とあるギンガのPartiality INNOCENT   作:瑠和

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セントもクリスマスですね〜。

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第一話 事情

とある町中にある、和風の木製住宅。その家には親子合わせて8人家族の、中島家が住んでいた。そんな中島家の屋根にはテントが一つ。今日も中島家の長女の中島ギンガがベランダに掛けてあるハシゴを伝って屋根に上がる。そしてテントの入り口を開いた。

 

「アキラさん、起きてください?朝御飯出来ましたよ〜」

 

ギンガはアキラと呼んだ男を揺すり起こす。男は何回か揺すられるとゆっくりと目を開ける。

 

「んむぅ…」

 

テントの中で寝袋入って寝ていたアキラと呼ばれた男が身体を起こした。

 

「…」

 

「?」

 

アキラはギンガの顔をしばらく見つめると、またパタリと倒れる。ギンガは焦りながらまたアキラを起こす為に必死で揺すった。

 

「アキラさ〜ん!!」

 

「ぬぁ…わーったわーったって」

 

アキラは寝袋から這い出て来る。

 

「今日は休みだろ?そんな焦らないでいいじゃねぇか…」

 

「ダメです!休みの日でもちゃんと早寝早起きしないと!」

 

「はいはい…」

 

アキラは渋々とテントから出てハシゴに向かう。そしてハシゴを降りてベランダに、ベランダから家に入って居間に向かった。居間にはすでに姉妹が集まっている。母親のクイントもだ。

 

この家には父親もいるが、今は仕事の都合で家にはいない。

 

「おはようございます、クイントさん」

 

「おはよう、アキラ君」

 

「ふぁ…おはよ〜」

 

母のクイントに挨拶した後に姉妹全員に挨拶をし、座布団に座る。朝食ももちろん和風。ごはん、納豆、味噌汁、漬物、目玉焼き…それぞれ健康に気をつけられたメニューだ。

 

ちなみにこの家で一番食べるのは長女のギンガ。一体そのスレンダーで小柄な身体の何処に、文字通り山盛りご飯が入るのか…謎である。そしてそんなに食べても太らないっていうのも謎だ。

 

「やっぱうめぇな。ちゃんとした飯は」

 

「アキラさん、もう居候なんかやめて家族になっちゃいなよ!ご飯もあるし、母さんも助かるし!」

 

四女であるスバルが提案する。しかし、アキラはスバルを少し撫でながら首を横に振った。

 

「そういつまでも迷惑かけられねぇよ。いつかは出てって、また当てもなく色んなとこを彷徨うさ」

 

そう言われたスバルは…いや、中島家の姉妹はみんな少し悲しそうだ。

 

スバルが言う通りアキラは居候だ。なぜアキラが中島家に居候しているかは、一つ理由がある。それは今から二年前の冬に遡る。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

ー二年前 冬ー

 

 

二年前、つまりギンガがまだ小学生五年生だった頃の話だ。ギンガはその日、塾に行って帰る途中だった。まだ六時時なのに暗くなってしまった道を帰る途中。今夜の夕飯はなんだろうと楽しみにしながら、まだ五時なのに暗くなってしまった道を歩き、黒い車の横を通り抜けようとした。

 

車を横切る瞬間、車の扉がいきなり開きギンガの腕を掴んで車の中に引き込こむ。

 

「えっ」

 

ギンガは抵抗する間も無く、スタンガンを首に食らわされて気絶した。車の中には男が三人。男達はギンガの両手足を縛って車を発進させる。

 

 

ー廃工場ー

 

 

冷たい…そして寒い。カビ臭い様な臭いでギンガは目を覚ました。目を覚ました場所は、どこかも分からない暗く、広い場所。ギンガは自分に何が起きてるのか全く理解出来てない状態で起き上がった。

 

両手足が縛られ、うまく動けない。どれ程眠っていたのだろうか。口が塞がれていて声が出せない。状況の整理も出来てない自分に向かって、いくつかの足音が近づいて来るのにギンガは気づいた。

 

音のする方を見ると、三人のマスクを被った男がこちらに歩いてきている。

 

(だ、誰………?)

 

「お目覚めかい?中島家のお嬢さん」

 

「誰だって顔してるから教えるけど、まぁ俺らは誘拐犯だよ」

 

軽い声で自分達の紹介をする。しかし、ギンガはそんなもの聞いてる心の余裕などなかった。なぜなら、男達の腰には拳銃があったからだ。つまり、誘拐という最悪の状況下な上にいつ殺されるかも分からない。

 

「そんなに怖がらなくてもいいよ?無駄な抵抗したり、逃げ出そうとしなきゃ何にもしないから。君のお母さんが身代金ちゃんと持ってきたら解放してあげるからね」

 

そう言って男は笑顔で拳銃を向けた。ギンガ目には涙が浮かんでいる。

 

充分に恐怖を植え付けたと確信した男達は拳銃をしまってまた何処かへ去って行った。再び一人になったギンガ。ギンガは我慢していた涙を流してしまった。

 

恐怖と、自分の情けなさを恥じる涙を。今なら誰も聞いてないと思って……。だが、ギンガが泣き始めて一分もしない内に、ギンガのそばにあった箱がガタガタと音をたてた。

 

そのことにギンガはびっくりし、目に溜まった涙も引っ込む。

 

「さっきからうるせぇな………こんな廃工場でなにしてんだ……って………ん?」

 

ギンガの後ろにあった木箱からアキラが出てきたのだ。これが、二人の初対面だった。

 

アキラは縛られてるギンガを見て驚いた表情を浮かべる。ギンガは必死に助けを求める目でアキラを見た。

 

「あんま考えたくないが、まさか誘拐されてここに監禁されてるってことか?」

 

ギンガは頷く。アキラはため息をつくと、さっきまで入ってた木箱に向かい、木箱の中にあったバッグからからナイフを出す。

 

ギンガはそれにすら怯え、再び涙ぐんだ。急に現れた男は自分を助けるともなんとも言ってない。

 

「じっとしとけよ」

 

アキラはギンガの後ろに回った。ギンガは怯え、恐怖で身体が動かない。縛られてる手と手の間に冷たいナイフが入り込む。ギンガは両目をギュッと瞑った。

 

…………ブツッ

 

縄が切れる音がした。ギンガの両手は自由になる。そして足の縄も解かれ、口を塞いでたガムテープをアキラは痛くない様に剥がした。

 

「大丈夫か」

 

「は……はい…ふうぅ…ふあぁぁぁぁん!」

 

ギンガは自由になった身体アキラ泣きついた。不安で不安でしょうがなかった時、唯一頼れる存在が現れギンガは心から安心した。それ故に流れた涙。

 

アキラは急に泣きつかれ、困った表情を浮かべたがすぐに落ち着かせる様に、ギンガを抱きしめた。

 

「よしよし、もー安心だ。家に返してやっからな。あ、名前は?」

 

「うくっ…ヒック………中島……ギンガ」

 

「家の電話番号とかわかるか?」

 

「えっと…」

 

ギンガが電話番号を言おうとしていた時、怒鳴り声が響く。

 

「おい、お前!なにしてやがる!」

 

身代金を持ってくるよう中島家に伝え終えたのか、誘拐犯達が戻ってきたのだ。誘拐犯の三人は腰の銃を抜いて構える。アキラはギンガを自分の後ろに行かせ、ナイフを構えた。

 

「どこのどいつだかしらねぇが、その子は俺らの大事な人質なんだ。死にたくなかったら、さっさとその子置いて帰……いや、ここを見られたんなら生きて返す訳にはいかないかな。君にも人質になってもらおう」

 

アキラの後ろのギンガがアキラの服をギュッと握る。その様子をアキラは少し見て、視線を誘拐犯に戻す。

 

「悪いが、それは出来ねぇ。目の前に救える人が……命があるなら俺はそれを救いたい」

 

「なら死ね」

 

男達が引き金を引く前にアキラはギンガを抱えて物陰に飛び込んだ。その0.2秒後、アキラ達がいた場所に弾丸が撃ち込まれる。

 

「やっぱ本物か………まぁいい。所詮は素人だ」

 

「なに言ってるんですかぁ!早く逃げましょう!何かであの人たちの気を逸らして……」

 

ギンガは小声で言った。

 

「気を逸らしても、背中向けた瞬間撃たれたらどうする。それにあそこの木箱の中に俺の荷物が入ってんだ。あいつら倒した上で、俺の荷物も…」

 

アキラ達が隠れてる何かの機械に弾丸が撃ち込まれる。アキラはギンガを庇う様に抱え、物陰から物陰に移った。そして、そこで大きめの布を見つけると、ギンガに渡す。

 

「それに隠れとけ」

 

「あなたは……?」

 

「荷物とってくるついでに、あいつらぶっ飛ばしてきてやんよ」

 

「あ、危ないです!一緒に隠れてましょう!」

 

「隠れたところでそのうちバレる」

 

ギンガの心配そうな顔を見て、アキラはしゃがんでギンガの頭を撫でた。

 

「安心しろ。必ずお前を守る。男に二言はねぇから大丈夫だ」

 

それだけいうと、アキラは再び別の物陰に移る。そこでアキラは武器になりそうな物を探す。

 

トレジャー用のナイフはあるが、致命傷を与えたら逆にこっちが捕まりそうだ。格闘術だけでも勝てそうだが、銃があるとなると危険。この二つをカバー出来て、なおかつ廃棄された工場にある残り物。

 

アキラは鉄パイプを二本入手した。これなら飛び道具にもなるし、頭さえ叩かなければ、致命傷にはならない筈だ。

 

「さてと……」

 

アキラは物陰からあたりを見渡す。男達がアキラ達を探している。とりあえず一番近い距離にいる男にアキラは狙いを定め、物陰から飛び出した。

 

アキラは男が背を向けてる間に鉄パイプをブーメランの様に投げる。その音に気づいた男が振り向いたが、そのせいで鉄パイプは男の腕に命中してしまう。

 

「ぐあっ!」

 

男の声が響き、鉄パイプが地面に落ちる前にアキラは男の懐に飛び込み、鳩尾に強力な肘打ちを食らわせた。男はだらりとアキラにもたれかかる。気絶したのだ。

 

「そこか!」

 

他の男がアキラの居場所に気づき、銃を向ける。しかし、アキラは気絶させた男を盾にして飛び出した。他の男も流石に動きを止める。

 

アキラは誘拐犯達がうろたえてる隙にもう一人の男に残った鉄パイプを投げた。鉄パイプは男の腕に上手く当たり、男は銃を落とす。その瞬間、盾にした男を適当に投げ捨て、先ほど鉄パイプを当てた男に膝蹴りを食らわし、気絶させた。

 

そして、最後の男を見ると、仲間二人がやられて完全にテンパってる姿がアキラの目に映る。

 

「おおぉぉぉぉぉぉ!」

 

「ひぃぃぃぃ!」

 

アキラが突進すると、男は焦って銃を構え、弾丸を放った。

 

銃声が廃工場に響き渡る。アキラに向けて放った筈の弾丸は、何故か男の前方にあった木箱に当たっていた。

 

「え……?」

 

「人を撃つのは、的に弾を当てるのとは訳が違う」

 

アキラは気づけば男の真後ろにいた。

 

「ひぃ!」

 

「闇雲に撃ちゃ、当たるってもんじゃねぇ」

 

再び銃口が向けられる前に、顔面に正拳突きを放った。男は瓦礫の中に突っ込み、痛みに悶えてる。

 

「さて……と…警察に通報したいが…公衆電話どっかにねぇかな」

 

アキラが最後の一人を縄で縛り、もう一人を縛りながら考えていると、もう一人がいないことに気づく。それと同時に、アキラの後ろから声がした。

 

「動くんじゃねぇ!」

 

「んーっ!んーっ!」

 

振り返ると気絶してた筈の男が目覚め、ギンガを人質にとっている。ギンガは口を手で塞がれ、頭に拳銃を向けられていた。アキラは特に焦る様子もなく、立ち上がる。

 

そしてなんの躊躇もなく男に向かって歩き始めた。

 

「く、来るな!動くなって言ってるんだ!このガキが殺されてもいいのか!」

 

「殺しゃいいんじゃねぇか?」

 

「!?」

 

ギンガと誘拐犯が同時に驚く。

 

「俺とその子は偶然会っただけで、特に深い関わりもねぇ。それより、お前こそいいのか?」

 

「な、何だと!?」

 

アキラは話しながらゆっくり、ゆっくりと近づいて行く。ギンガを人質に取った男も少しずつ後退して行った。男は、アキラの言葉の意味を理解出来ずに焦ってるのが目に見えている。

 

「もうお前の仲間はいない。そんでその子を殺したところでどうなる?人質を殺したんなら身代金を受け取ることも出来ない。それどころか、殺しちまったら捕まった時に、誘拐罪に加えて殺人罪までついて来るぞ?」

 

浅はかに人質をとったことを男が後悔した隙に、アキラは足元にあった拳銃を蹴り上げ左手に収めた。そしてそのまま拳銃を構える。

 

「さぁ、選べ。なるべく小さい罪で捕まるか、大きい罪で自分に枷を増やすか」

 

男は少し考えた後ギンガと拳銃を離した。ギンガは慌ててアキラに向かって走る。アキラは走ってきたギンガを抱きしめ、ギンガが怯えない様に拳銃を投げ捨てる。

 

そしてお姫様抱っこでギンガを抱え、自分の荷物を木箱から出した。アキラの荷物はとても大きいバッグ一つだけ。アキラはそれを左肩に担ぎ、工場の外に出た。

 

ちょうどそこに、身代金を持ったクイントが現れる。クイントはギンガを抱えたアキラを見ると、急に険しい表情になった。

 

「………言われた通り、警察に伝えずきました。お金も言われた金額ここに…だから早く、家の子を返してください!」

 

「待って母さん!この人は、助けてくれたの!!」

 

「え?」

 

ギンガの思いもよらぬ言葉にクイントは驚き、アキラの顔を見る。ギンガを抱えているアキラは明らかに柄の悪い感じの男。

 

「この人が?」

 

「うん」

 

「そうなんですか?」

 

「まぁ、成り行きだがな。ほれ、ママんとこに行きな」

 

アキラはギンガを降ろし、背中を押す。ギンガはアキラを名残惜しそうに見た。アキラは目で「速く行け」といざなう。クイントはギンガを抱きしめる。

 

その様子を見ると、アキラはその場から去ろうとした。クイントはアキラを引き止める。

 

「待ってください!あの…あなたは………」

 

「名乗るほどの者ではありませんよ。ただの旅人です。俺は偶然この工場を寝床にしてただけです。それでは」

 

「待ってください!」

 

アキラはまた引きとめられる。今度引き止めたのはギンガだ。アキラは少しため息をついて振り返る。

 

「お家…ないんですか?」

 

「あるっちゃあるが……帰りたくないだけだ。あの家には」

 

「……じゃあ…今の時期寒いですし、家にきませんか!?」

 

「はぁ!?」

 

アキラは驚く。クイントも驚く。

 

「ダメ?母さん」

 

「えっとまぁ……………少しだけなら……」

 

「いいよね!アキラさんは…………イヤ……ですか?」

 

「……………そっちが構わねぇってんなら」

 

アキラは申し訳なさそうに了承した。この時ギンガはアキラへの礼と、もう一つの理由でアキラを家に誘っていた。ギンガにとって今回の事件は精神的外傷…トラウマになってしまった……………そう、ギンガは怖かったのだ……今夜、いつも通りに過ごすのが。

 

何処かに拠り所を求めていたのだ。

 

 

 

 

続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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