ロック・リー転生伝   作:六亭猪口杯

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人物が増えると途端に難しく成りまして…更新が遅くなってすみません…また捏造がございますのでご注意下さい。

カカシ先生の口調が安定していないのもご容赦頂けますと幸いです。




崩壊の足音

 

 

 

…ありのまま見たことを話すと。

 

いきなり大爆発祭りした後シカマルに追い詰められてたと思ってたらいつの間にか現れた泥だらけのテンテン(本体)が背後からシカマルを刺してた…意味が分からない?大丈夫、俺も良く分かってないから。

 

確かな事は最後に沼に埋まったままの苦無から起爆札を呼び出して広域爆破したせいで沼を送還した後も試合会場が全体的に汚れてる事…付着した物体は送還対象に含まれないのだろう。

 

テンテンも完全には泥汚れが落ちてなかったみたいだし…送還出来ない条件は一定時間の付着、もしくは浸透か?

 

なんの役に立つんだ、と言われそうな思考が勝手に回り出す。

 

体積が減った状態でも同じ様に送還出来るなら。

 

半分になった場合はどうなるんだろうか?

 

例えばコップ一杯分の水を口寄せして半分飲んだ場合どうなるのか…残されるのは体の外にある水なのか、中の水なのか。

 

体内の水が回収されるなら全て回収されるのか、内部に触れている部分は回収されないのか。

 

残される方によっては使い道が有りそうだが…

 

などと思考が明後日の方向に行きそうになったのを修正する。

 

今考えても仕方がないし、全てが終わった後でテンテンさんに検証してもらおう。

 

脳内リストに新たに加わった疑問はさておき。

 

さっきの試合で事態を把握できていたのは上忍と中忍達…後はネジ位なものだろう。

 

俺も最後の本体が隠れてたのはわかったけどどのタイミングから隠れてたのか分かんなかったし。

 

はたして一般人(大名達)に分かるのだろうかアレは…と考えていると。

 

「…最初から本体は大岩の影から出ていなかったぞ」

 

それを察したネジが説明してくれる。

 

「本体と誤認させてた分身体が起爆札を投げて目眩まし、その間に大岩を送還、沼の口寄せを行った訳だが…」

 

そのタイミングで潜航してたぞアイツ。と呆れたように続ける。

 

「後は見ての通りだな。最後の最後まで影分身が相手をして、とどめを本体が刺した」

 

沼を展開した理由がバレた瞬間に終わる賭けだな。と溜息を吐く。

 

「事前準備と手札の差で勝ったが…シカマルも良くやったものだ」

 

自分の勝ち筋を通すために手の内を晒さず、テンテンの攻勢を凌いで最後に賭けた手腕は見事としか言えない。

 

感心した顔で続けるネジに少し驚く。

 

ネジがここまで褒めるのは珍しい。

 

大抵の場合…うちはサスケや我愛羅でさえ格下であると認識していた節があったのに。

 

意外そうな顔になった俺を見て苦笑しながら話を結ぶ。

 

「…案外、中忍になるのはああいうタイプなのかもな」

 

あれは仲間がいれば化けるタイプだ。と話を結んだネジを周囲の同期の同郷(今期の受験者)達が意外そうに見ていた。

 

「ネジ兄さんがそこまで評価するなんて…」

 

「確かに凄かったけどよ…」

 

周りの皆が意外だ…と口々に言うのを聞いて憮然とした顔になるネジに笑いを堪えながら話を変える。

 

「…でも最後の一言は余計だったんじゃない?」

 

会場爆破のくだりはさ。と続ける

 

「正直なのは美徳だけど」

 

思わず苦笑する。

 

「あぁ…あのバカ、今がどういう場なのか忘れてるだろ…」

 

ネジは頭痛を抑えるように頭を抱えた。

 

一応中忍に相応しいかを見る場だぞ…その審査員(大名達)が居る会場ごと爆破するって宣言は冗談だとしても不味いだろう。

 

そう続けるネジ。

 

「本気で殺るならの話だから」

 

ほら、皆も分かってくれてるって…と周りを見渡すと

 

 

「ヤバ…皆殺しじゃん…」

 

「それはそうだけど普通は考えないでしょ」

 

「理解した。彼女は本気にさせてはいけない」

 

 

……ダメみたいだった。

申し訳ない、テンテン…君は要注意人物になってしまった様だ…

 

 

「ネジ兄さん達は一体どういう修行をしてるの…?」

 

どんな修練を積んだらあの思い切りの良さになるんだろうか…と疑問を浮かべた表情になるヒナタさんが問いかける。

 

「別に普通ですが。大抵は各自で修練した後に組手ですよ」

 

ネジがヒナタさんの質問に答えている。

皆耳を傾けている様だが…

 

「リーとは基本的に模擬戦で…テンテンとやる時は実験の側面が強くなります」

 

大抵の場合鎧袖一触ですが…時折ヒヤッとするものが出てくるので気が抜けません。

 

軽く笑いながら答えるネジを見て納得したような、そうでない様な空気になる。

 

 

「ネジ相手に有効打を与えられるのか?…無理じゃね?いや、あの言い方だとそう言うわけでもないのか」

 

あのチャクラ防御…回天を抜ける様な手段(超高火力を出す手段)を持っている奴の思考が()()なの怖くね?

 

自分の犬…赤丸を抱えながら身震いする犬塚キバ。

 

「それが何かは分からないが天才に有効打を与え得る火力を有する、と。言い方はアレだが…情操教育をやり直した方が良くはないか?」

 

そんな奴の引き金が軽そうに見えるのは大問題だろう。ともっともな事を言う油女シノ。

 

 

「二人共…失礼だよ…」

 

まだなにもやってないんだし…とフォロー?をするヒナタさん。

 

そこまで言われるような事じゃなくない?とネジと顔を見合わせていると

 

「戻ったぜ…ってどうしたんだよ?」

 

シカマルが帰ってきて変な空気に気づくが

 

「おかえり…惜しかったわね」

 

それをぶった切る様な山中いのの言葉にぶっきらぼうに答えるシカマル。

 

「いや、完敗だっただろ」

 

綺麗に騙されたわ。と秋道チョウジの隣に腰掛ける。

 

「そんな事ないよ。あの人相手に一矢報いるどころか互角にやり合ってたじゃん」

 

そうだそうだ、と全員が同意する。

 

その言葉を聞いて少し照れくさそうにそっぽを向きながら答えるシカマル。

 

「…手ぇ抜いた状態の相手に、だけどな」

 

複雑な気分だ。と続ける。

 

「最後の丸ごと吹き飛ばすって話?」

 

凄い事考えるよね…と呟くチョウジに答えるシカマル。

 

「それだけの準備が出来るならそれが最善手だろ」

 

俺の聞き方が悪かったってのもあるが。と呟く。

 

「相手を()()()()()って話なら何もさせないように初手で逃げられない広範囲に高火力を投射するってのは理に適ってる」

 

テンテンに同意する様な発言に無言になる周囲。

 

思考実験(もしもの話)での勝利条件がそれなら俺もそうする…でも実際にやろうとは思わねぇよ」

 

被害が洒落にならねぇし。シカマルは少し顔を歪めながら続けた。

 

「でもアイツは違う。必要じゃなけりゃやらないしルールが禁じてるならやらない。でもそれらが許すなら躊躇いなく仕掛けてくる。同郷で助かったわ…」

 

あれは脅しでも何でもない、単なる事実だな。

 

そう言って話を締めくくると空気が少し重くなった。

 

 

「凄い言われようだね…」

 

流石にそこまではやらないでしょ…と呟くが

 

「自業自得だ」

 

ネジは仕方ないだろ、と鼻を鳴らす。

 

そもそも忍が目立ってどうする…と呟くと俺の方を見て溜息を吐いた。

 

「…今更か」

 

本気で動く度に何かしら吹き飛ばす奴がいる時点で…と続けるネジ。

 

…そう言う自分も人の事を言えるのか?

 

少しカチンと来たから言い返す。

 

「お?回天とか言うド派手な術使う奴がなんか言ってるね?」

 

地上に打ち上げ花火を叩きつけたレベルで目立つ癖に。

 

「チャクラを自在にぶん回す変態が言えたことか?」

 

身体能力だけでそれに対抗してくる奴に言われたくない。ネジも同じ様に言い返してくる。

 

互いに睨み合っていると周囲から人が捌けていく…これもダメか。

普段通りの会話をするとどうしても周りが引いてしまう。

 

困った…と頭を掻いていると

 

 

「着替えてたらちょっと時間かかっちゃったわー…え、何この空気…」

 

 

重くない?と首をかしげながるテンテンが戻って来た。

 

「戻ったか。主にお前のせいだな」

 

それはともかく…おめでとう。と祝いの言葉を続けたネジに

 

「?ありがとう」

 

詳しく聞かずに礼を述べるテンテン。

 

「そうだね…おめでとう」

 

ネジに続いて祝う俺を見て

 

「ありがとう。…次、負けたら承知しないからね?」

 

笑いながら圧をかけてくるテンテン。

 

「…まぁ、頑張ってくるよ」

 

多分ノーゲームになるけど。と言う言葉を飲み込んだ。

 

木の葉崩しが始まるのはサスケの試合中だった。

相手が我愛羅から俺に変更されたけど主な流れは変わらないと思う。

 

大蛇丸の狙いがサスケのままなら100%そこに居ると分かってるタイミングで仕掛けてくる。

 

木の葉崩しの最中に一尾や砂隠れの連中に殺される可能性は排除したいはずだ。

 

その上で大蛇丸本体は三代目様を殺す。

 

音の四人衆はその邪魔をさせない役目。

 

我愛羅の本来の役目は砂隠れの忍達と共に木の葉の里を襲う事なんだろう。

 

九尾の恐怖が未だ色濃く残っている里の人間からすれば尾獣が現れたと言う事実だけでパニックに陥る可能性が高い。

 

ガイ先生と言う特級戦力の一角がいない今、三代目様への大蛇丸の襲撃と合わせれば暗部や上忍の手が足りなくなるのは明らかだ。

 

(そう考えると、俺が我愛羅に勝ったのは不味かったか…)

 

冷静な我愛羅を相手に原作の様に森まで追いやる事が出来るのか。

 

あれは我愛羅の暴走があって三兄妹で撤退と言う流れだったはずだし…

 

それがなければ最悪は里の中で砂狸(一尾)と大乱闘することになる。

 

被害を最小限に、ナルトを巻き込んで我愛羅との戦闘に入るにはどうすれば良い…?

 

思考を回してどう対処するかを考えていると

 

 

「おー…間に合ったってばよ」

 

その声を聞いて振り返ると第七班の二人が観覧席に戻って来た所だった。

 

「…もう大丈夫なのか?」

 

シカマルが問いかけ、それに答えるナルト。

 

「ピンピンしてらぁ!…ちっと悔しいけどな」

 

後遺症が残らない様に手加減されたと言う事実に一瞬歯噛みするナルトだったがすぐに持ち直すと

 

「…リー!サスケは強ぇぞ!」

 

なんてったって俺のライバルなんだからよ!と俺に向かって宣言する。

 

「うん…そうだね」

 

うちはサスケは紛れもなく天才だ。

 

兄のうちはイタチが百年に一人の才能の持ち主だったから幼少期は目立たなかったものの、その才能の多寡はイタチに劣らない。

 

「俺も気合い入れていくよ」

 

本気で相手になる、と答えると軽く身震いしたナルトが口を開くより早く

 

「…そもそもまだ来てない様だが?」

 

ネジが周囲を確認して呟いた。

 

事実だけど、今言わなくてもよくないかな…と脱力する俺を他所に反論するナルト。

 

「サスケは絶対くる!逃げるようなヤツじゃねぇ!」

 

ナルトもネジに悪気が無いと分かっているからか言葉は強くともトゲは無いように思える。

 

そういうが早いか試合会場に一陣の風が舞った。僅かなチャクラの残滓と共に木の葉が舞い踊る。

 

 

いつの間にか試合会場の中心に立っていた二人の忍に観客の視線が集中した。

 

「…間に合った、かな?」

 

とぼけた発言をするカカシ上忍と

 

「お前が遅刻しなけりゃ確実だったんだ」

 

呆れた様な口調のうちはサスケ。

 

恐ろしく目立つ登場に会場が湧いた。

 

 

 

サスケ(君)!と盛り上がるナルトとサクラを尻目に

 

「…派手な登場だな」

 

呆れた表情で呟くネジに同意する。

 

「だねぇ…見栄えが良いから余計映えるね」

 

木の葉交じりの風と共に現れるイケメン二人(サスケとカカシ)

実際に見ると絵になるなぁ…と感心していると

 

「リーもやってみる?」

 

木の葉を起爆札に変えてド派手に登場すれば面白いと思うけど。と笑いながらからかってくるテンテン。

 

「爆炎の中から飛び出せばインパクト抜群だし!」

 

ほら、と起爆札を見せつけてくるテンテンに

 

「…面白そうだけどパスで。俺は普通に行くよ」

 

こんな顔じゃカッコつけてもね?と苦笑して試合会場へと向かう。

 

「油断するなよ…一ヶ月前とはまるで別人だ」

 

お前が負けるとは思わないが…と呟いて

 

「勝ってこい」

 

そんな風に端的に応援?してくれるネジと

 

「負けないでよ?」

 

次は私とだからねー!と手を振って応援するテンテンに後ろ手に手を振って別れる。

 

 

 

会場へと向かう通路で一人思う。

 

いよいよ本番だ。

 

うちはサスケとの試合もそうだけど…その後に来るであろう木の葉崩し、その開始が迫っている。

 

予想外の展開で万全の準備とは言えないがやれるだけの事はして来たつもりだ。

 

それで足りなかったとしても悔いはない。

 

俺は常に自分の意思に従って生きてきた。

 

負けたくない、勝ちたい。

 

天才達に…煌めく星々の様な才能に、持たざる身でも届くと証明したい。

 

それでもまぁ…

 

「振り回した分はキッチリ補填しないとね」

 

俺が行動した分、俺のうろ覚えな記憶と現在の状況は既に乖離し始めている。

 

三次選抜予選で我愛羅に勝った時点でもうあまり役に立たないものになりつつあった原作知識。

 

それでも大筋は変わってないと思っていたんだけど…ナルトの螺旋丸のくだりが決定的だった。

 

見た時は何で今?と思ったが…

 

(俺やネジが思った以上に影響を与えたっぽいし)

 

思い上がりでないのなら。

 

近接戦闘で圧倒する二人の下忍がいたからこそ接近戦で有用な螺旋丸の習得を急いだのだろう。

 

そのせいで対一尾戦が怪しくなったならその補填は俺がやるべきだ。

 

未だ未熟な身なれど、一度決めた己の道。

多少分が悪くなった程度の障害などぶち壊してやる。

 

今まで世話になった人たちのためにも。

 

静かに覚悟を決めて会場へ足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

「…待たせたな」

 

涼し気な表情のサスケが話しかけてきた。

 

俺が到着するまでの間にカカシ上忍は観覧席に行ったのか、既にサスケ一人が待っている状態だった。

 

俺の方が後に来たじゃん…なんて野暮なことは言わない。

 

「いや、時間ピッタリだったでしょ」

 

そうじゃない、と言いたげな顔をするサスケに苦笑しながら

 

「ナルトくんが信じてたからね…来ると思ってた」

 

そう続けると開いた口を閉じて目を逸らすサスケ。

 

コイツもこういう所は年相応だよなぁ…と笑いながら

 

「よっと…」

 

普段から身に着けている重りを取り払う。

地面にそっと置くと僅かに沈み込んだそれを見て不敵に笑うサスケ。

 

「本気だな」

 

「今のうちはくん相手にコレは邪魔だからね」

 

原作で俺に匹敵する速度を出せていた事から油断は出来ないと判断しての事だ。

 

ナルトのように原作にない強化をしていた場合に対処するなら尚更。

 

静かに構える俺達を見て静まりかえる会場。

 

 

「…準備は良いか?」

 

審判の問いかけに二人して頷く。

 

 

「第四試合、うちはサスケ対ロック・リー…開始!」

 

 

開始の号令と共に腰のポーチから抜いた手裏剣を投げてくるサスケ。

 

「いきなりだね?」

 

一枚目と二枚目を指先でキャッチして三枚目以降を手に持った手裏剣で弾く。

 

うちはの手裏剣術は火遁と並んで有名だが…下忍レベルの今なら軌道が読みやすく対処も容易い。

 

「いい腕してるね…だけど」

 

指に挟んだ手裏剣を地面に落としながら一足飛びに懐に潜り込む。

 

「ただの手裏剣じゃ止まらないよ」

 

仮に刺さったとしても即死するレベルの毒も塗られてない刃なら脅威にならない。

 

言っちゃなんだけど普通の手裏剣では俺の筋肉を貫けないからだ。

 

それも余程の力で投げない限りせいぜい皮を切る程度で終わる。

 

テンテンが普通の手裏剣を多用しなくなったのは俺達が硬すぎるからってのもあるし。

 

…最近はブラフで投げて来たりするけど。

 

「チッ…!」

 

そんな事を考えながら放った掌底はサスケの胴体へと直撃…するはずだった。

 

実際はサスケが舌打ちと共に俺の掌底を横から払おうと…腕力の差で失敗…するも咄嗟に飛び退いて距離を取った形になる。

 

…確かに今の俺は写輪眼相手にぶっちぎれる程の速度ではない。

それでも以前なら相手が反応するより早く殴れたはず。

 

打ち込んだ掌を軽く握って訝しんでいると

 

「どうした?まだ始まったばっかだぜ」

 

そんな俺を見て自信満々な笑みを見せるサスケ。

 

「全く…これだから天才どもは…」

 

軽く天を仰ぐ。

 

俺が数年掛けて歩んだ道程をたった一ヶ月で走り抜けやがって。

 

既に素の状態では追いつかれかけている事実に分かっていたとはいえ軽く戦慄する。

 

第二次選抜の時はまだ負ける気はしなかったが…

 

「お前の背中はもう見えている」

 

挑発交じりの言葉を吐くサスケ。

 

大言壮語ではない。

コイツは、うちはサスケは既に俺のレベルまで足を踏み入れかけている。

 

天才と言う言葉をこれほど強く意識したのはネジ以来だ。

ナルトの資質(潜在チャクラ量)とも違う、()()()()()()()()()()()

 

「この場で追い抜かせてもらう!」

 

再度構えをとって宣言するサスケ。

 

「やれるものならやってみろ…後輩」

 

言葉を返すと共に開門を開く。

 

脳の奥がチリつく感覚と共に体内を流れるチャクラ量が跳ね上がった。

 

才能の差は歴然、今この瞬間も進化し続ける天才を前に自然と身震いする身体を抑えつける。

 

俺のこれまでの積み重ね(努力を続けた年月)が、この天才の一ヶ月に劣るってのか?

 

冗談じゃない…まだ負けてたまるものか。

 

いずれ追いつかれるとしてもそれは今日じゃ無い。

 

この後を考えるなら最大で三門、それ以上は出さないが…本気で行く。

 

脳内でスイッチが切り替わる(コイツには負けたくないと再認識した)

 

「…ようやく本気か」

 

空気が変わったのを感じ取ったのか軽く身震いするサスケを見ながら。

 

「この状態だと手加減とかあまり出来ないから」

 

折れてくれるなよ。と口の中で呟くと同時に殴りかかる。

 

サスケの目が紅く染まった(写輪眼が発動した)のを視認。

 

これなら遠慮は要らないな、と本気で殴りつけた。

 

掠らせるように回避してカウンターを狙ってくる強かさに思わず苦笑しながら受け止める。

 

受け止めた蹴り足を掴もうとするが巧みな体重移動でするりと抜けられた。

 

「前より速い…いや、巧いね?」

 

空を掴んだ右手を開きながら問いかける。

 

「おかげさまでな」

 

そう言い返すが速いか今度はサスケから攻めてくる。

 

「俺、うちはくんには何もしてなくない?」

 

内心で舌を巻きながらも表情では余裕を取り繕う。

 

想定以上に強くなっているサスケをどう対処するか思考を巡らせながら一進一退の攻防を続ける。

 

 

 

 

 

ネジ視点

 

 

リーと真正面から打ち合っているうちはを見て思わず声が漏れた。

 

「…驚いたな」

 

唸るように呟いた。

 

「うちはの子ってあんなに速かったっけ?」

 

テンテンは純粋に疑問を述べる。

 

「森の時よりも圧倒的に速くなってない?」

 

リーが抑え込んで俺が停めた時の事か。

あの時の妙な術は使用していない…と言うよりは封印でもされているのか、残滓すら見えない。

 

まぁ、外付けの経絡系なんて厄ネタに副作用がない訳が無いから妥当だが。

 

生体を使用している様に見えたアレは禁術の一種だろう。

日向の家で文献を漁っても似たような術すら見つからなかった。

 

…もしもアレがうちはの秘伝だとするなら相当質が悪い。

 

使用者の肉体を上書きするように広がる経絡系の増設は術者に強烈な負荷を掛ける。

 

もう一本の腕を無理矢理生やす様なモノだ。

自分に生来備わっていない器官を増設してストレスを感じないはずもない。

 

現に二次選抜の時、うちはには精神的な負荷が相当掛かっていた様に見えた。

 

そんな経絡系の増設(外法に近い術)を行わずに闘っているうちはを見て思わず感嘆の声が漏れた。

 

「第二次選抜の時とは別人レベルだな…」

 

開門状態のリー以上の速度…じゃない。

 

「速いと言うよりは巧い、と言うべきか。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

踏み込みの速さ、関節の駆動の巧さ。

小さな部分が其々僅かにリーを上回っている。

 

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一朝一夕ではああは行くまい、とカカシを睨む。

 

「おぉ怖…ま、お察しの通りだよ」

 

飄々とカカシが答える。

 

「サスケがリーくんに勝つためには体術面の強化が必須だった」

 

だからこの一ヶ月間はひたすら体術に磨きをかけた。と試合会場を見つめながら続けるカカシ。

 

「それだけであの練度か…」

 

うちはの天才児は伊達じゃないな、と呟くと

 

「君にそう評価されるなら方針は間違って無かったって事かな」

 

満足そうに頷くカカシに

 

「…余りうちの班員を舐めないほうが良い」

 

あの程度で通じると思っているなら勘違いも甚だしい。と鼻を鳴らすと同時に事態が動いた。

 

 

 

 

 

観覧席の声が聞こえる位置で殴り合っているとネジたちの声が聞こえた。

 

相変わらず期待が重い…でもそれに応えられる俺であることに少し満足感を覚える。

 

今、この場においてなら俺はうちはサスケに勝てるだろう。

 

それこそなりふり構わなければ五門まで開ければスペックの差で押し切れる自信はある。

 

木の葉崩しを考えると絶対にNGだけど。

 

サスケを意識不明にして俺が戦線離脱した場合、俺は確実に始末されるだろうしサスケは攫われるし我愛羅の時限爆弾が未来に残されてしまう可能性が高い。

 

 

直撃こそ無いものの掠めた攻撃で徐々に傷が増えていくサスケ。

 

俺への直撃は数発あるものの、振り回す力(八門遁甲)に耐えられる様に鍛え上げた俺の耐久力を抜けるほどの打撃じゃない。

 

ダメージレースなら俺に分があるが…奥の手は確実に用意しているだろう。

 

なんにせよナルトは脳筋スタイルに舵を切るのが早すぎだったが…サスケは記憶通りで少し安心する。

 

想定よりも遥かに速くなってはいるが。

 

開門状態の俺にギリギリ着いてこれるレベルまで…これなら生門で楽勝、とはいかないんだろうなぁ…

 

そんな事を考えていると隙ありと見たのか加速して苦無で刺しに来たサスケの腕を払う。

 

素手で無理なら刃物で、と言うのは正しい選択だ。

速度と体重が乗っている苦無なら俺にダメージを与えるのは可能だ。

 

更に弾かれた反動を利用して身体全体を使って連撃を繰り出すのは見事としか言いようが無い。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

個々の技術において勝ると言ってもここまで近づいているならその差は微々たるものだ…要は力押しが可能と言う事で。

 

「そこで視線を切るのは頂けない」

 

全方位を見れる訳(白眼)でも無いのに。と呟きながら回し蹴りを額で受け止めてガラ空きの胴体に掌底を入れる。

 

「がッ…!」

 

吹き飛ばされながらも受け身を取るのを確認して思わず声が漏れた。

 

「…本当に成長率どうなってんの君達?」

 

身体能力で及ばないなら技術で行動速度を上げる。

 

それはネジが俺に対して最初に行った対処法だ…少し懐かしく思うと同時に末恐ろしく思う。

 

昔ならいざ知らず、今の俺はその当時の俺(ネジに対処された時)とは比べ物にならないほど強くなっているはずなんだけどなぁ…

 

少し羨ましく思う気持ちを押し殺して続ける。

 

「まぁ、それでも…」

 

まだ()()の方が強い。

 

そう呟くと同時に痛みに顔をしかめるサスケへと一瞬で最高速度まで加速して接近、咄嗟に防御した腕ごと殴り抜く。

 

直撃しなかったか。余りにも軽い手応えに少し感嘆する。

 

ちゃっかりタイミングを合わせて後ろに跳ばれた。

 

ただ勝つだけなら更に追撃して骨をへし折ってしまえば良かったんだけど…この後を考えると足手まといを作るわけにもいかない。

 

本気でやりながら相手に気を使わなければならない状況に軽く舌打ちが漏れる。

 

このレベルの相手に大怪我させずに勝つのは難しすぎる。

 

それを見ながら弾き飛ばされたサスケが壁に着地、チャクラコントロールで張り付いて俺を睨んだ。

 

俺の表情を余裕とみたか、舐めてると判断されたのか切り札を切ることを決めたようだった。

 

「その余裕、今剥がしてやる…!」

 

右腕を掴んでチャクラを変性、チッチッチ…と鳥の鳴き声の様な音が鳴り始める。

 

来るか…!

 

 

 

 

 

 

 

「サスケってばなにするつもりだ?」

 

疑問を浮かべるナルトを他所に白眼を発動したネジが呻く。

 

「チャクラの性質変化…!?」

 

バカな…と驚くネジ。

 

「いやいやいや…冗談でしょ」

 

()()()()使えるのが下忍で良い訳なくない?と顔が引き攣るテンテン。

 

第三班の二人が驚愕するのを見て疑問をそのまま口にするサクラ。

 

「性質変化…ってなに?」

 

その言葉を聞いてカカシが答える。

 

「チャクラには大別して二つの変化を加えることが出来る。形態変化…螺旋丸の様に形を変える事と、性質変化…チャクラの性質そのものを変化させる事だ」

 

静かな口調で説明を続ける。

 

「忍術は基本的にその二つを組み合わせて使う(パターン)の様なモノだな…発動に印を必要とするのはチャクラをその性質、形態に変化させるための決められた道筋を作ってるってこと」

 

五大属性の資質の有無はその型に合っているかどうかって話なんだよ。と話を続けるカカシ。

 

「チャクラは本来無色で決まった形もない。形を変えるのは訓練次第である程度は可能だが…稀に印を使わずにチャクラの性質を変更できる資質を持った忍が存在する」

 

それがサスケだ。と続けるカカシの言葉に周囲が沈黙する。

 

「サスケは雷へ性質変化する資質があったからな…ちょいと突貫で仕上げたからまだ粗いが十分実戦運用可能だ」

 

 

カカシは飄々と言うがそんな簡単な話ではない。

 

チャクラの性質変化の特性は生まれ持った資質が物を言う。

 

資質のない者には一生かけても無理。

資質のある者でも会得するには時間が掛かる。

 

仮に会得したとして、それを戦闘に使えるレベルまで鍛え上げられる素質を持つものは更に限られると言う狭き門。

 

記憶が正しければ雷の性質変化の特性は肉体活性…平たく言うなら身体能力の底上げだ。

 

確かにそれならリーに追いすがれる可能性はある。

 

しかしこの短期間で実戦に耐えるレベルまで鍛え上げるとは…一体、どんな地獄を見せたのだこの男は…

 

戦慄しながら見つめているのに気づいたのか静かに答えるカカシ。

 

「付け焼刃の体術だけであの子(君達)に勝てると思うほど俺達はボケてないよ」

 

俺に目線を向けずに静かに続けた。

 

「体術の強化は大前提。本命は雷の性質変化による肉体活性の方だ」

 

淡々と語るカカシの視線の先でチッチッチ…からチチチチ…まで加速した雷が弾ける音を響かせるサスケ。

 

「…俺たちも大概だが、お前達も人の事を言えないな」

 

走り出したサスケを目で追いながら感嘆の声を漏らす。

 

速度は勿論、威力もあのバカの螺旋丸に勝るとも劣らないのが見て取れる程洗練されたチャクラの奔流。

 

用意した一発限りの術、それが当たらなければ終わるとはいえたった一ヶ月でここまで迫るか。

 

チャクラの流れを見つめながらそう呟くと

 

「…ガイには及ばないがね」

 

何せ君達を三人纏めてそのレベルまで上げた超人だ。と呆れた声を上げるカカシの視線の先で両者が激突した。

 

 

 

 

雷光を靡かせながら一瞬で距離を詰めたサスケは片手を突き出すように打ち込んで来る。

 

(確かに速い…でも)

 

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写輪眼も白眼もない俺だが動体視力には多少恵まれている。

 

ギリギリ影を追える位には捉えられるなら後は身体能力と予測で補えば良い。

 

開門では無理だと判断して咄嗟に生門まで開けたことによるチャクラで身体能力を底上げする。

 

俺の身体に青く揺らめくチャクラが立ち登った。

 

急激に跳ね上がった身体能力は俺の動体視力を超えて予測した通りに肉体を迷いなく動作させる。

 

「千鳥!」

 

肉体活性により加速、強化された指先が俺に届く寸前で掌に集めたチャクラの回転を最大に。

 

「螺旋掌!」

 

相手の貫手を真横から叩く。

 

サスケの手をコーティングする様に発生した雷が俺の掌に発生させたチャクラの奔流と相打つ。

 

掌に切り傷が入るのと同時に回転するチャクラが炸裂した。

 

 

 

 

「凄い…!あのリーさんとやりあえてる!」

 

「サスケの術と相打ちした…どんな術だってばよ!?」

 

歓声を上げるサクラと驚くナルト。

 

「…チャクラの形態変化の一種だ」

 

アレは副産物だが。と呟くネジ。

 

「ナルト、お前なら分かるだろう」

 

よく見ていろ、と激突する二人から視線を離さずに続けるネジ。

 

「まさか、リーの奴…」

 

なにかに気づいたようにリーへと目を向けるナルト。

 

ぶつかり合う両者を穴が空くほど見つめるナルトを見やって苦笑するカカシが問いかける。

 

「…まぁ、此処まで来たら隠す意味もないだろうけどさ」

 

それ、言っちゃって良いの?と続けるのに対して

 

「目の前で使った後ならバレても構わないと言ってたからな」

 

それに螺旋丸と言う完成形を知る者なら気付かないはずがない。

 

リーが繰り出したチャクラの渦が何を目指した結果なのか。

 

「何よりもカカシ。お前は既に知っていただろうが」

 

リーに教えたのはお前だと聞いてるが?と胡乱げな顔をするネジ。

 

「うん、まぁ…あんな使い方をしてくるとは思ってなかったけど」

 

八門遁甲だけ、と思ったのは取り消さなきゃならんね…と呟くカカシ。

 

「本人は"螺旋丸も八門遁甲もチャクラコントロールの延長線上の技術…本質的には同じモノなんだから出来る!"なんて抜かしてたが」

 

あのバカの理論は時折明後日の方向に飛ぶ。と苦笑するネジ。

 

「それは暴論でしょうよ…」

 

両方とも高度なチャクラコントロールが必要不可欠なのは間違いない。

 

だが共通点はそれだけだ。

 

必要とされる方向性が違いすぎる。

 

例えるなら包丁も鋸も同じ刃物なんだから作り方は同じだと言われてるようなものだ。

 

そんな事を淡々と続けるカカシに

 

「でも実際に出来ている」

 

二兎を追って二兎を得る、その為に他の可能性を全て擲った結果がアレだ。

 

そう続けながら激突の推移を見守っていたネジが呟いた。

 

「…まぁ、他のやつが真似出来るとは思えんが」

 

その言葉と共に試合会場でぶつかり合った結果が出ようとしていた。

 

 

 

 

観覧席の会話を途切れ途切れに聞きながら目の前の結果に満足する。

 

カカシ先生は俺が螺旋丸を習得しようとしていたことを知っている。

それを教え子のサスケに伝えていても不思議ではない。

 

螺旋丸は当たればほぼ勝利が確定するが発動には繊細なチャクラコントロールがいるというデメリットがある。

 

付け焼刃の千鳥とはいえ高速で襲い来るなら準備がいる螺旋丸はぶつけるのが難しいと判断したんだろうが…

 

「な…っ!?」

 

驚くサスケが螺旋掌のベクトルに巻き込まれて体勢を崩した。

 

予想以上の威力と速度に驚いたが、コレ(螺旋掌)は想定してなかっただろう。

 

千鳥の余波で掌を深く切り裂かれながら微笑む。

 

「悪いね…初見殺しで」

 

直前発動の螺旋掌は初見では対処が難しい崩し技だ。

 

写輪眼で見切れると言っても掌底が当たる寸前ではどうしようもない。

 

千鳥という肉体活性の最中で、相手と相打ちする直前なら尚更。

 

コイツらの成長率を見るに後数回も打てば対応されそうだが。

 

チャクラの回転により強制的に俺から視線を切らされたサスケの背後からクラッチ…腰の辺りを抱え込む。

 

幾ら肉体活性で身体能力が上がっているとはいえ単純な出力なら俺の方が強い。

 

「簡易式木の葉落とし!」

 

要はジャーマンスープレックスである。

一撃で意識を刈り取るなら頭から叩きつけて終いだ…!

 

宙に浮いた状態からでは対処できないだろう!

 

「クソがッ…!」

 

地面に叩きつける寸前で無理矢理手を着いて受け身を取られた。

 

身体能力の高さは既にネジと張るか。

 

「まぁ関係ないけど…ね!」

 

叩きつけた状態から腕力で無理矢理ぶっこ抜く。

 

当然抵抗されるが純粋な力なら生門(三門)まで開いた俺の方が圧倒的に上だ。

 

「このまま叩きつけ続けてやる!」

 

腰をクラッチした状態から足に標的を変えて掴み直す。

 

「木の葉流人間ヌンチャクの術!」

 

跳ね上がった膂力にモノを言わせて地面に叩きつける。

 

観覧席から悲鳴が聞こえるが無視する。

このまま無力化出来なければ互いに怪我では済まない。

 

螺旋掌は既に見せてしまったから次からは対処されかねない。

 

無力化するには螺旋丸じゃ威力が高過ぎる…千鳥もだが。

 

我愛羅の砂の盾を貫通して鎧まで抜ける火力…普通の下忍なら下手なところに当たったら即死待ったなしだぞアレ。

 

俺が我愛羅戦で螺旋丸を使った時は防御を抜くためだけにぶっ放したけど…あのレベルの相手でようやく何とか出来るって辺り、千鳥も螺旋丸も下忍に持たせちゃいけない術だよなぁ…

 

まぁ、そう言う訳でこのまま押し切らせてもらうのが最良だろう。

 

「ぐッ…」

 

俺に手が届かないなら肉体活性(千鳥)が有っても意味はない。

 

一回、二回、三回…と雑巾を振るように振り回す。

並の人間なら紅葉おろしに成ってるレベルで叩きつけてるんだが上手いこと受け身を取られてる。

 

地面に連打される衝撃を上手く逃がしている様だけど…いつまで続けられるかな?

 

「…器用な奴だな」

 

思わず漏れた愚痴に反応したサスケが空中で印を結ぶ。

 

「いい、加減…離せッ!」

 

火遁・鳳仙火の術!

 

高速で印を結んだサスケから大量の火の玉が飛んでくる。

 

手裏剣を核とした散弾…確かにそれは対処が難しい火遁の一つだ。

燃え盛る炎と熱された刃物の二段構えの良い術である。

 

この状況でなければ、だが。

 

「甘い!」

 

掴んだ足を振って明後日の方向へ空撃ちさせる。

生み出した火の玉の群れがむなしく散っていく。

 

前にも考えた事だが術の発生が分かりやすく、視認性の高い火遁は当たったら不味い威力を誇るが対処自体は容易い部類に入る。

 

それは鳳仙火の術も同様だ。

発生源は術者の口元及び胸元、当然の事ながら飛び出す軌道は術者の正面に限られる。

 

ましてやこの状況…身体能力で勝る俺が術者(サスケ)の一部を掴んでいるなら向きを変えさせるのは容易い。

 

これが水場の水遁(全方位攻撃)だったり、地面に接した状態の土遁(接地してる奴への範囲攻撃)だったりするとこんな簡単に防ぐことは出来なかっただろうが…こればっかりは相性だな。

 

振り回したサスケを再度引き戻そうとすると初めて抵抗があった。

 

「ここだ!」

 

鳳仙花の術を避けるために俺が僅かに体勢を崩したのを見逃さず、指を地面に突き刺して無理矢理足を捻って抜けられた。

 

足首から軽く出血しながら距離を取るサスケ。

 

「…無茶をするね?」

 

三門開いた状態の握力で掴まれた状態から無理矢理抜けるなら自傷するのは必要経費とはいえ思い切りの良い事だ。

 

以前ネジがやった様な技術ではなく力技で抜けようとしてきたから驚いて手を離してしまった。

 

咄嗟に手を離さなければ肉ごと抉れてただろう…仮にそうだとしてもやってのけただろう事は想像に難くないが。

 

それでも僅かに皮膚を抉られて出血しているサスケを見て呆れた表情になるのを隠せない。

 

「そうでもなきゃ届かねぇだろ」

 

サスケは口の端から流れる血を地面に吐き捨てながら続ける。

 

…肉体活性は既に解けている。やはり連続使用は負荷が大きい様だ。

 

流石に一ヶ月かそこらの修行で得た千鳥()と俺の数年掛けて磨いてきた八門遁甲(肉体改造)なら俺の方に軍配が上がる。

 

再度千鳥の構えを取りながら時間稼ぎのつもりか問いかけてくるサスケ。

 

「……お前は、なんでそんなに強いんだ」

 

独白のような、懇願のような…そんな声色で。

 

ほぼ同年代の強者、それも自身より遥かに才能のない俺が現状で圧倒している様に見えるのがそんなに不思議なのだろうか?

 

答える義務はないし、正直隙だらけの今なら簡単に殴り勝てるが…後輩の真剣な顔を見てそんな真似をするのも大人げない。

 

僅かに苦笑しながら口を開く。

 

「なんでもなにも…」

 

そう成れる様に歩き続けたから。

 

軽く深呼吸をしながら話し続ける。

 

「忍術が使えなくても、お前達に負けない俺であるために」

 

落ちこぼれだろうと、天才に勝てると証明するために。

 

初めはそんな大層な考えは持っていなかった。

 

ただ、物語の後半で影が薄くなるのを防ぎたかっただけ。

 

強くなって、本来のロック・リーが目指した夢を叶えたかっただけ。

 

それが木の葉の里で過ごす内にガイ先生やネジ、テンテンさんと出会って少しずつ形を変えていった。

 

『勝ってこい』

 

『負けないでよ?』

 

『お前たちならやれるさ!』

 

皆に掛けられた言葉の数々が脳裏を過った。

 

 

「俺はお前達に、天才と呼ばれる様な連中に勝ちたいんだ」

 

 

簡単に言ってしまえばただの我儘だ。

 

「うちはくんが求めるような高尚な目標じゃなくて悪いね」

 

要は負けず嫌いなのさ。と苦笑しながら話を結ぶと

 

「…そうか」

 

サスケが何かを口にする直前。

 

 

 

ザリッと砂が舞う音がした。

 

 

 

その音が聞こえると同時に砂嵐が会場を覆う。

 

何の前触れもなく発生したそれはその場にいた全員の視界を奪った。

 

「なんだ!?」

 

予想外の展開に審判の忍が声を上げる。

 

観客の悲鳴や混乱する声が響き渡る中、覚悟を決める。

 

いよいよ木の葉崩し、その開幕である。

 

咄嗟にチャクラの回転を身に纏って防御を固めると同時に聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

 

「待ちくたびれたぞ…ようやく貴様を殺せる」

 

 

そんな声と共に砂の塊が俺に襲いかかってきた。

 

 






誤字脱字報告、感想やここ好きなどいつもありがとうございます!

今回で拙作における属性や性質変化についての簡単な解説を挟もうと思ったのですが上手く書けているか自信が持てずズルズルと書き直していつの間にか6月に突入していた間抜けが私です…

そんな拙作ですが少しでも楽しんで頂けたのなら幸いです!
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