オーバーロードにTS転生者を叩き込んでみた 作:連載として再構築
視界の端で明滅するシステムウィンドウを開いた瞬間、鈴木悟の心臓は凍てつく手で鷲掴みにされたかのように冷え込んだ。
運営から届いたその通知は、長きにわたりこの世界で『歌姫』として愛された彼女――最愛の妹、亜理紗の訃報を全プレイヤーへ伝えるものであった。
文面には、長年公式アンバサダーとして貢献した彼女への敬意と、特例として彼女のアバターを『永遠の歌姫』としてパブリックエリアに顕彰し、誰もがその姿を偲べるようにするという処置が記されていた。
「運営の精一杯の手向けか……ああ、分かっているさ。彼らに悪気がないことくらいは」
俺は奥歯を噛み締めながら、その決定を理性で受け入れようと努めていた。
個人情報の観点からは異例だが、彼女が生きた証をこの世界に残したいという運営の『恩情』は、兄としても一人のプレイヤーとしても理解できるものであったからだ。
ペロロンチーノさんや他のメンバーも、当初は沈痛な面持ちでその決定を是認し、静かに彼女を見送ろうとしていた。
「モモンガさん、ダメです! 見てください、これを!」
「……なんだ、どうしたというんです」
「運営は……あいつらは、性善説で考えすぎていたんですよ! プレイヤーの悪意を、甘く見積もりすぎていたんだ!」
ペロロンチーノ、いや龍也が悲鳴のような声を上げて強制的に開いたモニターには、パブリックエリアに設置された『追悼の場』の映像が映し出されていた。
そこにあったのは、静謐な祈りなどではない。
捨て垢とおぼしき初期装備の集団が、無抵抗な亜理紗の美しいアバターを取り囲み、エモーションを連打し、泥を投げつけるような冒涜行為の数々を行っていた。
「……なっ」
「有名税だのなんだのと言い訳をして……クズどもが! 運営も想定していなかったでしょうね、追悼の場がこんな見世物小屋になるなんて!」
「……クソがぁ! あのゴミども……亜理紗に何をしやがる!!」
視界が真っ赤に染まるほどの激怒が全身を貫いた。
運営の善意が招いた、最悪の悲劇。
無防備に晒された妹の姿がハイエナどもに弄ばれている現実に、俺は喉が裂けよとばかりに絶叫した。
「今すぐ行くぞ! 全員殺してやる! 一人残らずPKして、二度とこの世界にログインできなくしてやる!」
「待てモモンガ! 既に彼女のギルドが動いている! 連絡が入った、指定座標へ急行するぞ!」
転移魔法を起動し、指定された『Voiceless Garden』のギルドホーム前へと飛んだ。
そこにはかつての活気を失い、深い悲しみに沈んだ生産職のプレイヤーたちが立ち尽くしていた。
彼らの中心、副ギルドマスターの腕の中には、ぐったりと力を失った銀髪の少女――亜理紗のアバターが抱きかかえられていた。
「モモンガさん、お待ちしておりました」
「……その姿は、亜理紗か」
「はい。我々が総出でGMコールをしてなんとか『回収』しました。あの地獄のような広場から連れ戻すことだけは……」
副ギルドマスターの声は震えており、その目には悔し涙が滲んでいた。
彼らは戦う力を持たない生産職だ。
それでも、主である亜理紗が辱められるのを黙って見ていられず、決死の覚悟で彼女のデータを拠点へと引き上げたのだろう。
「ですが、遅すぎました」
「……謝るな。貴方たちが悪いわけではない」
「いいえ守れませんでした。我々には、もうこの『庭』もアリサさんも守り抜く力がありません。どうか、これを受け取ってください」
彼が差し出したのは、銀細工の繊細な意匠が施された、一つの「髪飾り」であった。
それはこの巨大な生産拠点を支配するギルド武器そのものであった。
そして、その首には、運営から彼女への最後の贈り物である201番目のワールドアイテム『ブリーシンガメン』が、皮肉にも煌々と輝きを放っていた。
「モモンガさん、どうか我々の身勝手なお願いを聞き届けてはもらえませんか」
「これは、亜理紗の髪飾りか? いや、まさか……これがギルド武器なのか」
「はい。アリサさんにいつか自身のアバターに着けようと、我々全員で素材を集めて作り上げた……『Voiceless Garden』そのものです。ですが、主を失った今の我々には、あの方の愛したこの場所と、あの方の尊厳を守り抜く力がない」
「これを我々に渡すという意味を、理解していないわけではあるまい」
「分かっています。ですが……あのハイエナ共の手で汚されるくらいなら、兄である貴方にすべてを託したいのです」
彼らの目には縋るような、それでいて決死の覚悟の光が宿っており、その重圧に思わず息を呑んだ。
これは禅譲などという美しい言葉で飾れるものではなく、彼女が愛して育て上げた『庭』と、そこに込められた魂を継承する儀式であり、それを背負うことを求められているのだ。
俺は一度だけ深く息を吐き出し、銀色に輝くその髪飾りへと、白骨の手を伸ばした。
「……承知した。アインズ・ウール・ゴウンの名において、妹の遺志とこの髪飾りは、我々が責任を持って管理する」
「あ、ありがとうございます! 本当に、ありがとうございます……」
「礼には及ばない。我々は家族の尊厳を守るために動くだけだ。徹底的に、容赦なくな」
俺は震える手で、妹の証である髪飾りと、彼女の冷たい身体を受け取った。
その瞬間、システムログが流れ、彼女の拠点の所有権とアバターの管理権が、正式に我々のギルドへと移行したことが通知される。
それは、彼女を冒涜した世界に対する、我々の宣戦布告でもあった。
「モモンガさん、情報が入りました! 嗅ぎつけてきやがった!」
「……ぷにっとさんか。何が起きた」
「拠点の譲渡と、ワールドアイテム『ブリーシンガメン』の移動を確認した上位ギルド連盟が、『大同盟』を結成しました。名目は『アインズ・ウール・ゴウンによる拠点の不当占拠の解放』ですが、狙いは明らかにアイテムと、彼女のアバターデータです」
「解放だと? よくもぬけぬけと!」
腕の中で眠る亜理紗は、何も答えない。
だが、その安らかな顔を二度と汚させはしない。
運営の甘い見通しも、プレイヤーたちの身勝手な欲望も、すべてが彼女を傷つけたのだ。
「数は推定千五百。ナザリック始まって以来の、最大規模の侵攻になります」
「上等だ……亜理紗はもう我々の手の中にある。二度と誰にも触れさせはしない」
俺は眼窩の炎を激情で燃え上がらせた。
慈悲など必要ない。
妹を辱めた愚か者たちに死以上の絶望を与えることだけが、今の俺に残された兄としての責務だった。
これから始まる殺戮の宴を想像し、口元を歪めた。
最愛の妹を愚弄した連中に、本当の地獄というものを教えてやる時が来たのだ。
手の中にある銀の髪飾りを優しく握りしめると、眼窩に宿る深紅の光を、かつてないほど激しく燃え上がらせた。
「全階層守護者、および配下に通達! これよりナザリック地下大墳墓の防衛戦を開始する!」
「来るなら来い、ハイエナども! ここが貴様らの墓標だ、地獄の底まで後悔させてやる!!」
「俺たちの至高の力、その身に刻んでやる! 行くぞみんな、亜理紗ちゃんのためのレクイエムだ!!」
◇
【YGGDRASIL】アリサ追悼スレ part145【運営の誤算】 ↓ 【YGGDRASIL】ナザリック vs 大同盟 戦争実況スレ Part1【アリサを守れ】
1 :名無しの冒険者:2132/XX/XX(土) 20:00:00.00 ID:Al1sAL0ve
運営が用意したパブリックエリアの『追悼の場』が地獄絵図になってる件のスレ。
ハイエナ共は立ち入り禁止。
5 :名無しの冒険者:2132/XX/XX(土) 20:05:22.14 ID:FaN001
>>1
乙。
マジで胸糞悪い、吐きそう。
運営はなんでこんな仕様にしたんだよ。誰でも触れるとか頭おかしいだろ。
12 :名無しの冒険者:2132/XX/XX(土) 20:18:05.33 ID:GeS4U0
『永遠の英雄』として顕彰するって名目だったのにな。
捨て垢で泥投げたりエモート連打してる奴ら、全員特定してBANしろよ。
アリサちゃんが何をしたって言うんだ。
ただみんなに笑顔届けてただけじゃねーか。
28 :名無しの冒険者:2132/XX/XX(土) 20:32:18.44 ID:FaN001
おい、画面動いたぞ! 誰か来た!
33 :名無しの冒険者:2132/XX/XX(土) 20:35:45.88 ID:SkE11
うわああああああああああああああ!
モモンガ様だあああああああああああ!!!
AOG(アインズ・ウール・ゴウン)が来たぞおおおおお!!!
56 :名無しの冒険者:2132/XX/XX(土) 20:51:10.00 ID:ReV3N6
生産職の人たちが必死にGMコールしてアバター回収したっぽいな。
でも生産職じゃ守り切れない……そこでAOGへの譲渡か! 熱すぎる展開だろこれ。
あの生産ギルドの副マス、泣きながらモモンガさんに何か渡してる。
72 :名無しの冒険者:2132/XX/XX(土) 21:03:22.12 ID:Al1sAL0ve
見たか今? 副ギルマスが渡した銀色の髪飾り。
あれ、アリサちゃんのためにみんなで作ってたやつだろ?
まさかあれが『Voiceless Garden』のギルド武器だったとは。
89 :名無しの冒険者:2132/XX/XX(土) 21:15:45.33 ID:KuZ00
>>72 しかも首には201番目のワールドアイテム『ブリーシンガメン』。
拠点の権利ごと、すべてを「兄」であるモモンガに託したんだな。
禅譲というより、これは魂の継承だわ。
生産職たちの「守ってやってください」って悲痛な叫びが聞こえてくるようだ。
104 :名無しの冒険者:2132/XX/XX(土) 21:28:00.66 ID:GeS4U0
システムログ流れた。
『Voiceless Garden』の所有権とアバター管理権、正式にAOGへ移行。
これでアリサちゃんはナザリックの加護下に入った。
もうあのゴミ共には指一本触れさせないって意思を感じる。
120 :名無しの冒険者:2132/XX/XX(土) 21:42:12.99 ID:MoB1L0
ざまぁwww
捨て垢ども、慌てて逃げようとしてるけど遅えよ。
モモンガさん、ガチギレしてる。
「全員殺してやる」って聞こえたぞ。
145 :名無しの冒険者:2132/XX/XX(土) 22:05:05.11 ID:WaR00
おい待て、なんかヤバい情報入ってきた。
上位ギルド連盟が『大同盟』結成したって。
数は1500人規模。
167 :名無しの冒険者:2132/XX/XX(土) 22:12:30.22 ID:FaN001
は?
1500人?
何しに来るんだよ、追悼の邪魔する気か?
182 :名無しの冒険者:2132/XX/XX(土) 22:25:45.55 ID:SkE11
名目は「AOGによる不当占拠からの解放」らしい。
でも狙いはどう見ても『ブリーシンガメン』とアリサちゃんのアバターデータだろ。
火事場泥棒にも程があるぞクソが。
人が死んでるんだぞ、ゲームのアイテム扱いしていいライン超えてるわ。
215 :名無しの冒険者:2132/XX/XX(土) 22:40:10.88 ID:Al1sAL0ve
「解放」とか笑わせるな。
さっきまで冒涜されてた時は見て見ぬふりしてたくせに、AOGが保護した瞬間に「返せ」とか。
ハイエナどもが。
244 :血まみれの冒険者:2132/XX/XX(土) 23:05:22.00 ID:PK_B_E
……チッ。
胸糞わりぃ話だな。
大同盟とかいう烏合の衆が。
260 :名無しの冒険者:2132/XX/XX(土) 23:14:15.33 ID:GeS4U0
>>244
お、誰かと思えば。
お前ら『ブラッド・エッジ』の連中か?
有名なPKクランが何しに来た。お前らもハイエナ側か?
288 :血まみれの冒険者:2132/XX/XX(土) 23:28:40.66 ID:PK_B_E
>>260
一緒にすんなカス。
俺たちは以前、あのアリサって嬢ちゃんと「契約」したんだよ。
「周辺でのPK禁止」「生産職には手を出さない」ってな。
その代わり、極上のポーションを卸してもらってる。
あの子は俺たちみたいな汚れ者にも、真っ直ぐ目を見て商談してきた唯一の生産職だった。
301 :血まみれの冒険者:2132/XX/XX(土) 23:35:10.88 ID:PK_B_E
契約はまだ生きてる。
俺たちのシマ(Garden)を荒らすバカどもなんざ、顧客の敵だ。
PKクラン『ブラッド・エッジ』は、今回に限りナザリック側に立つ。
背中くらいは突いてやるよ。
333 :名無しの冒険者:2132/XX/XX(土) 23:42:00.12 ID:KuZ00
>>301
お前ら……!
漢気ありすぎて泣いた。
PKクランなのに今日だけは輝いて見えるぞ。
356 :名無しの冒険者:2132/XX/XX(土) 23:55:45.55 ID:ReV3N6
大同盟の連中、「正義の聖戦」とかほざいてるぞ。
反吐が出る。
アリサちゃんを守ろうとしてるのは、お前らが「魔王」って呼んでるAOGの方じゃねーか。
どっちが正義かなんて、見るまでもないわ。
410 :名無しの冒険者:2132/XX/XX(日) 00:00:03.08 ID:MoB1L0
日付変わった瞬間、モモンガさんが宣言したぞ。
エリア全域放送だ。
「来るなら来い、ハイエナども。ここが貴様らの墓標だ」
「亜理紗ちゃんのためのレクイエムだ」
455 :名無しの冒険者:2132/XX/XX(日) 00:15:30.00 ID:FaN001
うおおおおおおお!!
やっちまえええええええ!!
1500人だろうが何だろうが、全員リスポーン地点送りにしてやれ!
521 :名無しの冒険者:2132/XX/XX(日) 00:48:10.22 ID:SkE11
正直、相手は数が多いけど……今のAOGは「魔王」じゃない。
「兄」だ。
怒れる兄貴がどれだけ怖いか、あの連中はまだ知らない。
600 :名無しの冒険者:2132/XX/XX(日) 01:10:00.88 ID:Al1sAL0ve
慈悲など必要ない。
アリサちゃんを辱めた代償、死以上の絶望で支払わせてやれ。
俺たち視聴者も、心はナザリックと共にある。
いや心だけじゃない、俺たちもナザリック側に立とう!
666 :名無しの冒険者:2132/XX/XX(日) 01:30:00.88 ID:GeS4U0
さあ、開戦だ。
ナザリック地下大墳墓 vs 大同盟。
違うな、俺たちも行くぜ、本当の地獄を見せてやる。
原作開始前の最大の変更点をここに。
なお攻防戦の詳細は割愛する予定です(長くなりそうなので)
読者皆様のアリサの相手候補の意向確認
-
モモンガ
-
ペロロンチーノ
-
ジルクニフ
-
ガゼフ
-
ラナー
-
クレマンティーヌ
-
イビルアイ
-
ラキュース