TSアルビノ美少女inわたなれ   作:ガテル

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書いてて思ったより長くなったので真唯回を前後半に分ける事にしました。


第8話

 

「な、何でもします……!私、王塚さんの言う事何でも聞きますからっ……!!」

 

 

―――本日は水曜日、先週の金曜に俺がやらかした脳内大混乱による血迷い発言から5日が経った。水曜は月~金の5日間に及ぶ学園生活という名の戦いにおいての中間地点な事から、「今日頑張れば残り二日だ!」と「いや残り二日もあるのか……」で喜怒哀楽のうち喜と哀の二つが同時に襲い掛かってきて毎度感情がぐちゃぐちゃになるので元よりあまり好きではないのだが今週は尚更複雑だ。何故かと言うと。

 

 

「―――今日は前に文歌が好きだと言っていた卵焼きをお弁当に入れてきたんだ、君に食べてほしい一心で私がシェフに言わせ用意したものだよ」

 

「そ、そんな悪いですよ、しかも見るからに普通のやつと違って使ってる卵自体が高そうですし……」

 

「いやそこまで高くはないよ、まあ1玉1000円程かな」

 

「ひひ、1玉!?つ、つまり1個だけでそのお値段という事ですか……」

 

「私の専属のシェフの知り合いに有名な養鶏農家の方がいてね、希少性が高く中々出回らないらしいんだが今回は文歌の為に用意してもらったという訳さ」

 

「おっ、一昨日はA5ランクの松坂牛を使用したハンバーグで昨日はわざわざ北海道から取り寄せた高級鮭の切り身―――き、気持ちは本当に嬉しいですけど申し訳ないというか……」

 

「遠慮など無用だよ、何故ならこれらは全て私の意志でやっている事だからね」

 

 

月曜を含め今日で3回目、昼食時に王塚さんが高級食材を使用した料理を俺用に持ってきてくれるからである……いやこれだけ聞くと美味しいもの食えるんだし別に悪い事じゃなくねと思うかもしれないが、ただ食べるだけじゃないのだ。一つ条件がある。

 

 

「文歌、口を開けてごらん」

 

 

―――王のお言葉には必ず従わなければならない、何をしてるんだと自分自身で思いながらも約束とそれに純粋な食への欲求に逆らう事が出来ずに黙って小さい口を開いた。すると王塚さんが卵焼きを掴んだ箸がゆっくりとこちらに迫ってきて、前世と今世を合わせると精神年齢的には魔法を使える童貞の俺は女子との間接キス、しかも相手が超絶美少女の王塚さんなのもあって当然気にしてしまい……俺を真っすぐ見つめてくる彼女から目を逸らしながらも何とか食べた。

 

 

「君の舌に合うといいんだが……どうだい?」

 

 

最高級の食材を使用していて、尚且つ俺の好物だ。そんなの、そんなの……

 

 

「……お、美味しい、ですっ……!」

 

「喜んでくれてよかった、ちなみに―――まだ3つ残っているけど文歌が望むのならもちろん全部あげるよ」

 

「ほほ、本当ですか?」

 

「ああ、ただし……フッ、わざわざ口に出さなくとも文歌なら分かっているかな?」

 

「か、勘違いしないでください、あくまで私は自分の発言の責任を取って従ってるだけで別に「ほら、あーん」うっまひ……」

 

 

木の上でのやらかし発言も口に出した瞬間こそ焦ったが、冷静に考えてみればあの王塚さんが俺なんかに対して命令したい事など何もないと思い至った。しかし彼女は驚いたようにしばらく固まった後、いつもの凛々しさを取り戻……いや本人はそのつもりなんだろうけど明らかに欲望のような何かが顔に滲み出ていて全然普段の感じではなかったな。

 

……まあそこら辺は一旦置いといて、王塚さんは俺にこう提案してきたのだ。

 

 

「いっ、1週間だ、その期間だけ文歌には私の言う事を聞いてもらうとするかな?あ、当たり前だが君が不快になるような命令はもちろんしないよ……まあ私は礼など必要なかったが文歌がここまで言うのなら逆にその好意に甘えないのは失礼にあたるなうんそうだ間違いない……」

 

 

後半は早口すぎて何を言ってるのかよく聞き取れなかったが、王塚さんは頬を赤らめながらまるで自分自身に言い訳してるように見えた。

 

こんな感じで言い出した張本人の俺が今更ナシに出来るわけもなく、今週の日曜までの1週間限定で王塚さんと俺はクラスメイトでありながらも主従関係が存在する何かエロ漫画で見た事あるやつになってしまったのだ。俺オタクくんがギャルに弱み握られて色々されちゃう系の作品大好き!

 

唐突な性癖展開はさておき、俺がこの一連のやり取りに複雑な感情を抱いているのにはもう一つ大きな理由がある。皆さん疑問に思わないだろうか?教室で昼食を取ってるならもちろんいるはずだよね?

 

 

「―――ねえあなた達、いい加減その頭お花畑なやり取りをやめてほしいのだけれど?月曜からずっと見せられてるこちらの身にもなりなさい」

 

「そうだそうだ!マイマイとラブってるとか羨ましすぎるぞフーちゃん!あたしも混ぜてよw」

 

「ふ、2人とも落ち着いて?私も最初はちょっと驚いちゃったけど仲良しなのは良い事だと思うな」

 

「あはは……一応事情があるとだけ文歌さんから聞いてるけどそれだけだからどう説明したらいいんだろ……」

 

 

ナチュラルにキレ気味な琴さん、百合の間に挟まるという大罪を犯すチャラ男みたいな事を言ってる小柳さん、そんな2人をなだめる瀬名さん、そして困ったように苦笑いを浮かべる甘織さん、一応甘織さんには木から降りた後に「わ、私来週の月曜日から訳アリ女子になります」とだけ伝えられる範囲で言っておいた。聞いた本人は頭に?マーク浮かべてたけどね、いやホント意味不明すぎてすみません……というかこの光景をグループのみんなに見られてるのが正直恥ずかしくて仕方がない。しかもグループ内だけで終わればまだいいものを。

 

「ヤバいヤバい!まいふみの供給止まんないんだけど!?」

 

「メシなんて食ってる暇じゃねえ!俺はこの光景を目に焼き付けるぜ!」

 

「学校の退屈な授業もさ、これの為って思うと乗り切れるんだよね。私に力を与えてくださり本当にありがとうございます、王塚様、加藤様……」

 

 

クラス中がこちらに視線を向けてきて、こんなのもはや羞恥プレイの域である。

 

卵焼きを口に含みながら脳内で頭を抱えていると……琴さんが横目で一瞬俺の方を見てきてため息をつき、すぐに切り替えるように鋭い眼差しで王塚さんを睨みつけていた。なに今の怖いよお。

 

 

「それで?先週までこんな事していなかったのにいきなりどういう風の吹き回しかしら?」

 

「悪いね紗月、これは私と文歌だけの秘密なんだ」

 

「……答えたくないなら別にいいわよ、私は真唯が誰とイチャつこうが微塵も興味ないもの」

 

「え、えっと琴さん、私と王塚さんはそういう関係では「おや、君は寂しくないのかな?」

 

……は??誰が寂しいって???

 

 

誤解だと伝えたいのに会話に入れないまま幼馴染による頂上決戦が始まってしまい……弁解の機会を与えられずに涙目になっていると、そんな自分を見た隣の瀬名さんがこちらに手を伸ばしてきて俺の頭にそっと優しく手を置いた。彼女の綺麗で柔らかな手の感触、それに聖母のような眩しく見る者全てを癒すような微笑み。俺の邪に満ちた心があっという間に浄化されていくのを感じる。

 

「私、ふみちゃんに辛そうな顔は似合わないと思うんだ、だから元気になってほしいな?」

 

「うへへっ、せ、瀬名紫陽花さんは私の母になってくれたかもしれなかった女性です」

 

「お母さん?」

 

「……すす、すみません今のはホントお願いですからどうか忘れてください……」

 

「そのネタは多分この場じゃあたしにしか通じないと思うにゃあ」

 

 

不思議そうに首を傾げる瀬名さん、分かりずらいネタを人前で出しちゃって変な空気になるオタクなら誰しも一度は通ったであろう失敗である。

 

 

「―――大丈夫だぜフーちゃん、あたしは分かってあげられるからよ」

 

「ど、同士小柳さん……!」

 

 

小柳さんは俺を安心させるように親指を立てグッドサインを作ってくれた、そして甘織さんも口にこそ出さないけれどその瞳から「わ、私は元ネタ知らないけどその……うん!大丈夫だからね!」と言ってくれているのが伝わってきた。陰キャの失敗に対しての理解度の高さ、そして理解者同士では言葉すら必要無い。俺は良い友達を持ったなあ……前世で女子との会話の最中に今みたいな失敗をして、男友達に励ましてもらおうと話したときは「お前がまた一段と下に落ちてくれて嬉しいよ!このまま一緒にスクールカーストの最下層まで行こうぜ!」って笑顔で心中提案してくる始末だったし。地獄かな??

 

 

「お母さん、かあ……」

 

「アーちゃん?」

 

「紫陽花さん?」

 

 

何かを頭の中で思い描いたらしくとても嬉しそうにしている瀬名さん、そして俺の方をジッと見つめてくると太陽のような笑顔を浮かべて。

 

 

「―――もしふみちゃんが私の子供だったらすっごく可愛がるんだろうなあって、あっでも……いっぱい構ってウザがられちゃうかもね」

 

 

……約1秒間、俺の頭はホワイトボードのように真っ白となった。理由は分かる、瀬名さんのあまりの大天使っぷりに人間の俺では思考が追い付かなかったからだ。そして再起動した脳内は瞬時に彼女へ伝えるべき言葉を導き出し。

 

 

「ままっ、まさかウザがるなんてあり得ません……!私がもし瀬名さんの娘になれたら幸せホルモンドバドバで毎日が最高にハッピーだと思います……!」

 

「そ、そんなに?」

 

「は、はい……!!」

 

「……ふふっ、そこまで褒められても笑顔しか出ないよー?」

 

 

マジでやば、ちょっと可愛すぎっしょ……思わず若干ギャル化してしまった俺だったが小柳さんの方を見れば。

 

 

「―――ハイ!ハイ!あたしもアーちゃんの娘になりたい!」

 

「わ、わたしも!」

 

 

必死に両手を上げて瀬名さんの娘になろうとしていた、そして地味に甘織さんまで立候補している。癒しが欲しいんだね甘織さん、その気持ち分かるよ……でも甘いな2人とも、これはそう簡単になれるものではないんだ。

 

 

「ふみちゃんだけじゃなくて香穂ちゃんとれなちゃんも!?私……頑張って3人を育てるねっ」

 

「よろしくねおねーちゃん♡」

 

「あれ?つまりわたしって今姉であり妹でもあるんだよね……矛盾した存在として世界から抹消されそうだ……」

 

 

前言撤回、早速妹が出来ました。それに2人もです。嬉しいね!

 

こうして新しい家族の誕生を祝福し昼休みを終えて、あっという間に放課後。甘織さんと屋上のカギを共有している事を知った王塚さんは「話す場所にはちょうどいい」と言って俺と2人で一緒に屋上へ向かい、ドアを開き出ると風が王塚さんの金色に輝く美しい髪を揺らした。どの瞬間も絵になる辺り流石スーパーモデルだ、そして彼女は先ほどの事を思い出したのか笑みをこぼしていて。

 

 

「―――やれやれ、正直に認めればいいのに紗月も素直じゃないものさ」

 

「さ、さっきのは本当にお怒りだったのでは……えっと、私もクラスメイト達に見られながらああいう事をするのは流石に……」

 

 

琴さんが苦言を申したくなるのも分かるというか……俺の困り顔を見ると王塚さんは一転暗い表情を浮かべた。

 

 

「すまない、そこまで文歌が嫌がっているとは分からなかった。私は君を不快な思いにさせないと約束したはずなのにな……」

 

「い、嫌とか不快とかじゃなくてただ恥ずかしかっただけですよ?だからそんな顔しないでください」

 

「……本当に嫌じゃなかったのか?」

 

 

普段の王塚さんからは想像できない、まるで捨てられた子犬のような顔を見て俺は驚いた。よくよく考えなくても命令権などいつ破棄しても良いはずなのに、どうして彼女はそんな表情になるほどやりたがるのだろうか?

 

……疑問こそ尽きないが、それ以上に俺は純粋に目の前で悲しむ王塚さんを見ていたくなくて。

 

 

「うう、嘘なんて言ってません、だってあの王塚真唯さん直々にあーんで食べさせてもらえるとか嫌がる人間が存在するわけないじゃないですかっ。まず友達とこういう事が出来るってだけで嬉しいのに、それに加えて超可愛いお顔が目の前に迫ってくるんですよ?最高以外に表せる言葉ないですね……!」

 

 

別に嘘で励まそうとしているわけではなく、これは正直に俺の本音で―――美少女からあーんしてもらえるというシチュエーションは男なら100%喜ぶのだ。赤裸々に語った事実は羞恥心を湧き立たせるが……

 

 

「―――ふふ、私はモデルとして自らの容姿に対し客観的な評価も含め優れている自覚を持っているがそんな堂々と顔の良さについて言われると照れるものだな」

 

「ご、ごめんなさい……」

 

「ん?どうして文歌が謝るんだい?」

 

「いっ、嫌だったのかなって」

 

 

王塚さんはそんな俺の不安を。

 

 

「容姿を褒めてくれて、それに何より過ちを犯した私を拒否せずにいてくれた……嬉しいに決まってるじゃないか」

 

 

一瞬で吹き飛ばしてくれた……のだが。

 

 

「さっき文歌は言っていたね?クラスメイトに見られるのが嫌だと」

 

「は、はい、言いましたけど……」

 

「それなら知り合いのいない場所でなら君はOKしてくれるのかな」

 

「い、良いというわけではないですが……まあ少しはマシだなとは」

 

「……文歌、今週の日曜日何か予定はあるかな」

 

「とと、特に何も無いですね……その、もしかしてどこかに出掛けるとか?」

 

 

そう尋ねると、王塚さんはその綺麗な青い瞳をキラキラと輝かせて。

 

 

「赤坂のホテルの会員制プールさ!そこなら知り合いと会う事もないはずだよ―――どうだい文歌、良い提案だと思わないかい?」

 

「……さ、最高だと思いますぅ……」(コミュ力ザコ)

 

 

……えっ、俺もしや水着を着る事になるんですか?

 

 

 

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