チェンソーウーマン   作:やまなお

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パスタ大好き!


銃の悪魔/エロキス

 

東京本部のとある一室。

マキマは先程デンジが言った言葉を脳内で何度も確かめ、試しに呟いてみる。

 

「マキマちゃんが銃の悪魔を殺せたら、デンジさんが私の願い事なんでも一つ叶えてあげる…?」

 

「それって……それはつまり……」

 

「マキマちゃんが銃の悪魔を殺したら、デンジさんが願い事なんでも一つ叶えてあげるっていう事ですか…!?」

 

 

「おう」

 

似たような言葉を繰り返してしまうほど衝撃的な発言だったマキマ。何がとは言わないが、発言の仕方がアレを想起させる。

 

「何でもって…例えば………セッ「なんでもだぜマキマちゃん。まあそういうヤツは俺も大歓迎だけどよォ!」

 

出した例えがかなり最低だが、デンジがそういうことを大歓迎としてくれたお陰で事なきを得た。

 

「うわあスゴい!そんなコトあってもいいんですか!?」

 

 

「んな事あってもいいくらい強えしめっちゃ悪い悪魔なんだぜ」

 

歓喜するマキマ。マキマはそんなに強い悪魔がいたという事を初めて知り、呑気にそのことを呟く。

するとデンジが銃の悪魔の詳しい説明をしていく。

 

「13年前なぁ…悪魔対策っつーことで世界中が銃で儲けようとしてた頃があってよ。その時期くらいだったかな、銃を使ったヤベえことが増えちまったんだよ」

 

「それでよォ、どこもかしこもテレビとかでたくさん銃のニュースバンバン流しちまって、世界的に銃が前よりもビビられるようになっちまったあたりかなぁ…」

 

「アメリカで銃を使ったヤベえテロが起きた」

 

『その日によ、銃の悪魔が現れた』

 

 

13年前、とある日本の家屋。

外は雪がたくさん積もり、美しい銀世界を見せていた。

つけているテレビからは、アメリカで銃を使った大きなテロが発生したという生中継が報道されていた。

すぐ近くにあるベッドでは、父親と母親が子供に読み聞かせをしていた。

 

「「これがボクの住んでいる所さ」と都会のネズミは言いました。その家はなんと大きかったでしょう」

 

「都会のネズミの家族は…「お父さん!外でキャッチボールしてよ!」

 

部屋の前に一人の活発な少女がやってくる。外は雪が積もったこともあり寒いが、それでも外に出れるのは若さだろうか。

 

「ツキの具合が良くないんだ、一人でできる遊びをしなさい」

 

 

「そんなのいつもじゃん!ツキが元気な時なんてないでしょ!」

 

 

「お姉ちゃんはお姉ちゃんなんだから、我慢して一人で遊びなさい」

 

両親から注意されてしまう少女。しかし妹であるツキは……

 

「ワタシ、ワタシお姉ちゃんと遊びたい」

 

妹は姉と遊びたいと言っている。少し迷ったが、その意思を汲み取り両親は二人を家に出す。

 

「気分が悪くなったら家に入りなさいね?」

 

 

「いってきます!」

 

雪が積もって非常に歩きにくい雪道を歩いていく二人。しかし姉の方は妹とかなり距離を開けている。

 

「ついてこないでよ!どっかいって!」

 

そう言い放ち、地面に近付き雪玉を作る。そしてそれを妹に向かって勢いよく投げる。ベチっと雪玉が当たる。

 

「私は一人で遊べるの!」

 

その言い放った直後、少女の顔面に雪玉がストレートに当たる。妹が投げ返してきたのだ。

そっからは子供同士の戦いだ、雪合戦の時間になる。傍から見たらとても微笑ましい光景であった。

しばらく雪合戦を続け、両者とも疲れたので一度休憩を挟む。

 

「冷たいっ………」

 

 

「…アンタが風邪ひくと私が怒られるの」

 

しょんぼりする妹。しかし少女は恥ずかしそうにそっぽを向きながら指を指してこう伝える。

 

「キャッチボールなら手、冷たくなんないでしょ。家からグローブ取って来て」

 

顔をキラキラとさせて喜ぶ妹。元気よく家に走って行き、グローブを取って来ようとする。

家に着いたから扉を開いて中に入ったようだ。遠くの方でそれを見ている少女の顔が少し笑う。

 

その直後だった、けたたましい轟音が少女の耳をつんざいた。理解するまでどれくらいかかったのだろうか、気付いた時には遠くの方にあった家が木っ端微塵にされていった。そこにいた家族、思い出、宝物、そんなの関係ないとばかりに呆気なかった。無力だった。

暴風で少女の被っていた帽子が吹き飛ぶ———

 

 

 

『11月18日午前10時 『銃の悪魔』日本に26秒上陸』

『5万7912人死亡』

 

 

 

『アメリカ124秒上陸 54万8012人死亡』

 

 

 

『中国37秒上陸 31万6932人死亡』

 

 

 

『カナダ7秒上陸 8481人死亡』

 

 

 

『ソ連210秒上陸 15万5302人死亡』

 

 

 

『ハワイ0.4秒上陸 780人死亡』

 

 

 

『メキシコ2秒上陸 6088人死亡』

 

 

 

『インド15秒上陸 2万9950人死亡』

 

 

 

「だいたい5分で120万人くらい殺した後は、銃の悪魔野郎は今日までこれっぽっちも現れてねえ」

 

「その後はぁ…悪魔そのものがもっと怖がられるようになってよぉ、前よりも強くなっちまったんだよな」

 

「銃の悪魔をできる限り弱くするために、全ての国が銃持つのめっちゃ厳しくなったんだよ。ヤベえ事件や災害とかの報道もほとんど無くなった」

 

銃の悪魔による大規模な被害を聞いて脳内が少々こんがらがるマキマ。しかしとんでもなく強くて恐ろしい悪魔だということは十分に理解できた。

 

「まあでも、マキマちゃんなら大丈Vでしょ!いけるいける!」

 

唐突にマキマに向かってVピースを向けて笑うデンジ。どうやって勝つのかも分からないのにとても能天気である。しかしマキマもそういう所は脳が足りないのか、釣られて……

 

「…ですね!」

 

「私がすご〜く頑張れば大丈Vでしょう!」

 

こちらもVピースで返事する。本当に大丈夫なのだろうか。

 

「それならまずは銃の悪魔を見つけねえとな!」

 

 

「どうやって銃の悪魔を見つけるんですか?」

 

するとデンジはどこかから銀色のアタッシュケースを取り出す。そして開けるとそこには銃弾のようなものがいくつか入っていた。

 

「これはなぁ、俺達が集めた『銃の悪魔』の肉片」

 

『銃の悪魔は移動すんの糞早えから、体が少し焦げたみてえなんだ。悪魔がよぉ、この肉片を食べると『銃の悪魔』の力でどんな悪魔も強くなっちまうんだぜ』

 

一つ肉片を掴むと他の肉片に近づける。

 

「この肉片は肉片同士でなぁ……ほらくっついたぜ!」

 

「銃の悪魔はヤベえくらいに強え悪魔だからな、この肉片共がある程度のデカさになれば元の体の場所に再生して戻ろうとしやがる」

 

「だからこの肉片をもっとデカくすれば…」

 

「銃の悪魔に辿り着くかもな」

 

一方その頃、姫野と早川は一匹の悪魔の体内から銃の悪魔の肉片を見つけた所だった。

 

「見つけました!」

 

 

「やっぱ銃の悪魔の肉片食ってたか。雑魚悪魔にしては強かったからな」

 

「食ったのか、食わせたのか」

 

 

「どっちでもやる事は同じですよ、悪魔は全部殺す。その先にアイツがいるから…」

 

指先にある銃の悪魔の肉片をジッと見つめる。13年前、目の前で家族も家も大切な思い出も全て銃の悪魔に壊された少女の決心だった。

 

数日後、公安に悪魔の駆除要請が入る。

 

「公安に悪魔の駆除要請。森野ホテル内部で悪魔の目撃、ホテル宿泊者の生存不明。駆除に当たった民間のデビルハンター複数人が死亡したみたいです」

 

「銃の悪魔の肉片に動きあり。おそらく肉片を食べている悪魔です」

 

 

「公安対魔特異4課6人を出動させます」

 

 

ホテル前で4課の6人が佇んでいた。後ろが少し騒がしかったりするが、そんなの関係なしに姫野は覚悟を決めていた。

銃の悪魔の肉片と共に、これからこのホテルに足を踏み入れていく———

 

 

 

—————————————————

 

 

 

森野ホテル前。公安対魔特異4課が集まり、ホテルに入る前の確認をしていた。

 

「このホテル内のどこかに悪魔が潜んでいる。それもただの悪魔じゃない」

 

「銃の悪魔の肉片が吸い寄せられている。肉片を食べた悪魔がいるって事!」

 

 

「銃の悪魔本人がいるとか?」

 

 

「肉片が大きければ大きいほど強く引き寄せられるの。この程度じゃ違う」

 

 

「ギャッ!それオモシロそう!貸せ!」

 

姫野はふと二人の言動に気になった事があり指摘する。

 

「アンタ達…敬語はどうしたの?」

 

 

「え?」

 

 

「ギャッ?」

 

面倒さそうに姫野を見るマキマ。ビームはよく分かっていない。

 

「ケイゴ…?よくわからないけど、それして欲しいんだったらする「別にしなくてもいいと思うけど」

 

ビームの言葉を遮ってマキマは話す。

 

「それに何の得もないのに誰がアナタに敬語使うわけ〜?」

 

 

「ギャッ?よくわからないけど、ケイゴ、しない!」

 

後輩がいくらなんでも好き勝手すぎないだろうか。(割とマキマの方に非がある)

しかし姫野には対処法があった。二本のガムを突き出す。

 

「……」

 

 

「ギャッ……」

 

 

「姫野先輩……」

 

 

「せ、センパイ…?」

 

 

「オシ!」

 

意外とこの二人の躾はできているようだ。ガムを貰って嬉しそうな二人を見ながら、今回のメンバーの一人である「荒井」が姫野に聞く。

 

「姫野先輩…これから一緒に悪魔と戦う仲間として…そいつらに背中任せて大丈夫なんですか?」

 

「片方は魔人で、もう片方は…結構生意気です…自分は信用できません」

 

少しの間だけ沈黙が流れるが、姫野は荒井に伝える。

 

「この子達に背中は任せない」

 

「悪魔駆除には基本この二人を先行させる。この二人が逃げたり悪魔に寝返った場合は私達が殺す」

 

 

「ギャッ!?殺す!?コワイ!!」

 

 

「悪いけどアンタらには人権ないから…!」

 

マキマは結構キレてる姫野を少し見た後、ビームとコソコソ話をする。

 

「あの人めっちゃキレてる…朝のアレのせいかな……」

 

 

「よく分からないけど楽しかった!」

 

 

「あれは!いたずらレベルじゃないから!!殺すよ!!」

 

 

「何があったんだよ……」

 

先輩の早川は一体朝、姫野の身に何があったのか心配する。

 

「姫野、悪いことじゃねえとは思うけど、厳しくしすぎるのもよくないんじゃないか?」

 

 

「そうだよ!コウモリに殺されかけたと思ったらすぐ仕事!何かご褒美欲しいな〜」

 

それを聞いて早川はもう一人の新人である「コベニ」に何かいいアイデアがないか相談してみる。

 

「え…?じゃ、じゃあほっぺにチューしてあげる、とか…?」

 

 

「は?」

 

 

「ひぃッ!?ごごご、ごめんなさいごめんなさい…!!」

 

オドオドしているワリにはかなりぶっ飛んだアイデアを出すコベニ。しかしやる気出してくれれば最悪何でもいいと思った早川はこう宣言する。

 

「…仕方ねえ、一肌脱ぐか。今回の悪魔を倒したヤツには俺がほっぺにキスしてやる

 

 

「え!?」

 

あまりにも衝撃的発言すぎて頬を赤らめながらビックリするマキマ。

 

「へ…?ホントにやるんですか……?」

 

 

「躊躇無さすぎでは?」

 

アイデア出した本人であるコベニが戸惑っており、荒井もそれに早川のぶっ飛んだ発言にツッコミを入れる。

 

「何も無いよりかはマシだろ」

 

 

「早川先輩それでいいんですか〜?」

 

姫野も早川の躊躇の無さに荒井と同様ツッコミを入れる。

一方マキマはその発言に乗ろうかと思っていたが、デンジの筋肉を触ったあの日を思い返す。そして……

 

「…いや、やっぱキスはいいかな。やる気はそれなりにあるし」

 

 

「え?」

 

 

「私はちゃんとしたチューは誰にするか決めてるし。その人の為に私は肉片たくさん集めて…銃の悪魔をぶっ殺すまでキスはしない」

 

そのように断りを入れるマキマ。いつもはチョロいのに、今回は意外と持ち堪えている。

 

「アンタが銃の悪魔を…?」

 

 

「…姫野の前でそれを言うのか」

 

 

「それに私は大切な事を教わった。エッチな事は理解しあった人間同士でするから気持ちがいいの。名前も知らないアナタの唇には、興味ないかな……」

 

そう跳ね返すマキマ。偉いぞマキマ、健全にいこう。

 

「…コベニ、アイツ…マキマにもっとやる気を出させる方法はあるか?」

 

 

「へ!?な、なんで…?」

 

 

「ちょっとこのまま引き下がるのは少し癪に障る」

 

 

「えぇ…じゃあ……」

 

ゴニョゴニョと早川に話すコベニ。少し戸惑ったが、謎に早川の中にある意地がそれをやれと命令した為、別にいいかと判断する。

そしてマキマに近付く早川。

 

「え…?な、何か……?」

 

そしてマキマの耳元でこう呟く。

 

「じゃあマキマが悪魔を倒せたら、ディープキスしてやる」

 

またもや衝撃的発言。マキマの出した答えは……

 

「…………」

 

今のマキマの顔面は舌をペロッと出している状態。やはりマキマはチョロかった。

そんなマキマを見てコベニは……

 

「ほ、ホントに言ったんだ……」

 

アイデア出したコベニ自身が一番困惑していた。もしかしたらコベニが一番思考がぶっ飛んでいるのかもしれない。

 

そして森野ホテル内。歩くだけでも騒がしいのでこのグループは祭りに向いているのかもしれない。

姫野は何も言わずに歩いていく。

 

「やる気出したならまあいいか…」

 

 

「大丈夫なのか…コレ……」

 

 

「腹減った!!」

 

マキマはウッキウキで歩いている。ディープキスには人を動かす原動力があるのか……おそらくマキマくらいしかいないだろう。

そんなマキマにコベニがおそるおそる話しかける。

 

「あ、あのっ」

 

 

「え?どうしたの?」

 

 

「ほ、ホントにキスするんですかあ……?」

 

 

「え、するに決まってるじゃん。アナタもあの人にキスしてもらいたいの?敵?」

 

 

「ちちち、違いますっ!!いや、ちょっと心配だなって…なんか嫌な予感が……」

 

 

「別にディープキスしてもらうだけだから!大丈V!」

 

Vピースをコベニに向けるマキマ。デンジが教えてくれたVピースはこういう時に使えるのかもしれない。

後ろの方では姫野が早川に話しかけていた。

 

「早川先輩んとこの新人ちゃん達は使えそうなんですか?」

 

 

「…荒井は実力不足だがやる気は十分にある。コベニは荒井とは違って引っ込み思案だが、かなり動ける」

 

「姫野の方はどうだ?」

 

 

「ビーム君は結構強いけど、凶暴だしまだ裏切る可能性がありますかね。マキマちゃんはまだ知らない要素が多すぎてわかりませんね」

 

お互いに情報共有した上で早川が問う。

 

「この新人4人…生き残れると思うか?」

 

少し沈黙が流れた後、姫野はこう答える。

 

「コイツは強いな〜って思ったヤツも、そうでなかったヤツも、1年もあれば死ぬか民間に行きますよ」

 

 

「答えになってねえな……」

 

また沈黙が流れる。すると早川が姫野の方は見ずにこう呟く。

 

「姫野は死ぬなよ」

 

その言葉を聞くと、初めて姫野と早川が会った日の事を思い出す。

花束が置かれた墓の前に佇む腕を怪我した早川の元にやってくる、帽子を被り、右眼に眼帯をした少し老けた()()と若い女性。

 

「早川…オマエの新しいバディだ」

 

「無礼だけど少しは使えるように育てた、上手くやれ」

 

 

「私、姫野。よろしくね」

 

簡単な自己紹介を済ませる姫野。早川はそんな姫野に対して一言。

 

「お前は使えるのか?」

 

 

「さあ…まあ……」

 

そのような曖昧な返答をしていると、早川が墓の方を見ながら呟く。

 

「俺のバディお前で六人目、全員死んだ。使えない雑魚だから全員死んだ」

 

呆然と見つめる姫野の方を向き、早川は一言……

 

「姫野は死ぬなよ」

 

そんな過去があった事を姫野が思い出していると、何かに気付く。

 

「姫野……」

 

ギィっと音を立てて一つの扉が開かれる。

 

「来る」

 

扉の中からやってきたのは人間の生首から足が生えたような悪魔だった。

正直に言うと……とてもキモチワルイ見た目であった———

 




タルト大好き!
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