とあるギンガのPartiality INNOCENT 作:瑠和
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ー朝ー
「アキラさーん!起きて下さ〜い!」
いつも通りの朝、ギンガが俺を起こし、俺は寝ぼけながら起きる。そのまま全員で朝食を取って、それからみんなを「いってらっしゃい」と見送くる。
ギンガを見送ろうとした時、ギンガが玄関から出る前に振り返って笑った。
「今日はアキラさん、面接ですよね!面接頑張って下さいね!」
「ん………ああ」
今日は俺が「グランツ研究所」とかいう結構でかい研究をしているとこのバイトの面接にいく日だ。それより…今ギンガに笑顔で応援された時、変な気分になった………。いや、まさかな。
ー夜 中島家 夕食時ー
「いただきます!」
中島家の夕食はかなり多い。なんせ姉妹が多いからだ。大きい食卓を全員で囲み、楽しく夕食を食べる。俺がずっと欲しかった暖かさがこの家にはあった。
「あ、アキラさん、面接うまく行きましたか?」
ギンガが唐突に聞いてきた。今回行ったバイトの面接はものすごく簡単だった。面接用の部屋に連れて行かれ、そこで主任に会わされ、好きな食べ物だとか趣味だとか、そんな話をしてお終い。で、最後に問題ないから採用などと適当に済まされてしまった。
正直バイト先をミスったと思う。環境が悪かったらすぐ辞めるつもりだ……………が、ギンガや世話になってるナカジマ家の人に心配はさせたくなかった。
「ああ、大丈夫だ」
俺はそう答えた。作り笑顔は久しぶりだ。
◆◆◆◆◆◆◆
ー数日後ー
「アキラさーん、今日はバイトですよ〜!アキラさーん!」
「ああ、わかってる」
いつも通りギンガはアキラを起こしに来たが、アキラは既に起床し、着替えも済ませていた。少し驚きながらもギンガは続ける。
「もう起きてたんですね、朝ごはんできてますから降りて来てください」
「おう」
アキラとギンガは一緒に居間に降りてきた。まだ朝も早いので子供達は起こされていない。アキラは座布団に座り、クイントからご飯が山盛りに盛られた茶碗を受け取る。アキラはその山盛りに渡されてから気づいた。
「クイントさん、なんか多くねぇか?」
「今日は朝早くからのお仕事なんだから、たくさん食べて、張り切ってかなきゃでしょ?」
「はぁ………ありがとうございます」
クイントは笑顔で説明した。別段困ることでもないので、アキラは思いやってくれたことにお礼を言う。するとギンガは一瞬ムッとした表情をし、アキラよりも大盛りの自分のお腕を差し出した。
「私の分も食べてください!」
「は?」
◆◆◆◆◆◆◆
「いってらっしゃーい!」
「頑張ってね〜!」
アキラはギンガとクイントに見送られ、アキラはバイト先に向かった。ご飯の件は断ろうとしたが進められ過ぎて断れなくなり、結局腹一杯食ってしまった。これからアキラが向かうのはグランツ研究所。何でもとあるシステムの開発に専念している研究所らしく、所長は高校生の娘二人を持つ「グランツ・フローリアン」。このフローリアン家の母親は北海道に単身赴任している。グランツ研究所は彼らの研究所であり家でもある。
面接に行った時、アキラはグランツ研究所を見て色々驚いた。今の時代にこんなでかい研究所を立てられる程の人間がいたことに…。
さて、なんやかんやでもうすぐ研究所だ。所長の人柄、悪いところではなさそうだが…果たしてどんな刺激を自分に与えてくれるか、アキラはそれが楽しみだった。
ーグランツ研究所ー
「やぁ!よく来たね!僕がグランツ研究所所長、グランツ・フローリアンだ!!」
「…前に来たから知ってますけどよろしくお願いします」
たかが庭師のバイトなのにこの研究所は妙にアキラを熱烈歓迎した。グランツ自らがアキラを案内し、アキラに作業着と道具を渡し、手入れをする庭に案内した。
案内されたのは……馬鹿でかい庭。アキラ一人でやるとしたら、すべて終わらせるのにかなりの時間がかかるであろう広さだ。
「……………ここですか」
「ああ、辛くなったらいつでも休憩していいし、昼食もこっちで出すから」
「はぁ……」
「じゃあ、よろしく頼んだよ」
そう言って、グランツは仕事に戻っていった。アキラは道具を片手に、庭の手入れに入る。主な仕事は、木々の伸びすぎた枝を切って整えたりだとか、雑草の伐採、グランツの娘が趣味で世話をしている花園の娘がいない間の世話。
そんな大変な仕事ではないとアキラ思っていたのだが、規模が予想以上だった。
「やれやれだぜ……まぁ、でかい庭が終わったらあとは花園だけだしな……」
アキラは作業に取りかかる。まだまだ寒い一月。それなりに重装備だが、まだ寒さがアキラを突き刺した。
「さみー………外のバイトやるんじゃなかったかな……」
とは言え、ここは給料が良い。時給が2500円。普通のバイトじゃ中々稼げない額だしかし、疑問点はある。庭師の仕事は難しいし、普通バイトなんか雇わず業者に頼む物だと思うのだが……。
アキラはそんな疑問を持ちながらも作業を続けた。
ー三時間後ー
寒く、手がかじかんで来てもアキラは必死で作業を続けた。疲れてきたころ、休憩しようと木陰に向かうと誰かが近づいてくる。
「お疲れ様です♪」
「ん?」
アキラが振り返るとそこにはお盆を持った赤髪の少女が立っていた。アキラが首をかしげていると、少女はお盆をアキラの横に置く。盆の上にはティーポッドとティーカップ、茶葉の入った器が乗っていた。
少女はその一式で紅茶を淹れ始める。
「私はこの家の長女のアミティエ・フローリアンです。紅茶をお持ちしました。一息入れませんか?」
アミティエと名乗った少女は微笑み、アキラに紅茶を差し出した。アキラは一礼して紅茶を受け取る。
「どうも…………あの、フローリアンさん」
「アミタって呼んでください♪それと敬語も結構ですよ。年も同じくらい見たいですし」
「歳は?」
「女の子にそんなの聞いちゃダメですよ♪」
「別に二十歳過ぎてる訳でもないからいいだろ」
「あはは、使ってみたかったんです」
アキラは電気のスイッチの様にぱっと敬語からタメ口に変えると、再び紅茶を飲んだ。少しの時間沈黙で、アキラは少し気まずいな…と思った。そんな空気を最初に破ったのはアミタの方だった。
「まだ学生くらいなのにもうこんな資格持ってるんですね。ちょっと尊敬です」
アミタが言うと、アキラは紅茶を置く。
「好きで手に入れた訳じゃない。こんなバイトもな」
アキラはため息を付いた。どこか寂しそうな声と瞳、アミタは少し心配したが赤の他人の自分にできる事などないのは目に見えていた。一瞬声を掛けようとしたが、すぐに諦め、アミタはここに来た要件を伝える。
「……あの、お仕事終わったら地下の部屋に来てください。そこが用具入れなので。受付で待っていますから。案内します」
「わかった。紅茶、ありがとな」
「はい♪」
アミタは笑顔で答えた。
ー一方その頃のギンガー
今日のギンガは、少し様子がおかしいと親友のメグは思っていた。珍しく授業を聞いてなかったのでノートを見せてほしいと言ってきたり、話をしててもなんだか上の空だし…。そこでメグはギンガが難しい表情をして座っていることに、疑問を抱きつつ近寄る。
「どしたのギンガ。そんな眉をひそめてさ」
「いや…何だかアキラさんが別の女性と仲良くなってる気がする……」
一瞬メグは「なにいってんのこの子は」という顔をしたが、いつも通り対応する。そして、今まで気になっていたことを尋ねた。
「ところでさ、あんたはどうしたいの?アキラさんのこと。結婚とかしたいわけ?」
「え!?そ、そんなどうしたの急に!」
「いや、アキラさん好きなのは全然構わないんだけどさー。好きなのはともかくとしてこの先どうしたいのかなぁって」
「……………」
◆◆◆◆◆◆◆
アキラは夕方、日が暮れる少し前に仕事を完了させた。そして、用具を返却するためにアミタが待つ受付に向かう。
「おーい」
「あ、はーい。終わりましたか」
受付にいたアミタが受付から出てアキラに駆け寄る。
「ああ、完璧だ」
「じゃあ、今から案内するのでついてきてください」
「案内?」
アキラは言葉に少し疑問を持ったが、特に気にせずアミタについていった。
―研究所 地下室―
連れてこられたのは、研究所の地下室。たかだか掃除用具を地下にしまっておく必要があるのか気になったが、ここまで大きいと色々特殊なのか等、アキラはここに連れてこられた理由を考える。
「おい、この先の明かりふが点いてねぇぞ?」
「いいんです」
暗闇も気にせずアミタはドンドン前へ進んで行く。アキラは必死でついて行った。少し歩くと、もうアミタの姿は見えなくなり、アキラが少し不安に思っていると、突然前方においてあった照明がついた。
急に明るくなったので、アキラは眩しさに耐えられず目を瞑る。
「ようこそ!橘アキラ君!!」
グランツの声が聞こえた。ゆっくり目を開けると、巨大なライトの中、逆光で顔は見えないが三人の影がそこにあった。
「グランツ研究所、第一責任者!グランツ・フローリアン!」
「その長女、アミティエ・フローリアン!」
「次女のキリエ・フローリアンよん♪」
「……………なぁにやってんだあんた達……」
アキラはどう反応していいかわからず、とりあえず思ったことを口にした。すると、普通の明かりが付き始めた。あたりが照らし出され、そこが研究室であるのは十分にわかるくらいの設備が置かれている。
「いやぁ、インパクトのある登場をして見たくなってね」
「はぁ………ん?アミタ、こっちは妹か?」
アキラはキリエを指差して言った。するとキリエがその指差している手をとって詳しく自己紹介する。
「そうよ、キリエ・フローリアン。エルトリア女学園高校一年生、よろしくね、ステキなお兄さん♪」
「ん、ああ、よろしく」
「さて、君がなぜここに呼ばれたか説明しなければならないね」
「ああ、急にこんなとこ連れてこられて俺も意味わかんねぇんだ」
グランツは笑いながら「ごめんよ」と言いながら、ブルーシートのかけられてる機材に近寄る。そして、一気にブルーシートを引っぺがした。姿を現したのは、バイク型のシュミレーターだった。
「これは、今、開発中の「ブレイブデュエルというゲームの試作機だ。もうわかると思うけど君にはこれに乗ってもらいたい。どちらかというと、これがバイトのメインだったんだ。本当は庭の手入れなんかはどうでも良かったんだけどね」
アキラはシュミレーターに近づき、あちこちをみるバイクの先にドーム状のものがある。恐らくそれでバイクごと全身を包まれるのであろうと予測する。
「それはいいんだが、なぜ俺なんだ?代わりならいるだろ」
「実はね、君にやってほしいことがあるんだ…」
◆◆◆◆◆◆◆
―帰路―
「ふぅ…」
帰宅時間は、気づけば六時になっていた。アキラはクイントに頼まれた買い物を済ませ、帰路に着く。グランツに誘われた、とある仕事…。アキラはそれをやろうかどうか、とてもなやんでいる。自分の得意なことをしてあの時給がもらえるのであればかなり得だ。だが、そればかりやっていると中島家の家事がおろそかになるだろう。クイントさんはやってもいいと言うかも知れないが、それではこちらの気がすまない。
「ギンガ…」
アキラは無意識に呟いた言葉に少し驚く。
「……?なんで俺今ギンガの名前なんか…」
なぜギンガの名前が上がったのか……そのことについて軽くかんがえていると、後ろから買い物袋になにかが飛び込んだ。
「ん!?」
慌てて買い物袋の中を確認すると、中には一匹のハネキツネがちょこんと座っている。どうやら、味噌汁にいれるために買ってきた油揚げが欲しいようだ。
「こいつはたしか…ハネキツネっていったか。なんでこんなところに…」
どこからきたのか知るために、アキラが辺りを見回すと、声がどこからか響いてきた。
「ナハト~!ナハト~!」
「…お前の飼い主の声か?」
アキラが試しに尋ねると、ハネキツネが少し頷いた気がした。
「しょうがねぇな」
ナハトを抱きかかえて、アキラは声の方向に向かう。
「ふむ……困ったな。どこへ行ったのだろう」
ナハトの飼い主の銀髪の女性は、すっかり困り果ててしまっていた。そんな時、曲がり角からナハトを抱えた男が現れる。
「ナハト!」
「この子のことでしたか、この油揚げが欲しかったみたいで…ほら、お前にプレゼントだ」
「ああ、すまない……いいのか?油揚げ」
「大丈夫です。珍しいですね、ハネキツネ」
「そうか?私の家は八神堂という本屋をやっている。もし良かったら遊びに来てくれ。サービスするよ」
飼い主の銀髪の人にハネキツネを渡した後、アキラは再びさっき出たスーパーに戻った。油揚げを再び買いに行った。
ー中島家 屋根ー
夜、テントから出てアキラは夜空を眺めていた。すると、梯子を上がる音がしてギンガが屋根にやって来る。
「ギンガか」
「どうでしたか?バイトは」
「これからも行くことになる。家を空けるのが多くなるから……今悩んでんだけどな」
ギンガはアキラの隣に座り込んだ。そして、アキラの頭を軽く撫でた。
「?」
「アキラさんはアキラさんの自由にしてください。それはみんな思ってます………」
急に優しく微笑まれたアキラは照れたのか、そっぽを向いてしまう。その仕草がなんだか可愛くてギンガはクスクスと笑った。
続く
(すいません!!急遽次回の内容を変更させていただきます!勝手で本当に申し訳ありません!!)