オーバーロードにTS転生者を叩き込んでみた 作:連載として再構築
聖王国での『サリア』による一連の騒動――『ミューズの涙』事件は、わたしの本体がまどろむ王城の寝室にも、精神リンクを通じて鮮明に届いていた。
遠く離れた地でもう一人のわたしが過去と決着をつけ、新たな旅立ちを迎えたことへの安堵。
しかし胸の奥底に沈殿する重たい事実は、王都の空を覆う雲のように晴れることはなかった。
「……お疲れ様です、お姉様。サリアからのリンクはいかがでしたか?」
豪奢な天蓋付きベッドの傍らで、ラナーが心配そうに、けれどその瞳の奥に鋭い理知の光を宿して覗き込んでくる。
わたしはゆっくりと目を開け、意識を『冒険者サリア』から『王女アリサ』へと切り替えた。
「ええ。あちらは無事に解決したわ……でも、私の『欠片』が原因だったなんてね」
上体を起こすと、ラナーが流れるような動作で背中にクッションを差し込み、適温に冷ましたハーブティーを手渡してくる。
その献身ぶりは完璧な侍女のようであり、同時に崇拝する神像に仕える巫女のようでもあった。
「聖王国での一件は氷山の一角かもしれませんわね……ですが、お姉様。ご安心ください」
ラナーが手元の書類を整理しながら、穏やかな声で告げる。
「私の『目』の情報を洗い直してみましたが、今のところ他にお姉様の『欠片』が顕現して活動しているような痕跡は見当たりません」
「本当?」
「ええ。異常気象や突発的な魔力災害、あるいは急速に力をつけた個体の噂……どれも自然発生的なもので、お姉様の力とは無関係のようです。恐らく、他の欠片たちはまだ眠っているか、あるいは形を成すほど活性化していないのでしょう」
「そう……よかった」
わたしは安堵の息を吐き出した。
ミューズのように受肉し、自律行動を取るケースは稀なのかもしれない。
だが、油断はできない。
いつ何時、何かの拍子に目覚めるか分からないのだから。
「とはいえ、警戒は怠れませんね。引き続き、監視網は維持しておきます」
「ええ、頼むわ……さて、ザナック兄様の手伝いもしないとね。あの人の胃に穴が開く前に」
「ふふっ、お可哀想なザナックお兄様。八本指の処理に加えて、肝心な『武力』の不足に頭を抱えていらっしゃいますものね」
◇
執務室の重い扉を開けると、そこには書類の山に埋もれ、死んだ魚のような目をしたザナック兄様の姿があった。
部屋の中にはコーヒーの苦い香りと、胃薬の独特な匂いが充満している。
「……なんだ、アリサか。それにラナーも。悪いが今は遊んでやる余裕はないぞ」
ザナック兄様はペンを走らせたまま、顔も上げずにそう言った。
その声は枯れており、目の下の隈は以前よりも濃くなっている気がする。
先日設立された『王国保安特別局』の局長として、彼は文字通り不眠不休で働いているのだろう。
「お疲れ様、ザナック兄様。差し入れを持ってきましたわ」
「毒が入ってないなら何でも食うぞ……と言いたいところだが、今は食欲もない」
わたしがバスケットを机に置くと、兄様はようやくペンを止め、深く背もたれに体を預けた。
天井を仰ぐその顔には、隠しきれない疲労と、それ以上の焦燥が張り付いている。
「……状況は芳しくないようね」
「ああ。六腕が壊滅して、奴らの武力が削がれたのはいい。だが、こちらの『手駒』も足りなさすぎる」
ザナック兄様が吐き捨てるように言い、机の上の報告書を指で弾いた。
「貴族との結びつきは法的に着実に弱められているが、最終的に八本指の残党を狩るには衛兵隊レベルじゃ心もとない。今の王国にはブレインのような突出した個の武力が欲しい……父上が信頼を置ける、圧倒的な『剣』がな」
今の王国における最大の問題点。
それは原作でいうところの戦士長ガゼフ・ストロノーフが、まだその地位に就いていないことだ。
彼はまだ一介の傭兵として各地を放浪しているはずだ。
「……ねえ、兄様。いないなら、見つければいいんじゃない?」
わたしは明るい声で提案し、ラナーと事前に打ち合わせていた『計画書』を机の上に広げた。
今の閉塞した状況を打破し、同時に兄様が求める『最強の戦士』を発掘するための策。
「見つける? どうやってだ」
「公式に募集するのよ。身分も経歴も不問、ただ純粋に『誰が一番強いか』を決める舞台を用意して」
「……御前試合か?」
ザナック兄様が怪訝そうな顔で計画書を覗き込む。
「ええ。優勝者には、国王陛下からの特別な褒美と……新設される近衛騎士団、あるいは戦士長としての『幹部待遇』での登用を約束するの」
わたしは人差し指を立てて、兄様の目の前で振ってみせた。
「八本指は今、戦力不足に喘いでいる。必ずこの大会に潜り込んで、優秀な人材を引き抜こうとするはず。そこを一網打尽にするのと同時に……私たち自身も、本物の『原石』を見つけるのよ」
「原石、か。そんな都合よく見つかるものか?」
「見つかるわ……私の勘だけど、この大会にはとびっきりの大物が釣れる気がするの」
わたしは確信を持って言った。
原作の流れを考えれば、この御前試合こそがガゼフ・ストロノーフが表舞台に登場し、国王ランポッサ三世に見出される運命のイベントになるはずだからだ。
「……賭けだな。だが、このまま時間を無為に費やすよりはマシか」
ザナック兄様はしばらく沈思黙考していたが、やがて覚悟を決めたように顔を上げた。
「いいだろう。父上への説得は俺がやる……そちらの運営はお前たちも手伝えよ? 俺一人じゃパンクする」
「もちろんよ。ラナーが完璧な運営計画を作ってくれるわ」
「ええ、お任せください……ふふ、楽しい『お祭り』になりそうですわね」
こうして、王国の命運を賭けた一大イベント、『御前試合』の開催が決定した。
それは八本指との化かし合いの場であると同時に、未来の王国の守護神となる英雄ガゼフを迎えるための、重要な儀式でもあった。
◇
数日後王都の至る所に高札が掲げられ大会の告知がなされると、街は蜂の巣をつついたような騒ぎになった。
優勝賞金は金貨一千枚。
さらに王城への出仕という破格の条件は、またたく間に国中へと広がり、冒険者、傭兵、果ては裏社会の人間たちの欲望に火をつけた。
わたしは城のバルコニーから、活気づき始めた王都の様子を見下ろしていた。
風に乗って、人々の熱気と興奮が伝わってくる。
「……始まったわね」
「はい。順調ですわ」
背後で控えるラナーが、数枚の報告書を手渡してくる。
「地方からも続々と参加者が集まっています。その中には……『北の僻地で名を馳せた凄腕の傭兵』の姿もあるようです」
「ガゼフ・ストロノーフね。彼が来てくれれば、この大会は成功したも同然よ」
「ええ。彼ならきっと、お姉様が求める『王国の剣』になってくれるでしょう」
ラナーは微笑み、ふと視線を中庭へと向けた。
そこでは、一人の少年が木剣を振るっている姿が見えた。
クライムだ。
「……あの子も、出るつもりかしら」
「みたいですわね。『姫様をお守りする力を証明したい』と張り切っていました」
ラナーの声は、平坦だった。
そこには、わたしに向けるような熱烈な崇拝も、歪んだ執着もない。
ただ拾った小犬が芸を覚えようとしているのを眺めるような、観察者の色だけがあった。
「……死なせないようにね。彼はまだ、実力が足りないわ」
「分かっています。危険そうなら、審判に命じて止めさせますから。……彼には、忠実な護衛としての役割を果たしてもらわなければ困りますもの」
彼女にとってクライムは、あくまで『便利な手駒』であり、わたしを守るための捨て駒の一つに過ぎないのだろう。
そのドライな関係性が、今は少しだけ安心できる材料でもあった。
「さて……それじゃあ私たちも準備をしましょうか。来たるべき宴のために」
わたしはバルコニーから身を翻し、部屋へと戻る。
その足取りは、不安よりも期待に弾んでいた。
ガゼフという最強のカードを手に入れ、八本指を一掃するのだ。
(待っていなさい、ガゼフ。あなたの忠義、王国が誰よりも高く買ってあげるわ)
◇
大会当日、王都の空は抜けるような青空に恵まれ、コロシアム周辺はかつてないほどの熱気に包まれていた。
国民の娯楽が少ないこの世界において、王家主催、賞金金貨一千枚、しかも身分不問の武術大会というのは、お祭り騒ぎを引き起こすには十分すぎる燃料だったようだ。
「……すごい人ね。王都中の人間が集まったんじゃないかしら」
わたしは貴賓席ではなく、闘技場へと続く薄暗い通路の待機場所で、外から聞こえる地鳴りのような歓声を聞いていた。
今日のわたしは王族としての豪奢なドレスではなく、動きやすさを重視した純白の騎士服に身を包んでいる。
腰には、愛用している剣を一振り。
「ええ。前売り券は即日完売、賭けの倍率表(オッズ)も飛ぶように売れているそうですわ」
隣に立つラナーが、私の衣装のしわを丁寧に直しながら、満足げな笑みを浮かべている。
彼女はこれから貴賓席で父上や兄様たちと共に観戦する手はずだが、その前に私の激励に来てくれたのだ。
「警備の方も問題なさそう?」
「はい。ザナックお兄様の『保安特別局』と、近衛兵たちが厳重に目を光らせています。……ネズミたちが不用意に動けば、すぐに罠にかかるでしょう」
「頼もしいわね。……さて、それじゃあ一仕事してきましょうか」
わたしは剣の柄を軽く叩き、深呼吸を一つ。
これから行われるのは、本戦開始前のエキシビションマッチ。
先日、毒に伏せったとされる第三王女アリサが完全に回復したことをアピールし、同時に王家の威信を内外に示すためのデモンストレーションだ。
「お姉様、くれぐれも……」
「分かってる。やりすぎないように、でしょ?」
ラナーの懸念はもっともだ。
今のわたしの本来のスペック(レベル70台)を解放すれば、対戦相手を消し飛ばしかねない。
あくまで「人間最強クラスの戦士」に見える範囲――具体的には、これからスカウトする予定のガゼフと同程度の実力に見えるように調整する必要がある。
「ええ。あくまで『才ある人間』の範疇に留めてくださいまし。……それでも、十分に常識外れだとは思いますが」
「善処するわ。それじゃ、行ってくる」
ラナーに見送られ、わたしは光溢れるゲートの向こうへと足を踏み出した。
◇
「――これより、リ・エスティーゼ王国主催、『御前試合』を開催する前に!!」
司会者の魔法拡声された声が響き渡り、観客の視線が一斉にフィールド中央へと注がれる。
わたしが姿を現すと、一瞬の静寂の後、爆発的な歓声が沸き起こった。
「おおおお! アリサ様だ!」
「回復されているぞ! 噂は本当だったんだ!」
「『姫騎士』万歳!!」
「……ふふ、悪くない反応ね」
わたしは観客席に向かって優雅に手を振り、歓声に応える。
その視線の端で貴賓席に座る父上や兄様たちが、心配そうに身を乗り出しているのが見えた。
大丈夫よ父上、娘の晴れ姿をしっかり見ていてね。
「皆様にご覧いただくのは、先日の病より復活を遂げられた、第三王女アリサ殿下による武勇の証明です! 対する相手は……こいつだぁッ!!」
反対側のゲートが重々しい音を立てて開き、鎖を引きずる音と共に巨大な影が現れた。
身長3メートルはあろうかという巨体、岩のような筋肉、そして頭部から生えた一本の角。
山岳地帯に生息する、凶暴な『オーガ・ロード』だ。
「グルルルルッ……!!」
オーガ・ロードが血走った目で周囲を威嚇し、手にした巨大な棍棒を地面に叩きつける。
観客席から悲鳴交じりのどよめきが上がった。
普通なら騎士団の一部隊で対処するレベルの猛獣だ。
「……なるほど。相手にとって不足なし、ってところかしら」
わたしは悠然と歩み寄り、オーガ・ロードと対峙する。
距離はおよそ十メートル。
わたしはゆっくりと腰の剣を抜き放ち、切っ先を巨獣の眉間に向けた。
「さあ、始めましょうか」
開始の合図となる銅鑼が鳴り響く。
瞬間、オーガ・ロードが咆哮と共に突進してきた。
その巨体に見合わぬ速度。
地面を揺らしながら迫る質量弾は、ただの人間なら恐怖で足がすくむ迫力だ。
(……遅い)
けれど、わたしの目にはそれがスローモーションのように映る。
本来なら一撃で弾き飛ばせる相手だが、今日のテーマは『ガゼフ級の剣技』だ。
わたしはあえて正面から迎え撃つ体勢を取る。
「オオオォッ!!」
オーガ・ロードが人語を解する知能を見せつつ、丸太のような棍棒を振り下ろす。
風圧だけで肌が切れそうな一撃。
わたしはそれを避けるのではなく、剣の腹で受け流す道を選んだ。
「――《流》」
キィンッ! という澄んだ金属音が響く。
わたしはインパクトの瞬間に手首を返し、棍棒の運動エネルギーを斜め後方へと逸らした。
巨獣の剛力が空を切り、オーガ・ロードの体勢が大きく崩れる。
「なッ……!?」
「力任せに振るうだけじゃ、蝶一匹捕まえられないわよ」
わたしはすれ違いざまに、切っ先でオーガ・ロードの手首を走る腱を精確に切り裂いた。
鮮血が舞い、棍棒が地面に落ちる音が重く響く。
「ガアアアアッ!?」
「まだよ。次は足」
苦悶の声を上げる相手に、わたしは追撃の手を緩めない。
踊るようなステップで死角に回り込み、膝裏の靭帯を断つ。
その動きは、かつてゲーム時代に見た戦士職のモーションをトレースしつつ、この世界の物理法則に合わせて最適化したものだ。
「ぐ、おぉぉ……!」
膝をついたオーガ・ロードが、逆の手で裏拳を放ってくる。
だが、その軌道も完全に予測済みだ。
わたしは半歩下がってそれを躱し、同時に剣を閃かせる。
「終わりね」
銀閃。
ただ一筋の光が走った直後、オーガ・ロードの首筋に赤い線が刻まれた。
頸動脈への寸止め。
これ以上ないほどの完全な勝利宣言だ。
「……降参、する?」
わたしが冷ややかに告げると、オーガ・ロードは恐怖に顔を歪め、震えながら地面に額を擦り付けた。
野生の獣すら屈服させる圧倒的な格の差。
静まり返っていた会場が、一拍おいて爆発した。
「す、すげぇ……!」
「あのでかいのを、王女様が手玉に取っちまった!」
「剣聖だ! 『姫騎士』様は剣聖だぞ!!」
割れんばかりの拍手と歓声が降り注ぐ中、わたしは血振るいの動作をして剣を鞘に納めた。
貴賓席を見上げれば、父上が涙ぐんで拍手をしており、ザナック兄様は呆れたように口を開けている。
(……これで、健在ぶりはアピールできたわね)
そして何より、この会場に潜む「強者」たちへのメッセージにもなったはずだ。
『王家には力がある』と。
わたしは満足げに頷き、退場ゲートへと向かった。
◇
「……見事な剣技だ」
観客席の片隅、熱狂する群衆の中で、一人の男が静かに呟いた。
使い古した革鎧に、飾り気のないバスタードソードを背負った精悍な青年。
ガゼフ・ストロノーフである。
彼はフードの奥で目を細め、去っていく王女の背中を見つめていた。
「無駄のない足運び、相手の力を利用する受け流し……そして何より、あの踏み込みの鋭さ。……俺より上か?」
彼は自身の実力に絶対の自信を持っているわけではないが、それでも王国周辺で名の知れた戦士たちと渡り合ってきた自負はある。
だが、今目の当たりにした王女の剣は、彼の想像を遥かに超える領域にあった。
「王族というのは、どいつもこいつもあんなに強いのか? いや、あの方が特別なのか……」
ガゼフの手が、無意識に自身の剣の柄を握りしめる。
武者震い。
強者を見た時に湧き上がる、純粋な闘争本能と憧れ。
彼がこの大会に参加したのは単に賞金や腕試しのためだったが、その目的意識が今大きく変わろうとしていた。
「……面白い。来てよかった」
ガゼフは口元に笑みを浮かべ、次に行われる予選の招集に応じるために立ち上がった。
その瞳には、かつてないほどの鋭い光が宿っていた。
◇
「お疲れ様でした、お姉様。完璧な『ショー』でしたわ」
貴賓席に戻った私を、ラナーが手放しの称賛で迎えてくれた。
彼女は冷たいタオルを差し出しながら、興奮気味に語りかけてくる。
「観客の心は完全に掴みました。これで父上の支持率も盤石、八本指への牽制としても十分すぎる効果です」
「そう言ってもらえると、汗をかいた甲斐があるわ。……で、本命の彼は?」
「ガゼフ・ストロノーフですね。彼も観客席で見ていました。……その表情、獲物を見つけた猛獣のようでしたよ」
「あら、怖いわね。でも、それくらい元気な方が頼もしいわ」
わたしは顔を拭きながら、闘技場に視線を向ける。
そこには、ちょうど入場してくるガゼフの姿が映し出されていた。
対戦相手は大柄な傭兵だが、ガゼフの纏う気配は先ほどまでの「田舎の剣士」とは別人のように研ぎ澄まされている。
「さあ、見せてもらいましょうか。未来の戦士長殿の実力を」
予選第一回戦。 ガゼフの戦いが始まろうとしていた。
「始め!!」
審判の声と同時に、対戦相手が斬りかかる。
だが、ガゼフは動かない。
相手の剣が鼻先を掠める寸前、彼は最小限の動きでそれを回避しカウンターの胴薙ぎを放った。
「ぐはっ!?」
一撃。 相手は悲鳴も出せずに吹き飛び、壁に激突して気絶した。
会場が再びどよめく。
わたしの時とは違う、荒々しくも実戦的な一撃必殺の剣技。
「……速いわね。やっぱり、素質は十分だわ」
「ええ。身体能力もさることながら、動体視力が異常です。お姉様のエキシビションを見て、何かを掴んだのかもしれませんね」
「私を見て成長したってこと? ふふ、光栄だわ」
わたしはモニター越しに彼を見つめ、確信を深める。
彼なら、間違いなくこの大会を制するだろう。
そして王国の剣として、八本指を切り裂く刃となるはずだ。
「……そういえば、ラナー。不穏分子の動きは?」
わたしはふと気になって、懸念事項を確認する。
多くの強者が集まるこの場所は、『欠片』に影響された存在をおびき寄せる可能性があった。
「ご安心ください。全参加者の経歴と能力をチェックしましたが、異常な力を持つ者はいません。八本指や、他国の密偵などは数名確認できましたが……」
ラナーは少し退屈そうに肩をすくめた。
「人知を超えた『力』の反応はありません。今回は純粋に、人間同士の力比べになりそうです」
「そう……よかった」
わたしは安堵の息を吐く。
どうやらミューズの時のようなイレギュラーは避けられたようだ。
これなら、純粋にガゼフの活躍と、この大会の成功を楽しむことができそうだ。
「さあ、最後まで見届けましょうか。新しい英雄の誕生を」
わたしは椅子に深く腰掛け、再び闘技場へと視線を戻した。
歓声が渦巻く闘技場で、ガゼフが次なる対戦相手に向かって剣を構えている。
その背中は、既に王国の未来を背負うにふさわしい大きさを感じさせていた。
その頃の王国について触れておきます
読者皆様のアリサの相手候補の意向確認
-
モモンガ
-
ペロロンチーノ
-
ジルクニフ
-
ガゼフ
-
ラナー
-
クレマンティーヌ
-
イビルアイ
-
ラキュース