オーバーロードにTS転生者を叩き込んでみた   作:連載として再構築

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序章 2 幼き誓い

9歳になったある朝、少し早く起きたわたしは鏡に映った自分の姿をぼんやりと見ていた。

 

鏡に映る銀髪の美少女、その胸周りに視線をやる。

明らかに胸回り、具体的には乳房が大きくなりつつあった。

わたしは女性としての成長期を迎えたのだろう。

 

「はぁ……」

 

自分の胸に手をやると、そこに男性とは異なる胸のふくらみを感じ取ることができる。

いわゆるところのおっぱいだ。

 

多分二度目の生を受け9年、既にわたしは女性なんだと割り切っていたつもりだったのだが、女性としての成長が始まった自分の身体をこうやって改めて認識すると気が滅入ってくる。

このまま成長して、いずれは男性とそういう事を致すことになるのだろうか。

 

「うう、それはまだ嫌だ……」

 

いつかは許容しなければいけないことなのかもしれない。

このディストピア社会において、自身のみならず家族の生を求めるのであれば、この水準をはるかに超えた、むしろ頂点と言ってもいいほどの容貌は明確な武器になる。

けれども、いくら可憐な花とて手を触れることのできないものだとしたら、飾ることしか許されないものとなったらその価値は大きく下がってしまう。

自身を高く売りつけようとするのなら、その覚悟はしなければいけないのだろう。

 

「いや、でもやっぱりその覚悟はまだ出来る気がしないよ……」

「アリサ? 何の覚悟ができないっていうんだ?」

「ぎゃああっ! さ、悟兄さん?!」

 

まずい、鏡の前で長く考え事をし過ぎていた。

中学の制服に身を包んだ兄さんが、訝しげな表情をして自分の後ろに立っていた。

 

そう、自分の兄である鈴木悟は中学にその身を進めていた。

本来『オーバーロード』で彼が進んだ来歴では、小学生で親と死別し小卒で就職した。

けれども、悟兄さんは中学に進学することが出来たし、わたしたちの両親だって疲労をその身に溜めてはいるもののもちろん健在だ、そもそも母子家庭ですらない。

 

「『ぎゃあ』はずいぶんかわいらしくない悲鳴じゃないか、そんな姿を父さんが見たら泣くぞ」

「言わないで……わたしもそう思ってるんだから」

 

前世や今世について考えていたせいか、口調が少し前世の男性だった頃の自分に引っ張られていたようだ。

自分ではない、わたしは……もう、わたしだ。

深呼吸を一つ、そう、自分に軽く言い聞かせる。

 

「よしっ、マインドセット完了。どうしたの、悟兄さん?」

「どうしたもこうしたも、もうすぐ朝食の準備をしないといけないだろ」

 

エプロンを身に着けながら兄さんは当たり前のような顔をしている。

時計を見ると、なるほど、もうすぐ朝食をとらないといけない時間だった。

 

「わかった、悟兄さんは疑似パンを焼いて、代替コーヒーを入れてもらってもいい? わたしはグルテンベーコンと一緒に目玉焼きを焼くから」

「了解」

「悟、亜理紗、おはよ~」

「今日も二人は仲良しだな」

 

そんな感じで兄さんと二人で朝食の準備をしていると、台所の生活音で目を覚ました両親がくまの残った目元をほぐしながらリビングに現れた。

 

その様子を見て、私は少し息をつく。

 

二人とも大丈夫。

過労で倒れてしまうほどの状況には追い込まれていない。

まだ、この朝の風景を守ることができる。

 

――物語の流れを守るため、両親を見殺しにするべきなのかもしれないんじゃない?

 

自分の中には、そう囁きかけるもう一人の自分がいる。

でも、わたしはそんな自分に対してゆっくりと首を振る。

 

――例えそうだとしても、わたしは親不孝なんてもうしたくない。

――その望みが本来ある物語を壊すとしても。

 

そう、わたしが前の生でしてあげられなかった分、今こうやって私たちのために働いてくれている両親に親孝行したい。

 

生きていてほしい。

 

大丈夫、両親が生きていたからって、兄さんの未来が激変するわけではない。

究極的に言えば、兄さんにユグドラシルをプレイしてもらって、アインズ・ウール・ゴウンを設立してもらって、ユグドラシルのサービス終了時にログインさせることができていれば大丈夫な筈なのだから。

 

この現実世界においてわたしたちの影響力なんてないに等しい。

下層の、居ても居なくてもどうでもいいクラスの人間でしかないわたしたち。

わたしたちがこの現実世界に対してできることなんてない。

 

ならば、

ならば、せめて今だけでも、この鈴木家に穏やかなひと時を、と思わずにはいられなかった。

 

 

鈴木悟には自慢の妹がいる。

 

鈴木亜理紗、今年9歳になったばかりだ。

容姿は非常に優れ、肌は透き通るほどに白く、声は鈴を転がしたように愛らしい、100人に聞けば100人とも文句なしの美少女と言うだろう。

だというのに驕るところもなく、幼いころから自分以上に家事を行い、身を粉にして働く両親を助けている。

養子縁組の声に至っては何件頂いたかはもうわからない程だ。

中には上層民からの声さえもあったが、それらを亜理紗は断り今もこの家にいる。

なんでと子供心に妹に聞いたことはある、養子とは言え上層民の子供になれば贅沢できるのに、と。

 

「んーとね、贅沢をしたいわけじゃないんだ。わたしは、わたしの好きな人たちと笑っていたいからかな。あと、この家が好きだからかな、父さんも、母さんも」

 

亜理紗はそう微笑んで答えた。

 

「もちろん、悟兄さんもだよ」

「――っ!!」

 

そう答えた妹の笑顔に、鼓動が一瞬とはいえ早くなってしまったのは無実だと悟は叫びたい。

あれは妹の笑顔が悪いのだ。

 

パンとコーヒー――全てまがい物ではあるが、朝食の準備をしながら、妹の様子を見やる。

 

「♪~」

 

何らかの音楽を口ずさみながら、料理用にと、その銀色の長髪をポニーテールにまとめた亜理紗は、片面の目玉焼きを焼いていた。

その無防備なうなじが艶めかしい。

 

「亜理紗」

「んー、どうしたの兄さん? コーヒーとパンの準備できたの?」

 

自分を信頼しているのか振り向くことさえせずに、自分の呼びかけに亜理紗は答える。

 

そう、亜理紗は理解していない、自分がどれほどの魅力を持っているかを。

大人たちが、男たちがその気になってしまったら、いかに容易く手折れる花であるかを。

 

「アリサ」

 

だからこそ世界で最も一番大切な少女を、この無防備な妹を、幸せにするのだと悟は思う。

幸せな一生を送れる相手と巡り合えるまで、自分が守るのだと。

 

「きゃあっ! 兄さん?!」

 

後ろからそっと抱きしめると腕の中の妹が驚いている、その様子さえ愛らしい。

 

――でも、大事だからこそ、妹にちょっかいをかけてしまうのはご容赦いただきたい。

読者皆様のアリサの相手候補の意向確認

  • モモンガ
  • ペロロンチーノ
  • ジルクニフ
  • ガゼフ
  • ラナー
  • クレマンティーヌ
  • イビルアイ
  • ラキュース
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