チェンソーウーマン   作:やまなお

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ニャーコ大好き!


救出/ゴースト

 

ビームが公安に来る前は、海で色んな魚を狩っては食べていた。小魚から大魚まで、至れり尽くせりだった。

ニャーコが来てから、何だか日々の生活に生き甲斐ができたような感覚を覚えた。

しかしそのニャーコはコウモリの悪魔に捕まり、コウモリに人間を連れてこないとニャーコを殺すと言われ、とにかく泳いでいた。

 

(命、みんな軽い。たかが猫…)

 

(なんで、走る?ニャーコを助けたいから?)

 

(…オレ、馬鹿みたい)

 

必死に泳いでは時々怪我することもあった。怪我をすれば血が流れる。

 

(最近はじめてわかった…)

 

ニャーコの愛らしい鳴き声が耳の奥を癒す。

 

(ニャーコと一緒に寝るの、暖かくて気持ちがいい…)

 

過去の大切な記憶が夢としてビームの中に浮かんだ。ふと目を覚ます。

 

「にゃ〜」

 

籠に入れられたニャーコを抱えて眠っていたビーム。身体はコウモリの血肉で汚れていた。

そして誰かが自分のことを抱えていたことに気付く。抱えていたのはマキマだった。

 

コウモリは倒された。おそらくマキマが助けてくれたのだろう。ニャーコの鳴き声が聞こえる中、ビームはマキマに問う。

 

「なんで、オレを助けた…?オレ、マキマ殺そうとした……」

 

少し悩んだあと、マキマはビームの筋肉を指で指して、それをスリスリ触るジェスチャーを見せる。

 

「馬鹿みたいな理由……」

 

コウモリの臓器でグチャグチャになった道路に座りながら少し休憩する。

 

「…騙して、ゴメン」

 

「ニャーコ、助かった。筋肉、触っていいぞ!」

 

この言葉は夢ではない、現実だ。それを認識した瞬間マキマは……

 

「やったあアアアア!!」

 

その事実にマキマが喜んでいると、突如マキマの腕が何者かにスパンと切られる。

 

「アっ」

 

「アアアアあ!?いっタィ〜!!」

 

「いったあいいい…」

 

目の前に現れたのはまた別の悪魔だった。先程切られたマキマの腕をパクッと飲み込んでいた。

 

「……動ける…?」

 

 

「指も動かない……ニャーコちゃん連れて、逃げて……!」

 

スターターを引っ張るマキマ。チェンソーが頭から出るが、なぜか少ししか出なかった。

 

「え…!チェンソーが出ない…!」

 

(血が足りないのかな!?)

 

すると相手の悪魔がマキマに話しかけてくる。

 

「やァ〜っと見つけたのにィ〜…アンタでしょオコウモリちゃん殺したのォ〜私の男だったのに!」

 

 

「はあ…」

 

 

「まあ後ろの子達殺させてくれるんだったらアンタは逃がしてもいいけど?」

 

その条件には乗れないと、マキマは唾を吐き捨て戦闘態勢のポーズになる。

 

「じゃ死にな」

 

こうしてコウモリを倒して間もないのに、デビルハンターとしてまた別の悪魔とこの不利な状況下で闘うことになるのだった———

 

 

 

—————————————————

 

 

 

戦闘は白熱する。マキマはボロボロの状態でも勇敢に悪魔に立ち向かっていく。

明らかにマキマ側が不利な状況下でもめげずに頑張る。全ては筋肉を触る為だ。

 

「筋肉触るためだけにこんな戦えるの…?」

 

片腕が欠けた状況でも悪魔と素手で殴り合いをするマキマ。しかし血が足りないので思うように力は出せず、悪魔に吹っ飛ばされる。

それでもマキマは立ち上がる。全ては筋肉を触る為だ。

 

「嘘でしょ…!?」

 

「こんな子犬ちゃんにコウモリは殺されちゃったの!?」

 

「コウモリは私と一緒に人間をすべて食べる夢を見ていた…無謀だけど崇高で素敵な夢」

 

「それを子犬程度にぶち壊された…知能はそれなりにあるみたいだから残念だけど、死んでちょうだい」

 

マキマは顔の血を拭って相手の悪魔に言い放つ。

 

「筋肉触る前に死んでたまるか……!」

 

 

「ぐたらな〜い!低俗な欲望を持つヤツに殺されたものね…かわいそうコウモリ……」

 

マキマの夢を嘲笑う悪魔。脳内には今まで会ってきた人達がマキマに言い放った、マキマの夢を馬鹿にする声が響いていた。

 

「アンタ以外全員本気なの」

 

 

「馬鹿みたいな理由……」

 

世間的に見たらたしかにマキマの夢はこの悪魔が言うように低俗なものかもしれない。でもマキマは本気なのだ。

馬鹿にする連中に苛立ちを覚えて、怒りの勢いで駆けて行く。

 

「オオオオア」

 

「ラ!!」

 

頭に少し生えたチェンソーで顔に傷をつけるマキマ。傷をつけられた痛みによる悪魔の呻き声が辺りに響く。

そんな状況下でマキマは己の怒りを発散する。

 

「み〜んな私のヤル事見下しちゃってさあ……」

 

「復讐だの、家族守りたいだの、猫救うだの、人間をすべて食べたいだの……」

 

「みんな偉い夢持ってていいなア!!じゃあ夢バトルしようよ!夢バトル!!」

 

「私がアナタをぶっ殺したらさあ〜…!アナタの夢ェ!筋肉触る事以下ね〜!?」

 

 

「吠えてててカワイイわあ!子犬ほど吠える吠える!」

 

「いいわ!アタシが食べたげる!!」

 

 

「アハハ!!いいよ!!」

 

「私に夢バトルで勝ったらねエ!!」

 

そう言い放つとマキマは相手に向かって全速力で駆けて行く。何度傷つけられても痛い目みても攻撃するのをやめない。

なぜか?そう、全ては筋肉を触る為だ。

欲望というのは人間や悪魔を動かす原動力であれば、ある意味筋肉を触るという行為も立派な夢なのかもしれない。

必死に筋肉を触る為に立ち向かっていくマキマを見たビームは、ある種の恐れを抱いていた。そのような心境を現す言葉を一言呟く。

 

「ギャッ…悪魔……」

 

そして互いがぶつかり合い、互いに攻撃を喰らわせ合う。

しかし無念にもマキマは悪魔の舌で腹を貫かれてしまう。そしてマキマを食べようと悪魔は大きく口を開く。

 

「いただきまァアす!」

 

そんな絶体絶命の状況の横で、マキマを食べようとする悪魔に向かって手のひらを向ける一人のデビルハンターが……

 

 

 

「ゴースト」

 

 

 

その瞬間、悪魔に向かって数多なる手や足とも言えない何かが勢いよく伸び始め、何度も叩きつけては捻り潰していく。

 

「あ…はへ…?」

 

 

「これ、恐らくヒルの悪魔……捻り潰していい?」

 

 

「いいよ」

 

姫野が了承すると、ゴーストと呼ばれた悪魔はその場からスっと消滅する。

どうやらこの場に姫野達が対処しに来たようだ。姫野以外にも3人程引き連れてやってきたみたいだ。

 

「ヒルの悪魔駆除確認」

 

「新人ちゃんは生存者の救出保護と避難誘導!」

 

 

「ハイ!」

 

 

「はいっ」

 

 

「早川先輩は悪魔の警戒をお願いします!」

 

 

「わかった」

 

姫野がテキパキと指示を出すことで早急な解決へと導いていく。

 

「夢バトル……私は……私は夢バトル……」

 

狂ったように夢バトルと呟くマキマを姫野はお構いなしに抱えていく。

 

「いやアアアア!!」

 

 

「アンタとサメの魔人は事情聴取!」

 

 

「ギャッ、ニャーコは…!」

 

この状況には少々似合わないニャーコの鳴き声が響く。

 

「…猫は動物病院で健康状態の確認!」

 

かくして、コウモリの悪魔とヒルの悪魔の対処は幕を閉じたのであった———

 




アキ大好き!
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