チェンソーウーマン   作:やまなお

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姫野先輩大好き!


東京到着/光線

 

マキマは思い返していた。デンジから言われたあの言葉を。

 

「好きな女のタイプとかありますか?」

 

 

「マキマちゃんみたいなヤツは、結構タイプだぜ?」

 

デンジが言ったその言葉は何度思い返しても良い。その言葉でマキマの顔は容易にニヤける。

 

「私も……デンジさんが好きです…」

 

振り返るとただの人混みでデンジはいない。どこに行ったと辺りをキョロキョロしているとデンジの声が聞こえる。

 

「マキマちゃん〜こっちこっち!」

 

「ここがデビルハンター東京本部だぜ」

 

目の前にあるのは東京の都会っぷりを表すような荘厳な建築物であった。ここが東京とドキドキしながらもデンジに着いていく。

 

「東京にはなァ、そこら辺のヤツら(民間)も含めてデビルハンターが千人も超えてんだけど、公安は休めること(有休)が多いし、えーっと…福利なんちゃらが一番多いんだぜ〜?」

 

公安のデビルハンターとして勤めているにしては本人の言動は学が足りないように見えるが、マキマはそんなこと考える余裕もなく、自分とデンジが「そういう関係」になる妄想をしていた。

 

(したい!!デンジさんとだったらそういう行為したいー!!)

 

妄想に浸っていると、ふとマキマはチェンソーの契約内容を思い出す。

たしかチェンソーが言っていた契約内容は、マキマの夢をチェンソーに見せることマキマよりも前にチェンソーと一緒にいた人間を探すことが条件だった。

せっかくなのでデンジに少し聞いてみようと思い話しかける。

 

「あの…デンジさん」

 

 

「ん?」

 

 

「その…私の心臓にいるチェンソー……元はオレンジ色で小さくて、頭からチェンソー生やした犬みたいに吠える悪魔なんですけど…デンジさんは会ったことないですか?」

 

割とド直球に聞いてしまったと思い内心恥じるマキマ。公安のデビルハンターともなる人がチェンソーに会ったことあるわけないかと思っていたら、デンジが唐突に立ち止まる。

 

「デンジさん?」

 

 

「……ん?あー悪ィ、いや俺は会ったことないぜ?」

 

 

「そ、そうですよね…失礼しました」

 

 

「まぁでもマキマちゃんみたいな可愛い子にたくさん質問されるなんて、俺ァ今日ツイてるな!」

 

 

「か、かわっ……」

 

(好き……)

 

デンジに可愛いと言われまた舞い上がってしまうマキマ。しかしさっきデンジの背中から、何か寂しいような、まるで少年のような雰囲気を一瞬感じたような気がしたのだが……マキマは可愛いと言われた衝撃でそんなことすっかり忘れてしまった。デンジに対しては相変わらずチョロいのである。

 

しばらくするとデンジから公安の制服を渡され着替える。そして別室にてマキマの同僚となる人と会わせるらしかった。

そして別室にて、マキマは隣にいる背格好が自分よりも高い、刀を背負った()()を見る。

 

「マキマちゃんの隣にいるのは姫野。通称姫パイだな」

 

 

「え〜ちょっとデンジさんその呼び方辞めてくださいよ〜」

 

 

「まァいいだろ?とりあえずマキマちゃん、今日は姫野について行きな?」

 

マキマは自分の思い描いていた未来と違い、デンジに問う。

 

「…私デンジさんと一緒に仕事するんじゃないんですか?」

 

 

「そんなわけないでしょ」

 

そして姫野はマキマの服を引っ張り強引に連れていく。

 

「アンタとデンジさんとでは格が違う。見回りいくよ」

 

 

「ヤダー!デンジさぁーん!!」

 

一緒に行けないことで駄々こねるマキマ。そんなマキマにデンジは近寄り……

 

「俺もマキマちゃんと仕事したいぜ?お前の働きぶりがよければ一緒に仕事できるからよォ、だから頑張れよ!」

 

デンジからの励ましと頑張れば一緒に仕事できる発言により、駄々をこねるのは辞める。

 

東京本部から出ると、マキマと姫野は東京の人混みを歩いていく。マキマは姫野の後ろを歩きながら、先輩にあたる姫野に質問する。

 

「ねえ先輩、デンジさんって女いるの?」

 

無反応。

 

「ねえってば」

 

無反応。

 

「ねえ」

 

 

「ちょっとこっちきて」

 

言われたので姫野に着いていくマキマ。路地裏に連れてこられてなんだと思っていると唐突に顔面にフルスイングを決められる。そして体を掴まれ膝からのキック、そのままゴミ溜まりに投げ捨てられる。

姫野はタバコを取り出しライターで火を付ける。

 

「アンタ仕事やめな。明日も来たらまたボコるから」

 

 

「な、なんで…」

 

 

「私の優しさが伝わらないかなぁ…」

 

「軽い気持ちで仕事するヤツは死ぬよ?私の同僚も給料だけ見てデビルハンターになった奴は全員悪魔に殺された。生きてるヤツはみんな根っこに信念があるヤツだけ」

 

「アンタさ…デンジさん目当てでデビルハンターになったでしょ」

 

姫野の指摘はまさにその通りだった。

 

「ピンポーン……」

 

 

「じゃあ殴って正解だったね」

 

姫野は吸ってたタバコを指でマキマの胸元に落としてタバコに唾を吹きかける。

 

「デンジさんには私から言っといてあげる。アンタは悪魔にビビって逃げたってね」

 

もう一度タバコを取り出し口に咥える姫野。そんな姫野にマキマは突如飛び上がり、咄嗟の勢いで姫野の前に出たと思えば足を使って姫野の子宮目掛けてキックをかます。

 

「ゴハッ!?」

 

赤子を産む場所にダメージを喰らわせるのは生命への冒涜を感じさせるがそんなのお構いなしだ。

 

「先輩は優しい人なんだね…」

 

「私は!女と!喧嘩する!時は!子宮!しか!狙わない!」

 

そう言って何度も姫野の子宮を蹴るマキマ。姫野、無念。

 

「ふう…!私は今日はじめてウドン食べたよ……フランクフルトもね」

 

「はじめて人並みの扱いされたし、はじめてご飯食べさせてもらった。私にとっては夢みたいな生活かな」

 

そしてネクタイを引っ張るように持ちマキマは姫野にこう言う。

 

「私は軽〜い気持ちでデビルハンターになったけどさぁ、この生活続ける為だったら死んでもいいよ」

 

「……死んでもいいってのはやっぱりなし。私だけの命じゃなかったから」

 

姫野は自身の体を起こし、マキマに体当たりをかます。

 

「ごッ!」

 

姫野はそのまま顔面パンチを、マキマはもう一度姫野の子宮を蹴る。

 

「デンジさんはねぇ…アンタみたいな糞女が好きになっていい人間じゃないの!」

 

 

「はあ!?なに!アナタもデンジさんが好きなだけじゃん!!」

 

第2ラウンド開始……と思われたが子宮を何度も蹴られた痛みから姫野は倒れる。

 

「アンタ…マジで…子宮ばっか…狙わないでよ……」

 

 

「…ヤバいかも」

 

そしてマキマは姫野の体を起こして無理やり東京本部まで戻る。

何とか戻ってくるが、目の前には腑抜けた顔でボロボロになった2人を見つめるデンジがいた。

そんなデンジにマキマは今日のことを伝える。

 

「先輩が子宮の悪魔に子宮を襲われました」

 

 

「ウソです…コイツの嘘です…」

 

 

「ほーん。でどうだ?仲良くできそうか?」

 

デンジの問いかけ、2人の答えは……

 

「全っ然」

 

 

「こいつクズですよ…」

 

 

「仲良くできそうでよかったぜ!」

 

どこをどう見たら仲良くできそうに見えるのだろうか。デンジの考えは謎だ。

 

「マキマちゃんは姫野の部隊に入ってもらう」

 

 

ぶたい?

 

 

「…この糞女がですか!?」

 

「ウチはただでさえめんどくさいのが多いんですよ!?これ以上変なヤツが増えたら…」

 

姫野の異議申し立てにデンジはこう答える。

 

「部隊を作った時に言ったよな?他じゃ見ねェような実験的な感じで動かしてみるってよ」

 

マキマは眠気からあくびをしていた。姫野はマキマの横目に見ながらデンジに問いかける。

 

「…こいつ何者なんですか?」

 

 

マキマちゃんは人間だけど悪魔になる事ができんだ

 

 

「どう!すごいでしょ!」

 

自信満々にマキマはそのことを姫野に誇る。

 

「え〜……マジの話ですか?そういうのって、噂半分でしか聞いたことありませんけど……」

 

 

「マキマちゃんは特別なんだぜ〜?たから特別な対応で扱うことになったんだ」

 

「公安を辞めたり、違反…えーっと……」

 

 

「違反行動?」

 

 

「そうそう違反行動違反行動!姫野〜ありがとな」

 

公安としてやっていけてるのだろうかこの人。

 

「改めて…公安を辞めたり違反行動があったらよぉ、マキマちゃんは悪魔として殺すぜ?」

 

 

「それって……どういう……?」

 

ちょっと難しい単語があり整理が追いつかないマキマ。そんな彼女にデンジは簡潔に事実を伝える。

 

「みんなで死ぬまで楽しく働こうってことだ!」

 

再び東京の人混みの中。姫野はマキマにこれからすることを伝える。

 

「アンタを見張る為に一緒に住む事になったから。どっかに逃げたら殺していいって言われてるからさ」

 

人混みの中を歩いていく中、前にいる姫野にマキマは質問する。

 

「…ねえ、デンジさんって悪い人なの?」

 

 

「そう思うならデンジさんは諦めなよ」

 

「アンタ、悪魔なら殺されないだけ感謝してよね。私達はデビルハンターなんだから」

 

 

「じゃあいい人なの?」

 

その問いかけに姫野はこう答える。

 

「いい人に決まってる……私の命の恩人だから…」

 

そう言われて、マキマはデンジに抱きしめてもらったあの光景を思い出す。そして例の質問に対する回答を思い出して顔がニヤける。

 

「デンジさん……もう一回抱かれたいなあ」

 

 

「はああああ!?」

 

 

 

—————————————————

 

 

 

「えっとえっと、食パンにバターとジャム塗って、サラダとコーヒー付けてデザートも……」

 

場所が変わって2人が今いるのは姫野の自宅。マンションの一室である。

マキマは己の欲望に従うように食パンにバターやジャムを食ってみたり、サラダやコーヒー、デザートを姫野に作ってもらい好きなだけ食べる。姫野も仕方ないので作ってみたが、机の上は見るも無惨に汚れ散らかっていた。

それに加えて、風呂は長い、トイレで寝るなどの行動で姫野にはストレスが蓄積されていく。

 

そしてデビルハンターとしての仕事がやってくる。東練馬区住宅内に『魔人』が発生したとの事で、既に民間人の避難と現場の封鎖は完了しているとの事。

 

「目標の魔人は2階奥の部屋に立てこもっている。後はデビルハンターに任せる」

 

 

「姫野さん隣の人新人?」

 

斧を持った状態でマキマはふと気になったことを姫野に質問する。

 

「ねえ魔人ってナニ?」

 

 

「…えぇ?アンタ義務教育受けてないの?」

 

 

「え〜私受けてないもん」

 

その発言にドン引きする姫野。仕方ないので魔人について説明する。

それを聞いたマキマは一言。

 

「それじゃ私魔人じゃない?」

 

 

「違う、魔人は頭の形状が特徴的なの」

 

扉を蹴るとそこにはくちばしを生やした中年の女がいた。

 

「魔人の人格は悪魔だから。今回はアンタが殺して」

 

「悪魔になって力を見せて。それで使えるかどうか判断するから」

 

姫野からは悪魔になって殺せと言われたがそれには従わず、マキマは持ってた斧で魔人の首をはねて殺す。

 

「…ねえ、なんで悪魔の力使わなかったの?」

 

 

「あ〜…私の力使ってで悪魔を殺すとさぁ、すっごく痛そうなんだよね」

 

「だから〜あ〜私もこの魔人になってたかもしれないから、それでなんか楽に殺して…あげたくて……」

 

マキマが話してる途中で姫野はマキマの顔を掴み、窓ガラスに叩きつける。

 

「いい?覚えといて。魔人も立派な悪魔なの、デビルハンターが悪魔に同情しないで」

 

「私の家族は全員目の前で悪魔に殺された」

 

「下にいる警察とも飲みに行った事あるけどさぁ、奥さんや子供を守る為に命がけで仕事してるの」

 

「アンタ以外全員本気なの。私は悪魔をできるだけ苦しむように殺してやりたいの。アンタは悪魔と仲良しにでもなりたいの?」

 

 

「友達になれる悪魔がいたらなりたいかな。私友達いないもん……」

 

姫野はその言葉に少々目を見開いたかと思うとこの場を去る。

 

「その言葉、覚えとくから…」

 

姫野が去った後、マキマは足元にあったイケメン雑誌に目を向ける。本当はイケメン雑誌に血をつけたくなかったから悪魔にならなかったのである。

イケメン雑誌を確認して無断で貰っていくマキマ。

 

「よしエッチ確認」

 

なんとも面食いである。

ふとチェンソーとの契約内容を思い出すマキマ。

 

「その人間を見つけるのとマキマの夢を私に見せる、この2つを叶えてくれ」

 

「私もちゃんとやってるよチェンソー。契約通り夢みたいなイイ生活してるよね?」

 

「私はもうその夢にはゴールしちゃってるからなあ…もう1つの方はまだ時間かかるし仕方ないじゃん」

 

風呂も毎日入れて、美味しいご飯が食べれて、ツラの良い男も近くにいる。百点の生活に見えるが、マキマはなにか足りない気がすると考え込む。

夢のゴール、ゴール……ふとデンジの体を思い出す。女の自分とは違う、男のゴツゴツとした筋肉質な身体……

 

「筋肉、直でたくさん触ってみたい……」

 

いきなり男に抱かれるのは緊張もあるしそもそも難しい。でも筋肉なら強い意志と行動力があれば触れるのではないかと思い始める。

 

(そういう事だったのか…見つけた……私の本気!私のゴール!それは…!)

 

「筋肉だ!!」

 

 

「キンニクダ?」

 

 

「ちょっと!話聞いてバカ!」

 

 

「はなし…?」

 

場所は姫野と初めて会った部屋。どうやらデンジが何か話していたようで、改めてマキマはデンジの話を聞く。

 

「マキマちゃんには今日からバディを組んでもらうぜ」

 

 

「バディ…?」

 

たしかに姫野は先輩にあたる人なので、立場が同じ人をバディと言うのなら姫野はバディではない。マキマはそのように解釈する。

 

(デンジさんは私の事好きだったハズだ…けど、触るのを頼めば嫌われる可能性もある…)

 

それは嫌だと思っていると何か足音が聞こえてくる。

 

「公安ではよぉ、ちっせえ仕事とかパトロールみたいなのは安全の為な、二人一組で行動する事になってんだ」

 

「お、ちょっどよかった。来たみたいだぜ」

 

たしかに足音が近付いてくる。そう思っているとデンジが1つ忠告をする。

 

「気ィつけてな…アイツは魔人だからな」

 

そのようにデンジが忠告した後だった、ドアが勢いよく開かれ、部屋中に魔人の大声が響き渡る。

 

「ヒャ!!ワアアアアアアアアアア!!」

 

いきなりマキマに抱きつく魔人。

 

「オレビーム!!バディってオマエか!?」

 

 

「へッ!?ちょ、ちょっと離れてッ!!」

 

顔に思いっきりビンタして、「ビーム」と名乗った魔人を引き剥がす。

 

「ギャッ!?」

 

 

「というか、ビーム!?名前ビーム!?ていうか魔人なの!?魔人がデビルハンターなんてやっててもいいの!?」

 

そう声を張り上げていると、目に映るのはビームの身体。姫野の言っていた通り頭には特徴的な形状をしたものがあり、目は見えなかった。

ビームの見た目は短パン一丁の露出度高めな格好だが、ビームの身体はとても筋肉質だった。背も高い。

それを見たらマキマが心に思うことはただ1つ、そして口出すこともただ1つ……

 

「まあいっか!!よろしくね!」

 

それしかないのだ。相変わらずマキマはチョロい。

姫野は何とも言えない疲労感に満ちた表情で2人を見つめていた。

また何か問題が起きそうな、未来の悪魔と契約していなくてもそんな未来が想像できてしまうのだった———

 




ビーム大好き!
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