「ねんど教室」と書かれた看板が掲げれた建物の上を歩くマキマとビーム。
マキマは斧を持って少し考え事をしながら歩き、ビームは下に潜って移動したり、出てきたと思ったら辺りをキョロキョロと見渡していた。
するとまたマキマに抱き着くビーム。
「ニンゲン!早くなんか食わせろ!オレ腹減った!」
マキマは思ったよりも凶暴なビームに手を焼く。
「ある程度の理不尽なら許せる、意外とカワイイし…問題はどうやって筋肉を触るかなんだよなぁ…」
ビームと歩きながらマキマはデンジの言っていた事を思い出す。
「魔人は悪魔と同じ駆除対象なんだけどよぉ、ビームは一応シツケといたから姫野の隊に入れてみたんだ」
「頭のサメの部分が目立つから人通りの少ねえ場所だけパトロールする事」
「もしそこら辺のデビルハンターに会ったり警察に職務なんとかされた時は……」
「公安対魔特異4課です」
「って言って手帳を見せればよぉ、イヤ〜な顔して帰っていくぜ」
見せたらデンジの言う通りになった。そこは公安のデビルハンターの凄さが見受けられた。
「前にも言ったけどよぉ、公安対魔特異4課は実験的部隊なんだぜ。結果出せなかったらな、すぐにでも上のヤツらが解体しちまうかもしれねえ」
「そうなったらお前達がどうなるかはわかるよな?」
1度休憩がてら欄干にに寄りかかる2人。そしてマキマは1つ愚痴を吐く。
「全っ然悪魔いないじゃん!」
「もしかしてオレのせいで逃げたのかも!!」
唐突にそんなことを言い出すビーム。
「オレ、魔人になる前結構強い悪魔だった!だからオレの匂いで悪魔逃げる!!」
「はい〜?じゃあ私たち結果出せないじゃん!」
もう1つ、デンジが言っていた事をマキマは思い出す。
「何か聞きたい事あったら姫野に聞けよ。アイツがお前達組ませたんだからな!」
(あの女〜…私をハメたなア…!ビーム君と組ませて私を活躍させないようにして、私をやめさせる気なんだ!)
マキマの脳内には舌を出して下衆な顔を浮かべる姫野があった。すると突如ビームが匂いを嗅ぎ出して駆けていく。足が速いので追いかけるのに苦労する。
「キャキャ!勝負!勝負!勝負!」
建物から飛び降りて頭を鮫の形状にする。下の方では電話ボックス内で民間のデビルハンターが上に報告していた。
「現場の封鎖と民間人の避難は完了させました。練馬の駅前に応援お願いします」
「ナマコの悪魔です、ナマコの悪魔。え?だから〜……!」
「ナメっ」
ビームが頭を鮫にした状態で食い荒らすことで辺りは血しぶきの嵐となる。そんなことも知らずにビームは好き勝手食い散らかす。
「ナメコ……」
「悪魔!悪魔!キャキャ!食い放題〜!!」
「ウマイ!ウマイ!最高!!」
「…………」
マキマは建物の上からその様子を見ていたが、なんとも酷い光景で絶句していた。
そして悪魔やビームによって汚れた駅前の清掃作業の音が聞こえる中、2人は横並びになる。目の前には「うーん」と悩むデンジ。
「あのなァ、そこら辺のヤツらが手を付けた悪魔を公安が殺すのは業務妨害なんだぜ?普通だったら逮捕されちまう」
「ビームもちと考えて行動しろよな〜?マキマちゃんもコイツを従えないと」
「え?私も…?」
するとデンジはビームの詳しい説明を始める。
「ビームはな、魔人になる前は『サメの悪魔』だったからよぉ、一時的に悪魔になれる珍しいヤツなんだけど……すぐ興奮しちまうし、デビルハンターには向いてねえのかな?」
「っこ!?」
「きゃっ…このニンゲンが殺せって言ったから殺した!」
「はい〜!?」
唐突に罪を擦り付けられてキレるマキマ。そしてそのまま口論になる。
「私言ってないです!言ってない!そんな簡単にバレる嘘をよく言えるね!?」
「嘘じゃない嘘じゃない!!このニンゲン悪魔探してたって言ってたから悪魔殺した!!」
「たしかに悪魔探してたけど…!だからといって私はアナタに悪魔を殺せだなんて言ってない!!というか逮捕だよ逮捕!!名誉毀損罪で逮捕した方が絶対イイ!!」
「チギャウ!悪魔食べろって言ったから食べた!嘘つくのニンゲンだけ!!」
「そんな設定ないよ!!アナタが証拠でしょバ〜カ!!嘘つかないでよ変態男!!」
「チギャウチギャウ!ニンゲン汚い嘘すぐつく!食べろって言われたから食べた!ウマかった!!」
「チギャウとかカタコトなのとかキャラ作りしないでよ!!気持ちワルイんだけど!!」
「静かにできるか?」
デンジがそう言い放った瞬間、ビームは怯えたように弱々しくなる。
「ギャッ!?で、できるっ」
「ええ……?」
先程までの威勢が消えたビームに困惑しているとデンジが再び喋り出す。
「偉いなビーム。正直どっちが足ィ引っ張ったのかはどうでもいいな、俺は二人の活躍が見てえんだ」
「俺に活躍見せられるか?」
「ギギャ!?みせ!みせっ、見せるっ」
ジッと怯えたビームを見つめるマキマ。そうしてしばらくした後、2人は地下の自動販売機にて飲み物を買っていた。猫が近くに1匹おり、「にゃ〜」と可愛らしい鳴き声を奏でていた。
代金を支払いボタンを押すと缶コーヒーが出てくる。マキマはそれを手に取りながら呟く。
「私結構コーヒー好きだからさあ、缶コーヒーが買えるなんて私にとっては夢みたいなことなんだ。でもこのままミスが続けばコーヒー飲めなくなる所の話じゃないよ?」
「だからって嘘つき男と協力なんてできないけど…」
チラリと横を見るとビームは猫と戯れていた。
「オレが仲良くできるの、猫だけ!」
「ニンゲン嫌い!なんか嫌い!本能!」
「悪魔も嫌い!ニャーコ連れ去った!」
聞けばビームが飼っていた「ニャーコ」という猫を悪魔に連れ去られてしまったらしい。
マキマは凶暴なビームでも猫を飼えることに内心驚きながらも話の続きを聞く。
「ニャーコ取り戻したい!でもデンジ様に捕まった…でも諦められない!」
「ニャーコ取り戻せるなら何でもする!オマエには猫の大切さ、わからないだろうけど!」
「たしかに猫カワイイけどさ…私は筋肉直で触れるんだったら何でもするけどさ」
ビームはマキマの方を見ずに呟く。
「…やっぱり、ニンゲンとはわかりあえない!」
「んーあ〜でも犬だったらまだわかるかも…?」
そう呟いた時だった、ビームの方から1つ提案が出される。
「……オマエ筋肉触りたいって言ってた。ならニャーコ取り返せ!そしたら触っていい!」
衝撃の発言だった。少し目を瞑り考える。ビームの身体は筋肉質で触り心地が良さそうだ、それにマキマだってゴールに到着したい。
ならばマキマがビームに言う言葉はただ1つ……
「……悪魔がさぁ!」
「キャッ?」
「猫をさあ!!さらうなんてさア!!」
「キャッ!?」
「そんな事許せないよね!?」
「ギャッ!」
「デビルハンターとして許せない!!」
「ギャッ!!」
「そんな悪魔私がぶっ殺してやるから!!」
うん、チョロい。
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「魔人ビームの外出を許可します。17時までには戻ってくるように!」
早速ニャーコを連れ去った悪魔を探す為に、まずビームの外出許可を公安の上層部に頼む。
「一人じゃ外出もできないの?」
「ギャッ!ここ、退屈!」
そして東京を優雅に走る路面列車に乗り、ビームの話を聞く。
「ニャーコ連れ去った悪魔、場所わかる!でもオレ戦えない!ニャーコ盾にされちゃう!」
「つまりビーム君の姿をその悪魔に見られるとニャーコちゃんが危ないから、私が代わりにその悪魔を倒せと」
ビームは顔を大きく前後に振る。伝え方が相変わらず豪勢である。
マキマは筋肉を触れるとの事でビームの筋肉をチラ見しつつも、思ったことを呟く。
「…私もチェンソーっていう悪魔飼っててさあ〜」
「もう撫でる事はできないんだけどいいんだ。私のココで生きてるからね!」
「んー興味ナイ!!」
相手を思いやる気持ちの欠片もない言動であった。マキマはその発言に少しキレながらビームの言い分を聞く。
「ソイツ死んだ!もうナイ!食ったのと同じ!」
「……はいはい、そうだね」
(絶対仲良くなれないな、この魔人……)
距離が開いた列車内で、2人はそれ以降一言も喋らずに、列車が到着するまでひたすら待った。
一方その頃、横長の机に座ったお偉いさん5人を目の前にデンジは立っていた。ちょっとした会議のようなものだろうか。
「米国の件でソ連はタカ派の声が大きくなっている。悪魔を軍事利用しているという噂も聞く」
「願わくば日本の敵は悪魔だけでありたいものだがな」
「デンジ君…キミにあげた部隊の犬は育っとるかね…?」
「んー期待に応えられそうなのが一匹と、面白そうなのが一匹っすかね…」
「…面白そう?」
「最近拾った子犬っす」
お偉いさんの筆が止まる。
「キミの仕事は犬を育て使う事だ、くれぐれも情は入れてくれるなよ」
少ししたあと、デンジは部屋を去る。そして姫野が運転する車に乗って移動する。
ジュースの入った紙コップを美味しそうに飲んでいると、姫野がデンジに思ったことを言う。
「マキマちゃんは不快なだけで面白くないですよ。どうしてそんなに期待するんですか?」
少しジュースを啜ったあと、デンジはふと関連性の無いような言葉を呟く。
「全ての悪魔はよぉ、名前を持って産まれてくる」
「その名前が恐れられてるものほど悪魔野郎の力も強くなる」
そう呟いたあと、手元に持っている紙コップに入ったジュースを見る。
「ジュースは恐ぇイメージなんてねえから、『ジュースの悪魔』がいたら弱いだろうな。まだ『コーヒーの悪魔』の方が強えんじゃね?アイツドブ味だし…」
「でも『車の悪魔』がいたらどうだろうなあ…タイヤに轢かれて死ぬイメージがあるし、強えかもな!」
一体なんの話をしたいんだと姫野が内心思っているとデンジはこうも呟く。
「マキマちゃんは『チェンソーの悪魔』になれるんだよ」
「面白ぇと思うけどな!」
デンジの意図はなんとなく理解した姫野。だからといってマキマの凄さが身に染みて理解できた訳ではない。
「面白いだけで使えないヤツだと思いますよ」
「公安って目標や信念がある者しかいないじゃないですか、でもあの子はだらだら生きたいだけと言ってましたよ。公安には相応しくないですよ〜」
「それに悪魔と仲良くなれると思ってる。まだ子供なんですよ、子供」
一方その頃、列車からバスに乗り換えて、最寄りのバス停に到着したので降りた2人。
しばらく歩いていると向こうに家が見える。
「あそこの家!あそこにニャーコと悪魔、いる!」
「ふ〜ん、じゃあさっさと行こ」
そうして家に向かって歩いているとマキマはふと違和感に気付く。
(…あれ?でもよくよく考えてみたら、ビーム君って相手の悪魔に見られるとマズイのにそんな簡単に近付いていいわけ?)
(もしかしてコレ……)
マキマはビームの意図に気付く。しかしもうすぐ近くに目的地の家が。
「これチェンソーで戦わないといけないのかな……」
「キャッ?チェンソー?」
「あー私チェンソーになれるの」
「よくわからない!!」
相変わらず知能が足りていない事が分かる。マキマはふと気づいた事をビームに問う。
「…ねえ、これ罠でしょ」
「…ギャッ?」
「アナタが姿を見せたら猫を人質に取られちゃうんだよね?だったらこんな近くまできちゃダメでしょ。罠ならもうちょっと考えて張らないと」
「……」
少し黙ったかと思うと、ビームはマキマに襲いかかる。すかさずマキマは持っていた斧で対抗しようとする……が、1歩遅れて、ビームの鋭い歯でガジガジ攻撃されて気絶してしまう。
「う、うっ……」
「…オマエ、勘イイ。アブなかった」
気絶したマキマの身体を引きずり、ビームは家の中に入る。
「随分と私を待たせたな…サメの悪魔よ…逃げたのかと思ったぞ……」
ドアがバタンと閉まる。
「ギャッ…!文句、言うな!オレやっと外に出られた!仕方ない!」
「コウモリ……望み通りニンゲン、連れてきた!!」
ビームの目の前にいるのは『コウモリの悪魔』だった。
この悪魔がニャーコを攫い、飼い主であるビームに人間を連れてくることを要求したのだ。
「久しぶりの食事…!若い女か…いいじゃないか、これは美味そうな血が期待できるな…!」
そしてコウモリの悪魔はマキマの身体を手で掴み、己の腕の傷を見せつける。勢いよく掴むのでマキマの意識は回復する。
「この腕の傷を見ろ人間!貴様等につけられた傷……!この私を隠れざるをえなくさせた忌々しい傷だ!」
「…知らないよバーカ」
「食事が吠えるな!」
そしてコウモリはマキマを口元に持ってくる。
「人間に刻まれた傷…人間の血で癒させて貰う…!」
マキマの身体に圧をかけることで体内にある血を放出させる。
「ぎゃあああアアアア!!」
「ぬっ!不味い!?」
コウモリは不味い血だった為床にマキマを叩きつける。
「不味い血でぇ!!」
「復活してしまったではないかアアア!!」
癇癪を起こしたコウモリにより、家の屋根は勢いよく壊されてしまう。そして開いた穴からコウモリが出てきてしまう。
「口の中が気持ち悪い!!他の人間で口直しをしなければ!」
暴走を始めようとするコウモリを見つめるビーム。大怪我を負ったマキマはそんな彼を見つめる。
「アンタは悪魔と仲良しにでもなりたいの?」
姫野の言葉がマキマの脳裏によぎる。
「よくオレの話、信用できたな。やっぱりニンゲン、愚か!」
ビームはマキマを横目で見ながら呟いた。コウモリが暴れそうになる中、この場は一体どうなるのだろうか———
明太子大好き!