オーバーロードにTS転生者を叩き込んでみた 作:連載として再構築
流石に、これだけ反応頂いておきながら本番を独白であっさり流すのは失礼かなぁ、と思いまして。
それに伴い前話を前編と位置付けます。
鼓膜を食い破らんばかりの警報音と、視界を埋め尽くす深紅の警告エフェクト――円卓を囲む俺たちの目前には、ナザリック地下大墳墓がかつて経験したことのない狂気的な『正義』が押し寄せていた。
モニターの向こう側で繰り広げられているのは、もはやゲームという枠組みさえ超えた醜悪な欲望と歪んだ英雄願望の奔流だった。
「うわああああっ! ありえないありえない! なんだよあいつら、ゾンビゲーかよ!?」
悲鳴を上げたのは、黄金のアーマーを纏った鳥人、ペロロンチーノ――龍也だ。
彼は頭を抱え、羽をバタつかせながらモニターを指差して叫んだ。
「シャルティアが……手塩にかけた最強のタイマンビルドが数の暴力で圧殺された!? スキルクールタイムなんてお構いなしかよ! 死に戻り特攻でMP切れを狙うとか、風情がないにも程があるだろおおおっ!」
「……ええ、見事なものですね。これが『正義』を自称する者たちの戦い方ですか」
対照的に静かな、しかし煮えたぎるような憎悪を滲ませて呟いたのは山羊の悪魔の姿をしたウルベルトさんだ。
彼は芝居がかった仕草で両手を広げ、嘲るように画面上の聖騎士たちを睨みつけた。
「『囚われの歌姫を救う聖戦』……反吐が出ますよ! その実態は、親の金で買った課金アイテムをばら撒き、死すら恐れぬ自爆テロ! 見てくださいモモンガさん、彼らは『悪』を倒すためなら、いくら金を燃やしても構わないらしい!」
「落ち着けウルベルトさん……いや、無理だな。この光景を見て冷静でいられる方がおかしいか」
俺は玉座の肘掛けを軋むほどに強く握りしめ、努めて冷静な声を出しながらも内心では胃が裏返るほどの焦燥感に襲われていた。
敵の狙いはレアアイテムでも名声でもない。
『アリサ』そのものだ。
だからこそ、彼らは損得勘定を度外視し狂信的なまでの執着でナザリックの防衛網を物理的に食い破ってくる。
「ぷにっとさん、戦況分析を! 第4階層のガルガンチュアはどうなっている!?」
「……ダメですな、止まりません」
軍師であるぷにっと萌えさんは、蔓草で構成された体を揺らし、苦々しげに報告した。
普段の理知的な彼からは想像もつかないほど、その声には諦観と苛立ちが混じっていた。
「ガルガンチュアの広範囲攻撃も、完全蘇生アイテムの連打で無効化されています。奴ら、足元を死体の山で埋めてそれを足場に通過……戦略もクソもない。これはただの『札束の殴り合い』ですぞ、モモンガさん」
「くっ、あいつら一体いくら費やすつもりなんだ!」
その時、新たな警告ウィンドウが視界に割り込んだ。
第5階層――氷河エリアを守護するコキュートスからの緊急アラートだ。
「コキュートスがこうもあっさりと!」
モニターに映し出されたのは、誇り高き蟲の武王が、光り輝くバフを全身に纏った重装甲の前衛集団に押し込まれる姿だった。
本来なら極寒の地形ダメージで削れるはずが、敵は継続回復の課金ポーションをガブ飲みし、強引に『回復量』で『ダメージ』を上書きしている。
「あいつら、コキュートスの武技を見るつもりもねえのか! ただ囲んで棒で叩くだけの作業じゃねえか!」
武人建御雷さんが、悔しげに拳をテーブルに叩きつけた。
ナザリックが誇る最強のNPCたちが、その強さを発揮する間もなくシステム的な『数値』の奔流に飲み込まれていく。
それは、我々が作り上げた『世界』が現実世界の『財力』という理不尽な暴力によって蹂躙される光景に他ならなかった。
「モモンガさん、マズい! 敵は第5階層完全制圧して敵先鋒は第6階層へ……アウラとマーレのエリアへ侵入しました!」
ペロロンチーノさんの悲鳴に近い報告が、会議室の重苦しい空気を切り裂いた。
モニターに映し出されたのは、広大なジャングルを埋め尽くすほどの「光」の洪水だった。
ナザリックのモンスターたちが、1500人のプレイヤーによる課金を厭わない飽和攻撃の前に、薙ぎ払われる雑草のように消滅していく。
「早すぎる。アウラとマーレに迎撃の準備時間すら与えないつもりか……ッ!」
俺は奥歯が砕けるほど噛み締め、拳をテーブルに叩きつけた。
通常であれば侵入者を迷わせ消耗させるはずの広大なフィールドが、今の彼らにとってはただの「通過点」でしかなかった。
課金アイテムによる移動速度上昇、テレポーテーション、そして地形無視。
彼らは攻略を楽しんでいるのではない。
ただ『障害物』を効率的に削除しているだけだ。
「ダメだ……止められねえ。数の暴力なんて生易しいもんじゃねえぞ、これは」
武人建御雷さんが力なくこぼす。
画面の中でアウラの使役する魔獣たちが、為す術もなく光の粒子へと還っていく。
その光景は我々が数年かけて築き上げた『ナザリック』という栄光が、理不尽な現実の論理によって踏み躙られ、ゴミのように廃棄されていく様をまざまざと見せつけていた。
(守りきれないのか……? 亜理紗を、またあの地獄へ返してしまうのか?)
手の中にある銀色の髪飾り――『Voiceless Garden』のギルド武器が、鉛のように重く、そして冷たく感じられた。
もし彼らが最奥に辿り着けば、亜理紗は再びあの屈辱的な広場へと引きずり出される。
「救出」という名の、最も残酷な略奪。
「モモンガさん決断を……このままでは、第6階層でアウラとマーレが『無駄死に』します」
声は冷静だったが、それは軍師としての感情を殺した結果に過ぎなかった。
彼の言葉の意味を理解した瞬間、俺の胸に鋭利な刃物を突き立てられたような痛みが走った。
「第6階層、および第7階層を……放棄する」
喉から絞り出した声は、自分でも驚くほど掠れていた。
「なっ!? モモンガさん!? アウラたちを見捨てるというのですか!?」
「デミウルゴスの階層までも!?」
「違う。勝てないんだ、今のままでは!!」
俺は叫んで仲間たちの驚愕を遮った。
認めたくはなかった。
だが、認めなければ全滅する――亜理紗を守れない。
我々は今、敗北の淵に立たされているのだ。
「戦力を分散させれば、各個撃破されて終わる。もはや、なりふり構っている余裕はない。全ての階層守護者と戦力を、第8階層『荒野』へ後退させろ」
それは、ナザリックの防衛機構の大半を自ら切り捨てる、敗走の命令だった。
丹精込めて作り上げたギルドの輝きを、自らの手で消灯していくような喪失感。
「第8階層で『ヴィクティム』を使う。あれが、我々の最後のカードだ」
「……そこまで追い詰められているのですね、我々は」
ウルベルトさんが自嘲気味に笑った。
その瞳には覇気はなく、あるのは深い諦念とわずかな呪詛だけだった。
「全軍、撤退だ……急げ。奴らはもう、我々の喉元に牙を突き立てている」
俺は震える手で、亜理紗の髪飾りに触れる。
画面の向こうでは、第6階層の空が侵入者たちの放つ魔法の光でどす黒く染まり始めていた。
その光景はナザリックの断末魔のように見えた。
(すまない、亜理紗。俺は、お前を守りきれるだろうか)
眼窩の炎が揺らぐ。
絶対者であるはずの俺の心は今、かつてない恐怖と無力感に塗りつぶされていた。
◇
第8階層『荒野』の空気が敗北の予感で凍りついていた。
目前に迫る1500の「大同盟」は、勝利を確信した獣のように、ナザリックの最後の砦を蹂躙せんと咆哮を上げていた。
俺は断腸の思いと共に最終兵器であるヴィクティムの発動コードに指をかけていた。
その時、世界そのものが震えるような轟音が響き渡った。
「なんだ、敵の増援か!? いや、これは!」
「外部からのアクセス数が、爆発的に増加しています! 計測不能、計測不能!!」
歓喜とも困惑ともつかぬ叫びと同時に、モニターの視界外から無数の転移魔法陣(ゲート)が展開された。
そこから溢れ出したのは、これまでナザリックを包囲していた敵軍を遥かに凌駕する、圧倒的な数のプレイヤーの大波であった。
彼らは一様に武器を掲げ、戦場を揺るがす怒号と共に、我々の敵の背後を完全に塞いでいた。
「遅れたな、ナザリックのご同輩。雑魚掃除に手間取ったぜ」
「貴様ら……『ブラッド・エッジ』か!?」
通信ウィンドウに現れたのは、先日掲示板で共闘を宣言していたPKクランのリーダーだった。
だが、そこにいるのは彼らだけではない。
職人服に身を包んだ生産職の連合、中立を保っていたはずの傭兵ギルド、さらには亜理紗の歌を愛していた数多のソロプレイヤーたちが、地平線を埋め尽くしていた。
「勘違いするなよ。俺たちはテメェらを助けに来たんじゃねえ。あの嬢ちゃんとの『契約』を守りに来ただけだ」
「おやおや、素直じゃありませんねえ……しかし、これは壮観だ」
ウルベルトさんがモニターを指差すと、そこには信じ難い数値が表示されていた。
エリア内プレイヤー数、12000人――。
ナザリックを包囲していたはずの1500人の「大同盟」が、今や大海に浮かぶ小舟のように、圧倒的な数の「亜理紗の守護者」たちに包囲されていたのだ。
「みんな行くぞ!」
「状況開始!!」
「我々は隠れクラン『歌姫親衛隊』! アリサちゃんを愚弄した罪、そのアカウントをもって償わせる!」
亜理紗のライブグッズに似通わせた装備に身を包んだ男たちが荒野に吠える。
「総員、抜刀! ターゲットは『大同盟』全構成員! 復唱せよ!!」
「おう! 『総員、抜刀!!』」
「一人も逃がすな、リスポーン地点まで追い込んで狩り尽くせ!」
戦場の空気が一変した。
数に胡座をかいていた侵略者たちが、今度は四方八方から降り注ぐ魔法と矢の雨に晒され、悲鳴を上げながら逃げ惑い始めた。
だが、本当の悪夢はここからだった。
「ひるむな! 所詮は数合わせ、烏合の衆だ! 課金アイテムで押し返せ!」
「そうだ! 我々には復活アイテムが……な、なんだあれは!?」
敵の前線指揮官が絶句した視線の先、増援部隊の中から必殺の殺意を纏った一団が歩み出る。
彼らの手には神殺しの槍――ワールドアイテム『ロンギヌス』が握られていた。
しかも、一本ではない。
部隊単位で複数の『ロンギヌス』が、殺意の切っ先を敵に向けていたのだ。
「アリサちゃんの配信を見てこの世界に来た俺たちにとって、このアカウントなんざただの入場券だ! 彼女の名誉を守るためなら惜しくもねえ!」
「アリサちゃんのいないユグドラシルに、未練なんてあるわけないだろう!!」
それは亜理紗の配信をきっかけにユグドラシルを始めた、純粋な亜理紗のファンたちだった。
彼らにとって積み上げたレベルもレア装備も、亜理紗の尊厳そのものに比べれば塵芥に等しい。
迷いなく発動された『ロンギヌス』の閃光が、自らのアカウント消滅と引き換えに、敵の主力プレイヤーたちの存在を根こそぎデータごと消滅させた。
「嘘だろ、あいつのアカウントが……消えた!? 復活できないだと!? やめろ、俺はこのキャラに数百万かけてるんだぞ!!」
「知るかよ! テメェらが汚したのは、いくら金を積んでも買えない俺たちの魂だ!!」
「いやだぁっ!!」
絶対的な死の宣告。
完全なるデータの消失というゲーマーにとって最も根源的な恐怖が侵略者たちの戦意をポキリとへし折った。
『正義の聖戦』などと嘯いていた連中が、我先に逃げ出そうと背を向け、無様に押し合いへし合いを始めている。
「……見ているか、龍也。亜理紗を慕っていた人達がこんなに!」
「ああ、最高だね、悟さん。こんな熱い展開、エロゲでもなかなかお目にかかれないよ!」
俺達は互いをHNで呼ぶことすら忘れるほど、心が滾っている。
そして俺は震える手でコンソールを操作し、全階層守護者への指揮権を掌握し直した。
敵は混乱し、恐怖し、完全に足並みが乱れている。
今こそ我々アインズ・ウール・ゴウンが、その名の通りの「魔王」として君臨すべき時だ。
「全階層守護者・メンバーに告ぐ! 時は来た! 反撃の狼煙を上げろ!」
「ええっ!! 総員突撃するわよ!!」
俺の号令一下、これまで防戦一方だったナザリックの全戦力が堰を切ったように敵陣へと雪崩れ込んだ。
それはもはや戦争ではなく、一方的な処刑であった。
「逃がすな、慈悲など必要ない!」
「ナザリックに、亜理紗ちゃんが眠る大墳墓に土足で踏み込んだ代償を思い知れ!!」
「その罪贖えると思うなよ、その身に刻んで地獄へ落ちろ!」
先ほどまでの絶望が嘘のように、ナザリックの勢いは敵を飲み込み、すり潰していった。
「よく聞けよ、愚か者ども。貴様らが敵に回したのは、ただのギルドではない」
勝利の天秤は、劇的に、そして暴力的に傾いた。
俺は眼窩の炎をかつてないほど激しく燃え上がらせた。
「我々はアインズ・ウール・ゴウン。この大墳墓で一人の歌姫の魂を守護する絶対者だ!」
勝負は決した。
すいません
ユグドラシルのシステム設定的には多分おかしいことを、話の流れ優先で書いています
その点、ご承知おきください
読者皆様のアリサの相手候補の意向確認
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モモンガ
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ペロロンチーノ
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ジルクニフ
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ガゼフ
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ラナー
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クレマンティーヌ
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イビルアイ
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ラキュース