扉から現れた妙に気持ち悪い見た目をした悪魔。その悪魔がコベニの方へ向く。
「ひっ!」
そして飛んでコベニに襲いかかってくる。
「ひあ、あ、あああ!!」
すると早川が片手で何かしらのポーズを作って呟く。
「コン」
後ろから獣の手が出て、悪魔が静止する。
「う、ぁうあ…………あ、え?」
「何かに掴まれてる…!?」
「キャキャ!食う食う!」
頭をサメにして、静止した悪魔を食い散らかすビーム。
「ぁわあ…アあアワあわ…」
「キャ…これあんまウマくない!というか、なんで急に止まった?」
「俺の力だな。狐が捕まえた」
「キツネ?」
ビームに聞かれたので少し説明を始める早川。
「俺は『狐の悪魔』と契約している。俺の右目がないのは契約の代償だ。その代わり狐の右手が使える」
説明を終えると早川は姫野に銃の悪魔の肉片へのことで問う。
「どうだ?姫野。銃の悪魔の肉片はあるか?」
「強い反応はなし、コイツじゃないみたいですね」
「そうか……じゃあ上の階に行くか」
ホテルの階段を登っていく4課の全員。すると突然ビームが喚き出す。
「腹減った!何か食いたい!!」
「そういうものは特に持ってきていない」
「ギャッ…」
するとビームはコベニの元に行き……
「ならニンゲンでもなんでもいい!腹減った!!」
「ひっ!」
今にでもコベニに噛み付きそうなビーム。しかし何も無い空間から狐の手が出てきてビームの首を締める。
「ギャワ!?」
「噛み付くな。悪い事したらすぐに首を絞め殺す」
「キャッ、ギャアア!力、強い……」
すると狐の手は離れていきビームの首は解放される。
「かはっ、ケホっ!けほ!」
「何もされたくなければ大人しくしていろ」
そうして階段を上りきった時だった、荒井が違和感に気付く。
「あれ…?」
「どうしたの?」
「俺達今…8階から9階へ行く階段を上りましたよね?」
「うん」
「ここも8階ですよ?」
9階に上ったハズなのに、上った先は8階……一体どうなっているのだろうか。
「見間違いか数え間違いじゃないの?」
「違う!確認してくる!」
「ウウ…痛かった…」
荒井は階段を下へ降りて階層を確認する。しかし降りた先に見えたのは、4課のメンバー達だった。
「あれ………?」
「荒井、いま…階段降りて行ったよな…?」
「え?」
「えっえっえっ」
段々とこの空間が異常だということに気付き始める4課のメンバー。さらに確かめる為に早川がコベニに命令する。
「コベニ、そこでダブルピースでじっとしてろ」
「えっ、えっえっえっえっ」
そして早川も荒井と同様に階段の下を降りる。しかし降りた先に見えたのは……
「おい嘘だろ………」
4課のメンバーだった。たちまちコベニは仰天してしまう。
「え〜!?えっ、ええっ、え〜!?」
「姫野…なんだこれ…」
「悪魔の力、ですかね……」
階段以外も確かめる為、姫野はコベニにそこでダブルピースしたまま立つように命令する。
ホテルの一室に入るが、なんと窓の奥にも部屋があった。
「なんで窓の奥にも部屋が…」
「…やっぱりそっか…」
「え!?」
コベニの目の前で部屋に入ったというのに、姫野はコベニの後ろにいた。
まるでループしているみたいだ。
「う、ええ〜!?」
「これ、どの窓からも外に出られない!向かいの部屋に通じてる!」
マキマも姫野や早川と同様確かめていたようだ。しかしそちらも失敗。
これはすなわち……
「8階から出れなくなってる…」
一度状況確認の為ホテルの一室にメンバーの全員で入る。そして姫野が現在の状況を説明する。
「状況を確認するね。おそらく悪魔の仕業で8階の階段からどれだけ登っても降りても8階につく」
「エレベーターはなぜか使えない。部屋や窓からは外に出られない。天井を上ってみたけど上も8階だった」
現状この8階に一生閉じ込められている状況だ。打つ手が見つからない。
「ビーム君がその悪魔殺しちゃったからとか?閉じこめる力を使用したまま死んじゃったから…」
「ギャッ!?そ、そんな!!」
「力は悪魔が死ねば解除されるからそれはありえないよ」
ビームのせいではないということが判明する。安堵するビーム。
「姫野、肉片の反応は?」
「それが…全く反応がなくなりました」
「この悪魔を囮にまんまとハメられたワケか…こんな姑息な真似をしてくる悪魔は初めてだな」
肉片も反応しなくなった。かなり大変な状況に陥ってしまったのだ。
「でも俺達がここからずっと帰ってこなかったら…他のデビルハンターが助けに来てくれるんじゃ…」
「そのデビルハンターが俺達みたいにハメられない事を祈るしかないな」
先の見えない絶望的状況。そのためかコベニが不安でメンタルがやられていく。
「私達ここで全員死んじゃうんだ…お腹ペコペコで死んじゃうんだ…」
「こっ…コベニちゃん!気張れ!デビルハンターやって兄を大学に行かせたいんだろう!?」
そう言って何とか元気づけようとする荒井。しかしコベニはさらにメンタルがやられていってしまう。
「半分無理やりなんです……親が優秀な兄だけは大学行かせたいからって私に働かせたんですう〜…風俗かデビルハンターしか選択肢なかったんですう〜!」
「私も大学行きたかったんですう〜!!でもここで死んじゃうんですう〜!!」
涙を流しながら恐怖などの感情でメンタルがやられていくコベニ。そんな彼女を見てビームが楽しそうにする。
「ギャッ…」
「ワアアアアアアア!!キャキャ!!ワアアアアアアア!!」
「貴様ア〜…!笑うな!!」
コベニを落ち着かせる為にそっと頭を撫でて落ち着かせる早川。
「コベニ…悪魔は恐怖が大好物だ。怖がるな、相手の思うつぼだ」
「でも恐いんですう〜!!」
ビームは姫野が注意してくれたことで反省して笑いを堪えているようだった。
姫野は横の時計を見ながら考える。
「姫野、どうしたんだ?」
「部屋の時計…さっきから8時18分です……どの部屋の時計も8時18分で止まっていました…」
「この8階だけ悪魔の力で時間が止まってる可能性があります。その場合助けはこないかもしれません」
そう姫野が宣言する。完全に絶望的状況で戸惑うメンバー。
しかしこんな時でもマキマは……
「すごい!じゃあ寝放題じゃん!!」
あまりにもこんな状況下に遭遇した者とは思えない呑気な発言に困惑するメンバー。
荒井が心底不思議そうな顔でマキマに言う。
「馬鹿か貴様は…俺達はここで永遠に閉じこめられるかも知れないんだぞ…」
「そうなるかもしれないし、ならないかもしれないでしょ?わかったら起こして」
そう答えると、マキマは目を閉じて睡眠を始める。
「こんなにいいベッドがあるもん、寝なきゃ損だよ」
「私は悪魔に感謝して眠るよ…」
そしてそのまま寝息を立てて眠りについてしまうのだった。
「寝た……」
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「マキマ、そろそろ起きろ」
「ふえ〜……?」
誰かに指でほっぺを突かれて起きるマキマ。横を見ると真顔で早川が佇んでいた。
「ん……8階から出られるようになったんですか?」
「残念だがまだ無理だ」
どうやらまだまだ脱出までは時間がかかりそうである。早川はマキマが寝ている間にわかった事や現在のメンバーの状況を伝えていく。
「マキマが寝ている間に水と電気は使える事がわかった。食料は宿泊客が逃げる際に置いていった荷物に少しだけあった」
「正直、全員まいってきてるんだ」
「姫野はずっと悪魔を探している。少しは休めと言っても聞いてくれねえ」
「荒井も最初は姫野を手伝ってたんだが…今は状況に恐がって部屋に閉じこもっている」
「コベニは姫野の情報によるとおかしくなってトイレの水を飲もうとしたから気絶させられたらしい」
「それで魔人なんだが……」
「ビーム君がどうかしたんですか?」
ビームがいる部屋に入る二人。そこにはベッドの上に座って何かを宣言しているビームがいた。
「オレ、暇!だからノーボルショー考えてた!」
「ノーボルショーあれば、ニンゲンたくさん食い物くれる!!そのあとノーボルショーでオレ、ソウリなんとかになる!!」
「ニンゲンがたくさん食い物買えば、オレにたくさんくれる…だからショーヒなんとかを無くす!!」
そのように豪語するビーム。色々と知識が足りないのか、言葉を間違えていたりするが。
「…いつも通りですね」
「そうか…ならよかった」
そしてビームを連れて3人でコベニと荒井を見張る事が決定した。二人がいる部屋の窓に座り、タバコを吸う早川。
「あ、これが最後のタバコか…」
「オマエスゴく落ち着いてる!」
「今は姫野が頑張ってるからな、俺はゆっくり休むぜ。あとニコチンは摂取しておきたい」
「依存できるモノがあるといいよな…何かに寄りかかって生きたい人生だ」
「あ、それ姫野さんと同じタバコじゃない?」
マキマの問いかけに早川はこう答える。
「そりゃあ姫野にタバコの味教えたのは俺だからな」
あれは姫野と早川がバディを組んでから暫くした後の事だった。都会の喧騒がよく見える場所に二人はいた。
早川はタバコを吸った後、姫野に聞く。
「姫野は吸わないのか?」
「骨が腐るから吸わないかな…」
「付き合いがあるから吸えた方がいいぞ?」
「誰とも馴れあう気はないよ」
少しタバコを吸う。吸った後、早川は姫野が
「なんで公安来たのか当ててやる、銃の悪魔を殺すためだろ?」
姫野は早川に理由を当てられた事に少し驚き、早川の方を見る。
「公安に来る暗めのヤツらは全員そうだからな。公安だけが銃の悪魔の肉片持つこと許されてるしな」
「デビルハンターなんて短命なんだから吸っちまえばいいのに」
「私は簡単には死なないよ」
「そうしろよ」
そして目を瞑りながら壁に寄りかかり、ふと呟く。
「バディが死ぬのは面倒だからな……」
また別の日、二人で一緒に行動していると早川が急に立ち止まる。
「あ…」
「え?」
早川が見てるのは暗い表情を浮かべた男だった。
「姫野はどっか行ってろ」
そう言うとその男に近付く。姫野が困惑しながら見ていると、相手の男が唐突に早川に顔面パンチを喰らわせる。
姫野はその光景に仰天していた。早川が戻ってくると姫野は問う。
「な、何今の…?」
「あれは前のバディの恋人。死んだバディの遺族とかとトラブルになんのはよくある事だ」
「悪魔にやり返せる力がねえから俺にあたるんだ。まあそういうのもデビルハンターの仕事の内だって思う事にしてるが」
姫野はそれを聞いて何だかモヤモヤする。すると早川の元から離れて、先程早川を殴った男にこっそり近付く。
そして何かをして戻ってきたので、早川は不思議そうな顔をしながら姫野に問う。
「何したんだ…?」
「殴ったアイツの服にこっそりガムつけちゃった!」
「は?」
「やられたらやり返すべきでしょ〜…アナタの問題じゃない、私がムカつくの」
「だからやり返してやったの。ざまあないよね、アイツは服についてるガムに気づかず生きていくんだよ!」
悪ガキのような仕返しをする姫野に少し困惑したかと思うと、早川はそれがツボに入ったのか腹を抱えて笑い出す。
「…ッハハハ!!アッハハはハハっ!!何だよそれっ…!!」
そして昼食を中華料理店でとっていると、早川がある事を思い出したように話し始める。
「そういや師匠が言ってたな…悪魔が恐れるデビルハンターは強いヤツでも勇敢なヤツでもねえって…」
「頭のネジがぶっ飛んでるヤツだとよ。だから姫野は長生きできそうだな」
「それ嫌味?杏仁豆腐いらないならもらうけど」
すると早川はタバコから一本取り出し姫野に差し出す。
「一本やるよ」
「骨が腐るから吸わないよ」
「長い付き合いになると思うから、吸って欲しいけどな……」
真顔でこちらを見つめてくるので姫野は押し負けてそのタバコを渋々取る。
「じゃあ一本だけ吸ってあげる。一生で吸うタバコはこの一本だけ!」
そしてそれから時は経ち、現在森野ホテル内部。
「早川先輩…タバコ残ってますか?」
「あー悪い、これが最後の一本だ」
残念ながらもう残ってなかったようだ。しかしすっかりニコチン中毒になってしまったのか、どうしても吸いたいようだった。
「じゃあそれください!」
「はあ…じゃあしょうがねえな」
吸ってたタバコを姫野に吸わせる。するとそれを見ていたマキマが叫ぶ。
「キスじゃん!ズルい!!間接キスじゃん!」
「黙って」
タバコの煙を吐き、姫野は3人に情報共有をする。
「悪いニュースがあるの」
「私達が殺した悪魔がいたでしょ…」
「オレが殺したヤツ!!」
「そいつがどんどん大きくなってるの……」
それを伝えた直後だった、部屋の扉が外れて悪魔が現れる。
「オレが殺したハズなのに…」
「ホテルから出られねえ……見た事もない形状……これはなんの悪魔だ?」
すると悪魔がマキマ達に語りかけてくる。
「人間、人間達よ…愚かな人間達よ…私は契約を交渉する」
「喋った!」
「契約…?」
「そこのマキマという人間を私に食わせろ……そいつの死体でもいい…私に食わせろ……」
「そうしたら他のデビルハンターは全員無事に外へ帰す。無事に帰す…契約しろ…」
マキマ本人はいきなり相手の悪魔に食わせろと言われて困惑する。すると後ろのドアが開いてコベニが包丁を持って現れる。
「マキマ……食わせろ…」
かなりマズイ状況かもしれない。
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おまけ 1
マキマがチェンソーと一緒に暮らしていた時のこと。二人にとっての定番料理を作ることになる。
①小麦粉を買う
②水で小麦粉を溶かす
③食べる(飲む)…だけど今日は……
④今日はクリスマスなので砂糖を入れて食べる(飲む)
「ケーキみたいな味だね!」
「ワン!」
二人ともケーキを食べた事はない。
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おまけ 2
ある日のこと、姫野家3人でとあるカフェに来る。
「この店はコーヒーが美味しいの!」
「へえ〜…」
この店のコーヒーを飲んでみるマキマ。すると少し笑みを浮かべる。
「あ、たしかに美味しい!いいかも…」
「お、コーヒーの味わかるんだね〜」
「キャキャ!オレも飲む!!」
そう言ってカップを持ちコーヒーを飲むビーム。しかしビームにとっては……
「ギャアアアア!?マズイマズイ!!」
叫び出して暴れようとするので二人で全力で止める。
「ちょっとビーム君暴れないで!」
「店では静かにして!」
この店のマスターのドン引きした表情がこの光景を物語っていた———
トンカツ大好き!