ロック・リー転生伝 作:六亭猪口杯
時間が飛びました。
少し成長した状態となっております。
螺旋丸の習得に近づいた日から数ヶ月。
相変わらずの修行の日々を送っていたらあっと言う間にアカデミーの卒業試験日になっていた。
「リー、お前大丈夫か?」
隣の席から日向が心配してくれている。
「大丈夫。ちょっと胃が痛いだけ…」
試験内容が今年も変わらず分身の術だという事が俺にプレッシャーを掛けてくるだけだし。
「そう緊張する事も無いと思うが」
お前なら余裕だろう、と言い切る日向。
「そりゃ何でもありのトーナメントとかリーグ戦ならまだ目があるけど…」
殴り合いなら日向以外には負ける気がしない。
…白眼を使用されなければ日向にも負けるとは思わないけど。
今回は別室で分身の術を披露する実技試験だぞ?
俺の得意分野を活かせないじゃん…
どう足掻いても無理じゃん…
「終わったかも知れんね」
結局卒業に関してはガイ先生もどうにも出来ないと申し訳無さそうに言われたし。
マジでどうすりゃ良いんだ…
「…落ちるなよ?」
張り合いがなくなる。と続けてそっぽを向く日向。
すっかり丸くなっちまってまぁ…
「できる限りの事はするよ」
開門開いて高速で反復横跳びしたら許してくれないかな?
物理的に分身しました!とかで…
まぁ、開門の使用はまだガイ先生から禁止されてるから使った時点でアウトだけど…
そんな後ろ向きの思考を読まれたのか呆れた様にため息を吐く日向。
「次…日向ネジ!」
教室の入口から声が掛かる。
「出番だってさ色男」
精一杯の虚勢を張って軽口をたたくと。
「言ってろ…先で待ってるぞ」
そう言うと席を立つ日向。
それからは振り返ることなく教室を後にした。
ま、あいつなら間違いなく合格するでしょ。
俺と違って何でも卒なく熟すし。
その後も続々と呼ばれては教室を出ていって最後に残されたのは俺一人。
「大トリとか勘弁してくれ…」
もう早く呼んで終わらせてくれよ…と内心で祈ってた俺を気の毒そうに見てからクラスメイトが出てって早10分。
…いくらなんでも長すぎやしないか?
さっきまでは5分刻みくらいで呼ばれてたのに…
違和感を感じ始めた頃にようやく声が掛かる。
「次、ロック・リー!」
ようやくか。
重い腰を上げて教室の外へと歩き出す。
先生が先導するのに着いて行くと。
「…此処だ。中に入ったら指示に従うように」
妙な事を言うな?と先生の顔を見上げると
「時間が押してる。早く入りなさい」
急かす様に教室へと押し込まれた。
背後で扉が閉まり、やけに暗い教室に脳内で警鐘が鳴る。
ガイ先生と修行で組手をしている時の様な、強者に見られている気分だ。
油断無く辺りを見渡すと薄っすらと周辺の様子が見て取れるようになって来…!?
「…な!?」
誰かが教壇の陰に倒れているのが見えた。
「おい!しっかりしろ!」
返事はない。意識がないのかグッタリとした子の様子を見るとどうやら気絶している様だった。
息がある事に安心するが…
「先生!人が倒れてます!!」
入口に向かって声を上げるが返答は無し、開けようとしても鍵がかかっていて開けられない…!
「…すみません!」
足を振り上げて扉を蹴り壊そうとすると…
「止まれ」
振り上げた足と扉の間に黒装束の男が割って入った。
造作も無く受け止められた足を引きながら距離を取る。
…そういや2階のはずなんだけどなこの教室。
暗闇に慣れた目で確認すると本来なら窓があるはずの場所が壁に変わっている。遮光カーテンか何かだと思ってたんだけども…
逃げ場が無くなってんな畜生。
「…アンタ、何者だ?」
教師じゃ無いことは確かだけど。
「……」
質問には一切答えないってか!
問答無用とばかりに殴り掛かってくるが…
(速い!)
ギリギリ見切れる速度で殴りかかって来る不審者。
左腕で防御しながら右拳を繰り出すが呆気なく避けられた…それが脅威に拍車をかける。
相討ちを許してくれないレベルの相手か…
警戒度を更に上げて構え直すと。
「少しはやるようだな?」
ようやく二言目を喋った不審者。
そう思うんなら退いてくれよ…と口に出す前に再度襲いかかってくる。
…あまり舐めるなよ?
相討ちじゃ遅いってんならカウンター狙いだ!
上半身から力を抜く。
左肩の辺りに飛んできた拳をいなしながら相手の右手を側面から掴む。
「食らえ!」
なんちゃって裡門頂肘!
相手の腕をつかんで引き寄せ逃げ場をなくし、殴って来た勢いに合わせて踏み込む事で彼我の距離を0にする。
肘を立てて相手の鳩尾に叩きつけ衝撃を逃さないように踏ん張って相手にダメージを与える…!
ガッツリ入った感触に手応えを感じていたんだけど…ボンッという音と共に煙になって消えていったのを見て一瞬固まってしまった。
「甘い…!」
いつの間にか側面に回り込んでいた不審者から膝蹴りが飛んできた。なんとか離脱するが…
「…チッ!」
途中から前蹴りに派生させてきたせいで避けきれなかった。
後ろに飛んでいたおかげでクリーンヒットは免れたものの軽くふっ飛ばされた。
(ダメだな…今のままじゃジリ貧だ)
相手はほぼノーダメージなのに相手の攻撃は確実に俺を削ってくるんじゃ勝ち目は薄い。
…さっきのカウンターで警戒されてるっぽいし。
更に言うなら影分身を使えるレベルの忍相手じゃ尚更分が悪い。
戦闘で打ち破るのを早々に諦めて脱出方法を探る俺に対して
「…その程度か」
どこか落胆した様子の不審者。
言ってくれるじゃん…?
「アカデミー生相手に良くイキれるもんだ」
こちとらまだ下忍ですらないっての。と軽口を叩きながら状況を再確認する。
教壇付近には未だ気絶してる奴がいる。
扉と俺の間には不審者、俺の背後には本来窓があるはずなんだが…何故か壁に変わっている。
標的になってんのが俺だけなのが救いだな。
さて、どうしたもんか…
「行くぞ…!」
考えてる最中に不審者が攻撃を再開する。
…クソが、もうちょい油断してろよ!
繰り出された蹴りを左足で受け止める。
…いや、無理だなこれ!
咄嗟に飛んで衝撃を緩和する。蹴られたベクトルのまま視界が横に回るのを地面に手をついて停止、そのまま再度距離を取るように下がる。
「器用な奴だ」
どこか感心したような声色で呟く不審者に。
「そうじゃなきゃやって行けないんだよ…!」
嫌味か!と言い返しながら頭を回す。
この状況から抜け出す為には…
…未完成だが仕方ない。
切り札の一つを切る覚悟を決める。
その顔を見て更に警戒した様子の不審者。
…ただのアカデミー生相手に油断しないとか
「来るか…!」
身構える不審者に向かって右半身を隠す様にしながら飛び込む。
そのままの勢いで左腕での突きを叩き込んだが
「舐めるなよガキ!」
それはさっき見たぞ!と片手で難なく防がれた…此処までは想定通り。
右掌にチャクラを集中・回転…上手くいってくれよ!
「くたばれ…!」
すかさず背後に隠してた右手に作り上げたチャクラの塊を押し当てるように打ちつける。
当然こちらも防御されるが…
「なっ…!?」
防御した部分で弾けたチャクラの塊が不審者の腕を巻き込んで回転させる。…これで消えないって事は本体だな?
不審者は咄嗟に地面を蹴って飛び上がったが…回転するエネルギーはその程度じゃ逃がしきれない。
相手の意思に関係なく緩く回転が掛かりながら身体が泳ぐ。
耐えるように踏ん張っててくれてたら腕一本くらいなら
「木の葉旋風(仮)!」
通常上下2連続の所を上段2連続へ変更した回し蹴りが直撃した。
空中で防御も受け身も取れない状態の不審者が吹っ飛んで壁に直撃、粉塵が漂って視界を塞いだ。
無防備な状態で背中から食らわせたんだ、流石にしばらくは動けないだろ!
「っし…!」
教壇付近に転がってる生徒を担いで教室の扉を蹴り破りながら廊下に出る。
「誰か!襲撃を…」
受けている!と叫ぼうとした辺りで教室まで案内してきた先生が頭を下げている事に気づいた。
…何の真似だ?というかどんな状況だこれ…?
「騙すような真似をしてすみませんね…」
と背後から木の葉の額当てを着けながら不審者が声を掛けてくる。
…言葉遣いが丁寧になってるのも違和感があるけど、アレ喰らって無事なのかよ!?
「…どういう事だ?」
廊下まで出れたなら後は窓から飛び降りれば逃げ切れるか?
逃げる算段を考えながら聞き返す。
イマイチ状況が掴めていない俺に説明する不審者…木の葉の忍者。
「上層部からの指示でして…曲がりなりにも表蓮華を習得したアカデミー生がその力に溺れないか確かめない内は忍として認められんとのお達しでこの様な形を取らせてもらいました」
彼は不本意だと言っていたんですよ…と先生の方を指しながら続ける。
「それでも里の意思は絶対です。…あなたの怒りは全て私が受けましょう」
そう言う男の顔を改めて見る。
…この丸いグラサンはどっかで見た気がするんだけど思い出せない。
多分、原作で見たことがあるんだと思うけど…
「…それは、まぁ、良いんですが。この子は?」
背中に背負ったままの生徒を顎で示すと
「あぁ…気づいてなかったんですか」
男が指を鳴らすと背中に背負っていたはずの生徒が煙になって消えた。
…変化させた影分身か!
「これはあくまであなたの…ロック・リーに対する試験です。他人を巻き込むような真似はしませんよ」
全く気づいてないとは思いませんでしたが…と続けるけども。
「アカデミー生に無茶言うな!気づける訳ないでしょう!」
思わず文句が出る。
そんなん分かるの日向くらいなもんだわ!
「すみません…アレだけ動けるなら当然気づいているものかと」
謝罪なんだか煽りなんだかわかんないなこれ…
「……取り敢えず、これは茶番って事でいいんですね?」
心を落ち着かせるために数秒使ってからそう確認すると。
「えぇ。あなたの卒業試験を兼ねた茶番です」
結果は言うまでもありませんが。と初めて分かりやすく感情を見せる試験官。
「文句なしの合格です。開門の使用もなしによく切り抜けましたね」
想定外でしたが…想定以上なら大歓迎です。
その言葉を聞いてようやく緊張が解けた。
…俺だけ難易度おかしい気がしなくもないが、分身の術よりはマシだしな。
そんな事を考えていると先生が試験官に釘を刺していた。
「…今後はこの様なことは御免被りますよ」
「それは上層部次第です。…まぁ早々あることではないから安心して下さい」
担任の先生と試験官の会話を聞きながら一息つく。
…螺旋丸モドキが成功して良かった…アレが決まらなかったらもう自爆覚悟で表蓮華使うしか無かったし。
内心でガイ先生との約束を破らずに済んだことに安堵しつつ。
俺のアカデミー卒業試験は終了した。
…目標のための最初の関門はなんとか越えられた。次は何度か死にかける可能性がある鬼門、中忍試験に向けて更に強くならなければ。
我愛羅や君麻呂、化け物じみた連中と遭遇する前に。
サスケやナルト、日向に引けを取らないレベルまで。
できる限りの修行と準備を。
試験官は影の薄い特別上忍ことエビスさんでした。
今後出てくるか分からないので此処で名前バラシさせていただきます。
戦闘描写が難しい…思っている10分の1も伝えられていない気がしますが今はこれが精一杯です。すみません…
今後は現状の仮想敵である我愛羅への対策に頭を悩ませつつ、チームアップからの下忍試験になるかと思います。