オーバーロードにTS転生者を叩き込んでみた 作:連載として再構築
あれから数年の時が流れ、わたしは十歳という節目を迎えていた。
『姫騎士』としての――私個人としては非常に不本意なのだけれども――呼び名が国内外に定着し、中二病をこじらせつつある友人のラキュースとの交流も深まる一方で、わたしには実は一つ解決していない大きな懸案事項が存在していた。
それは、生まれ落ちた直後の鑑定の儀にて、父様が腰を抜かすほど驚愕したというわたしの『タレント』についてである。
通常一人の人間に宿る異能は一つなのだが、どうやらわたしの内側には複数の力が渦巻いているらしい。
それらが互いに干渉し合い、ノイズとなって本当の能力を隠してしまっているため、王国の宮廷魔術師たちが持つ鑑定魔法では『測定不能』というエラーを吐き出し続けていたのだ。
『複数のタレントを持つなど前代未聞だ』と父様は喜び半分、困惑半分といった様子で頭を抱えていた。
わたし自身も自分が何者なのか分からないというのは少々居心地が悪い。
解析不能な未知の力を抱えたままでは、王族として、また将来この国を守る戦力として運用するにも不安が残る。
魔法技術の後進国である王国ではこれ以上の解明は不可能という結論に達し、外交交渉の末にある決定が下された。
それは魔法技術において近隣諸国で最も優れているスレイン法国へ赴き高位の神官たちによる精密検査を受けることだった。
わたしの知る現在の感覚で言ってしまえば検査入院のようなものだ。
それでも、私の家族たちの反応は過剰だった。
「アリサ……我が愛しき娘よ。本当に、本当に行かねばならぬのか?」
「はい、お父様。自分の力を知ることは、王国の未来を守ることにも繋がりますから」
「ううっ、まだ幼いお前を他国へやるなど……もしものことがあったら、私は法国に宣戦布告してしまうかもしれん……!」
一国の王としては本当に冗談にならないからやめてください、父様。
旅立ちの朝、王城の馬車止めにて父様はわたしの小さな手を両手で包み込みながら、今にも泣き出しそうな顔で嘆いている。
周囲の兵士たちが苦笑する中、わたしは父様をなだめつつ少し離れた場所にいる兄弟たちに視線を送った。
二人とも、それぞれのやり方で別れを惜しんでくれているようだ。
いや、そんなに長期間国を離れるつもりはないのだけれども。
「法国の連中に王家の威光を見せつけてやる絶好の機会だ。アリサ、俺たちの妹として恥ずかしくない振る舞いをしてこいよ」
「兄上はそう言いますがね……アリサ、あの国は少し狂信的なところがある。何かあっても決して無理はするな、無事に帰ってくることが最優先だぞ」
「バルブロ兄様、ザナック兄様……ええ、肝に銘じます。お二人もどうか息災で」
バルブロ兄様の不器用な激励と、ザナック兄様の現実的な気遣いに、わたしは深く頷いてみせる。
しかし、一番の問題は、父様の背後に隠れるようにして俯いている金髪の妹だった。
ラナーはいつもの完璧な微笑みを浮かべているけれど、その瞳の奥には底知れぬ闇と執着が渦巻いているのを、長年姉をやっているわたしは見逃さない。
わたしは父様の手を優しく解くと、ラナーの元へと歩み寄った。
「ラナー、行ってくるわね。お土産は何がいい?」
「……お姉様、やはり私も同行してはいけませんか? 私がいれば、法国の古狸たちとの交渉も有利に進められるはずです」
「ありがとう。でも今回は検査がメインだし、王族が二人も国を空けるわけにはいかないわよ」 「分かりました……お姉様がそう仰るなら、私はここでお姉様の帰りを待ちます。ですが、約束してくださいませ」
「なぁに?」
ラナーの重く熱い抱擁を受け止めながら、わたしは彼女の背中をポンポンと優しく叩く。
今回の旅はわたし一人に加え、数名の専属侍女と近衛兵のみという最小限の構成だ。
「必ず無事に帰ってくると。もしも、お姉様のその美しい御姿に傷一つでもついたら……私は法国を必ず地図から消し……いえ、厳重に抗議いたしますから」
「あはは……頼もしいわね。大丈夫よ、ラナー。護衛のみんなもついてくれているし、そもそも今回はただの調査だもの、無茶はしないわ」
「はい……お姉様の『タレント』がどんなものであれ、お姉様は私にとって唯一無二の光です。それだけは忘れないでくださいね」
「ありがとうラナー」
表向きは友好的な検査入院のようなものだが、人間至上主義を掲げる法国のことだ。
何が起きてもおかしくないという緊張感はやはり拭えない。
「では、行ってまいります!」
「うむ! 気をつけるのだぞ、アリサ!」
「お姉様、いってらっしゃいませ!」
家族たちの声援を背に受けて、わたしは豪奢な装飾が施された王家の馬車へと乗り込んだ。
御者の掛け声と共に車輪が動き出し、住み慣れた王城が少しずつ遠ざかっていく。
窓の外を流れる景色を眺めながら、わたしは自身の内側に眠る『何か』に意識を向け、冷ややかな疑念を抱いた。
(複数のタレント、か……前世知識で考えれば『転生特典』や『チート能力』と喜ぶところかもしれないけれど)
わたしは決してこのタレントを楽観視してはいなかった。
こんな世界にわたしを放り込んだ存在が、ただ親切心で便利な力を授けるとは思えない。
この力は、わたしを破滅させるための『呪い』か、あるいは周囲を巻き込む『時限爆弾』のようなものではないだろうか。
スレイン法国でその正体が暴かれた時、わたしは果たして『人間』のままでいられるのだろうか。
ガタゴトと揺れる馬車の中で、わたしは祈るように胸の前で手を組んだ。
◇
王都を出立してから数日。
旅の工程は順調そのものに見えたが、深い森に差し掛かった時世界は唐突に牙を剥いた。
何の前触れもなく放たれた鋭利な矢が御者の喉を正確に射抜き、制御を失った馬車が悲鳴のような音を立てて横転する。
護衛の兵士たちが即座に剣を抜いて周囲を警戒するが、木々の影から現れたのは人間とは異なる長く尖った耳を持つ一団――エルフの武装集団だった。
「なっ、エルフだと!? なぜこのような場所に!」
「怯むな! 殿下をお守りしろ!」
「……チッ、人間風情が。邪魔をするな」
襲撃者たちは明らかに通常の野盗とは一線を画す統率された動きで、わたしの護衛たちを次々と無力化していく。
横転した馬車の隙間から這い出したわたしが見たのは、血に濡れた剣を振るうエルフたちの、獲物を見定めるような粘着質な視線だった。
彼らの視線は金銀財宝や物資には目もくれず、ただ一点、幼いわたしの身体だけに注がれている。
「確保しろ。王の命令だ、傷つけるなよ」
「分かっている。『複数のタレント』を持つ希少種だ、陛下もさぞお喜びになるだろう」
「ああ、素晴らしい『母体』になれる素質がある。極上の種を植え付ければ、最強の子供が産めるはずだ」
その言葉を聞いた瞬間、背筋に氷柱を突き刺されたような悪寒が走りわたしはガチガチと歯を鳴らして後ずさった。
彼らの目的が単なる誘拐や身代金ではなく、あの悪名高きエルフの王による『品種改良』の一環だと気づいてしまったからだ。
わたしという個人の尊厳を無視し、ただ優秀な子供を産むための『メス』として家畜のように連れ去ろうとするそのおぞましい欲望に吐き気が込み上げてくる。
「く、来るな……! わたしに触らないで!!」
「無駄な抵抗はやめろ人間。お前は選ばれたのだ、我らが偉大なる王の寵愛を受ける誉れにな」
「いやぁぁぁっ!!」
ペロロンチーノ――もとい、龍也が喜びで悶絶しそうな叫び声をあげるわたし、でも余裕はない。
最後の一人が倒され護衛の壁が失われた今、わたしを守るものはもう何もないのだ。
エルフの手が、わたしの細い腕を掴もうと伸びてくる。
絶望に目を瞑りかけたその時、風を切り裂くような甲高い音が森に響き渡り、目の前のエルフの腕が不自然な方向にひしゃげた。
「あはっ☆ 随分と楽しそうなお遊びをしてるじゃない?」
「な、何だ貴様は!?」
「何って? 通りすがりのただの可愛い女の子だよぉ?」
軽薄でけれど狂気じみた愉悦を含んだ少女の声と共に、目にも留まらぬ速さで駆け抜けた影が瞬く間にエルフたちの命を刈り取っていく。
鮮血の花が咲き乱れる中、その影は踊るように戦場を舞い圧倒的な暴力で襲撃者たちを肉塊へと変えていった。
やがて静寂が戻った森に、奇抜な装備を身に纏った小柄な女性が返り血を浴びたままケラケラと笑って佇んでいた。
「ふぅん、これがターゲット? 随分とちっこいお姫様だこと」
「貴女は……?」
「自己紹介はパスパス。助けてあげたんだから、感謝してよねぇ?」
彼女の背後には、同じく圧倒的な気配を纏った武装集団――スレイン法国が誇る最強の特殊部隊『漆黒聖典』の面々が姿を現す。
どうやら外交ルートを通じて要請されていた護衛任務に、彼らが極秘裏に派遣されていたらしい。
そして目の前で猫のように目を細めているこの危険な女性こそ、後に国を裏切り、悟兄さんに殺される運命にあるクレマンティーヌその人だった。
「助けて頂きありがとうございます。貴女のおかげで尊厳を踏みにじられずに済みました」
「別にぃ? 仕事だからやっただけだしぃ。そんな勘違いしないでくれる?」
「いいえ、感謝します。貴女のその強さと、迷いのない刃に」
わたしは震える足を叱咤して立ち上がり、ドレスの埃を払うと彼女の瞳を真っ直ぐに見つめた。
クレマンティーヌは意外そうに眉をひそめるが、『変わったガキ』と呟いて興味を失いかける。
だが、わたしはこの千載一遇のチャンスを逃すわけにはいかない――彼女の未来を知る者として、打てる布石は打っておくべきだ。
「……お姉さま。もし、貴女がその場所に居心地の悪さを感じるようになったら」
「あぁん?」
「行き場を失い、誰にも頼れなくなった時はわたしの元へ来てください。その強さへの、そして今回助けていただいた礼として、必ず力になりますから」
「……何言ってんの? あたしが困ることなんてあるわけないでしょ」
「ええ、今はそうかもしれません。でもこれは『予言』のようなものです、どうか頭の片隅にでも置いておいてください」
「変な子ぉ。ま、いいや。気が向いたら思い出してあげる」
クレマンティーヌは嘲るように鼻を鳴らしたが、その瞳の奥には僅かながら困惑と、奇妙な興味の色が宿っていた。
わたしは、狂人を装いながらも孤独な彼女へと投げかけた言葉が小さな楔として打ち込まれたことを確信した。
けれども、国を代表するものとして今優先して行わなければいけないことはある。
わたしはそう考え、救援に来た漆黒聖典の隊長へと向き直った。
「ありがとうございます……おそらく、漆黒聖典の方々」
救援がなかった場合、この世界は超絶バッドエンドが確定します
もちろんR-18に触れるし胸糞なので書きませんがw
あと、最近ちょっと睡眠時間など削りすぎですので、さすがに書くペースを落とします
すいませんがご承知おきを
読者皆様のアリサの相手候補の意向確認
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モモンガ
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ペロロンチーノ
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ジルクニフ
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ガゼフ
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ラナー
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クレマンティーヌ
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イビルアイ
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ラキュース