チェンソーウーマン   作:やまなお

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天使君大好き!
(投稿バカ遅れてすみません!)


嵐の前/泳ぎ方を教えて

 

姫野は懐に入れていたタバコの箱を取り出す。もう吸う事も無いと思い、ゴミ箱にポイッと捨てる。

振り返った先には姫野の新しいバディである天使の悪魔がいた。ベンチに座り、近くにあるアイスクリームの屋台で買ったアイスをくつろいで食べている。なおアイスはこれで3つ目である。

 

「もう3つも食べたら十分でしょ、さっさとパトロールいくよ」

 

 

「アイス食べたら疲れた…食べるのにも体力って使うらしいよ。今日はもう働きたくないんだけど」

 

そう言って天使の悪魔は働く事を拒んでくる。姫野は天使の悪魔に協力して欲しいのでその理由を説明する。

 

「銃の悪魔の場所がわかったから遠征がある。それに参加するにはデカイ悪魔を倒した成績がもっと必要なの」

 

「だから私はもっと悪魔を探したいんだ。私のバディになったのなら協力して」

 

アイスをチロチロと舐めながら天使の悪魔は考える。そして出した結論はこう。

 

「もう一個アイス食べてから考えるってのはどうかな?」

 

すると姫野は片足をベンチの上に叩きつけながら天使の悪魔を脅す。

 

立って。アンタが使えない事を上に報告すれば悪魔として殺されるよ。それでもいいの?」

 

 

「ん〜………」

 

 

「働くくらいなら死んだほうがマシかな…」

 

ここまで脅してもなお動いてくれない。中々のひねくれ具合である。

姫野は天使の悪魔についてデンジと話し合っていた時の会話を思い出す。

 

「4課でクァンシの次に強いのはアイツだぜ」

 

「怠け癖がなけりゃの話だがな〜…銃野郎の討伐なんとかに参加してえんなら、アイツをうまく使う事だな」

 

相変わらず難しい言葉はうろ覚えなデンジ。姫野は不安な気持ちをデンジに明かす。

 

「…悪魔とうまくやっていける気がしません」

 

 

「ビームとはうまくやってねえの?」

 

 

「今日の朝、腹が減ったって叫びながら噛みつかれたので殴り合いになりましたよ」

 

そのように言う姫野の顔には絆創膏などが貼ってあった。姫野の苦労が目に見えてわかる。

 

「……別に仲良くならなくてもいいんだぜ〜?利益になるように使えさえすりゃいい」

 

窓の向こうにある部屋でビームと会話している天使の悪魔をチラリと見てデンジは姫野に伝える。

 

「アイツはなァ、自分が産まれた場所のヤツらを全員殺してやがる。正確に言うなら寿命を吸い取って武器に変えちまった」

 

 

「武器…?」

 

 

「アイツは触れた人の命を武器に変える。姫野が持ってる刀もアイツの武器だぜ。その武器は触れられないはずの幽霊を切れたり、いろんなスッゲェ力を持ってる」

 

「フリでもいいから仲良くしろよ。きっと姫野の力になるぜ!」

 

そう伝えてデンジはこの場から背を向けて去っていった。

姫野と天使の悪魔は悪魔が出現したとの通報を受け、何とか処理を終わらせた所であった。姫野が民間人に宣言する。

 

「悪魔は処理しました!みなさんは血や肉に触らないようお願いします!」

 

天使の悪魔は処理された悪魔の傍にしゃがみ込みながら美味しそうと呟いていた。

すると天使の悪魔が何かに気付いたようで姫野を呼ぶ。

 

「へい人間ちゃん、ちょっとこっち来て」

 

天使の悪魔が指さす先には、今にでも死にそうな人間が横たわっていた。

 

「こいつは民間のデビルハンターみたいだね。この悪魔に食べられてたみたいだけど、下半身ないしもう死ぬね」

 

 

「おっ、こっ、こっ…ころして…ころして…こお…」

 

苦しそうに呻いている様子を見て姫野は天使の悪魔にお願いする。

 

「アンタの力なら楽に殺せるでしょ、死なせてあげて」

 

 

「…え?やだよ」

 

ここでも天使の悪魔は姫野のお願い事を断る。その理由を天使の悪魔は冷ややかな声色で話す。

 

「…僕は天使である前に悪魔だよ?人間は苦しんで死ぬべきだと思ってる」

 

そのように言って聞かないので、姫野は自分の持っている刀でトドメを刺す。死ぬ間際に感謝の声が姫野に届く。

刃の先から血を零しながら、姫野は天使の悪魔に話す。

 

「フリでもアンタとは仲良くなれないね」

 

 

「らしいね」

 

一方で、マキマは炎天下の日差しが降り注ぐ中葛藤していた。

 

(私の心はデンジさんが見つけてくれた。だから私の心はデンジさんだけのモノだ)

 

(でも…っ、体が勝手に……!)

 

抑えきれない欲求が扉に手をかけ、来訪のベルを鳴らしながらマキマは店内に入ってしまう。今日も二道のカフェに来ていた。

 

「あ、お客様だ〜」

 

マキマの来訪に気付き、嬉しそうな声をあげるヨシダ。店員であるはずなのだが、机に座って参考書などを広げながら勉強中のようだった。

服装もなんだか魅惑的で、露出度が少し多めな気がする。

マキマはヨシダの隣の席に腰をかける。

 

「お昼食べにきた」

 

 

「一週間も続けて来るほどおいしくないだろココ」

 

 

「おいしいよ?」

 

 

「マキマちゃんの言う通りだよ?」

 

メニュー表を見ながらマキマは答え、マスターもマキマの意見に同調していた。そんな様子を見てヨシダは一言。

 

「バカ舌」

 

少し悩んだが、マキマは今日の昼食を決めたので注文する。

 

「そうだなあ…カレーと……アイス…あと、チャーハン」

 

そんなマキマを見つめながら、ヨシダはマキマに話しかけてくる。

 

「こっちの机で食べないか、お客様」

 

 

「いいよ…勉強中でしょ?店員にクセにさ」

 

 

「君は学校いってないだろ?16歳のクセにさ〜」

 

「そっちのほうがヤバいと思うけどな」

 

 

「そうかなあ……そうかなあ?」

 

 

「学校いかないでデビルハンターなんて珍種だぜ、珍種」

 

ヨシダは少し考えると、ノートと筆記用具を持ってマキマが座ってる席の方に寄ってくる。

 

「こっちで勉強するか。そっちつめてつめて」

 

マキマは少しそっぽを向きながら、少し呟いてみる。

 

「…漢字はもっと読めるようになりたいかな……」

 

 

「漢字読めないの?じゃあ教えてやる!」

 

そう言いながらノートに文字を書いていくヨシダ。そして書き終わるとマキマに試すように見せる。

 

「問題ジャジャン。これはなんと読むでしょう?」

 

ノートの真ん中には「子宮」と縦書きで書かれていた。マキマはヨシダにツッコミを入れるように答える。

 

「シキュウでしょエロ男!」

 

 

「なんだ、わかってるんだ」

 

 

「唯一シキュウだけはすぐ読めるの!」

 

マキマが自信満々に答えるのでヨシダは堪らず笑い出す。

 

「アハハハハハ!!なんだよそれ!」

 

ツボに入ったの涙目になっているヨシダ。そんな彼を見てマキマは無意識の内に呟く。

 

「ヨシダ君となら学校行きたかったかな。なんか楽しそうだし」

 

それを聞くと目線をこちら側に向けて、ヨシダは顔を横にカクンと傾けながら何か面白いモノを見るような目でマキマを見つめる。

 

(何言ってんだろ私は…)

 

ツラが良い男にマジマジ見られているので頬を赤らめながら、マキマは先程呟いた発言を自分で疑う。

するとヨシダがマキマの肩に手を回しながら提案してくる。

 

「じゃあ行っちゃいますか?夜」

 

 

「夜?」

 

 

「一緒に夜の学校探検しようぜ」

 

近くでそんな事を言われてしまったので、マキマは思わず行くと返してしまう。

 

(心はデンジさんのモノなのに!!体が言う事を聞かない!!)

 

 

 

—————————————————

 

 

 

夜の学校は静かで人の気配など微塵も無かった。不気味を感じさせる歪な空間に、マキマとヨシダはこっそりと侵入する。

 

「マキマちゃん恐くないの?」

 

 

「あ〜…恐いっていうか…変な感じっていうか……」

 

 

「なんだよそれ」

 

するとヨシダがマキマに手を差し出す。

 

「どうせだし、手繋ごうぜ」

 

そう言われたのでマキマは流れに乗ってヨシダと手を繋いでしまう。

 

(デンジさん、ホントは手なんて繋ぎたくないんです。でも…体が勝手に…)

 

2人は「3-B」の教室に入り、早速ワンツーマンでの授業が始まる。

ヨシダは黒板にチョークで「1+1=」と書いていく。

 

「ではこの問題解ける人」

 

 

「はい!2!」

 

 

「正解!天才!」

 

両手を上げて答えるマキマと正解した事を褒めるヨシダ。続いてヨシダは「Moob」と書く。

 

「この英語はなんと読むでしょう」

 

 

「はい!わかんない!」

 

 

「正解は雄っぱいです!」

 

 

「エロ男!」

 

簡易的な授業を行いながら、マキマは学校について段々と分かってくる。

 

「はあ〜………学校ってこんな感じなんだね、だいたい掴めてきた」

 

 

「マキマちゃんって本当に小学校も行ってないの?」

 

 

「え?うん」

 

それを聞くと黒板からチョークを離し、ヨシダは疑問を浮かべた表情でマキマに問う。

 

「それってさ…なんか……なんか…ダメだろ」

 

 

「ダメ?」

 

 

「ダメっていうか…おかしい」

 

黒板消しを置き、机に手を置きながら続ける。

 

「16歳ってまだ全然子供だぜ?普通は受験勉強して、部活がんばって友達と遊びに行って…」

 

「それなのに、マキマちゃんは悪魔を殺したり殺されそうになったり…今いる公安っていう場所は本当に良い場所なのか?」

 

 

「いいところだよ?1日3回食事できるし、布団で寝れるし」

 

そのように返してくるのでヨシダは心底おかしいように話す。

 

「それって日本人として最低限の…当たり前の事だろ?」

 

マキマはヨシダに言われた事を考えていくあまり、夏の暑さも相まって何だか頭が熱くなってくる。

 

「考えすぎて頭熱くなってきちゃった…」

 

そんなマキマを見てヨシダは少し笑みを浮かべ、そしてある場所へと誘う。

 

「じゃあ少し冷やしますか」

 

誘ったのは学校の屋上にあるプールだった。夜中のプールは何だか昼間とは違った雰囲気を見せていた。

ヨシダがプールに指を入れる。

 

「はは、冷た〜!」

 

 

「私あんまり泳げないんだよね」

 

 

「じゃあ教えてやる、泳ぎ方」

 

マキマにそう伝えるとヨシダは服を脱ぎ始める。

 

 

「え!?」

 

 

マキマはいきなりヨシダが服を脱ぎ始めたので驚きの声を上げる。

 

「脱ぎなよ、服着てると沈んじゃうぞ」

 

 

「エッチすぎじゃないですか?」

 

 

「泳げるようになりたくないの?」

 

頬を赤らめながらマジマジとこちら側を見つめてくるマキマに問うヨシダ。

マキマはヨシダの筋肉を凝視する。

 

「なりたくなってきた…」

 

そんなマキマを試すような悪い笑みを浮かべるヨシダ。

 

 

「オあえ!?」

 

 

なんとヨシダがマキマの前で履いているパンツを下ろしていく。何とも刺激が強い光景である。

 

「マキマちゃんもハダカになろうぜ。どうせ暗くて見えないよ」

 

マキマはその光景を見ながら2つの気持ちが暴れ出す。

 

 

『丸見えだよ!!』

 

 

(落ち着いて……)

 

 

『筋肉スゴっ』

 

 

(ダメ…)

 

 

『下!下!』

 

 

(ここで脱いだらデンジさんを…)

 

 

『わああああああ』

 

 

(裏切る事になっちゃう)

 

2つの思いが葛藤した結果、気付いたらマキマは服を全て脱いでそこに立ち尽くしていた。

 

(無理…)

 

ヨシダは既にプールに入っており、少しはしゃいでいた。

 

「はは、冷たっ!マキマちゃんもおいでよ」

 

 

(ダメ、マキマ。行ったら私の心も行っちゃう)

 

 

「わー溺れる、助けてー」

 

いかにもわざとらしい演技をしてマキマを誘うヨシダ。マキマは何とか堪えようと顔に力を入れながら手を合わせて祈るポーズをしていた。

そんなマキマを見てヨシダは煽りを入れてくる。

 

「あ、わかった。さては泳げないからプール恐いんだな!」

 

何とか行きたい衝動を堪えようとする。しかしもう我慢の限界だ、己の欲望に従ってプールへと駆けて行く。

 

「エいっ!!」

 

全身でプールにダイブしたので大きな水しぶきが上がる。そしてそこで2人は沢山子供のようにはしゃぎ、楽しい時間を過ごす。

2人が水の中から勢いよく出る。するとヨシダが両手をマキマに差し出す。

 

「教えてやる」

 

「マキマちゃんの知らない事、できない事」

 

「オレが全部教えてやる」

 

マキマがヨシダの両手を握ると、泳ぎの練習に入る。

 

「マキマちゃん、息継ぎ息継ぎ!」

 

するとプールに水滴がポツポツと降ってきて、直後大粒の雨が勢いよく降ってくる。

 

「あ、雨だ、アメ!アハハ!」

 

 

「ギャー!!」

 

その後、2人はプールから上がり脱いだ服を着て教室に戻ってくる。窓には大粒の雨が叩きつけられており、止む気配は感じられなかった。

 

「止みませんね…」

 

マキマも外の雨模様もボーッと見つめる。するとヨシダが唐突に話を持ちかけてくる。

 

「ねえ」

 

「マキマちゃんはさ、田舎のネズミと都会のネズミ、どっちがいい?」

 

 

「…なにそれ?」

 

同時期、姫野と天使の悪魔はどこかの店の軒下で雨宿りしていた。ヨシダが持ちかけてきた話と全く同じモノを天使と悪魔が話し、その内容を説明していた。

 

「イソップ寓話の一つだよ」

 

「田舎のネズミは安全に暮らせるけど、都会のようにおいしい食事はできない。都会のネズミはおいしい食事をできるけど人や猫に殺される危険性が高い」

 

「僕は田舎のネズミがよかった…けどデンジに捕まって都会に連れて来られたんだ」

 

「僕の心は田舎にあるのさ、都会のキミに付き合って危険な目はごめんだね」

 

 

「……あのねえ」

 

マキマ達が現在いる教室内ではヨシダが「俺は田舎のネズミがいい」とマキマに話した所だった。

 

「私も田舎のネズミがいいかな」

 

 

「本当?だよな〜平和が一番ですよ」

 

 

「うん…あ、でも……」

 

マキマは先程の発言に一つ付け加える。

 

「最近は都会のネズミでもいいかなって思ってるんだ。都会って美味しいモノたくさんあるし、結構楽しそうだなって」

 

 

「……そっか」

 

何か含みのあるような、なんとも言えない返しをするヨシダ。しかし唐突にヨシダはマキマに提案を入れてくる。

 

「じゃあ明日さ、近くでお祭りあるし一緒に行かない?きっと楽しいしおいしいよ」

 

 

「……仕事終わってからならいいよ」

 

 

「お、じゃあ決まりな。約束な!」

 

そう言うとヨシダは背を向けて教室の扉の方へ向かっていく。

 

「ちょっと便所行ってくるな〜」

 

教室から出て去っていくヨシダ。そんな彼を見てマキマは少々見とれていた。

ヨシダは水道で手を洗い、鏡で自分の姿を確認していた。そして教室に戻ろうと廊下を歩いている最中のことだった、背後から誰かの足音が聞こえてくる。

 

「マキマちゃん…?」

 

後ろを振り返るとそこには大柄の男が立っており、不気味な声でヨシダに話しかけてくる。

 

「そーそーマキマちゃんだよ俺はさあ。俺も丁度ションベンしたかったんだよね」

 

「連れションしようぜえ?なあ?」

 

外では大粒の雨が激しく降り注ぎ、窓ガラスに水滴が叩きつけられる音が絶え間なく響いていた。止む気配は、未だ無い。

 




小籠包大好き!
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