チェンソーウーマン   作:やまなお

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ラーメン大好き!


キスのお味/チュッパチャプス コーラ味

 

グラスに注がれたオレンジジュースを美味しそうにゴクゴク飲み干すデンジ。飲み終わったグラスが机の上に勢いよく置かれる音が響く。

 

「すいませェ〜ん、オレンジジュースもう一つ!」

 

一方マキマはキスをしたい気持ちとしたくない気持ちで揺れ動いていた。

 

「んでキスってェ…?」

 

 

(早川さんとキスするところデンジさんに見られたくない……)

 

 

「チュウしないのか…?」

 

 

(でも同じくらい強い気持ちでやっぱりディープキスしたい…)

 

二つの気持ちはマキマの中で拮抗しており、今この場ですぐにどちらかを選ぶのはとてもじゃないが厳しかった。

 

(今はいったん話をそらすしかない!!)

 

「デンジさん!私、銃の悪魔の肉片拾いましたよ!」

 

 

「おう聞いたぜ!マキマちゃんはスゲえなあ〜!」

 

マキマが銃の悪魔の肉片を回収をした事をデンジに伝えると、いつもの眩しいくらいの笑顔でマキマの事を褒めてくれる。

すると姫野が気になった事をデンジに伝える。

 

「前までこんな早いペースで肉片を持つ悪魔は現れませんでしたよ。この間のマキマちゃんを狙った悪魔といい、最近少し悪魔の動きが怪しいですよ」

 

「デンジさんはマキマちゃんの事何か知ってるんじゃないですか〜?」

 

それを聞くとデンジはグラスに入っていたオレンジジュースを飲み干すと姫野に提案する。

 

「んじゃあ〜俺がオレンジジュース飲むの飽きるまで酒飲めたら教えてやるよ」

 

 

「え〜その条件でホントにいいんですかね?」

 

 

「だって酒苦えし俺あんま好きじゃないんだよなア…やっぱやめとくか?」

 

そう聞かれて姫野は少し悩むが、ずっと飲み続けてたら流石にデンジも飽きるだろうと思ったので……

 

「……いや、いいですよ!すみませ〜ん、生一つとオレンジジュース一つ!」

 

 

「俺もそれやろうかな…生もう一つ」

 

 

「もっと食いたい!腹減った!」

 

 

「コベちゃんと荒井君は甘いお酒でいいの?」

 

 

「芋焼酎!」

 

 

「からあげ!」

 

それから数時間後……机の上には酒やオレンジジュースが入っていたグラスが沢山置かれており、早川は酔いから眠ってしまい、姫野は酒の飲みすぎから机に突っ伏していた。

デンジはというと……

 

「すみませェ〜ん!オレンジジュースもう一つ!あと、グラス片づけてもらっていいスか?」

 

あれだけ飲んだというのに飽きずにまだ頼んでは飲もうとしていた。デンジの舌はどうなっているのだろうか。

 

「でもすごいよビム君、殺人衝動を抑えれる魔人はとっても少ないんだよ」

 

 

「ギャッ?よくわからないけど褒められてる?」

 

 

「IQで決まるの?そういうの…IQどれくらいあるの…?」

 

 

「…なんだ、それ?食い物!?」

 

残念ながらビームにまともな知性は無いためIQの意味が理解できないのだ。

 

「うーん、食べ物じゃなくて……そういえば伏さんはIQ高いんだよね、確か」

 

 

「134ですね」

 

 

「わざわざ覚えてるあたり自慢に思ってそう」

 

しれっと毒を吐かれてしまう。伏、無念。

 

「IQってどんな味だろ…アマイのか、カライのか…ウマければ何でもイイ!」

 

一方マキマの方では早川が唐突に起きて、マキマの方に近付いてくる。なんだと思っていると顔を近付けてキスをかましてくる。

 

「おお〜!」

 

 

「接吻だ!」

 

二人のキスを見て感嘆の声を漏らすデンジ。ビームもそれを見て接吻だと呟いている。なぜそういう言葉は知っているのか……

マキマの方はキスの衝撃をこの身で実感していた。

 

(あ〜!?)

 

(あ…あ…)

 

デンジがこちら側を見てるのにある種の恥ずかしさを覚えるマキマ。しかしディープキスの気持ちよさも流れ込んでくる。

 

(見られちゃった…!!デンジさんに見られた…!!でも、なんだろ…!?この感触が舌だよね…?気持ちいい…)

 

(柔らかい!柔らかい!何コレ!?舌!?口の中でとろけてるよ!?舌…じゃ…ない!?)

 

ここでこの感触が舌でないことに気付くマキマ。そして真の正体は……!

 

 

(ゲロだ!!)

 

 

早川の口からゲロが吐き出されてマキマの口に流れ込んでいたのだ。汚い。

ゲロを吐かれて放心状態になるマキマ。周りからざわめき声がし始める。

 

「うっ」

 

 

「あはははは!」

 

 

「トラウマだねこりゃ」

 

 

「オエェ〜…思わずもらいゲロしちまいそうだ…何か吹くモンくださァ〜い!」

 

デンジがゲロを拭くものを店側に頼む。すると唐突にビームが叫び出す。

 

「ギャッ!マズイ!これ、マズイ!!」

 

 

「え?」

 

荒井がその言葉に疑問を投げかけると、ビームが説明しだす。

 

「マキマ、口に入れたエーヨウあるヤツ、飲み込んじゃう!!」

 

その言葉の通りマキマは早川のゲロを何と飲み込んでしまう。ふと思い出されたのは、昔チェンソーと食べられそうなご飯を探してゴミ捨て場を漁っていた時のことだった。

 

「チェンソー、これ食べられそう!」

 

そうして見つけた食事を二人で分けて食べる。するとネズミが酔っ払いが吐いたゲロに集まっているのを見つける。

 

「え…ちょっとチェンソーあれ見て!ネズミが酔っ払いのゲロに集まってる!」

 

「ゲロ食べるなんて信じられないよね!?同じ哺乳類として情けないよ!」

 

そんな風に馬鹿にしていたマキマ。しかし今日まさかのゲロを吐かれてそれを飲み込んでしまうという、過去の自分を殴ってやりたい状態になってしまった。

コベニの付き添いの元、トイレでゲロを吐くマキマ。

 

 

「オエエエエ…」

 

 

「アワワワ…大丈夫ですか?」

 

 

「大丈夫に…見える、の?うっ…」

 

まだゲロの気持ち悪い感覚が残っているので咳込んで吐いてしまうマキマ。

 

「早川先輩、あんまり自制心がないですね……」

 

「でも誰かをこうやって吐かせるのは初めてじゃないですよ…家族にこういう事何度かした事あるので……」

 

 

「うえっ…なんでゲロ吐かれないといけないのかなあ……?」

 

「ちゃんとしたキスはゲロの味だよ……私運悪すぎ……」

 

「おええ…」

 

そんなマキマの背中をコベニは優しくさすってくれる。

 

「ゲロ吐かれた事はないけど…私も運悪いから、少しその気持ちは分かります……」

 

 

「ううう…ううううう…!」

 

そして新人歓迎会は終わりを迎え、店前で解散となる。

 

「姫野家は俺が送ってくぜ。荒井は早パイよろしくな!」

 

 

「皆さんデンジさんの奢りだから感謝をしましょうね」

 

 

「人のお金で飲むお酒が一番美味しいですね」

 

 

「ね!」

 

さらっとコベニが最低な発言をしている気がするが、まあいいだろう。

するとデンジがある事に気付く。

 

「あれェ〜…?マキマちゃんは?」

 

他の人達もそれに気付いてどこにいるか探していると伏がその事でデンジに伝える。

 

「マキマちゃんなら早川先輩が背負って連れて行きましたよ?」

 

一方その頃、マキマはどこかの家の部屋で目を覚ます。

 

(ううう…暗い…暗い………ドコだろうここ…………)

 

(お水…水…)

 

「水…」

 

するとマキマは早川にされた例の事を思い出してしまう。

 

(う…そういえば……ゲロ男に……ゲロキスされたんだ……)

 

(も〜嫌……)

 

「水…お水……」

 

すると向こうの方で缶に入った飲み物を飲んでいた早川が口移しでマキマに飲ませる。

 

「んっ」

 

ベッドの端に座って来た早川が酔った状態で呟き始める。

 

「あれ…マキマキマキマ…なんで俺の家にいるんだ……?」

 

「ん?俺が連れて来たんだっけ……?あれ?」

 

マキマキマキマの語呂が意外といいのは置いておいて、マキマはベッドに横になりながら唐突に頭がクラクラし始める。もしや20歳未満は禁止されているあの飲み物を飲まされた可能性が……

すると早川がマキマのほっぺを指で突く。

 

「そういえばお前…デンジさんの事好きだろ?」

 

 

「ううう………クラクラするぅ〜……」

 

唐突にその事を聞かれても頭がクラクラするのですぐに返せない。やっぱり「さ」から始まって「け」で終わる飲み物を飲まされた可能性が……

 

「あんなチンピラやめとけばいいのに……姫野もよ」

 

「あんなデレちまって…なんかもお……」

 

「もおお…牛?牛みたいだな……」

 

指で角のポーズをとって呟く早川。するとベッドの中に入ってきてマキマの方を見つめる。

 

「え……?」

 

手でマキマの肩を寄せると、もう片方の手を使って小さな声で呟く。

 

「するか…?」

 

おっとそういう雰囲気になってしまった。どうするマキマ———

 

 

 

—————————————————

 

 

 

マキマは先程早川が呟いた言葉が信じられずその言葉の真意を確かめようとする。

 

「す…するか…って……」

 

 

「性行為」

 

なんと、ゲロキスをかましてきた男の先輩に勝手に家へ連れ込まれたと思ったら性行為のチャンスが到来してしまった。

内心慌てふためいていると早川は着ていたシャツを脱ぎ始める。

 

「え!?」

 

 

「…脱げるか?」

 

 

「脱げ…脱げません……

 

 

「わかった」

 

そう伝えてしまったのでマキマは早川に服を脱がされていく。優しく、丁寧であった。

マキマは服を脱がされながら必死に自問自答する。

 

(しちゃっていいの……?)

 

(デンジさんとするはずだったキスをゲロで汚した男と…その男としちゃっていいの…!?)

 

早川が酔った顔でこちらを見つめてくる。そういう顔で見つめられるとマキマが出す答えはただ一つ……

 

「良い!!」

 

 

「下も脱がしていいのか?」

 

 

「はい……」

 

マキマから許可は取ったので下の服を脱がしてくる早川。するとポケットに何かが入っている事に気付く。

 

「…ん?ポケットになんか入ってる…?」

 

「チュッパチャプス?汚いな…」

 

 

「あ…!」

 

マキマはポケットから出てきたチュッパチャプスを見て、今日経験したとても大切な会話を思い出す。

 

それは、早川からゲロキスをされてしばらくした後のことだった。先程の衝撃でよっているとデンジが心配そうに話しかけてくる。

 

「マキマちゃん大丈夫か?外の空気吸おうぜ?」

 

そう言われたので外でボーッとしているとデンジが袋を持って戻ってくる。

 

「スーパーで酔い薬買ってきたぜ!寝る前に水と一緒に飲めよ」

 

渡されたのでマキマはその袋を持つ。するとマキマは今の心境をぽつりぽつりと呟く。

 

「デンジさん…私…酷いキスしちゃいました……というか……」

 

「私、あれがファーストキスじゃないですし……」

 

 

「え?」

 

そしてマキマは今まで隠していた事をデンジに伝える。

 

「私、借金返済の為に身体売ってたんです。何度も何度も好き勝手使われて…もちろん辛かった。けど、仕方ないって我慢してました。というか無心だったかもしれません」

 

「だからキスだって性行為だって既に経験済みなんです……デンジさんに会ってからは色々知ったから、今までの自分とは切り離して考えてきました。私は汚れきったあの私とは違うって…そうやって騙してきたけど、そんなわけないかって……」

 

「もう何だか、自分が馬鹿みたいに感じちゃって……」

 

自嘲するように自分の想いを吐き出すマキマ。汚れきった自分の事を嫌いになってしまったのではないかと不安な気持ちになるし、そんなの当たり前かと自嘲する気持ちもあった。

しかしデンジの返答は……

 

「…そうかァ?」

 

 

「…え?」

 

 

「マキマちゃん俺より頭いいしよォ〜それに糞可愛いし、もっと誇った方がいいぜ?」

 

 

「でも私の身体は汚れきってますよ…?」

 

そう呟くマキマに少し考えると、咥えていたチュッパチャプスを待ってマキマにこう言う。

 

「口開けろ」

 

そしてそのチュッパチャプスをマキマに咥えさせる。

 

「俺と会う前…正確にはチェンソーと一緒になる前と後だと、マキマちゃん超糞変わってんじゃん!マキマちゃんが受け入れられねェなら、俺が昔のマキマちゃんと今のマキマちゃんは違えって認めてやるよ」

 

 

「…どう、して……?」

 

マキマの問いにデンジが出す答えは一つ。

 

「そりゃシリアスな事ぉ考えても仕方ねえじゃん!楽しくねえ事考えてもつまんねえだけだぜ?」

 

何ともデンジらしい、アホな考え方。そんな事で解決するはずがない…するはずがないのだが……

 

「…もしそうなら、このチュッパチャプスって……」

 

 

「おう、ファースト間接キスはチュッパチャプスのコーラ味だな!」

 

 

「そっか…そっか!デンジさんが認めてくれるなら、私違うんだ……!」

 

相変わらずのデンジに対してのチョロさ。しかし、今回はこのチョロさがいい方向へ向いたのかもしれない。

 

隣のベッドで早川がぐっすりと眠っている中、床で横になってチュッパチャプスを見つめるマキマ。

 

「ごめんねチェンソー…キミもエッチしたかったよね……?でも私…ちゃんとしたエッチはデンジさんがいいんだ…」

 

「銃の悪魔をぶっ殺すまで…それまでは……」

 

睡魔がマキマを襲い、眠りへと誘う。チュッパチャプスを見つめながら、マキマは深い微睡みにおちていくのだった。

 

翌朝、マキマがぐっすり眠っていると、早川が声をかけて起こしにくる。

 

「マキマ、おはよう」

 

 

「ふあ〜……」

 

 

「朝飯食べれるか?」

 

早川の問いかけにマキマは眠い目擦りながら答え、ベランダにて朝食を取ることとなった。

 

「人を見下しながら食べるご飯は美味しいな…なんか下にいる人達を支配してるみたい……」

 

割と最低な発言をしていると、早川がマキマに話しかけてくる。

 

「マキマ…昨日の夜俺酔ってて何も覚えてないんだけど………俺に乱暴な事されなかったか……?」

 

 

「誰がゲロ男とするわけ?私は初めてはデンジさんって決めてるんだ」

 

早川はそれを聞き、安堵したような表情で呟く。

 

「よかった…未成年に手を出したら逮捕だからな、逮捕」

 

マキマは黙々と出された料理を取っては食べていた。そんな彼女に早川は不思議そうな声色で問いかける。

 

「マキマは変わってるな…普通はこの状況、気まずくて帰ると思うんだが」

 

 

「え?無料でご飯食べられるのになんで帰るの」

 

ここから帰らない理由がなんとも単純だ。流石は趣味に食事と答える奴ではある。

 

「…そういえば、マキマもデンジさん好きなのか?」

 

 

「めっちゃ好き」

 

 

「…例えばデンジさんの性格が糞でも好きなのか…?」

 

 

「うん、糞好き」

 

 

「そうか……」

 

早川はその言葉を聞き少し考える。そしてマキマに対してこのような提案を持ちかける。

 

「じゃあ、俺がマキマとデンジさんくっつけてやろうか?」

 

その言葉を聞き、信じられないような表情で早川を見つめるマキマ。

 

「ええ〜!?ホント!?え〜…!」

 

 

「ホントだ」

 

「マキマ…俺と極秘で同盟を組もうぜ」

 

そう話した後、同盟を組むにあたっての条件を説明する。

 

「デンジさんとくっつけるのに協力するから、俺と姫野くっつけろ」

 

マキマはそれを聞くとサンドイッチを少し口に入れながら早川に問う。

 

「あの人のドコが好きなの?」

 

 

「顔」

 

即答だった。判断が早すぎる。

 

「へ〜……いいよ乗った!同盟組もう!」

 

マキマは早川の提案に乗ることにした。

 

「じゃあ今日から俺達は先輩後輩じゃなくて…ダチでいこうな」

 

「たまに朝飯食べに来いよ。魔人と姫野連れてきてな」

 

それを聞いたマキマは都会の雑踏を見つめながらふと呟く。

 

「……デンジさんも来ないかな」

 

一方その頃、デンジは京都出張の為新幹線に乗っていた。窓の風景からは山々が見え、新幹線の走行音が絶え間なく聞こえてくる。

 

「京都には何時に着くんだっけェ?」

 

 

「あと30分ですね」

 

 

「じゃあ駅弁買おうぜ!」

 

 

「…1時に会食がありますよ?」

 

 

「ちゃ〜んとそれまで腹空かせとくぜ」

 

そう伝えると、デンジは窓の風景を見ながら今の心境を呟く。

 

「…京都の偉い人達と会いたくねえんだよなア…アイツら恐えし。メシはな〜んにも考えずたらふく食いてえのに…」

 

「昨日のオレンジジュース美味かったな……」

 

そんな風に呟いていると、どこかから何かを取り出す時に開け閉めするジッパーの音が聞こえてくる。それも複数一斉に。

 

中から取り出したのは、拳銃だった。

前後からデンジ達は銃撃を浴びる。魂が抜けたようにデンジの体は座席からずり落ちて後ろに全身が寄りかかる。

デンジ達に銃撃を浴びせた者達の声が新幹線内に響く。

 

「こちらC班、こちらC班」

 

「開始」

 




うどん大好き!
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