TSアルビノ美少女inわたなれ   作:ガテル

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第5話

 

「や、やっぱり休日のショッピングモールは人が多いな……」

 

 

思わず口から漏れ出た嘆きもかき消されてしまうほどの人の多さ、そしてその分こちらに集中してくる視線の数々。カップルの彼氏側が可愛い人に目を向け、それに対して彼女が嫉妬のお怒りを見せるなんてのはよくアニメなどで見る定番だが俺の場合は―――

 

 

「「……ちゅき」」

 

 

何故かこうなるのだ、平和で何よりですねハイ……改めて状況説明をさせてもらうと小柳さんとの放課後ファミレスイベントから数日経ち、本日は土曜日。普段から学校生活ではコミュニケーションでやらかさないように常時気を張っている俺にとっては、週末の土日というのは肩の力を抜いてリラックス出来る最高の時間である。だがしかし。

 

 

「―――ねえ文歌!今日お母さんと一緒に服を買いに行きましょ!」

 

「いや着るものはあるし別に買いに行く必要ないでしょ……」

 

「あるっていっても数着だしいつも同じ服しか着ないじゃない、せっかくそんなに可愛いんだからもっと色々ファッションのバリエーションを増やすべきだと思うわ。だからお母さんが文歌に似合うとっておきのを選んであげる」

 

「……ちなみにどんな感じのを私に着させるつもりか教えてくれない?」

 

そう聞くと母さんは悪意0のニッコリ笑顔で。

 

 

「―――地雷系ファッションね!私最近web漫画でそういう子が主人公の作品にハマってるんだけど文歌なら絶対似合うと思「もう私も高校生、だから自分の服は自分で買ってくるねー!!」

 

 

「原宿竹下通りをJKのコスして歩くわ!」なんて言い放つ我が母である、地雷系女子デビューさせられようものなら「何だか文歌を見てたら……お母さんもやりたくなってきちゃった♡」とか狂った事を言い出しかねないだろう。親子で地雷系ファッションとか知り合いに見られたらもう二度と立ち直れる気がしない。

 

こうして俺は急いで仕度して朝っぱらから家を飛び出し、開店したばかりにも関わらず人の多いショッピングモールへ来たというわけだ。正直女子の服など何を買っていいか皆目見当もつかないので、恥ずかしながら今までは母さんに選んでもらっていたのだが当人がヤバいのにハマってしまったのでもう頼りには出来ない。

 

 

「ハァ……もうお家帰りたくなってきた、自室でのんびりFPSやってたい」

 

 

前日も含めもはや毎週行ってるのだが、金曜日は深夜までストレス発散と言わんばかりにFPSゲームで人を撃ち続けている。こういった類のゲームは好きなのでかなりやり込んでいるけれど、どんなに上手かろうが油断や有利な状況による慢心などでの失敗は当然あり、今回は深夜1時を回った辺りに襲い掛かってきた眠気によって操作ミスして死にかけたのだが……

 

「―――間一髪の所で味方の子アラさんが助けてくれて無事勝てたんだよなあ、マジ感謝」

 

 

子アラさんというのはFPSゲームにおけるハンドルネームだ、以前試合で共に戦ったときにその腕前から俺がフレンド登録を申し込み向こうも受けいれてくれて以来よく一緒にチームを組んでいる。しかも強さだけでなく、子アラさんの良い所はメッセージ等を送り合うチャットは使うが絶対にボイス機能だけは頑なにやらない主義。それは例えオンライン上であれお喋りなど正直勘弁してほしい超ハイパーコミュ障にとってはとても有難かった、完全仕事人としての関係を保っているので子アラさんがどんな人物かはもちろん性別すら知らない。案外誰か知り合いだったりして……いやそんな世界狭いわけないか。

 

そんな事を考えながら歩いてると、お目当ての店が見えてきた。このモール内の服屋で一番入りやすい、どこの町にも一つはあるであろうファッションチェーンストアだ。ここなら店員さんに話しかけられるという陰キャ殺しが起きる確率も低いだろうしな……そして店に入るとそこには見覚えのある人物が。

 

 

「……遥奈め、そろそろお姉ちゃんもあたし抜きに服ぐらい買えるようになれば?まあどうせ無理だろうけど(笑)とか煽ってきやがって、いいよスクールカースト上位の陽キャを舐めるなよ服程度何着でも買ってやりますから!せいぜいお姉ちゃんの天才的ファッションセンスに驚くがいい―――って文歌さん!?どうしてここに!?」

 

「え、えっとその、私は服を買いに……」

 

「あっ、そ、そうだよね!服屋に来てるんだもん逆にそれ以外ないか、あはは……」

 

 

というかクラスメイトであり同じ王塚グループに所属している友達の甘織れな子さんである、彼女は俺の存在に気づくと心臓が飛び出るかの如く心底驚いたような声を上げ、一応事情を説明すると焦った自分を恥じるように苦笑いを浮かべていた。こちらもビックリしたのは一緒なのだが甘織さんの反応は何と言うか……まるで誰にも知られたくない秘密を必死に隠しているみたいだ。それに声を気づかれる前に何か早口で言っていたがよく聞き取れなかった。

 

 

「あ、あのさ文歌さん」

 

「なっ、何でしょうか?」

 

 

どこか遠慮しがちに目を伏せながらも、やがて決意したように俺の方を真っすぐ向くと。

 

 

「―――せっかく会った事だし一緒に服選ばない?」

 

「え、ええいいですよ、私も甘織さんとこうして学校ではなく外で会うのは初めてですし、はい……一緒に選びたいです」

 

「断られなくて良か……じゃ、じゃあ行こうか!?可愛いの選ぼうね!うん!」

 

 

俺達はお互いホッとしたように顔を緩めた、かなりたどたどしさを感じさせる会話のやり取りは端から見たらとてもじゃないがスクールカーストトップ同士には思えないだろう。まあ俺は陰キャなのだからこうなって当たり前だが、どうして甘織さんも自分と同じような反応を?まさかそのぎこちなさは俺と一緒にいるのが嫌だったからとか……仮にもしそうだったら辛すぎんだけど……

 

こうして強い不安を抱きながらのショッピングがスタートした―――のだが。

 

 

「あっ、これ今中高生の間ですっごく流行りのやつだ!」(妹が食事中に名前を挙げたブランド名、なお情報はそれだけ)

 

「……そそ、そうですねっ、私も最近欲しいなって思ってました」(大嘘)

 

「文歌さん超可愛いし絶対似合うよ!こ、これはトップス……?だから下で合いそうなコーデはええと……文歌さんはどう思う!?」

 

「わ、私ですか?」

 

「よく考えてみれば文歌さんの着る服だしわたしのセンスで全部選んじゃうとその嫌かなって思ったんだ実際ファッションって女子にとっては特に自分を構成する重要なものじゃんだから自主性を重んじるのが大切で―――」

 

 

陽キャはファッションに対してのこだわりが強いというイメージだが、甘織さんの場合はこう言っては失礼かもしれないけど……まるで自分自身に言い訳しているようだった。どうしてそう思うのかと聞かれれば、いつかに瀬名さんから「この服気になってるんだけどね、ふみちゃんはどう思うかな?」と服の話を振られたときに俺がまんま彼女と同じ反応をしてたからである。

 

……前々から抱いていた疑問ではあるが、こうやって学校ではなくプライベートで接していると甘織さんに対してより強くシンパシーを感じるのだ。発言や表情が俺の写し鏡のようで、彼女を見ているとこちらの胃も痛くなってくる。やはり甘織さんって本当は陰キ―――だから決めつけは良くないって言ってるだろ!?

 

俺は雑念を追い出すように頭をブンブンと縦に振った。

 

 

「どうしたの文歌さん!?」

 

「いっ、いえちょっと頭にほこりがついてたので振り払ってただけです」

 

「そ、そうなんだ?勢い激しすぎて急にヘドバン始めたのかと驚いちゃった」

 

「わ、私意外とロックな人生を歩んできてるので……??」

 

 

一度死んで女の子に生まれ変わったのだから十分ロックと言えるだろう、多分……とまあ俺のセンスの無さを晒すのが嫌で出来るのなら甘織さんに上下選んで欲しかったが、そんなわけにもいかず自分で選ぶ事になってしまった。

 

こうして選んだ組み合わせコーデを一応鏡で合わせてみると、近くで作業している店員さんがヤベェ物を見る目をこちらに向けてきたのだ―――自分で言うのはとてもアレだが超美少女なので他人から好意はあれど嫌悪感を受けた事などないのに、今のはそれを超越した何かで……ちなみに甘織さんも同様の目を向けられていた。

 

 

「うわ、これ凄く良いかも……へへっ、見てろよ遥奈ちゃん

 

 

嬉しそうに笑っている甘織さん、俺も彼女の組み合わせは良いと思うのだがならば何故店員さんはあんな反応を……俺達のセンスが合っている事を願うばかりだ。

 

買って服屋から出ると、じゃあこれでバイバイ!という訳にも行かず次はどこへ行こうか問題が襲い掛かってきた。いや甘織さんと一緒にいるのが嫌というわけではなく、マジで良い場所が思いつかない。ここで一緒にいるのが偶然共通の趣味を持つ者だった小柳さんならばモール内の本屋にでも向かう所だが、趣味を「ファッションと音楽鑑賞(ドヤア)」と胸を張るように言っていた陽キャ女子の彼女の場合は……内心頭を抱えていたそのとき。

 

 

「―――何か喉乾いてきたしスッ、ス○バ行って飲み物買わない!?」

 

 

甘織さんが春の涼しい気候にも関わらず、額から汗を流しながら提案してきた。陰キャがス○バに入ったらセンサーで感知されて追い出されてしまう説を提唱している俺にとっては不安でしょうがないが、まさか断れるわけもなく。

 

 

「いっ、いいですね、私駅前のス○バに通いすぎて行くと店員さんから商品名言わずともいつものだね?って言われるんですよ……!」

 

「わ、わたしも常連すぎてもはや甘織れな子専用席が作られてるんだ!」

 

「すす、凄いですね甘織さんっ」

 

「いやいやそちらこそ!」

 

 

クラスカーストトップの特級陽キャ2人、もはや最強。

 

 

「―――いらっしゃいませ!ご注文はお決まりですか?」

 

「な、なんちゃらかんちゃらフラペチーノ一つで!」

 

「わわ、私はフ、フラ――フラフープを一つください……!」

 

「平行世界のス○バの知識を有するお客様……?」

 

 

もはや地獄としか表現のしようがなかった。

 

 

 

 

 

「……美味しいね、文歌さん」

 

「そ、そうですね、とても良い味です……」

 

 

モール内のベンチに座りながら意気消沈状態な俺、陰キャがス○バ通いとかイキってすみませんでした……そして甘織さんも同様に疲れ切ったご様子だ。体力とかでなく慣れない事して頭がパンクした感じで、やはりそんな彼女の姿を見ていると否定しようがどうしても―――同類、つまり甘織さんは俺と同じ陰キャなのだと思えて仕方がない。

 

だが「あなたは陰の者ですか?」と直球で聞くなんてとてもじゃないが出来ない、でも甘織さんの本心が気になってしまう。このモヤモヤにどう対処したものかと頭を悩ませていると。

 

 

「―――ごめん、ちょっとわたしお手洗い行ってくるね!」

 

「あ、甘織さん?」

 

「ホントすぐ戻ってくるからー!」

 

 

甘織さんは勢いよくベンチから立ち上がり、まるでこの空間から逃げるように走り出した。明らかに何か引っかかりを感じるが、お手洗いと言われては当然何も言えず……だが彼女との距離が少し離れた所で問題は起きた。それは。

 

 

「君可愛いねー!高校生?暇ならお兄さんと一緒に遊ぼうよー」

 

「ええ!?わ、わたし!?」

 

「いやいや君以外に誰がいんのさ」

 

「……っ」

 

 

甘織さんがチャラそうな年上の男性にナンパされてしまっているのだ、それだけで大きな問題だが最もまずいのは……

 

 

「ちょっとだけだからさ、お願い!」

 

「あっ、わ、わたし、は……」

 

 

嫌がってるのは目に見えて分かる、だが甘織さんは半ばパニック状態と言うように呂律が上手く回っていない。そんな彼女を見て俺は飛び出すように走り出し―――

 

 

「や、やめてください……!!」

 

「……文歌、さん」

 

 

2人の間に割り込み甘織さんを守るように立ち塞がった、友達の危機を見過ごせる奴なんてそれは友達とは呼べない。冷静になった頭でこの状況について思考を回す、俺は前世と違って女子だから彼氏という言い訳は使えないしそもそも舐められて相手にされるかどうか。ただそれでも守らなければと、強く睨みつけてきたのだが……俺を見た瞬間にチャラ男は唖然とその表情を固まらせ。

 

 

「あっ可愛すぎる、こんな妖精みたいに可愛い子を困らせるなと世界の、神からの意志を感じるわ―――ごめんなさい。これからは真面目に生きます、ですからどうか私をお許しください……」

 

 

何か悟りを開いたかのように、浄化された顔つきでチャラ男は俺達の元から去って行った。一体何だったのか……いや過ぎた問題はもういい、それより甘織さんだ。

 

 

「あ、甘織さん大丈夫ですか!?」

 

 

声を掛けたが甘織さんは爆発寸前だと言わんばかりにプルプルと震えており、そして震えが次第に強まっていき……

 

 

「文歌さん!わたし、わたしはねっ!」

 

 

今まで、そして今日の出来事全部纏めてもう限界だと叫ぶように。

 

 

「―――実は陰キャなんだ!!無理して陽キャ偽ってたけどもうムリ!?だって大変すぎるんだもん!!うわーん!!!」

 

 

その様はまるで限界社畜OLの心の叫び、そして俺はパズルのピースがようやくハマったような感覚になって……甘織さんに何て言葉をかけるべきかの正解が分かった。

 

 

「あっ、甘織さん、私も同じですからどうか安心してください」

 

「……な、何が同じなの?」

 

 

言ってしまうのかと思う気持ちも若干あるが、まあそれを大きく超える程に……

 

 

「わ、私も、陰キャ、ガチの陰キャなんです……!」

 

「えっ」

 

 

大切な友達の甘織さんになら打ち明けてもいい、そう直感で感じるのだ。

 





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