オーバーロードにTS転生者を叩き込んでみた   作:連載として再構築

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序章 たとえ腐り落ちる世界樹だとしても
序章 1 異界への産声


転生。

 

本来命の消失と共に消える筈の魂を所持したまま、次の生へと移行するもの。

もしも転生というものがあるならば、人はどのような転生を望むだろうか。

 

勇者となって仲間たちと魔王に立ち向かう英雄譚を望む?

 

それとも、美姫たちを侍らせてハーレムを作ることを望む?

 

確かにどちらもわかる、人は誰しも望むものだ、強さも、快楽も。

自分も考えたことがないと言えば、それは嘘になってしまうだろう。

 

けれども、自分はそう考えたとしても、実際に出来るような人間ではなかったらしい。

 

近しい人間が傷つくのを見ていられない……

出来ることなら笑っていてほしい……

例え自分の小さな手の範囲の中だけだとしても、幸せでいてほしい……

 

この物語はそんな自分――いや、わたしの小さな小さな物語だ。

 

 

「――サ?」

 

わたしが意識を取り戻した時に最初に認識したもの。

それは、自分をのぞき込む少年の心配そうな表情と声だった。

 

だいじょうぶ

 

そう、答えようとしたけれども、自分の身体は全く思うように動いてくれない。

 

「あ、あー」

 

声にならない声が自分の口から洩れる。

でも、その解答だけでも少年にとっては嬉しいことだったらしい。

 

「父さん! アリサが、亜理紗が僕の声に応えてくれたよ!!」

「ああ、そうみたいだな。 はあ、父さんより悟に先に応えるなんてな~」

 

視界に続けて入った男性はがっくりと肩を落としていた。

父さんと自ら言っているということは、この男性が自分の父なのだろうか。

 

「あーあ」

「お、今度はアリサ、パパのことを呼んでくれたよな!」

「そう、父さん? ただ声を出しただけじゃない?」

「母さん、悟が冷たいんだ!」

「もう、二人とも騒がないの。アリサはまだ小さいんだから」

 

ならパパと呼ばないといけないだろうか、そう考え話そうとした自分だったが、やはり自分はまともに話すことができないようだ。

 

いや、待て。

 

自分はついこの間の正月に、田舎の実家に帰ったではないか。

成人後はじめての帰省だったので、しこたま父親に酒を飲まされたではないか。

なのにどうして、自分はこの男性を父親と認識しているのだ。

 

「あー」

「亜理紗の声はきれいね、私よりもずっとかわいらしい」

「そんなことはないぞ、僕にとっては君が誰より何より一番なんだから!」

「アリサよりも?」

「う、母さん、それは厳しい選択じゃないか?」

「ごめんなさい、あなた」

 

それにこの声はなんだ、自分はもっとはるかに野太い男の声をしていたはず。

この鈴を転がしたようなこの声は一体、これではまるで女の子みたい――

 

そこまで考えて、ようやく自分は自身を取り巻く状況を指すものに、一つ思い当たった。

 

もしかして、これって、転生なのか?

 

転生したのか、自分は?

 

そう思い、視線を自らに向けようとしたが、幼いのだろうかこの体は満足に動かない。

手か足だけでも見れればと視線を動かすと、そこには生まれて程ない乳児らしき手があった。

 

どうやらビンゴらしい。

 

転生の実例の話なんかもちろん聞いたことはないが、創作の中とは言え事例を知っていたからか自身を取り巻く状況に納得すると、今度は急激に眠気が襲ってくる。

 

いや、当然といえば当然だ。

 

この身体が赤子のものであるのなら、この身体に必要なものは十分な栄養摂取と、睡眠の筈。

生命としての根源的な衝動に逆らうこともできるわけがなく、自分は再び眠りへと誘われた。

 

 

転生してから月日が経つのは早いもので、すでに6年が経過していた。

そこまで成長してしまえば、もう明確に分かってしまうので言ってしまうが自分――もとい、わたしは女の子らしい。

 

しかも、そこにとびっきりの美少女という修飾語をつけてもいいくらいの。

 

髪は白を基調にわずかに青の色素がかった銀髪、いわゆるシルバーブロンド。

目も同じく紺碧のブルーアイ。

ここまで要素がそろえば、全体的な顔立ちも白人のものであるのが当然なはずなのだが、顔立ち自体は白人と日本人のいいとこどりをした、幼くも年上のようにも見える顔立ち。

 

大人になったら傾国の美女になるのではないかと、贔屓目もあるだろうが父さんは言っていたほどだ。

 

「んー」

 

軽く身体を伸ばして周りを見渡すと、同じ部屋で寝ている両親は疲れからか深く寝入っているようだ。

 

悟兄さんは今は一人部屋で寝ているので分からないが、まあ、いつぞやみたいにわたしの布団にもぐりこんだり、わたしを抱き枕にしたり、寝返りを打ったりするわたしの寝姿を見ているなんてこともないので普通に部屋で寝ているのだろう。

 

「さてと、みんなの朝食を作らないとね」

 

両親はわたしが生まれてほどなくして仕事に復帰し、文字通り命を削って働いてくれている。

理由は単純でわたしたち一家が生きていくためだ。

 

そう、自分が転生した世界は『オーバーロード』の現実世界だった。

 

欧州アーコロジー戦争やネオナチの活発化、巨大企業が支配する終末世界一歩手前の――、どこかのニンジャスレイヤーがスシでも食ってたりしそうな世界。

人間の未来が全体としてお先真っ暗だったとしても、わたしたちが今を生きていくためには働くしかないのである。

世知辛いとか言うな。

 

「ホントなら、イレギュラーを処理すればよかったのになぁ」

 

そういう私だが、オーバーロードとしての物語の大枠は知っていたが、設定まで深く知っているわけではない。

『ユグドラシル』のサ終時にログインしてた人間が、別世界にゲームの強さのまま移転して大暴れする、といったくらいだ。

でもそこから考えれば、ユグドラシル終了までこの現実世界で生きていることができれば、生存は保証されると言っていい。

でもモモンガこと鈴木悟は一人身だった、それが示すことはそう単純で。

 

「そう、そこに至る過程で――」

 

父さんと母さんは、死ぬ。

 

そう考えると胸が痛くなる。

 

自分が転生したということは、前の生で男性として生きていた自分は死んだのだろう。

今から考えると、親孝行一つしてあげられない子供だった。

親不孝者だった。

 

こうやって、お前と酒を飲むのが夢だったんだ――

 

そう笑って男だった自分のグラスにビールを注いだ、前の親の顔はもう思い出せない。

その事実だけでも、子供な今のわたしは涙ぐんでしまう。

 

「ううん、駄目よ亜理紗。今は父さんも母さんも生きているんだから」

 

目じりに浮かんだ涙をぬぐって、気を取り直す。

 

これは代償行為かもしれない。

 

でも、このまま死に向かいつつある両親を黙って見ているなんてできない。

 

「だから、せめて――」

 

そう考えていながら身体を動かしていると、朝食が出来上がった。

収入の少ない両親の稼ぎだけで健康を維持できるよう、かつ安くできるように作った献立だ。

この身体は元の素質が良いのか、ありとあらゆることについて覚えが早く、覚えた以上にこなすことができる。

そのことを今は感謝したい。

 

「ほら、みんな朝だよー!」

 

そろそろ朝食をとらないと、両親は朝の通勤に間に合わなくなる。

そう考えたわたしは精一杯の笑顔を浮かべて、家族を起こすのだった。

読者皆様のアリサの相手候補の意向確認

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