とあるギンガのPartiality INNOCENT 作:瑠和
ー朝ー
クイントが早起きをし、新聞を取りに玄関を出る。すると、門の前にアキラが立っているのを見つけた。アキラは申し訳なさそうな顔をしてクイントに少し近寄る。
「お…お久しぶりです」
「そうね。今回も長旅だったわね」
「また……ここに泊まってもいいですか?」
「もちろん、ギンガ達も心配してたわよ?」
「すいません」
橘アキラは、二年は中島家にいることになっているが実際は違った。時々旅に出ていたのだ。アキラは最初、十月に中島家にやってきて、十二月三十日にアキラは急に姿をくらまし、三月に再び戻ってきた。それから七月から九月、十一月から今日に至るまで旅に出ていた。
よって中島家にいた時間は約八ヶ月。そして、ブレイブディエルシステムが最終調整に入り、その年の夏には稼働可能という状況の年の一月にアキラは帰ってきた。
「さ、入って。寒いでしょ?」
「はい………」
◆◆◆◆◆◆◆
「ふあ………」
朝六時。私、中島ギンガはたくさんいる姉妹の中で一番最初に起きます。そして、母さんの手伝いをしたり他の妹たちを起こしたりします。まぁ、チンクとディエチは自分で起きますが、私ほど早くありません。
今日はお休みですからそこまで急ぐ必要はないのですけれども……。私は今日もベランダから屋根に上がりました。
この家の居候…私の好きな人…自由気ままな旅人さん…橘アキラさん。一昨年の十月に私を誘拐犯から救い出し、私の提案でこの家に居候することになりました。でも、アキラさんは時々旅に出て行ってしまうのです。
アキラさんも私が毎日起こしてたので、いないと分かっていてもついアキラさんが寝床にしてるテントを覗いてしまいます…。
「アキラさん…」
小さくため息をついて、私はきっと母さんが朝ごはんの準備をしてるであろう台所に向かいました。
ー台所ー
「母さん、おはよう」
「あ、おはようギンガ」
ギンガが台所を覗くと、そこにはエプロン姿のクイントと、
「おはよう」
エプロン姿のアキラがいた。ギンガは自分の目を疑い、頬を引っ張る。痛みを感じた。現実だと確認すると、ギンガはアキラの方に向かってズカズカと歩き出す。
「お久しぶりですアキラさん」
「ああ、ひ、久しぶり」
明らかに怒ってる表情のギンガに、アキラは冷や汗を流しながら微笑んでギンガ言う。ギンガはアキラの前に着くと、アキラの腹筋に全力全開手加減なしの正拳突きお見舞いした。
「ごふぇ!?」
アキラはお腹を押さえながらふらふらと数歩下がり、跪いてプルプルと痛みに耐えた。ギンガはそんなアキラを見ながら思いっきり息を吸う。
「鳩尾狙わなかっただけありがたいと思ってください!今まで見たいに置き手紙残してくならともかく、置き手紙も無しに……私が…………みんながどれだけ心配したか…わかってるんですか!?」
一息で言い切る。
「いたた……いやぁ、悪かったなぁ…………」
アキラは殴られた事を気してないかの様な笑顔でギンガに謝罪した。
ギンガはその顔を見ると、顔を赤くしながら急に動けなくなってしまう。ギンガは腕を組んで、ぷいっと顔を反らす。アキラは「相当怒ってるなぁ〜」と思いながらどうやって許して貰おうか考えた。
「本当に悪いって思ってるなら……………………もう出ていかないで下さい……」
「え?」
アキラとクイントが少し驚いた顔をする。ギンガは跪いてるアキラの視線に合わせてしゃがみ、アキラの手をギュッと握った。
「ここは…もうあなたの家みたいなものなんです……。アキラさんが元いた家のことは忘れていいんですよ?嫌なことも…辛いことも…」
「なにいって……」
アキラはそこで言葉を止める。ギンガの瞳が語っていたのだ。
完全に見透かされてるな…そう思ったアキラは立ち上がり、ギンガの頭を撫でた。心配そうな表情のクイントにアキラは微笑み、作りかけの朝食の調理を再開した。
「ありがとなギンガ。そう言ってもらえるだけで、俺はありがてぇ。ただ、何度か言ったがいつかは出てく。いつまでもあんたらに迷惑は…」
「迷惑なんてかかってません!そうだよね!母さん!」
「え……そ、そうよ!こうなれば六人も七人も一緒よ!そもそもアキラ君は家のために色々してくれてるじゃない!そんなこと気にしないでいいのよ」
ギンガとクイントはそう言うが、アキラは黙り。しばらく黙ったままでいたが、アキラはしゃがみ込んでまたギンガの頭を撫でた。
「俺はきっとまたどこかへ行く……でも、もしお前らが……クイントさんやゲンヤさん、お前の妹達、そしてお前自身がいいって言ってくれるなら………ここを俺の帰るところにしてもいいか?」
急に変な話をしたアキラに若干の疑問抱きながらも、ギンガは頷く。
「良かった」
「あーっ!アキラさんだ!」
突然大きな声が聞こえた。その声はスバルだった。
その後、姉妹達とゲンヤが次々に起き出し、朝食を用意していたアキラを発見し、アキラとの再開を喜んだ。だが、アキラは複雑な気持ちだった。
なぜこの家族はここまで自分に優しいのか、その疑問と、中島家に対しての感謝が相重なって複雑な気持ちの原因となっていた。
その日の昼。
暇になったギンガは、アキラのテントへと向かう。寝ている可能性もあるが、ギンガはそれでも構わなかった。アキラの寝顔をみて楽しむのもまた良かったのだ。
特に、アキラが変な夢を見ていると表情がちょくちょく変わって面白いのだ。
「アキラさーん?」
「ん?あぁ、ギンガか」
アキラは何やらチラシを大量に並べ、悩んでいた。テントを開けた人物を横目でギンガだと確認すると、アキラはまたチラシとの睨めっこを始める。ギンガはテントの中に入り、アキラの横に座り込んだ。
「何ですか?それ」
「バイトのチラシ。俺の財布が最近寂しいからな」
「へぇ………」
しばらくアキラはバイトのチラシと睨めっこしていたが、アキラは急に大きなため息をついたと思うと上着をとってテントから出た。そして、外の新鮮な空気を浴びながら深呼吸をする。
ギンガもテントから出た。
「どうしたんですか?」
「ウダウダ悩んでんの飽きた。テキトーにそこらで募集してる店の様子みて決める。出かけてくら」
「あ、わ、私も一緒に行っていいですか?」
ギンガは慌ててアキラに尋ねる。アキラは上着を羽織りながら頷き、屋根から飛び降りた。アキラは塀に着地し、そのまま座りこむ。
「待ってから準備してこーい」
「あ、はい!」
ギンガは屋根から降り、部屋に戻って出かける準備を始めた。ギンガは二分掛からずに支度を終え、玄関から出て来る。アキラは塀から降りてギンガの横に立った。
「行くか」
「はい!あ…」
「?」
ギンガは歩き出そうとしたが、何かを見つけて足を止める。ギンガの視線の先…二人の進行方向には、今買い物に出かけようとしているお隣さん、スカリエッティ家の長女である一架がいた。
「?あら、ギンガちゃんじゃない………そちらのお兄さんは?」
「あ、この人は橘アキラさん。家の居候です」
「ああ、あなたが噂の……ふぅん………」
一架はアキラをジロジロと全身を舐め回す様に観察する。アキラはそれを気にする様子もなく、ギンガに「誰だこいつ」と言うような表情を浮かべた。
「あ、この人は私のいとこに当たる一架・スカリエッティさんです」
「従姉………お隣が……か」
「なかなかカッコいいじゃない」
一架は微笑む。アキラは「どうも」とだけ言って歩き始めた。ギンガは一架に手を振ると慌ててあとを追いかける。
「あ、待って下さ〜い」
一架はそんな二人の背中を見ながらくすりと笑った。
ー海鳴市 駅前ー
「ふぅ………まだ寒ぃなぁ」
「ですねぇ……」
白い息をはきながらアキラとギンガは駅周辺の店を見て回る。しかしアキラのスタイルに見合った物は中々見つからず、最終的に公園のベンチに居座った。
アキラはギンガに自販機で温かい飲み物を持ってくる。それをギンガに手渡し二人で一息ついた。
「なんか……楽しみながらやれる仕事ねぇかなぁ……」
「最近はそう言う仕事ってないんじゃないんですか?まぁ、楽しいかどうかは別として、アキラさんならウェイトレスさんとかなら似合いそうです♪あ、お料理も上手ですからレストランとかで厨房を担当したりとか……」
ギンガが多少フォローするが、アキラはそれでも微妙な表情をした。
「そりゃ、お前の家に泊まらせて貰ってるからその礼として料理だの家事だのやってはいるが、バイトにするのはちょっとなぁ…………」
ギンガはそこに何か違いがあるかはわからなかったが、アキラがそう言うのであれば仕方ないと思った。しかし、厨房はともかく、ウェイトレスをしているアキラはちょっと見てみたいとギンガは思う。
「それにレストランなんて、所詮冷凍とかフリーズドライのオンパレードじゃねぇか。俺が作りてぇ料理じゃねぇ」
「そうですか……………」
「………………ん………まぁ、その…なんだ、色々ありがとな心配してくれて」
ギンガのしょんぼりした顔を見て、申し訳ないと思ったのかアキラはギンガの頭を撫でながら礼を言った。ギンガはそれだけで疲れが取れた気がした。そして、急に立ち上がってアキラの手を引っ張る。
「座っててもしょうがないですから、今度はあっち行ってみましょう!」
「んぁ?ああ………」
アキラはそのまま引っ張られ、少し戸惑いながらもギンガに身を任せて街に向かって行った。だが、それでも一向に良いバイトは見つからない。まぁ、これもアキラのわがままによって決まってないだけだったが、ギンガにしてはアキラと一緒にいれる時間が増えて嬉しかった。
二人はその後、いろんな店を周り、良さそうなところに目星を付けて行く。コンビニ、本屋、要塞のような謎の研究所の庭の整備………etc
そうして二時間ほど練り歩いたところでそろそろ帰ろうかとアキラとギンガが話しているその後方から女性の叫び声が響いた
「誰かその男を捕まえて下さい!!!!!!」
「!?」
二人同時に振り返る。後方には、女性が持つようなバッグを持って走ってくる男と、その奥にはさっきの声を出したと思われる女性が倒れていた。ギンガはアキラを見る。アキラはギンガに下がる様手で指示した。そして、男の進路に割り込んで行く。
男は前方にアキラが現れ、それが自分の邪魔をしようとしている者だと気づくと懐からナイフを取り出して振り回した。
「おら!!!どけ!!こいつで刺されてぇか!!!!!」
アキラは姿勢を低くして男に突っ込む。表情一つ変えずに走ってくるアキラに男は逆に恐怖し、その足を止めかけた。その瞬間、すかさずアキラは男の足目掛けてスライディングで滑り込み、足を引っ掛ける。
男は転び、バッグを手放した。
「ギンガ!」
アキラに言われ、ギンガはすかさずバッグを回収し、その場を離れる。アキラは男の腕を踏みつけ、ナイフを無理矢理奪い取った。
「くそっ!離せ!」
男はひったくりを諦め、アキラの足を振り払って逃げ出す。アキラは無理に追いかけようとせず、上空に飲まないでおいた缶コーヒーを投げた。
そして、それを男の頭に目掛けて蹴り飛ばす。缶コーヒーは見事、男の後頭部に命中し、男は気絶した。
「ギンガ、バック届けてやれ」
「はいっ!あの………大丈夫ですか!?」
「ええ、ありがとう……」
◆◆◆◆◆◆◆
周囲の人が通報し、男は無事逮捕された。アキラが助けた女性は、黒髪の美人さんでプレシア・テスタロッサと言うらしい。今年の夏前にはこの海鳴に引っ越そうと考えていたらしく、今日はその下見に来ていたと言う。来た早々災難でしたねと全員で笑った。
「実は私、親友と子供達とで店を出すつもりなのよ」
「店?」
「ええ、駅前に出す大型ショップなんだけどね……店の名前は「T&H」…私と友達のファミリーネームを取ってっていうのと、トレジャーアンドホビーって意味でね。新しい物を見つけにくる子供の心は趣味と冒険の世界でしょ?それをもっと楽しめるところにしたいなぁって……そう言う意味でもこの名前にしたのよ。
「トレジャーアンドホビー………趣味は宝物……………………面白そうですね。バイトとか募集してます?」
珍しくアキラが積極的に尋ねた。プレシアは少し考える。
「そうね…………いまのところ人数は足りてると思うけど…どうして?」
「…………楽しい仕事がしたいんです。それが何なのかまだ特定はできてませんが、プレシアさんの言ったこと、それが実現できるならすごく楽しそうだって思ったんです」
珍しく生き生きとした表情で話すアキラを見て、ギンガはポツリと呟く。
「………因果応報……………か」
「ん?……ギンガ、なんか言ったか?」
「いいえ?」
「…?あ、アキラ君、バイトは…絶対にとは言えないけど多分募集するわ。その時は、よろしくね?」
ー夜 中島家 アキラのテントー
この日の夜、アキラは履歴書を書いていた。T&Hに送る物ではない。その宛先は………グランツ研究所だった。
次回、「グランツ研究所」LMG!リリカルマジカル頑張ります!!