ロック・リー転生伝 作:六亭猪口杯
実生活がバタバタしまして投稿が遅れました事、誠にすみません…
後から少し修整をいれるかもしれませんが、大筋はこれで固まりましたので投稿させて頂きます
「そこまで堕ちたか…!」
「酷い言い様ですね…これは進歩ですよ、先生!」
禁術・穢土転生の術。
その発動を止められず、目の前に現れた初代と二代目の火影の姿に思わず奥歯を噛み締める。
それを見て余裕を見せつけるように頬を裂いて嗤う大蛇丸。
対してこの時に至るまでに少なからず手傷を負った三代目火影に余裕なんてものはこれっぽっちも無かった。
「…これは」
「…また戦か」
穢土転生されて意識を取り戻した二人の火影から記憶の中と全く同じ懐かしさすら覚える声がした。
「ごきげんよう…初代様、二代目様」
態とらしく言葉を取り繕った大蛇丸に対して
「貴様が呼び戻したのか」
殺気の込められた二代目の言葉に
「えぇ…貴方はとても素晴らしい術を残してくれた」
大蛇丸が微笑む。
「死をも超越する術…素晴らしい。この先に進みたい、進ませてみたい。そう思わずにはいられない」
私は貴方を尊敬している。
「だって夢は止められないものでしょう?」
ねぇ、先生?
三代目へと向けられた言葉に答えた
「内容によるわ…馬鹿者が」
三代目火影のその言葉は誰に向けて吐いた言葉なのか。
判断するよりも先に。
周到に用意された結界の中でかつての教え子と黄泉帰ったかつての恩師を前にして。
突然、視界の端で空が光った。
僅かに遅れて響き渡る爆発の連続に思わず目を向ける。
「今のは…!?」
目の前の大蛇丸から視線を切って確認すると此処からでもハッキリ識別できる大爆発が目視できた。
穢土転生によって蘇った初代様と二代目様も同様に目線を向けている。
初代様は感心した様な顔で…二代目様は苦々しい顔をしてらっしゃったが。
大蛇丸も興味深そうに爆発する様を見ていた。
全員が視線をそちらに向けているが隙を見せる間抜けは居らず、爆発が収まるまで奇妙な膠着状態が続く。
ただ爆発するだけに留まらないそれは互乗起爆札に間違いなく…制限内に収めたと豪語していたテンテンの顔が脳裏に浮かぶ。
戦争の火種になり得ると使用を禁じたはずの暴力の嵐は試験会場を包み込んだ砂嵐を吹き飛ばしながら消えていった。
確かに使用は禁じたが持ち込むことは禁じてなかったの…と少し呆れると共に会場に残された者へ迫ったであろう危険に眉をひそめる。
試験時のみ禁止した連続口寄せ等と違い、本来の意味での禁じ手…禁術とした互乗起爆札を使用したと言う事は
(使わざるを得ない程に追い詰められている…)
己の最後の弟子とも言えるテンテンが、自分との約束をそう簡単に破る訳がないと信じているからこその考えである。
一瞬、その場に居ない自分を歯痒く思うがすぐに目の前の敵へと向き直る。
あの子達なら…木の葉の忍達ならば。
力を合わせてこの難局を乗り切ってくれると信じなければ影は務まらない。
…全部片付いた後、テンテンとリーに事情の聴き取りと説教を行うのは確定だが。
「…へぇ。どういうカラクリなのかしらねぇ?」
単なる起爆札の連続爆破にしてはやけに間隔が短く、威力が集中している様に見える…一体どんな使い方をしたんだろうか?と興味深そうな顔で呟く大蛇丸を見て少し安堵した。
流石に一目で仕組みを理解するには至らんか…実物を見た以上、少し思案する時間があれば此奴ならば独力で至ってしまうだろうが。
互乗起爆札は時空間忍術への適正が無ければ扱えぬ術理だが…大蛇丸が穢土転生を使えると分かった以上、確実に此処で始末しなければならない。
互乗起爆札における最大の危険性はその破壊力
仕組みを理解すれば適性のある者なら時間さえ掛ければ容易に模倣できてしまう簡易性と、応用が利きすぎるその特性…倫理を無視すれば効率的に人を殺せる組み合わせが無数に存在するのが問題なのだ。
例を挙げるなら、互乗起爆札を量産して下忍や民間人に自爆特攻させるだけで十分過ぎる威力を発揮する。
それこそ里の中で数人に行わせるだけで半壊しかねないのだ。
準備に時間と金を要するとは言え高度な術を使える忍を一から育てるよりも圧倒的に安上がりな、正にテロリスト向き過ぎる術。
最悪の使い方は二代目様が行った穢土転生との組み合わせだ。
死体を再利用し、友軍に帰らせて拠点毎爆殺する効率を極めた悪意の塊…その片方を有する大蛇丸に渡す訳にはいかん…!
「…さてな」
既に目処を付けているだろうに態々確認してくるとは趣味が悪い。と内心眉をしかめながら無表情のまま答えると
「しらばっくれる、と…あの子ですね?」
興味が湧いてきた。表情から察するにそんなところだろうか。
その考えを肯定する様に続ける大蛇丸。
「ちょっと欲しくなっちゃうじゃない…」
ちろりと舌を覗かせて笑みを浮かべる大蛇丸を他所に二代目様…穢土転生で蘇らせられたかつての恩師から睨まれる。
「サル、貴様…」
「誤解なき様。アレは独学で辿り着いた英才ですので」
「ほう…ソレはまた大した奴だの!」
少し嬉しそうな顔で笑う初代様。
ご自身の術理…木遁を継承出来た御身内が居なかった分、御兄弟の術理に至った者が居た事が嬉しいのだろう。
…少々物騒に過ぎるとは思うが。
「兄者…いや、何も言うまい」
平和な時代に遺すべきではないと封印、抹消したはずの己の術を垣間見て少し感傷に浸っただけの事だ。
もう儂らの時代ではない。
この時代を生きる者たちへ何を言えるわけでもない。
それでもこうして話す機会を得たならば忠告位はしておくべきだろう。
「
木の葉以外では悪鬼の如く言われた身で何を言うかと言われるだろうが言わせてもらう。
「効率的に人を殺す為の術理を思いつく輩は碌な性根ではない」
儂を見ればわかるだろうが…
「しっかり手綱を握れよ、猿。儂の様な人間は方向性を誤れば災厄にしかならんぞ」
兄者が居らねば、うちは一族と族滅を懸けて争い続けていた。
それに疑問を持つこともなく淡々と皆殺しにする為の術を使っていただろう。
今でこそそう思えるが当時の自分では気づけなかった境地。
似た気質であれば同じ轍を踏むのは想像に難くない。
最期の忠告とばかりに真剣な目で見つめてくる二代目様。
「…難しいでしょうな。あの子は好奇心が強すぎる」
改良出来るなら幾らでも弄るだろう。
思いつけば試さずにはいられないだろう。
あの子の努力は仲間に置いていかれたくないという劣等感から始まっている。
今のテンテンからはそう言った焦りを感じないが、競争相手がアレではな…と全力で走り続ける問題児達を思い浮かべて少し苦笑が漏れた。
影分身を習得した後も色々と試行錯誤していたし、口寄せに関しても研究を続けている努力の子だ。
少々危ういものの、正しく学び、人の意見に耳を傾けて。
増長する事無く上を目指し続けるその精神性は老いた目には眩しく感じる。
勿論、ふとした瞬間に闇へ転がり落ちかねない
「ですが仲間に恵まれております」
だから、きっと。
「道を踏み外す事はありませんよ」
先生と同じ様に、あの子は優しいから。
原点を忘れぬ限り仲間の危機になる様な真似はしない。
「…お前なぁ」
現にこうなっとる訳だが?と大蛇丸を睨む二代目様。
「コイツもお前の縁者だろうが」
弟子の育成に失敗してるのに良く言えたものだ、と呆れられる。
…それを言われると痛いのだが。
「此奴とあの子では環境が違います故」
道を外れたのであればこの手で始末をつけます…此奴も、あの子も。
そう告げて大蛇丸を睨むと戯ける様に肩をすくめて
「おぉ怖い…さて、旧交を温めるのはそろそろおしまいとしましょうか」
ズルリと取り出した苦無を初代様と二代目様の後頭部へと埋め込む大蛇丸。
…傀儡化、意思を封じる手段も確立しておったか。
会話で時間を稼げればお二方ならば穢土転生の縛りを抜け出せるやもしれんとも考えていたが…流石にそこまで甘くはないか。
「…何処まで死者を愚弄する気だ」
怒りと共に吐き出した言葉に普段の好々爺然とした声色はなく。
「ただの死体に何を遠慮しろと?」
先程尊敬していると口にしたのと同じ様に。
嘲笑いながら離れる大蛇丸の前に立つお二方に既に意思の光は無い。
全盛期とは程遠く老いさらばえた身体は往年と違い動きが鈍い。
反応も相応に落ちている今、肉体的には全盛期と言ってよい身体になっている初代様や二代目様、大蛇丸相手に勝てるだろうか?
「先生と遊ぶのももうお開きにしませんと、ねぇ?」
もう一つ、欲しいモノが出来た事ですし。と爆発した方向を見やる大蛇丸。
「させると思うてか」
弱気になってどうする猿飛ヒルゼン。
貴様の撒いた種ならば、刈り取るのも貴様の責務であろう。
かつての弟子を前にして、かつての恩師を前にして怯みそうになる心を奮い立たせる。
里の者が奮戦している中、儂が退く事は許されん!
口寄せの術で戦友でもある猿魔を呼び出す。
「猿飛…だからアイツは殺しとけと言っただろうが」
呆れた様な口ぶりで現れた猿魔に苦笑しつつ。
「すまんの…今度こそ引導を渡す故手伝ってくれ」
目の前の三人…かつてない程の不利を背負った戦場を見て
「初代、二代目。それに追加して大蛇丸…勝ち目は薄いぞ?」
「百も承知よ」
それでも勝たねばならん。
いつかのように軽口を叩きあうと
「…か〜!仕方がねぇ!」
ボンッと音を立てて金剛如意へと変化する猿魔。
「付き合ってやるよ…猿飛」
「すまん…恩に着る」
此処が儂の死に場所と見たか、それ以上は何も言わず儂の手に収まる猿魔。
「では、お二方…よろしくお願いします」
大蛇丸が合図を送ると同時に襲いかかってくる歴代の火影。
忍界最強の御兄弟に挑む者の気持ちが今更わかるとはな…!
「来い…!」
何者も通さぬ結界の中で、絶望的な戦闘が幕を開けた。
「なんだ!?」
突如炸裂した上空に驚くサスケに
「…大丈夫、仲間の術だから!」
連続する起爆札を見て答える。
互乗起爆札特有の連続爆破…今この場で扱えるのはテンテン以外に居ない。
俺達はこっちに集中してて良い、とサスケに伝えるが
「お前は…お前達は!」
想定外の言葉に一瞬手が止まる。
その隙を突いて襲い来る砂の波を何とか回避すると、悔しさからか歯を食いしばるサスケが目に入った。
「どれだけ舐めりゃ気が済むんだ!?」
俺たちは、俺は、その程度だってのか?
サスケはそう続けながら我愛羅の攻撃を避けつつ俺を睨む。
テンテンが態と手を抜いていたと、そう感じたのだろう。
あんなモノを試験で使えばどうなるかなんて火を見るより明らかだと言うのに。
「…お前は、あれを見てそう思うのか?」
サスケに当たりそうになった砂を殴りつけて散らしながら静かに言い返す。
先程まで会場を覆っていた砂嵐が吹き飛び、青空が見えているのを指しながら。
黙り込んだサスケに対して徐々に感情が昂ぶっていく。
そんな事を言っている場合じゃないだろうが、と怒鳴りつけたい気持ちを抑え込む事が出来そうに無い。
あの子が…テンテンが奥の手を、禁じ手を使用したと言う事がどう言う意味か判らないくせに、と理不尽な怒りが募っていく。
使わない、使わせない理由なんてあの爆破範囲と展開速度を見れば一目瞭然だろうが…!
不味い、と思うよりも早く感情が爆発した。
「あんなもん、味方に向けられる訳ないだろうが!!」
殺さずに済ますのが難しいなんて物じゃない。
範囲内で起動してしまったら下忍なんて骨も残らないのがテンテンの奥の手だ。
俺やネジの体術とは違って、テンテンは根本的に手加減が出来ない。
俺達は本気を出しても相手を殺さない様に手加減する事が出来る。
本来であれば奥の手に類する八門遁甲でさえ加減が難しいものの殺さないように殴ることは不可能じゃない。
それだけの鍛錬を積んでいるし手加減するのも慣れているから。
その点、テンテンには手加減する術がない。
より正確に言うのなら手加減自体は可能だ。
しかし、口寄せの術をメインに据えている彼女にとっての手加減とは使う物のレベルを落とす事、使い方を工夫する事に他ならない。
呼び出す対象の殺傷力は
使い方次第である程度の調整は出来るが根本的なダメージは変わらない…故に禁術・禁じ手以外にも簡単に使用出来ない物が多い。
その中でもテンテンが試験中の使用を禁止された技術群は対強敵用に作られた物ばかりで、一般的な下忍相手に使えば死体がまともな形を保っていられるかも怪しい。
「本気で殺す以外に使い道がねぇんだよ!」
禁術にされている互乗起爆札は範囲内の全てを爆殺するための最終手段の一つ。
ガイ先生レベルを相手にした際に自分や味方を巻き込んででも相手を死傷させるだけの広範囲、高火力を求めた結果の文字通り必殺の一手。
運良く爆心地から逃れても連鎖的に広がる爆破範囲に対象を必ず巻き込む事を前提に組み上げられた完全な初見殺しの術法だ。
俺達程度の実力では初見で撃たれれば負傷は免れない殺意の塊。
初披露時にガイ先生が八門を使用せざるを得なかった、原作を朧気にしか知らなかった俺が初めて感じた紙面以上の脅威である。
俺もネジも、今でこそ逃げ切るか防ぎ切るだけの術は持ち合わせているが…使い方次第では不覚を取りかねないだけの過剰火力。
切り札と言うよりは文字通りの奥の手だ。
初見殺し性能を遺憾無く発揮するために見た奴を確実に始末する必要がある類の。
政治的にも使ってはならぬと判断されるのもやむ無しと言えよう。
余りにも容易に相手を殺傷出来る、量産可能な殺意の簡略化を進めればこうなるだろうと言う結晶が互乗起爆札だ。
テンテンにとっては秘中の秘であるソレを大衆の目がある所で、盛大に空撃ちしたと言うのがどれだけの損失になったのか。
…深呼吸を一つ。
サスケに釣られて熱された頭に冷静を取り戻しながら続きを話す。
「…殺し合いじゃなきゃ、さもなければ今みたいな緊急事態でもなけりゃ使えるわけがない」
テンテンは別に誰彼構わず殺したいとか言う凶人ではない。
やれるだろうか、やってみよう、出来ちゃったわ。
そんなサイクルを繰り返して作り続けた数多の産廃の上に残った危険物達。
作り上げたは良いものの使い道がなさそうなモノを詰め込んだと思われる危険物倉庫にはそんな創作物で一杯だった。
彼女はそれらが容易に人を殺しかねないと判断して意図的に隔離しているのだ。
…殺傷可能かどうかの基準がネジレベルになってるから若干甘く見積りがちではあるが本人が危険性を理解していないわけじゃない。
いざとなれば使用を躊躇わない、でもそうでないなら使わない選択を取れる子なのだから。
「テンテンのそれは俺達の術とは違う。使ったら最後、威力の調整なんて出来ない必殺の術になる」
口寄せと他の忍術との明確な差はそれだ。
込めるチャクラ量で威力の調整が出来る忍術なら手加減が効く。
サスケの火遁も、今はやらないだろうけど我愛羅の砂も同じ様に。
先程も述べた事だが、忍術や体術における手加減…事前に用意したモノを口寄せで使うテンテンは現場での威力の調整が出来ない。
それが口寄せをメインとしたテンテンの弱点でもある。
相手を殺す為に準備したモノはそれ以外の用途では使い難い代物ばかりで、相手を生かしたまま戦闘不能にするには火力が過剰なのだ。
アレを試験で使って相手を殺さないようにしろっていうのはダイナマイトで蝋燭を折らずに火をつけろと言ってるようなもんだろう。
…その代わり使用されるチャクラ量は同等の破壊効果をもたらす忍術と比べて破格と言える程少なく済むと言うメリットもあるが、事前に用意しなければならないデメリットを考えると妥当ではある。
「頭を切り替えろ、うちはサスケ」
この状況で俺達を敵視する様な奴は信用できない。と言い放ちながら我愛羅の砂の盾をぶん殴って攻撃を鈍化させる。
…一応頭が沸騰している状態からは抜け出してくれたのか、黙り込むサスケを他所に我愛羅の攻撃を捌きつつ思考を回す。
それにしても先の互乗起爆札…上空に向けて放ったのは何故だ?
瞬きの間に迫る砂の波を吹き飛ばしながら自問する。
救援要請のため?
…いや、今の状況で何処も手が足りていないのはネジ達も重々承知のはず。
思考を回す。ならば何故?
砂嵐が邪魔だった?
大層目立った以外にあれで得られた結果は砂嵐が吹き飛んだ事位なものである…あながち間違っていない気がする。
その線で数秒考えてなるほど、と一人納得しながら我愛羅を殴る。
砂の盾に防がれるも攻撃の手を少し遅らせることができ、サスケが回避に成功した。
影縛りか、それに類する何かのために砂嵐が邪魔だった。
だから上空で派手に爆発させたのだとしたら。
それで一瞬でも停止させられればネジなら格上相手でも倒し得る。
ならば恐らく数分もしない内にネジ達が来るはず。
その間耐えるだけなら一人でも可能だし、最悪此処でサスケとのコンビを解消してもどうにかなるだろう…と考えていると。
「…後で話を聞かせろ」
あの爆発についてもだ。
そう言いながら我愛羅の攻撃を回避、突撃するサスケの声に冷静さが戻ったことに内心で安堵しつつ返答する。
「テンテンさんが許可したらね」
アレは文字通り奥の手だから。
互乗起爆札については三代目様から口止めされてるし、詳細は話せないだろうけど…なんて思っていると。
「サスケェ!」
「…ナルト!?」
何でテメェが!?と驚いているサスケの横に立つナルト。
「へッ…お前にだけいい格好させてたまるかってんだ!」
そう言いながらサスケに並び立って我愛羅に立ち向かった。
「ウスラトンカチが…!」
呆れた様な、何処か喜んでいる様な声で呟くサスケが背中を預ける様に構えを取った。
ライバルだなぁ…と少し微笑ましく思うと同時に有り難くもある。
特効薬が向こうから来てくれた。
どうにかしてナルトを引っ張り出さないとなぁ…と考えていたのが自分から来てくれて助かった。
これで後は我愛羅をぶっ飛ばしてナルトを叩きつけるだけで良い。
だけで良いと考えたものの、この状態で話を聞いてくれるかは大分怪しいが…と予想以上に俺に執着している我愛羅を見て少し悩む。
そんな事を考えている間にも我愛羅の攻撃は止まない。
「オラァ!…そろそろ諦めたらどうかな!?」
会場を覆っていた砂嵐は既に解除されている。
観客たちの避難も済みつつある現状、幾ら我愛羅といえど勝ち目は薄くなっているのは間違いない。
「雑魚が増えた所で…!」
うっとおしそうな顔になった我愛羅の攻撃がナルト達へ向かう。
「この…!」
サスケの火遁で少し散らされるも連打される砂の津波の前には効果が薄く。
あわや飲み込まれるかと思った矢先にその間に入り込む影が見えた。
「八卦掌・回天!」
見慣れたチャクラの渦が襲い掛かる砂を受け流す。
「待たせたか?」
姿を現したネジに緊張の糸を切りそうになる自分を押さえ込みながら答える。
「いや、そうでもないよ」
制限時間的に厳しいが…まだ何とか出来る範囲内だ。
その隙に攻撃を重ねようとした我愛羅に向かって飛んでいった苦無が砂の盾に突き刺さる。
「こんなモノで…!?」
苦無に結ばれた起爆札が炸裂して一瞬我愛羅の姿が露わになった。
「うーん…これ(改造起爆札)じゃちょっと火力が足りないか」
しれっとネジの後ろから顔を出したテンテンが呟く。
「やっほーリー」
「テンテンさんも、ありがとうね」
気のせいかな…何かちょっと怒ってないか?
普段どおりに見えて静かにキレている様子のテンテンを見て疑問に思っていると
「ほら、チャチャッと片付けてアイツの首を晒そう?」
その後は砂隠れで大暴れしないと行けないだろうし。
鋼線で繋がれた苦無をジャラリとぶら下げながら言う物騒な言葉に
「…一応、生かして捕らえるつもりなんだけど」
ほら、砂隠れの次世代のホープ枠なら利用価値は高いだろうし?と答える。
実際、原作では青年編で風影まで一気に上り詰めた同期最速の出世株かつ、大戦時の英雄と言って差し支えないレベルまで成長する有望株である。
…そう考えるとヤバいな我愛羅。なろう系かな?
なんて馬鹿なことを考えていると
「あらそうだったの?…それを許してくれる相手だと思えないんだけど?」
爆散した砂の盾を再構築しながら俺達を睨む我愛羅に目をやりながら続けるテンテン。
「これだけやらかしたんだし、死んでも仕方ないって思ってるよ」
ね?と我愛羅に向かって微笑むテンテン。
ソレを見て苛立ちを募らせた様子の我愛羅が声を上げた。
「邪魔だ…!」
一気に増えた敵に対してか、テンテンの言葉に反応したのか。
多分前者だろう言葉に
「ほら、アイツもそうだって言ってるじゃん」
キッチリ落とし前つけてやるのが情けでしょ、と嘯くテンテン。
「いや、言ってないってばよ…」
それに対してナルトが思わず突っ込む。
「…うちはサスケ、まだ動けるな?」
それに構わず確認するようにサスケに問いかけるネジ。
「誰にもの言ってんだ」
舐めんな余裕だ。と返すサスケ。
そのやり取りを見ていた我愛羅が頭痛に耐えるように頭を抱えながら呟きだす。
次第にそれは絶叫へと変わった。
「死ね。死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねぇ!」
発狂した様に砂を操り出す我愛羅。
…一尾を抑えきれなくなり始めてる、のか?
何にせよ今はナルトを無傷で叩きつけるのが先決だ。
「砂漠大葬!」
術の発動と同時に地面に撒かれた砂が蠢動、一気に集まって俺たちの方へ向いた。
「全員、集まれ!」
ネジの号令に集合する俺達に今までにないレベルの量の砂が襲い掛かる。
「八卦掌・回天…!」
木の葉の誇る絶対防御が砂の津波と噛み合った。
「くっ…!」
重い…!と呟きながらも回天を維持するネジ。
チャクラの壁がジリジリと砂に押され始めるのを他所にナルトとサスケに話しかける。
「うちはくん、ナルトくん。これを防いだら突っ込むよ」
我愛羅に特攻すると告げる。
何にせよ近づいてぶん殴らなければ始まらないのだ。
「だ、大丈夫なのか!?」
ジリジリと押され続けるネジを見て声を上げるナルトに
「大丈夫でしょ」
この程度で破られる程うちのリーダーは弱くないよ。と苦笑すると
「言ってくれる…!」
歯をむき出しながら獰猛な笑みを浮かべるネジ。
「ナルトくんは俺達の後に続いて。テンテンさんはフォローよろしく」
「はいはい…いつも通りね」
この中で唯一遠距離攻撃でダメージを出せるテンテンの防御はネジに任せる…テンテンの言う通り何時ものフォーメーションである。
アタッカーが三人に増えてるからテンテンに負担がかかってしまうけど…顔を見る限り問題なさそうだし。
「…そろそろ終わるぞ!」
ネジの言葉にサスケが千鳥の構えをとった。
「上等だ…うちはの力を見せてやるよ!」
写輪眼を起動したサスケの腕にチッチッチ…と音を立てて纏い始めた。
「やれるだけぶっ放すから、迷わず突っ込んでね」
ハイこれ、とナルトに鋼線で繋いだ苦無を渡すテンテン。
「任せとけ!」
多重影分身の印を用意しながら受け取った苦無を慎重に手繰るナルト。
「…今だ!」
ネジが回天を止めた瞬間に飛び出す俺とサスケ。
その後に追従するナルトが影分身を起動、我愛羅とテンテン達の間に壁を作り出す。
それを視界の端に捉えながら砂に足を取られないように足をチャクラで保護しながら走る。
「砂縛柩!」
砂漠と化した会場のあちこちから持ち上がった砂の群れが俺達を捕らえようと殺到するが
「足を止めるな!」
ネジの号令と共にテンテンの起爆札付き苦無がそれを妨害、爆発に巻き込まれた砂が散り散りになる。
攻撃を防いだネジを睨む我愛羅にテンテンが笑いかける。
「私達を忘れちゃダメでしょ!」
俺達を追い抜いた苦無が我愛羅の砂の盾に阻まれると同時に口寄せが起動、広がった投網で盾全体を爆破される。
「が、あぁああああぁぁぁあぁぁ!!」
我愛羅は狂ったように手当たり次第、無差別に砂を叩きつけるが
「冷静さを欠いてはソレも宝の持ち腐れだな」
そんなものが通用するか。とネジがテンテンへの攻撃を弾く。
「絶招!」
飛び込みからの全力を込めた掌底が残った砂の盾を吹き散らす。
ニの打ち要らずと謳われた八極拳を真似た一撃は我愛羅が防御に回していた砂を完全に排除した。
それを見たナルトとサスケが同時に我愛羅へと殴りかかる。
「サスケ!」
影分身したナルトの一人がチェーンマインの様に振り回した鋼線付き苦無が我愛羅の身体に巻き付く。
「離、れろぉお!」
自分ごと叩きつける様に砂を操るが、その間を抜ける様に走り抜けるサスケ。
「良し…!」
既にバチチチチ…と音を立てている腕を我愛羅へと叩き込んだ。
「千鳥!」
「グ…ァアあぁアぁ!?」
我愛羅の絶対防御を貫いたサスケの腕が左肩を抉り取った。
飛び散る自分の血を見て更に狂乱する我愛羅から離れるサスケと俺。
「「吹き飛べ!」」
ナルトとテンテンの声が響き渡ると同時に巻き付いた鋼線付き苦無が起爆して我愛羅の全身を焼く。
爆炎で我愛羅が隠れる。
…使うの初めて見たけど普通にエグいな。
八本の苦無が連なった爆導索モドキ、回避しなければ防御困難かつ脱出困難の殺し技。
投網爆弾と比べれば趣味的に過ぎるが意外と理に適っている…多分アレは俺達対策の一つだろう。
一つでも十分な威力を誇る爆破を八連で叩き込まれて無事な奴は居ない。
…普通の人間なら、だが。
「……………」
無言で佇む我愛羅の表面から焼け焦げた砂がパラパラと落ちる。
「止まった?」
殺ったか?と目を向けるテンテンだが…
「…いや、まだだ」
白眼で確認したネジが警戒を促す。
「アイツ…我愛羅のチャクラが跳ね上がった」
奥の手を用意してたのは相手も同じと言う訳だ。
そう言うと同時に我愛羅の頭が揺れる。
「アぁ、もう…いい…」
どうなっても。
最後の言葉は呟くように紡がれて。
「……ッ!下がれ!」
ネジの警告に従って距離を取る。
「なんだ、アレは…」
我愛羅を中心に集まった砂が徐々に形を変えていく。
完全覚醒…砂隠れの封印術が然程優れてないからか、額に我愛羅を残す形での顕現になるが。
「アイツ自身のチャクラとは全く違う、別人の…いや、別種のチャクラだ…!」
ズズズ、と地面の砂が我愛羅の方に集まっていく。
「第二ラウンドか…本当、変身するのが好きだなアイツ」
拳を握りながら呟くと同時に我愛羅に集まった砂が異形の狸を形作っていく。
予選時に見せた不完全なものでは無く、完全顕現するつもりだろう。
「クソッ…浅かったか!」
千鳥の名残を宿した腕を抑えながら悔しさを漏らすサスケ。
「アレはしょうがないでしょ…相手が1枚上手だっただけ」
何にせよ俺達でやるしかないよね、拳を固めて呟く俺と…
「あれを野放しにしたら里がどうなるか明白だな」
あんな奥の手を隠し持ってるとは…と嫌そうな顔をするネジ。
「アレだけ大きいならいい的でしょ」
危険物倉庫の巻物を開きながら淡々と言うテンテン。
「俺も忘れるなってばよ!」
ナルトが威勢良く拳を掌に叩きつけたと同時に。
「全員、ここで死ね」
巨大な狸を象った砂が固まり、尾獣を形成。
あまりの巨体に誰もが息を呑む。
先の大戦以来、一尾が完全顕現した瞬間であった。
次回から対尾獣戦開始です。
テンテン周りの話は書き始めると筆が走りすぎて制御するのが難しい…二代目様やリーの辺りもそうですが、個人的に好きなキャラは勝手に動き出してプロットぶっ壊しそうになるんですよね…