オーバーロードにTS転生者を叩き込んでみた 作:連載として再構築
あの狂乱の防衛戦から、数度季節が巡り、時は流れた。
かつて1500人の侵略者を退けたナザリック地下大墳墓は今、ユグドラシルの最後の日を迎え、静寂ではなく厳かな喧騒に包まれていた。
運営からの無機質なメール――個人情報保護と権利関係を盾にしたデータ譲渡の拒絶――を、俺は不思議と冷静に受け入れていた。
それは、亜理紗という存在をデータとして手元に残すことよりも、彼女が愛したこの世界と共に幕を下ろすことこそが、最も美しい手向けになると感じたからかもしれない。
「……すごい数だな。まるで参拝客だ」
「みんな、最後に挨拶がしたいのよ。あの子がどれだけ愛されていたかって証拠ね」
玉座の間へと続く長い回廊には、かつて轡を並べた『ブラッド・エッジ』のメンバーや、亜理紗を慕う『歌姫親衛隊』の残った有志たちが、武装を解除して列を成していた。
彼らは祭壇に見立てた広間に花束代わりのデータアイテムを供え、それぞれの想いをチャットログに残しては、静かにログアウトしていく。
その光景はゲームの終了というよりは、壮大な葬送の儀式そのものだった。
時計の針が進み日付が変わる前には、ナザリックに集ったプレイヤーたちも一人、また一人と姿を消していった。
アインズ・ウール・ゴウンのメンバーたちもまた、翌日の社会人としての責務、あるいは家庭の事情により、名残惜しそうにログアウトの準備を始めていた。
だが、寂寥感はそこにはなかった。
「モモンガさん、ログアウトしたら連絡入れますからね」
「無理して夜更かししちゃダメですよ……また現実で会いましょう」
彼らの言葉は、ここが「永遠の別れ」の場ではないことを強調していた。
ユグドラシルという世界は終わるが、俺たちの絆は現実へと続いていく。
その確かな温もりに背中を押され、俺は「ああ、また明日」と力強く頷いて仲間たちを見送った。
最後にギルドに残ったのは、やはりこの二人だった。
黄金のアーマーを纏ったペロロンチーノ――龍也と、ピンク色のスライムの姿をしたぶくぶく茶釜――茶奈だ。
「……モモンガさん、最後は亜理紗ちゃんの傍にいたいんだ」
「ああ、分かっている。行こうか、俺たちの『妹』が待っている」
俺の言葉に二人は無言で頷き、俺たちは第10階層の最奥へと転移した。
そこには、4年前のあの日から何一つ変わらぬ微笑みを浮かべたまま、永遠の眠りについた亜理紗のアバターが安置されていた。
亜理紗が亡くなってから、現実世界では既に4年という歳月が流れている。
四つ下の亜理紗と同い年として生まれ、中学から過ごしてきた龍也。
そしてそんな二人を、姉として、時には厳しく時には優しく見守ってきた茶奈。
一番年上の俺を含めた四人の賑やかな日々が、走馬灯のように脳裏を駆け巡った。
「亜理紗ちゃん……久しぶり、でもないか。毎日顔見てたもんな」
龍也が、自分と同じ歳月を重ねるはずだった亜理紗の頬に触れられないもどかしさを噛み殺すように、虚空へ手を伸ばして語りかける。
「4年も待たせちゃってごめんな。でもさ、亜理紗ちゃんの居場所は最後まで守り抜いたぜ……俺たち」
その声は震え、魂の奥底から愛した「理想の歌姫」を喪失した深い欠落感が滲んでいた。
俺はそっと視線を逸らし、コンソールを操作して、長年分からないようにコテハンで書き込んでいた『亜理紗を見守るスレ』の最後のページを開いた。
書き込む言葉は無限にあるようで、しかし何一つ相応しくない気がして、迷った末に指を動かす。
『さとるんこと、モモンガ』の名で、たった一言を、「ありがとう」とだけ書き込んで送信する。
それが彼女を見守り続けてくれた全てのプレイヤーへの、兄としての精一杯の感謝だった。
「ねえ、モモンガさん……ううん、悟さん」
ふいに、茶奈が俺のアバターの袖を引いた。
彼女の声色は、いつものふざけた姉御肌の調子ではなく、どこか心細げでそれでいて一大決心を秘めた響きを持っていた。
「ログアウトして、全部終わったら……電話してもいいかな。話したいことがあるの」
「……ああ、構わないよ。茶奈さん」
その言葉の裏にある感情を察せられないほど、俺は鈍感ではない。
学生の頃から彼女が俺に向けてくれていた好意に、俺はずっと気づいていた。
だが、亜理紗を失ったという後悔を引きずり続け心のどこかで時を止めていた俺に、彼女の想いに応える資格があるのだろうか。
答えはまだ出ない。
それでも彼女の真剣な眼差しから逃げることだけはしてはいけないと、俺は迷いを抱えたまま、努めて穏やかに頷いた。
視界の端で、システムからの強制ログアウトを告げるカウントダウンが始まっていた。
23時59分40秒。
俺たちは三人で亜理紗のアバターを囲み、互いの存在を確かめ合うように寄り添った。
「行くぞ、二人とも! 最後だ、湿っぽいのはナシだ!」
「ああ! 亜理紗ちゃんに届くように、派手に行くぜ!」
「ええ! 最高のフィナーレにするわよ!」
俺たちはギルドスタッフを、弓を、そして身体を掲げ、視界を埋め尽くす終わりと始まりの光に向けて、腹の底から叫んだ。
「「「永遠の歌姫の魂に祝福あれ!!」」」
0:00:00 世界が、優しい闇に包まれた。
◇
【ユグドラシル】歌姫アリサちゃんを見守るスレ Part 1054【サービス終了】
1 名無しのプレイヤー : 2138/03/26(水) 21:00:00 ID:Yggdrasil
ここはアリサちゃんについて語るスレです
荒らし、対立煽りはスルー推奨
本日はサービス終了日、最後までマナーを守って進行しましょう
128 名無しのプレイヤー : 2138/03/26(水) 21:45:12 ID:MobChar
ナザリック前、すごいことになってるぞ
なんだよこの参拝客の列www
1500人どころじゃねえ、万単位で並んでるだろこれ
135 名無しのプレイヤー : 2138/03/26(水) 21:48:05 ID:KnighTs
最後の別れだ、揉め事は起こすなよ
342 血まみれのプレイヤー : 2138/03/26(水) 22:30:22 ID:B1oodEd
>>135
けっ、仕切りやがって
俺たち『ブラッド・エッジ』も、今日ばかりは暴れる気はねえよ
最後に花くらい手向けさせてくれや
343 名無しのプレイヤー : 2138/03/26(水) 22:30:45 ID:Gamer001
>>342
あのPK集団が花束持って並んでるシュールな光景w
でも、なんか熱いな
650 名無しのプレイヤー : 2138/03/26(水) 23:15:00 ID:Tk3m1k1
運営からのメール見たか?
結局データの譲渡はなしかよ。個人情報保護とか権利関係とかうるせーな
655 名無しのプレイヤー : 2138/03/26(水) 23:16:22 ID:Guest
>>650
まあ、あの運営のことだからな
「この世界で終わらせるのが一番美しい」とか考えてそうじゃね?
分からんでもない
820 名無しのプレイヤー : 2138/03/26(水) 23:45:10 ID:YggEnd
おい、AOGのメンバーが続々とログアウトし始めたぞ
みんなアリサちゃんに挨拶して消えていく……なんか泣けてきた
823 名無しのプレイヤー : 2138/03/26(水) 23:46:05 ID:SalaryMan
みんなリアル忙しいだろうにな
明日は平日だし、社会人はつれーわ
でも「また現実で」って挨拶してるのが聞こえた
絆は切れてないんだな
905 名無しのプレイヤー : 2138/03/26(水) 23:55:05 ID:Watcher
最後に残ったのは…… モモンガ様、ペロロンチーノ、ぶくぶく茶釜
この3人か
912 名無しのプレイヤー : 2138/03/26(水) 23:55:40 ID:BirdFan
ペロさん……あんた漢だよ
最後までアリサちゃんの傍にいるつもりなんだな
915 名無しのプレイヤー : 2138/03/26(水) 23:56:00 ID:Fan002
あの鳥、ネタキャラに見えて一番アリサちゃんのこと考えてたからな
4年間、ずっと最前線で守ってたの俺ら知ってるぞ。
お前がナンバーワンだ、評価するわ
918 名無しのプレイヤー : 2138/03/26(水) 23:56:15 ID:PinkSlime
ぶくぶく茶釜も残ってるな
あの3人とアリサちゃん、中の人たちも幼馴染なんだっけ?
なんかもう、言葉が出ねえよ
945 名無しのプレイヤー : 2138/03/26(水) 23:57:30 ID:System
【システム通知】 サービス終了まで残り2分30秒です
950 名無しのプレイヤー : 2138/03/26(水) 23:58:00 ID:Satoru_Fan
おい、みんな
あのコテハンが動いたぞ
951 さとるんこと、モモンガ ◆MOMONGA : 2138/03/26(水) 23:58:10 ID:Momonga
ありがとう
952 名無しのプレイヤー : 2138/03/26(水) 23:58:12 ID:F5s8v2k
!?
953 名無しのプレイヤー : 2138/03/26(水) 23:58:13 ID:KnighTs
うわあああああああああああああああああ!!!!
954 名無しのプレイヤー : 2138/03/26(水) 23:58:15 ID:RealBro
やっぱり「さとるん」=モモンガ=悟お兄ちゃんだったかw
みんな薄々気づいてたけど、最後にバラすとか!!
960 名無しのプレイヤー : 2138/03/26(水) 23:58:20 ID:CryBaby
お兄さん、今まで黙っててごめんな
俺らが勝手にスレ立てて騒いでるの、ずっと見ててくれたんだな
「ありがとう」はこっちのセリフだよ
965 名無しのプレイヤー : 2138/03/26(水) 23:58:30 ID:B1oodEd
お兄ちゃん、俺は以前お兄ちゃんに焼かれたけど悔いはねえよ
精一杯の感謝、受け取ったぜ
985 名無しのプレイヤー : 2138/03/26(水) 23:59:00 ID:LastStand
3人がアリサちゃんを囲んでるのが見える
なんか叫んでるぞ 「湿っぽいのはナシ」って聞こえた気がする
988 名無しのプレイヤー : 2138/03/26(水) 23:59:15 ID:Finale
俺たちも最後まで派手に行こうぜ! 俺たちの歌姫に祝福あれ!!
990 名無しのプレイヤー : 2138/03/26(水) 23:59:30 ID:Countdown
あと30秒! すべてのプレイヤーに栄光あれ!
995 名無しのプレイヤー : 2138/03/26(水) 23:59:45 ID:AlisaLove
永遠の歌姫の魂に祝福あれ!!
996 名無しのプレイヤー : 2138/03/26(水) 23:59:50 ID:OniiChan
永遠の歌姫の魂に祝福あれ!!
997 名無しのプレイヤー : 2138/03/26(水) 23:59:55 ID:AinzOoalGown
永遠の歌姫の魂に祝福あれ!!
998 名無しのプレイヤー : 2138/03/26(水) 23:59:58 ID:ThankYou
ノシ
999 名無しのプレイヤー : 2138/03/26(水) 23:59:59 ID:Goodbye
ノシ
1000 名無しのプレイヤー : 2138/03/27(木) 00:00:00 ID:End
1000ならアリサちゃんにまた会える
1001 :1001
願いは受理されました
現実世界パート、および掲示板パートの終了となります
閑話とかで以前の場面は追加で書くかもしれませんが、基本的には完了ということで
あと、いろいろ考えましたが、異世界入りはモモンガ以外は二人となりました
――人数多くても自分の力量的に持て余すしw
読者皆様のアリサの相手候補の意向確認
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モモンガ
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ペロロンチーノ
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ジルクニフ
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ガゼフ
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ラナー
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クレマンティーヌ
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イビルアイ
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ラキュース