「ギャアアアアアあああああ!!」
悪魔に両腕を噛みつかれ衝撃のあまりに叫び声を上げるマキマ。
「あれ!?チェンソーが引っ込んだ!!血が足りないい!!」
どうやらビームの予想通り血が足りないのかチェンソーが引っ込んでしまった。
それを嘲笑うかのように永遠の悪魔は襲いかかってくる。
「お前の負け!死ね!チェンソー!」
しかしマキマは襲いかかってきた悪魔の肉体を噛んで血を摂取する。
すると腕からまたチェンソーが生えてくる。
「アアアあア!!アアアア!?」
「ドブみたいにマズイ血でもさあ…!アナタのその苦しい顔見ながら飲めばいちごジャムみたいだねええええ!!」
「ギャアああア!!」
その様子を見た早川はふと師匠とのとある会話が脳裏によぎる。
「悪魔が恐れるデビルハンターはな…頭のネジがぶっ飛んでるヤツだよ」
持ってきた花束を墓の前に供えていると師匠がまた呟く。
「佐原はまともだったからな、だから死んだ」
「木ノ内もまとも、昴もまとも、佐々木もまとも」
「まともだから悪魔の攻撃を恐がってしまう。恐怖が悪魔の力になるからな」
「一緒に仕事してみて姫野の奴はどうだ?まともか?」
早川にバディの姫野がまともか聞いてくる。よくよく考えてみたらおかしな質問である。
「銃の悪魔殺そうとしている奴がまともなワケないじゃないですか」
すると酒を飲みながら師匠は姫野に問う。
「オマエも銃野郎を殺したくて公安入ったんだろう?その頭のネジはぶっ飛んでいるか?」
「…ぶっ飛んでいません」
「そう!オマエもだがな。銃野郎をぶっ殺したいなんてだいたいのデビルハンターが思っている」
「素直でまっすぐ単純、だから悪魔の奴らもどうすれば恐がるかわかってしまう」
「だけどネジがぶっ飛んでいるヤツは何を考えているかわからない。悪魔も理解できないモノは恐がるモノだ」
そう呟いた後、酒を飲み干そうとゴクゴクとアルコールを体内に入れていく。
「師匠、酒飲みすぎですよ」
「ハイそれまとも。日々の積み重ねがネジを緩めるんだ」
「毎月バディの墓参りに来ている様じゃ、頭のネジは固いままだよ」
その言葉を聞いて少し俯く早川。師匠は背中を向けて歩いていく。
「私は帰る。姫野はまだまだザコだから鍛えておけ」
「ゆっくりやりますよ」
「ゆっくりじゃダメだ」
「姫野のヤツ、本気で肉片集めているだろう?アイツはそのうち銃野郎に辿り着くよ」
そう伝えると師匠はこの場から去っていく。残された早川は一人でボソッと呟く。
「それは…嫌だな…」
後日、中華料理店で二人が昼食を取っていると早川が姫野にとある話を持ち掛ける。
「姫野さ、一緒に民間に転職しないか?」
「結構いい額で誘われてるんだ、民間だから強い悪魔と戦わなくていいしな」
姫野は黙々と料理を口に入れながらその話を聞く。
「銃の悪魔なんて追わなくてもよ、昼はここかどっかで食べて、帰りはたまに映画いって、そういう毎日でよくないか?」
早川の意見を聞いた姫野は、早川の方は見ずに意見を伝える。
「飲みならいくらでも付き合いますよ〜でも民間には絶対行きません」
「杏仁豆腐もらいま〜す」
早川は少し黙ると姫野にタバコ一本を強請る。そしてライターでタバコに火をつける。
(銃の悪魔と戦ったら、絶対に姫野は殺される)
(俺達がまだ実力不足だからでも、相手が一瞬で何百人も殺せる悪魔だからでもねえ)
(だって姫野は可愛くて真面目で優しくて、アイツらみたいに普通の奴だから)
(でも…)
現在下の方ではマキマがチェンソーで暴れ回って永遠の悪魔とばとっている状況。
絶え間なく痛みによる絶叫が聞こえてくる。
「ガアっ、あああ!!痛い!!イタい!!アアア!!」
悪魔がマキマの首を攻撃する。その衝撃で床に倒れてしまう。
「やっ…やった…」
しかし早川が狐の力を使って遠隔でマキマのスターターを引いてエンジンを吹かす。
「ひらめいちゃった〜…」
「あ…あ………!」
「アナタが私に切られて血を流して!私がアナタの血を飲んで回復…!」
「永久機関が完成しちゃったねエエ〜!!これでノーベル賞は私のモノだよ〜!!」
(この最高にネジがぶっ飛んでる女なら、銃の悪魔を殺せるかもしれねえ)
「あ、アア、ア、あ…」
あれからどれくらい経ったのだろうか。食料も既に尽きていたため餓死寸前であった。
「姫野、まだ生きてるか…?」
「はいなんとか……どのくらい、経ちましたか……?」
「あれから三日…くらいか…?」
「ニャーコ……」
すると、姫野が横になっているベッドに早川が入る。そして一緒に横になる。
「全員で酒…飲みにいこうぜ……終わったからちょっと眠る……」
「終わった…?」
下の方ではついにマキマと永遠の悪魔のバトルが終わりを迎えていた。
「これが私の急所です……すみませんでした………痛いいイイ……私の心臓です……早く殺してください……もう痛いの無理…」
ついに痛みの地獄に耐えきれず悪魔側が自殺の意向を見せてきた。つまりマキマの目論みは成功したのだ。
「も〜終わっちゃうの〜!?プール入ってるみたいで気持ちよかったのにさあ!!」
まだまだやれると豪語するマキマ。そしてそのまま差し出された心臓をチェンソーでぶった斬るのだった———
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森野ホテル入口の自動ドアが開く。中から4課のメンバーが全員出てくる。
永遠の悪魔を討伐し、地獄のループから抜け出すことができたのだ。
「出れた……」
マキマの手には銃の悪魔の肉片があった。
「銃の悪魔の肉片も取れたし、外晴れてるからすごく気持ちがいいな……」
「浮いてるみたいだ……」
そう呟くと疲労から身体の感覚が抜けて後ろ向きに倒れるマキマ。すかさず早川がキャッチする。
「寝たな……」
「ずっと寝ずに悪魔殺し続けてたからな…」
血まみれの状態であるマキマを背負って解散命令を出す。
「姫野とマキマは俺達で病院に連れていく。残り二人で今回の事を報告しに行ってくれ」
そう伝えてこの場から去っていく。残された二人は何も言えず、しばらくその場に立ち尽くしていた。
「新人歓迎会?」
後日、姫野が悪魔を討伐し終わり銃の悪魔の肉片がないか探していると、早川が近い内に新人歓迎会が開かれることを姫野に伝える。
「そうだ。4課全員で集まった事ないしな、親睦を深めつつ今抱えている問題をなくそうぜ」
「問題?」
姫野がそう聞くと早川が次のように答える。
「それがな、コベニと荒井が公安やめるっつってんだよな。前の悪魔事件がトラウマになってるみたいで」
「悪魔が怖くなっただけじゃなくて、マキマを殺そうとしたことを悔いてるんだろうな」
「早川先輩も殺そうとしてましたよね〜?」
普通に正論である。
「そうだな、そのくらいでやめちまうんだよ今のヤツらは。図々しく生きた方が楽だ」
「飲みの場なら簡単にマキマに謝れるし、コベニ達を引き止められるだろ?」
「アナタ飲みたいだけでしょ」
普通に図星である。
「まあな」
姫野の手元には銃の悪魔の肉片があった。
「小さいけど肉片ありました」
それを丁寧にしまうと、早川に新人歓迎会の事で自分の意見を伝える。
「飲むなら絶対に今週ですかね〜」
「は?なんでだ?」
「どうせ飲むならデンジさんと飲みたい!」
そう呟きながらタバコを手に取る。ライターは早川が用意してくれる。
「来週からデンジさん京都出張みたいで。マキマちゃんが悪魔に狙われた件で応援求めに行くらしいですよ〜だから飲むなら今週がいいかな」
姫野の意見を聞いた早川は少し沈黙した後、ふと姫野に今まで気になってた事を聞いてみる。
「正直よ…マキマって何者だと思うか?」
タバコを咥えながら姫野はその話を黙って聞く。
「相手の悪魔がマキマの事知ってたみたいだし、あんな姿も初めて見た」
「一番謎なのは、あのデンジさんがマキマを気にかけてる事」
姫野がタバコを口から離して白い煙を吐く。
「デンジさんあちこちに行くのに最近は東京にいるのってマキマがいるからだろ?マキマの秘密を知ってるからなのかもな·····」
「デンジさん酔わせて聞いてみるか?」
タバコをすり潰す音が静かに響く。
そして後日、新人歓迎会がどこかの飲み屋にて開催される。
「カンパーイ!!」
「美味しい〜!飲むの半年ぶりですね〜…」
「私もウチで少し飲むくらいですかね」
「ギャッ!!この魚、ウマそう!!」
「あの…道、迷っちゃって……」
「コベちゃんコベちゃんこっちおいで」
「なにコレ美味しそう…」
やはり人が多いと机の周りが騒がしくなる。美味しそうな料理が机の上に並べられており、各々自由に取っては食べている。
「デンジさん遅れて来るってよ」
「こんなおいしいご飯、はじめて食べました…!」
「コベちゃんお金ほとんど家入れてるもんね…たくさん食べな?」
「パフェ3つと〜白玉お膳3つで!」
「ワアアアアア!!この茶色いヤツ、ウマそう!!」
それにしても中々騒がしい連中である。日々のストレスを今回の新人歓迎会で発散しているのだろう。
「伏さんトコの魔人ちゃんは連れてこなかったんですか?」
「ここには恐くて連れてこられないですね。姫野さん所の魔人君は理性が高くていいですね〜」
「ほら!若いんだからもっと頼みな!!そして食べな!!」
「と言われてもなあ…読める漢字まだそんなにないから…」
するとマキマはメニュー表に『キスの天ぷら』があるのを見つけ、早川と約束したことを思い出す。
「…あ」
そして隣で酒を飲んでいる早川に耳打ちをする。
「あの…キスの件は……」
「ん?ああ…」
「酔ってないと流石に恥ずかしい。だからもっと酔ってからしてやる」
してくれる事に笑顔を浮かべるマキマ。
「濃いヤツかましてやるから、マキマをみんなで殺そうとした事許してくれないか…?」
「ああもう超許しちゃう!超!」
すると先程もっと頼めと言ってきた女が、新人はこの場で自己紹介することを命令する。
すかさず姫野がそれに注意を入れる。
「公共の場で契約してる悪魔を言っちゃダメだよ。手の内は信用した人間にしかみせちゃ行けないぞ〜?」
「相変わらず固いヤツだね〜!」
「まあ大丈夫だろ。すみません、生一つ。あと枝豆」
「あっ生もう一つ。私は趣味聞きたいなあ…趣味で人間わかるでしょ」
するとマキマが言われた通り自己紹介を始める。
「私マキマ。年齢は確か16かな…趣味は…食事と睡眠」
「16歳!?ヤバっ!若っ!」
「えっ…!」
「お前酒飲んでないよな?」
「お茶」
流石に未成年が酒を飲むのはご法度であるのはマキマも理解している。
「私は荒井ヒロカズです!22歳!契約している悪魔は狐!趣味は俳句です!!」
「あれ?確か早川さんと契約してるのも狐じゃなかったっけ…」
マキマがそう疑問に思っていると姫野が解説する。
「狐の悪魔は人間に友好的だからたくさんのデビルハンターと契約してるの」
「まあ俺の契約方法は荒井とは違うから、同じ悪魔でも使い方が結構変わるけどな」
続いてコベニが立って自己紹介を始める。
「東山コベニです…20歳です……契約している悪魔は……秘密で、趣味はおいしい物を食べる事です」
「服かわいいよね」
「うん」
「服はお姉ちゃんのおさがりです」
「コベニちゃんは9人姉妹なんだよ、凄いよね」
すると早川はふと気になった事があったので伏に聞いてみる。
「あれ、伏さんトコの新人は?」
「残念ですが昨日亡くなりました」
すると早川がその言葉を聞いて呟き出す。
「南無阿弥陀仏…ほうれん……ほうげん……なんだっけな」
「ああ見えて先輩めっちゃ酔ってるね〜」
新人のコベニと荒井はそんな簡単に人が死んだ事に驚き質問する。
「そんな簡単に死ぬんですか…?」
「民間で無理だった悪魔が公安に任されるからね〜」
「まあバンバン死んでくよね。私の同期ももう公安にいないし」
「マキマは俺とキスするから死なないよな?」
「ウン!」
急に抱きつかれたので元気よく返事をするマキマ。すると隣がマキマに早川の事を話す。
「早川はね〜飲むと躊躇なくなるよ」
「え!?」
「普段は真面目だけど飲むと平然に何でもやれちゃうからね〜きっと逃げられないよ」
その言葉を聞いたマキマ。脳内で思い浮かべた言葉は……
(確定キスじゃん…!)
早川の唇を少し見つめてキスの未来を想像し始める。
「今日…私…キスしちゃうんだ…!」
「キス?」
「え!?」
まさかの後ろからデンジがやってくる。先程の呟きを聞かれてしまい心臓が跳ね上がるマキマ。
「すみませェ〜ん!オレンジジュース一つお願いしまァ〜す!」
「デンジさんここにどうぞ」
「本物のデンジさん初めてみた……」
「デンジさん!」
姫野が座る席をすぐに用意してくれる。人によってはデンジを初めて見る人もいるので来訪に感嘆する声も。早川は酔っている。
「マキマちゃん誰かとキスすんのぉ〜?」
「しません!」
「…キスしないのか?」
「しまァす!」
……即落ち二コマかな?
みかん大好き!