TSアルビノ美少女inわたなれ   作:ガテル

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間が空いてしまい本当に申し訳ございません…!


第10話

 

足を滑らせ屋上から落下し、二度目の生に終止符が打たれそうになるも王塚さんによって華麗に助けられたTSアルビノ美少女こと俺。命を救われたというあまりにも大きすぎる借りと、あのスーパーモデルで文武両道のスパダリ高校生な王塚さんに抱きしめられながら膝の上に乗っているシチュエーション。ただでさえこの借りをどう返そうものかと悩んでいたのに、そこに羞恥心も相まって等々頭が上手く回らなくなってしまった俺は「なな、なんでもします……!私、王塚さんの言う事なんでも聞きますからっ……!!」と勢いでトンデモ発言をぶちかましてしまい……そこから1週間に渡り俺と王塚さんはクラスメイトでありながら主従関係となり、彼女の言う事を何でも聞くというギャルとオタクくんのエロマンガでありそうな展開を現実で繰り広げたのであった。

 

 

具体的に何をやられたかというと、昼食時に高級食材を用いて一流シェフに作らせた絶品料理。それをクラスのみんなの前で毎日のようにあーんで食べさせられたり、最終日に至っては赤坂の会員制プールに連れて行かれて一緒に遊んだり……いやどこが悪いんだよむしろ最高じゃねぇかってツッコミはやめてください。確かに箇条書きだと良く聞こえますが、実際周りからの視線や気恥ずかしさによる心労でホント大変だったんですよ……だがまあ、この日々の全てが悪い事ばかりというわけではなかった。

 

 

王塚さんとの時間は苦労こそあれど、楽しいと感じたし何より今まで知らなかった一面を垣間見て友達としての距離を縮められた気がするのだ―――

 

 

軽い振り返りも終えたので、現在に戻るとしよう……赤坂プールでの出来事から3日後。王塚さんはモデルの仕事で今日からフランスへ飛ぶ事になっており、彼女がクラスメイト達に囲まれ各々から応援の言葉を受けている。俺も純粋に友達として王塚さんに何か一言送りたいのだが、前世からの筋金入りの超ハイパーコミュ障があの輪の中に参加出来るはずもなく遠目から己のザコさを恥じるように悔しさ混じりの瞳で見つめていたのだが……突然フワッとまるで絹のように流れる美しい黒髪が視界の隅に入り、驚いて顔を横に向けるとそこには。

 

 

「―――どうしたの、加藤。さっきからあの女を食い入るように見つめているじゃない」

 

「ッ……!?ここっ、琴さん……!?」

 

 

同じ王塚グループに所属している芦高のクール黒髪美人こと琴紗月さんの姿が、まるで幽霊を見たかのような反応を示す俺に対し琴さんは分かりやすく大きなため息をついた。

 

 

「まるで悪魔でも目の当たりにしたかのような反応はとりあえずスルーしておいてあげるわ」

 

「あ、あの、悪魔じゃなくて幽霊です」

 

……そこ、重要かしら??

 

「なな、何でもありません今の発言はどうかお忘れください……」

 

 

鋭い目つきでこちらを睨みつけてくる琴さん、ふええ……悪い人じゃないのは分かっているが何度も言うようにコミュ障の俺にとってはハードルが高く未だに毎回怯えて接してしまうのだ。正直申し訳なく思ってる。

 

そんな俺の内心を知ってか知らずか、いいや仮に把握していてもどうでもいいと言わんばかりに視線を俺から王塚さんの方へ戻し話を続ける。

 

 

「私としては先週の間毎日見せつけられた貴方達が頭お花畑なやり取りをようやくやらなくなって一安心していたのよ、いい加減真唯なんかに熱を上げるのはやめなさい」

 

「わ、私は別にそんなつもりはないんですが……」

 

 

……相変わらず琴さんは王塚さんに対しての敵対心が凄まじい、2人は幼い頃からの友達で言わば幼馴染というやつだ。その割には……いやだからこそというべきか、遠慮が必要ない距離感の近さとお互いをよく知っている関係性。俺もつい最近王塚さんと個別で関わりを持ったから分かるが、彼女は特殊な境遇に身を置いているからだいぶ世間離れというか天然な一面を持ち合わせている。そんな王塚さんが無自覚で琴さんにとっての地雷を踏み、よくお怒りになられるなんてのはもはやあるあるだ。

 

 

「あんなデリカシーの欠片も無いような奴のどこがいいのか微塵も理解出来ないわ」

 

 

今も王塚さんへの文句を言っているが、正直俺から見れば仲良しにしか……いやこれ多分指摘しちゃダメなやつだな。うんやめよう。

 

 

「……加藤、その勘違いは心底不愉快よ。私と真唯のどこをどう見てその解釈に至ったのかしら?」

 

「……こっ、琴さんって実はニュータイプだったりしますか?」

 

「ニュータイプというのが何なのかは知らないけれど、まあとにかく―――誤解しない事ね。私があの女にどれだけ振り回されて迷惑をこうむってきたか……文字にして本1冊どころか10冊にしても足りないぐらいだわ」

 

「…………」

 

 

琴さんの静かに燃え盛る瞳を見て、何と返していいか分からずつい黙り込んでしまった俺だったが……そんなとき。王塚さんがフランスへ行く為教室から出ようとドアの付近まで歩いてきており、俺達の存在を視界に入れると驚いたようにその足を止めた。

 

 

「おや?紗月と文歌が2人で話しているなんて珍しいじゃないか、一体何の話題を交わしていたんだい」

 

「良い所に来たわね、ちょうど今貴方の話で盛り上がっていた所よ。ちなみに良い意味と悪い意味、どちらだと思う?」

 

「ふむ、それはクイズかな?悪いが時間が無いから答えられない……と普通の問題なら断る所だが、答えは簡単だよ―――君達2人なら良い所に決まってるじゃないか。フフフ」

 

「…………相変わらず幸せな頭してるようね」

 

 

嬉しそうに微笑む王塚さんと悔しそうに唇を噛む琴さん、いつも通りの光景だなぁ……近くでそのやり取りを長めながら他人事のように思っていると、王塚さんが笑みを保ちながら俺のすぐ目の前まで足を進めてきて……そのまま両手をギュッと握ってきた。

 

 

「お、王塚さん?」

 

 

突然の行動に脳の理解が追い付かない俺と、「まいふみキター!」と黄色い歓声が上がる教室。そして当の本人は目をつぶってまるで温もりを摂取するように俺の手を握り、少ししてその宝石のような青い瞳を開くと……

 

 

「ありがとう文歌、これで私は頑張れそうだ」

 

「は、はぁ……それなら良かったです……?」

 

「―――じゃあ、行ってくるよ」

 

「はいはい、行ってらっしゃい」

 

「い、行ってらっしゃい……王塚さん」

 

 

俺の言葉に王塚さんは目を丸くした後、頬を赤らめながら「……文歌が妻になったら今のを私は毎日聞けるんだな、最高じゃないか……」と小声で何かを言いながら教室から出て行った。一体何だったんだろう……そんな疑問を抱く俺は。

 

 

「……ふーん、どうやら思った以上みたいね。これなら……」

 

 

隣で不穏な笑みを浮かべる琴さんに気づけなかったのであった。

 

 

 

翌日。

 

 

「―――香穂ちゃんは自分の席でスヤスヤしてるし、何だか私達も眠くなってきちゃうね~、真唯ちゃんがいないからかな?」

 

「梅雨だしねー」

 

「つ、梅雨時期特有のジメジメとした空気ってただでさえ奈落の底かってぐらいどんよりとした心を更に地面突き破ってマントルへ突入するぐらい落ち込ませ「ふ、文歌さん!それ以上はダメ!ダメだよ!?」……アッ」

 

 

陰キャ同盟を組んでいる理解者甘織さんの呼びかけで我に返った俺は、慌てて瀬名さんの方を見やると「奈落の底?マントル?」と可愛らしく首を傾げている。その姿も天使ですね……ってそうじゃないな、今すぐ弁明しなければと口を開くその前に……瀬名さんが俺の頭にポンと手を置き、そして優しく撫で始めた。

 

 

「え、えっと、瀬名さん……?」

 

「言ってる事はよく分からなかったけど、でもふみちゃんが元気無いのは伝わったから、これで少しでも元気出てくれればなって思ったんだあ……嫌だったかな?」

 

「ぜぜ、全然嫌じゃないですよウヘヘッ……」

 

「そっか~、それならよかったよ~」

 

 

瀬名さんの微笑みは聖母の如く全てを包み込み、同時にこの世の全ての邪を浄化する力を持つのだ。それだけでも十分なのに、彼女の柔らかく温かな手で癒されるだなんて俺は前世でさぞかし特を積んだのだろうと思え……いや全然そんな事ないわ。色々情けない人間でごめんなさいでした。

 

 

……まあそこら辺は置いといて、俺はただ瀬名神の寵愛をこの身で一心に受けていると甘織さんが顔を赤らめ恥ずかしそうにゆっくりと手を上げながら訪ねてきた。

 

 

 

「ふ、文歌さん!えっとね、私も紫陽花さんと一緒に頭撫でていいかな。なんて……」

 

「あ、甘織さんもですか?」

 

「れなちゃんも一緒にだなんて嬉しいなぁ」

 

「文歌さん……ダメ……?」

 

 

甘織さんは不安そうにこちらを覗き込んできて……聖母瀬名さんと俺にとっての理解者甘織さんによるWナデナデだって?そんなの……

 

 

「い、いいですよ、来てください―――甘織さんっ」

 

「っ!?」

 

 

最高に決まってるじゃないか……俺は彼女の瞳を真っすぐに見つめながら言い放ったのだが、何故か甘織さんはただでさえ染まった頬を更にトマトのように真っ赤にしていた。

 

 

「じゃ、じゃあいただきまーす(???)」

 

 

恐る恐ると言わんばかりに甘織さんは手を伸ばしてきて、俺の小さい頭だとちょうど2人の手のサイズで精一杯である。

 

 

「よしよーし」

 

「よ、よしよし!」

 

 

左右からそれぞれ甘織さんと瀬名さんの手の感触が伝わってきて、普段の苦労溢れる学校生活で蓄積された疲れが一気に吹き飛んでいくようだった。ヤバ、これ癖になりそう……俺は顔をだらしなく緩ませていたのだが……残念ながら幸せというものは長くは続いてくれないようだ。黒髪を揺らしながらこちらに歩いてくる人物が1人。

 

 

「―――随分楽しそうね」

 

「紗月さん!?」

 

「紗月ちゃん?あれ、今のうちに真唯ちゃんと差をつける為に帰って勉強するって言ってたからもう学校にいないかと思ってたよ」

 

「ちょっと加藤に用があるのを思い出したのよ」

 

「……わ、私にですか?」

 

「ええ、今いいかしら?」

 

 

一体何の用なのだろうか、正直怖いんだが……まさか断るわけにもいかず、俺は黙ってコクリと頷き立ち上がった。ああ、至福の時間が……

 

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

教室から出て、人影の無い廊下を無言で足早に歩いて行く琴さん。彼女の後ろをついていきながら、俺は琴さんについて思考を巡らせていた。

 

 

……入学して早2か月半といった所だろうか、まず最初に小柳さんが実は共通の趣味を持ち合わせている事を知り、そして次に甘織さんがまさかの陰キャだったのが判明。王塚さんともきっかけこそカオスなものだったが、あの1週間を通して少しは彼女について知れたかなと勝手に思っている。みんなグループ内で関わりこそあれど、個人では殆どなかった。共通するのは抱いていたイメージと違い、意外な面を持つ……別次元の存在だとどこかで区切っていたが良い意味でそれを打ち消せた。

 

 

いつか瀬名さんとも友達として、もっと深く知りたいなと思うしもちろん琴さんに対しても同様の気持ちを抱いている。

 

 

「……ここら辺なら大丈夫そうね」

 

 

琴さんは廊下の隅で足を止め、くるりとこちらに体を向けてきた……そしてそのまま近づいてきた。

 

 

「こ、琴さん?えっと、どうされたのでしょうか?」

 

「文歌、文歌とわざわざ私の家にまで来て楽しそうにノンストップで朝まで語って……寝ずに聞かされるこちらの身にもなりなさいよ……」

 

「な、何か顔怖いですよ……」

 

「……計画、始めるとしましょうか」

 

「ケイカク??」

 

 

俺はいつの間にか壁にまで追いやられており、琴さんはまるで悪役のような気味の悪い笑みを浮かべながら…………甘織さん、瀬名さん、王塚さん、小柳さんは良い人だ。それは4人だけでなく琴さんにも当てはまるはずと俺は思って……

 

 

「ねぇ、加藤―――私と恋人になってくれないかしら?」

 

「……えっ?」

 

 

良い人の……はずなんですよ!




次回から紗月さん編スタートです!
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