TSアルビノ美少女inわたなれ   作:ガテル

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第7話

 

「―――ごめんね、文歌さん、わたし……もうダメかも」

 

「あ、諦めないでください甘織さんっ、安息の地まで後少しですから」

 

「それは分かってるよ、でもね?さっきから手足の感覚が殆どないんだ……あはは、せっかく戦場を生き抜いたのにここまでかあ」

 

 

己の死を悟ったように力なく笑う甘織さん、戦友のそんな顔を見て平常心でいられるほど俺は冷徹な人間ではない。絶対、絶対に死なせてたまるか……いや冒頭からお2人は一体何をしていらっしゃるのかしら?と皆さん疑問に感じてる事だろう。一応誤解が無いように説明しておくと、別に俺と甘織さんがいきなり異世界転移して戦いに身を投じているという作品タグに付いてないジャンル飛び越えの超展開なわけではなくここは普通に校舎の中である。

 

―――本日は金曜日、甘織さんと俺がお互いに陰キャをカミングアウトしそこから何やかんやあって魂の握手をするまでに心を通わせたあの日から約2週間が経過した。今は午後の授業も終わり放課後、月から金の学校生活という過酷な戦いで心身共に疲労し切った俺達はヘロヘロになりながら屋上へ繋がる階段を上っている最中だ。何故そこへ向かうのかと聞かれれば、甘織さんから「わたし、真唯グループに入った事もあって先生から信用されて屋上のカギを貸してもらえるんだ。グループのみんなには言ってないけどちょくちょく休憩がてら使っててさ、屋上の澄んだ空気と気持ちの良い風。それらが普段からやらかしてばっかなよわよわ陰キャの胸にジーンと染み渡り癒されるよ……あっでも同時にどうしようもない現実も見えてくるから、結局トータルだと癒しより悲しみの方が上回っちゃってその場にうずくまりたくなるんだけどね……」

 

そしてまるでこの世の終わりでも訪れたのかと思うレベルでどんよりと暗い表情を浮かべ、話を中断させてしまった甘織さん。共感しかない俺は無言で彼女を優しく慰めると、「理解のある文歌さん……」と目を潤ませながら何とか続きを言ってくれて「で、でもまあ良い所には変わりなくてねうん!?だから文歌さんが良ければ今日の放課後一緒に行かない?今週も人間社会お疲れ様でした会を開こう!」と提案してきた。

 

確かに人間社会って大変だもんね分かるよ……こうして人外(??)の俺達は屋上に行く事になったのだ。

 

説明も終了し、隣を歩く瀕死状態の甘織さんがそのままぶっ倒れてしまわないか心配しつつ何とか無事に屋上の扉の前まで辿り着き謎の達成感に包まれながら開くと。

 

 

「―――本当だ」

 

 

思わず口から漏れ出る言葉、周りに遮蔽物など何もないこの屋上という場所で吹き込んでくる風の心地よさは甘織さんのおすすめ通りとても良いものだ。それに後少しすれば梅雨時期でジメジメとした空気になるであろう事から、味わえる今は貴重だと言えよう。

 

そして甘織さんは自らの定位置と言わんばかりに真っすぐとフェンスへ向かい、若干乗り出す形で体を曲げて身を預けていた。先ほどの辛さが吹き飛んだかの如く顔を緩ませていて……そんなに良いのかと気になり俺も彼女の横に行き同じようにやってみると。

 

 

「あっ、甘織さん、これめちゃくちゃリラックスできます……!」

 

「いやー、文歌さんがこの良さを分かってくれて嬉しいなあ!」

 

「こ、この感覚、まるで自分が干物になったみたいで―――わわ、私前から辛いときに思考も動きも何もいらないお日様にずっと当たり続ける干物になりたいとよく思っていたので嬉しいです」

 

「ヤバい、それ凄く分かるんだけど。いいよね干物、わたしも全ての煩わしさから解放されてずっと干されてたいと思った事何度もあるもん」

 

「た、ただ悲しい事に最終的には人に食べられちゃうんですけど……」

 

「……ねえ文歌さん、生きるのって難しいね」

 

「……そう、ですね」

 

 

例え干物になろうが永遠の平穏は訪れてくれないという残酷な世の中の理に、リラックスして内心来週も頑張ろうと意気込んでいた陰キャな俺達の闘志はあっけなく消え去った。悲しいネ……まあ前世では退屈な人生からむしろイベント事を望んでいたが、こうなって人々から常日頃視線や関心を持たれるというのも逆に大変なのだと気が付いたのである。

 

だからこそ―――

 

 

「た、確かに大変な事ばかりですけど、私思うんです……自分がこうして気兼ねなく本心をさらけ出せる相手がいるのは凄く恵まれてるなって、ですから私にとって甘織さんは―――特別な存在ですよ」

 

「……へ?」

 

 

人と話すのはもちろんだが、それ以上に陰キャコミュ障の悩みなど誰とも一生共有出来ないと思っていた。でも高校に上がりグループに入れて友達が作れただけで最高と言えるのに、まさかその上こうして分かり合える人と出会えるなんて本当に驚きだ。

 

感謝の意味も込めて、甘織さんに自分の気持ちをそのまま伝えると……彼女は何故か耳まで真っ赤にしながら、重要事項だから確認しておきたいと言わんばかりに必死であった。

 

 

「わ、わたしも文歌さんとこうやって誰にも話せないような事を共有できて凄く嬉しいよ?でで、でもちなみに最後の特別な存在の意味はどういう……!?」

 

「え、えっと、純粋に大切なお友達という意味ですが」

 

「あっ友情の方か―――って何言ってんだわたしは!?それでいいはずでしょ!?」

 

「……ご、ごめんなさい、もしかして嫌でしたか?」

 

「全然!全然じゃないよ!?マジで神に誓って本当に喜ばしいです!わーい嬉しいなー!!」

 

 

つい感情に乗せて告げてしまったが、思えばちょっと重いと捉えられかねない発言であった。でも甘織さんは嫌がらずに喜んでくれて―――良い人だ、こんな友達を持てて俺は光栄だと心の底から感じる。

 

 

「うへへっ」

 

「……うう、わたしも本来は学生生活で友情を望んでるはずなのにどうしてこんな複雑な気持ちになっちゃうんだろ

 

 

芦ヶ谷高校に入学して早2か月、せっかく歩み寄ってくれるグループの面々に対し前世が男子で女子力や知識が皆無な俺はこちらからどう接してよいか分からない所が多く上手く出来なかった。だが意外な事にこの数週間で同士だと判明した小柳さん、そして理解者の甘織さん、遥か雲の上の存在だと認識していた彼女らと共通点が存在した事実を改めて振り返ると……他の3人とも友達としてもっと仲を深めたいなと感じるのだ。

 

ただその方法が分からない、欠点の無い超美少女の瀬名さんや琴さんが俺程度の存在と何か共通の趣味があるとは……いやその2人以上に難しい人がいるじゃないか。母親が有名ファッションデザイナー、そして本人もプロのモデルをやってる文武両道で誰にでも等しく接するスーパー高校生。そう―――

 

 

「れな子、文歌……」

 

「えっ!?」

 

「……ど、どうしてここにいるんですか?」

 

「―――いけないっ!!」

 

 

王塚真唯さん―――その本人が何故か屋上に来ていて、しかもこちらを見る目には大きな心配と不安が籠っている。思わず困惑の声を上げる俺と甘織さんだったが、その疑問に応じる暇もなく王塚さんは全力疾走で俺達の元に向かってきた。凄い、見る者全てを引き込むような惚れ惚れするほど美しいフォームだ……いや今はそこじゃないねすみませんでした。

 

 

「ふ、文歌さん?すっごいスピードでこっちに向かってくるんだけど王塚さんと何か約束でもしてるの……?」

 

「まま、全く身に覚えがないで―――あっ」

 

「文歌さん!????」

 

 

俺は焦りからか足を滑らしてしまい、そして立ってる場所がフェンスのすぐそばだったのでそのまま体ごと空中に投げ出されてしまった……自分のことなのにどこか冷静に見てるのは死というのものは突然来ると理解してるからだろう。一度死んでいるのだからこれは立派な経験によるものだ。

 

せっかく二度目の人生も楽しくなってきたのにここで終わりなのかと思うと悲しくて仕方がない、ただせめて最後に世界をこの瞳に焼き付けておこうと恐怖で閉じていた目を見開くとそこに映ったのは―――

 

 

「させるものか……!!!」

 

「お、王塚さん!?」

 

 

華麗にフェンスを飛び越える王塚さんの姿であった、そして彼女は俺の小柄な体を力強く抱きしめて。

 

 

「―――もう大丈夫だ文歌!」

 

「だっ、大丈夫どころか2人纏めてこの世からバイバイしそうなんですけど……!?」

 

「いいや心配はいらないよ、だって私は運が良いからね!」

 

「おいすっごい自信だな」

 

「おや、今いつもと口調が違ったような?」

 

「……きき、気のせいです」

 

 

こうして凛々しい笑顔の王塚さんと困惑が限界を超えてつい男の口調になってしまった俺は抱きしめられたまま一緒に木へとダイブしたが、地面に直撃する危機を木の枝が防ぎ落下のスピードも木の葉によって削がれたので痛みすらも殆どない。まさかこんな事が……あまりの衝撃映像に脳がフリーズしてしまったであろう甘織さんも再起動したのか屋上から声をかけてきて。

 

 

「2人とも大丈夫!?生きてる!?」

 

「い、生きてますよ……心配かけてごめんなさい……」

 

「―――ああ、見ての通り全く問題ないよ」

 

「ぶ、無事でよかったよ!今下に行くからね!」

 

 

甘織さんは安心したようにほっとため息をつき、早速階段へ向かったのかこちらからは姿が見えなくなった。そして場に残されたのは、この結果を疑わなかったと断言できるほどに余裕そうな王塚さんと向かい合う形で彼女の膝の上に座りながら抱きしめられる俺。

 

 

「お、王塚さん……助けてくれて本当にありがとうございます」

 

「いいや、礼なんて要らないさ」

 

「あっ、あの……ちなみにどうして屋上に来たんですか?」

 

「廊下で偶然2人を見かけたんだ、それで何だか様子がおかしかったからついてきたが正解だったよ。こうして君を救えたんだからね」

 

「……わわ、私も甘織さんも別に飛び降りようとはしてませんよ……?」

 

「そうなのかい?では何故あんな身を乗り出して……」

 

「り、理由は人間社会お疲れ様でした会をしてたからです」

 

「やっぱり飛び降りる気だったんじゃないか!?」

 

「アッ!?すっ、すみません今のは冗談で……」

 

 

いや嘘では無いのだが、危うく勘違いされそうになってしまった。そして王塚さんは苦笑いしつつ「……ふ、ふふ、私を振り回すとは流石文歌だね」とどうしてか俺を褒めている。マジで何でですかね……まあ色々とまだ頭が整理出来ないが一つだけ分かったのは、王塚さんは本当にスーパー高校生だという事だ。

 

顔だけ良くてそれ以外ザコな俺と違って全てが本当に完璧、さっきは何とかしてこの人ともっと仲を深めたいなと思ったりしてたけどやはり難易度が高すぎ。だって同じ人間とは思えな―――

 

 

「……あれ、王塚さん」

 

「ん?どうかしたかな?」

 

 

俺は馬鹿だ、膝の上に乗ってるにも関わらず何で気づかなかった……表情こそ普段と変わらないが王塚さんも震えているじゃないか。当たり前だ、死に対して怖くないなんてあり得ない。そう思いこんなスーパーな彼女も自分と同じ人間なのだと改めて認識した。

 

先ほど王塚さんに対して感謝を述べたが、一度ではとても足りないほどの出来事だ。本人は礼など要らないと言っていたけれど、やはり何かの形でお礼をしなければいけない。だが物なんてセレブの彼女はいくらでも買えるだろうから必要ないだろうし……それに加えて冷静になると、あの超絶美少女王塚さんに抱きしめられながら膝に乗ってるという流石に恥ずかしくなるシチュエーションも相まって頭が上手く回らなくなってきた俺は。

 

 

「お、王塚さんっ、この借りは必ず返します」

 

 

グイッと顔を近づけ、王塚さんの青い瞳を正面から覗き込むと……彼女は頬を赤らめて動揺しているように見えた。そして勢いのままに。

 

 

「ま、真面目なのは文歌の美徳だと思うが、私は本当に何もいらな「なな、何でもします……!私、王塚さんの言う事何でも聞きますからっ……!!」―――なっ」

 

 

どう借りを返していいか分からなくなった俺はとんでもない発言を繰り出してしまった。






これは…文歌が悪いですね(確信)

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