽くした結果テンテンさんやネジの盾になるなら…まぁ許容範囲ですから』
少なくとも俺だけ生き残るよりはずっと良い。そう言うリーの目が一瞬暗く濁って見えた。
『…そんな事にならんように修行する事じゃな』
『勿論、そのつもりです』
ありがとうございました。と頭を下げて退室したのを見送った時の事を思い出してため息が出た。
「あの歳で既に自己犠牲もやむ無しと考えるか…」
あの子が一番危うい。
八門遁甲の使用者である故に格上に対する切り札を持っているのがそれに拍車を掛ける。
恐らく例の二次選抜中に襲ってきたという大蛇丸と思しき忍…その者が影分身ではなく本体で来ていたなら。
躊躇いなく限界まで八門遁甲を使用していただろうことは想像に難くない。
二人が生き残るために必要だと判断したら迷わず命を投げ捨てる。
そんな暗い覚悟が見て取れた。
言ってはなんだが中忍試験はあくまで試験。
何なら合格率からすれば一発で合格する方が珍しい部類…先程も述べたが途中でリタイアする手段もある。
確かに大蛇丸の侵入で死亡のリスクは上がったが、あの時点ではまだ知りようの無い情報だ。
大蛇丸がちょっかいをかけてこなければ
それにしては異常なほど危機感を持っていた様にも思える…まるでこの事態を知っていた様な…と、思考が変な方向に進みだしたのを頭を振って元に戻す。
「…あり得ん話だの」
そもそも大蛇丸が襲ってくる事を知っていたならリーは大蛇丸側の人間と言う事になる。
もしもそうなら何かしらの見返りがあっての寝返りだろうが…あのリーが大蛇丸の甘言に乗るかと問われれば考え難い。
そもそも大蛇丸が忍術を使えないリーに興味を持つかと言うとそれも考え難い。
どちらかと言えばテンテンの方に興味を持ちかねない…実際、死の森ではテンテンの実力を見るためにちょっかいを掛けてきた様だし。
それにほぼガイや第三班と一緒に行動しているリーにそんな素振りは見えなかった。
故にこの事態を知っていたとは思えず、ただ単に覚悟が決まりすぎているだけだろうと結論づけて思考をもとに戻す。
「…今は第三次選抜の組み合わせを考えんとな」
ネジはリーかサスケ、テンテンは…残った方と組み合わせるのが良いか…?
いや、それではあまりにも作為的にすぎるか。
「うぅむ…」
悩ましい。
実力差があり過ぎると大名や各里にアピールする前に試合が終わりかねん。
「…どうしたものか」
考えても答えの出ない問いに重い溜息を吐いた。
大蛇丸の件もあって今年は荒れるとは思っていたがこんな所で悩まされるとは思わなんだ…
思考を巡らせているとノックの音が響く。
「何か用かの?」
扉に向かって誰何すると護衛としてついている忍びから
「…テンテンとロック・リーが来ております」
どういたしますか?と問われて少し悩む。
酔って店と修練場を破壊した件についての謝罪はガイより受けているし、処分も下している。
その謝罪も先日受けたばかり。一体何の用なのか…?
まぁ今日は急ぎの用事もなし、会うのは構わんが。
またなんぞ不味い術の使い方でも思いついたのか?と若干の不安と共に護衛に返答する。
「…構わん、通しなさい」
そう言うと扉が開いてテンテンとリーがおずおずと火影の執務室へ足を踏み入れた。
「お疲れ様です、三代目様」
「お久しぶりです、三代目様!」
リーは恭しく、テンテンは気軽に挨拶してくる。
この辺は性格が出とるな…と微笑みながら
「テンテンにリーか。久しいの」
こうして顔を出しに来たのは中忍試験中は勿論、準備期間も含めれば二ヶ月ぶりになるだろうか。
…ガイの方は何度か修練中の破壊について呼び出して事情を聞いたり、先日のリーの暴れっぷりを報告された際にも会ってはいるが。
「して、今日は何の用じゃ?」
準備期間中とはいえまだ中忍試験の真っ最中。
何かアドバイスを…と言う事なら流石に断らざるをえないが。
「それがですね…」
ちょっと言い難そうなリーの横で口寄せするテンテン。
…また何か厄ネタを仕入れたのか?
少し身構えていると
「これなんですけど…」
一本の刀を取り出して見せてくる。
見た所チャクラ刀の一種…いや、これは!?
「…これを、何処で手に入れた?」
動揺を抑え込んで質問を投げかける。
これは見間違いでなければ…
「リーが中忍試験の二次選抜で襲ってきた奴から奪いました」
二次選抜後に報告した下忍とは思えない化物じみた男が使っていた物です。とリーから補足が入る。
やはり大蛇丸の物か…アレから武器を奪い、更に逃走に成功するとは…と驚くと共にこの刀が此処にある事に変な納得を得た。
大蛇丸相手に武器を奪って逃走出来る三人だからこそ全員本戦出場という結果になっているのだから。
「そうか…」
それはともかくとして、だ。
草薙の剣。
そう総称されるチャクラ刀のうちの一本。
其々に異なる特性を持つ忍界でも有名なチャクラ刀の一種である。
その製法は不明、現存する本数も不明。
伝承ではオリジナルの一本を複製しようとした名残が多数存在するとの事だったが…
(これは複製品の様だが…)
伝承に残る草薙の剣は幻想の世界へと誘う妖刀。
コレはまだ木の葉の里に属していた時期の大蛇丸が手に入れた一本だ。
(…懐かしいのぅ)
大蛇丸がまだ木の葉の三忍として名を馳せていた時代。
何処からか手に入れたそれを見せてもらった時のことを思い出しながら感慨に耽りそうになるのを抑え込んで思考を回す。
複製品故にそこまで執着がないのか?と思うがあの子の考えていることが分からなくなって久しい儂では今の大蛇丸の考えは分からん…
取り返しに来ていないと言う事は少なくとも手放しても痛くないと言う事なのだろうが…それとも、それどころでは無いのか?
止め処無く思考が回るが答えは出ず。
答えの出ない問いに見切りをつけてテンテンの手にある草薙の剣へと意識を戻す。
何にせよ複製品とはいえ希少品である事は間違いない。
そして、草薙の剣は大蛇丸が珍しく執着した忍術以外のモノ。
(それが此処にあると言う事は此方にも大蛇丸が絡んでおるのか…)
サスケに刻み込まれた呪印で確定していたが更に第三班へ接触したという物証が現れた事で確信に至った。
最悪の場合、既に大蛇丸本体が里に潜り込んでいる可能性もある。
あやつめ、一体何を企んでおる…
「三代目様?」
考え込んでいるとテンテンから心配そうな声が掛けられた。
いかん…少し表に出てしまったか。
「すまんの…珍しい品だったものでな」
少々我を忘れていたようじゃ。と微笑むとホッとしたような顔になるテンテン。
「それなら良いんですが…」
「それで、このチャクラ刀…草薙の剣がどうかしたのかの?」
本人に返したいと言う殊勝な考えではないだろう。
寧ろ戦闘中に奪われる方が悪い、と考える子達である。
年齢の割に若干擦れているもののその考えは忍として間違っていないからなんとも言い難いが。
「!コレが…」
「その様子だと知っておるようじゃな」
驚きと共に手に持ったチャクラ刀をマジマジと見つめるテンテン。
武器や暗器の類を収集するのが趣味だと以前話しておったからか複製品とはいえ希少な品を前に目をキラキラさせておる。
「詳しくは調べてみなければ判らんがまず間違いなかろう」
その刃紋には見覚えがある。と続ける。
…大蛇丸が手に入れた草薙の剣は儂の知る限りで3本、今幾つ手元にあるのかは不明だが目の前にあるのは儂も見たことがある1本だ。
「効果は確か…」
昔の記憶を漁る。
チャクラを込めることで伸縮出来るやや使い難い部類のモノだったか…?と思い出した辺りでテンテンから説明と実演が入った。
「使用者のチャクラを注ぐ事で伸び、回収することで縮む」
こんな感じです。と目の前でチャクラを注ぎ込むテンテン。
…ゆっくりと刀身が伸びている。
しかしコレでは実戦には使えんだろう。
「…もう少しチャクラコントロールの修練を積んだほうが良いかもしれんな?」
貸してみなさい、と受け取った草薙の剣にチャクラを注ぎ込む。
「おぉ…」
流石に自由自在に、とはいかんが先程までとは比べ物にならん速度で伸縮する草薙の剣を見て感嘆の声を上げるリー。
「
ほれ、と元の状態に戻してテンテンへと返す…少し
使用前と変わらず…というよりも
ふむ?思ったよりチャクラを使わんのか?
縮めた時に伸ばした分が返ってきているのには気づいていたが、それでも完全な一対一交換ではないと感じていたのだが…
若干不思議そうな顔になったのを見て嬉しそうな声を上げるテンテン。
「三代目様!チャクラの消費が少ないと思われました!?」
「ふむ、その通りじゃ」
説明したい!とテンテンの顔に書いてある…思わず微笑みながら答えて思考を回す。
しかし…流石に消費0はあり得ん。
どんな道具やどんな術も必ず
それは熟練の忍でも同じ事。
限りなく0に近づける事は出来るが…
例えば影分身の術も解除時にチャクラを回収できるが発動と維持に使った分は帰ってこない。
未熟なうちは維持のために使うチャクラが膨大なため回収率は半分もあれば上等だろう。
その常識を無視していると言えるこの
「初めて扱う儂でもこの効率になるのかね?」
そうだとしたらイカれたチャクラ効率だが…?と疑問を投げかけると
「あ、流石にそこまで凄い品じゃないですよ?」
実際、伸ばした分を縮めて何度か試しましたが感覚的には大体八割返ってくれば良い方だと思います。
そう続けるテンテンに益々疑問が深くなる。
「では何故?」
そう聞くと待ってましたと言わんばかりに
「最初に少し伸ばした状態で渡しましたから」
ほら、少し短いでしょう?と目の前に出された刀を見て違和感の正体に気づいた。
確かに最初に渡された時よりも短い。むむ…と唸る儂に
「その分が三代目様に返ったんです」
と胸を張るテンテン。
その横でコレ、ヤバいですよね…?と不安そうに聞いてくるリー。
…リー、その考えは正しいぞ。
「つまり、コレは…」
そう言葉にすると嬉しそうな顔で頷くテンテン。
「そうなんですよ!この子が一度吸収したチャクラは限りなく無色になるみたいで」
誰が入れても同じ色…属性になる特性があるんです!と続ける。
「流石に還元率は下がりますけど…大体4〜5割は還って来てますね」
テンテンさんとネジと俺で回してみました感じでは、ですが。とリーが補足を入れる。
つまり…コレがあれば他人へのチャクラ譲渡は勿論、貯めたままに出来るのなら簡易的なチャクラタンクになり得るのか。
「…成る程。そもそも刀としての運用は考えていないのか」
この草薙の剣があれば事前に準備は要るものの先天的な才能が物を言うチャクラ量という壁を打ち破れる…その限界値にもよるが正に革命的な逸品だ。
…長すぎる刀を横に置くと言うデメリットもあるが固定砲台として運用するならそれ程困らんし、口寄せ出来るなら移動時のデメリットなど無いも同然。
「チャクラの変換と一時的な保存…」
更に言うなら無色…個々人の
…あくまでも近いだけで別物だろうが。
思っていたより数段上のヤバい代物に頭を抱えたくなる。
これは、里によっては秘宝扱いになるレベルの物じゃないか…?
「…コレを第三次選抜で使用しても良いか、というお伺いに来たわけです」
事前に準備さえしてしまえば燃費の悪い影分身でも大量展開が可能になる。
…ナルトくんの印を結ぶ姿も見ているから多重影分身すら視野に入るでしょう。
そう話を結ぶリーは少し難しそうな顔になっている。
「チャクラが使い放題になったテンテンさんを止めるのは俺達以外の参加者だと難しいと思いますが…」
それでも恐らく会場はズタボロになるだろう、と想像したのか軽く額を抑えるリーの横で少し頬を膨らませるテンテン。
「別に悪用しようって訳じゃないじゃん!」
ほんの少しゲタを履くだけだし!と草薙の剣を送還しながら答えるテンテン。
「私の使える術なんて大したものじゃないじゃん…」
影分身に口寄せに…と指折り数えるテンテンを見やりながら
「影分身は単純に人数が増える。口寄せは殆ど制限が無くなるよね?」
今の状態だと大岩なら精々六回、影分身は4体が限度だろうけどその制限が無くなるなら十分過ぎるよ…と溜息を吐くリー。
「送還と口寄せを繰り返して疑似連続口寄せ!とかやりかねないし」
初手で殴り飛ばす以外に被害を抑えられる気がしない。
そう言うリーに対して懐から巻物を取り出しながら
「…契約済みのリーには難しいんじゃないかな?」
ひらりと見せつけるように振る巻物を見て苦い顔になったリーが
「五門まで開くしかないかな…」
全部ぶっ壊してご破算にしてやる、と覚悟を決めたようだった。
「本当の暴力…は、ガイ先生だから…対処しようのない暴力を見せようじゃないか」
罠でも何でも踏み抜いて殴れば良いのだ。と言わんばかりの顔で微笑むリーに対して。
「…別にチャクラ刀が無くてもやってやれなくはないよ?」
どんな相手でも対処出来ないなんて事は無い…ガイ先生以外は。と続けるテンテンがリーと睨み合うがそこに剣呑な空気はない。
…狼が互いにじゃれ合っている様なイメージだの。
第三班はいつもこんな感じなのか、と苦笑しつつも変な納得を得ながら少し考える。
「ふむ…」
仮に草薙の剣を禁止しなかった場合。
およそ3週間の間溜め込んだチャクラ量がどれ程のものになるかにもよるが確かに意表を突ける武器になろう。
しかしそれは一人で行った場合だ。
それこそ今のナルトを超える事もあり得なくないだろう。
今のテンテンに遠慮なく使えるだけのチャクラを渡すとどうなるか…想像に難くない。
「…何かしらの制限は必要か」
そう呟くとリーは笑みを消し、テンテンはやや不満そうな顔になる。その様子に苦笑を深めながら
「使用するのは止めん。許可しよう」
そう言うと顔が明るくなるテンテンと少し眉を顰めるリー。
「その代わりチャクラを込めるのはテンテン、お主一人でやるんじゃ」
中忍試験中は他の…例えばアカデミー生や他の忍を頼ることを禁ずる。
そう続けると互いに納得がいったという表情に変わった。
「それなら問題あるまい」
本戦まで後3週間ばかり、修行後に一人で込め続けた所で精々影分身を数体増やすのが関の山だろう。
限界値が不明故どの程度溜め込めるのかも分からないが。
…仮に毎日全てのチャクラを注ぎ込むと言う暴挙に出れば影分身でも数十体は可能だろうが、それをしてしまえば
その分の遅れを許容出来る様な娘ではないという信頼がある。
「成る程…確かにそれなら」
常識的な範囲で済みそうですね?とテンテンを見やるリー。
「…三代目様の決定に従います」
やっぱりダメか〜…と残念そうな顔をしてからお辞儀するテンテン。
こやつ、止めなかったら片っ端から頼んでチャクラを溜め込むつもりだったな?
それを悟ってリーが先んじたんだろうが…良くやったと言うべきだろうか。
油断も隙もないの…と苦笑しながら
「よろしい。…他に何かあるかね?」
「いえ、これで十分です」
ありがとうございました!と頭を下げるリーとテンテン。
話は終わった、と一安心している所にふと考えていたことを問いかける。
「…少し良いかの?」
「なんでしょうか?」
二人が不思議そうに聞き返してくる。
「次の第三次選抜で注目している忍はおるかね?」
どうせなら気になっている…目を掛けている忍を知っておきたい。
儂も全員分の報告を受けてはいるがやはり現場の声を聞いておきたい。
「ネジ、テンテン、ナルトくんとうちはくんですかね」
第三班の二人は勿論、第七班の二人も侮れない。
勿論、他の忍もそうですが特にその四人ですかね…
そう続けるリーと
「私も同じですけど…あ、奈良家の子も面倒かも知れません」
私の試合の時にネジとあの男以外で全部読み切ってた下忍って多分あの子だけですし。
そう続けるテンテンの言葉を聞いて
「そうか…変な事を聞いてすまんの」
参考になった、と笑いかけると不思議そうな顔になる二人に思わず笑みが漏れると同時に
「三代目様、そろそろ…」
護衛の忍が扉の奥から声が掛かる。
…仕方がない。
「それではこの辺でお開きとしよう」
組み合わせの目処もたった。と内心で頷きながら退室する二人を見送った。
後日、ナルトが自来也に弟子入りしたとの情報を得てまた少し組み合わせを考え直す羽目になったが。
「…四代目の面影を見たか」
あの自来也が四代目の息子を弟子に取るとはな。
これはいよいよ分からなくなりよったな…
ナルトには四代目程の才はないが戦闘における勘の良さは天性のモノを感じる。
更に言うなら本人のチャクラ量の多さもあるが…
「自来也…九尾のチャクラは人に御せるモノではないぞ…」
バカ弟子を思い出して溜息を吐く。
予言を信じて行動しているあやつには何を言っても通じんだろう。
例え御しきれんと分かっていてもやりかねんが…今は信じるしかない。
全く…頭痛の種が増えたわ。
そう思いながらも自然と口は弧を描いていた。
それは伝説の三忍とまで呼ばれるようになった自来也がナルトに稽古をつける事になったからか。
はたまた確かに継がれている火の意志を眩しく思ったからか。
いずれにせよ本戦での組み合わせは決まった。
「これならまぁ…悪くはあるまい」
組み合わせの発表を書面にして掲示、各参加者に配布する様に部下へと告げる。
大蛇丸が何を企んでいるのか分からんが…木の葉の里に仇なすなら容赦はしない。
里の皆を思い浮かべながらかつての愛弟子の一人を殺す覚悟を決めたのだった。
チャクラ刀(草薙の剣)の捏造です。
延びるだけ、縮むだけなモノを大蛇丸が重宝するか?と言うところからチャクラを溜め込む性質を追加、筆が走って自然エネルギーモドキへの変換が更に追加されました。
今後の展開次第で使えるかも…と考えていた内容になりますがご容赦頂けますと幸いです。
また、火影から各里の影に対する評価が高めになっています。
尾獣を抑え込めるレベル=影クラスと言ったイメージです。
老いた自分はそれに及ばないものの他の上忍と協力すればやれるという感じですね。
恐らく修行パートはサラッと終わって本戦、木の葉崩しまで行くと思いますが楽しんで頂けますと幸いです…