ガチレズ少女は百合ハーレムイレブンを作りたい! 作:イナイレスカウトキャラ振興委員会
遅くなりました、投稿です
『椎穂ちゃんは可愛いねぇ』
周りの人間は、みんなそう言っていた。
私もそう思う。椎穂は可愛い。
私と椎穂は双子の姉妹だ。だけど、世間一般の双子の認識とは違って、私たちはあまり似ていなかった。
いや、似せようと思えばある程度似るのだ。でも、私たちは趣味が違うし、性格も髪の色も違うわで、結果的には似ていない。
椎穂は昔からお手伝いが好きで、人の役に立つことが大好きな良い子だ。ボランティアに積極的に参加したり、学校で先生の手伝いをしたり。器用でなんでもできるし、その上可愛いから、みんなから頼られている。
だから椎穂が可愛がられるのは必然なのだ。尤も、椎穂自身が天使のように可愛い存在であるからして可愛がられるのは当然なのだが、あの聖女のような性格はそれを補強しているんだと思う。
対し、私はどうだろうか。
野菜の収穫でいつも土まみれ。他人の手伝いなんかするよりは、椎穂を愛でるか椎穂に近付くハエを叩き潰すか、もしくは野菜のことを考えているか。そのくらいのものだ。
『椎穂ちゃん
全くその通りだと思う。椎穂は可愛い。可愛いのは椎穂。それでいい。別に不満に思ったことなんてない。……昔はあったかもしれないが、もう覚えていない。私はお姉ちゃんだから。
だから、別にいいんだ。椎穂が可愛いと心の底からわかってくれる人がいて、椎穂がその人と幸せになってくれるなら、私はそれで──
『……かっこいいなぁ』
──は?
『いやいやカッコいいよ。顔はかわいい系だけど、サッカーもサラッとできちゃうし。カッコかわいい。最高』
なに、それ。
やめてよ。そういうのは全部椎穂に言いなさいよ。
『……えへへ。やっぱり瑞菜ちゃんはかわいいよ』
……なんでそんな顔で私を見るの?その顔は、今まで周りの人みんなが
私に対するものじゃない。
やめて。やめてよ。柄でもないのに。お姉ちゃんなのに。
そんな顔されたら、少し……ほんの少しだけ、
期待、しちゃうじゃない。
『刃奈さん、好きです』
『……私も好きだよ、椎穂ちゃん』
────ああ、そうなんだ。
期待させるだけさせて、2人は先に行っちゃうんだ。
「今日も瑞菜ちゃん来ないって?」
「はい……」
瑞菜がサッカーの練習を休み始めて3日が経っていた。
元々が5人だけのチームだ、一人でも欠ければ士気も下がる。中でも、ダントツでテクニックのある瑞菜が来ないことは技術向上においても影響が大きかった。
瑞菜が来ない原因には予測がついている。
「刃奈があんなことするから……」
「それは……!は、反省してますけど……!」
「反省してたとしてもまたやらかすよね」
個サルの日、お昼ご飯の後に刃奈がやらかした椎穂への噛みつき。あれが原因なのは明らかだった。瑞菜はあの日以来、刃奈たちの前に姿を現してはいない。
しかし、それでも刃奈は瑞菜が姿を現さないことに首を捻っていた。
「でもさ、なんで来なくなったんだろう?」
「はぁ?そんなの明らかじゃない。瑞菜ちゃんの大切な妹である椎穂ちゃんをキズモノにしたからでしょ?」
「そうかなぁ……椎穂ちゃんが悪い女の毒牙にかかったことが許せないなら、椎穂ちゃんを私から遠ざけるはずじゃない?今日も別に止められなかったんでしょ?」
椎穂は「はい」と心配げな顔で首肯した。
「サッカーに行こうって誘ったんですけど、『椎穂だけで行ってきて』って。そのまま家に帰っちゃいました。最近は野菜の世話も最低限しかしてなくて……」
「そう聞くと……確かにそうね……」
スピカもまた、瑞菜の現状から単純に刃奈に怒っているわけではなさそうであると察する。
「だとしたら何で?」
「うーん……あの日のことが原因だとしたら、あの表情は『いじけてた』んじゃないかと思うんだけどなぁ」
「いじけてた……?」
「お姉ちゃんが……!?」
刃奈のその発言には、椎穂が食ってかかった。
「お、お姉ちゃんは私のことを第一に考えてくれて、いじけたことなんて今まで一度も……!」
「…………なるほど?ちょっとだけわかったかも」
椎穂の発言から瑞菜の心理への一歩を掴んだ刃奈は、座っていたベンチから立ち上がった。
「椎穂ちゃん。私と瑞菜ちゃんを会わせてくれない?」
「ど、どうすれば……」
「そうだなぁ……椎穂ちゃんの部屋と瑞菜ちゃんの部屋って一緒?」
「そうですね。二人で寝てます」
「そっか。じゃあ申し訳ないんだけど、部屋で二人きりにしてくれる?中の様子も伺わないようにして欲しいな」
それに眉を顰めたのはスピカだった。咎めるように口を挟む。
「何をする気?」
「大したことじゃないよぅ。すーちゃんが心配してるようなことじゃないから安心して」
「安心できる要素ある?……まあ、椎穂ちゃん相手に襲いかからなかっただけ理性はあったのかな?」
「私襲われそうだったんですか!?食べられちゃうんですか!?ああ、でも刃奈さんになら食べられちゃっても……♡」
カニバ的なことを想像でもしているのだろうか、椎穂は顔を青くしたり赤くしたりで忙しい。やっぱり変な扉を開いてしまっている、と刃奈は天を仰いだ。
「……まあ、魔法の言葉を言いに行くだけだから。本当に大丈夫だって」
「うう……じゃあお姉ちゃんのこと、よろしくお願いします……!」
妹として姉を心配する椎穂の気持ちを背負って、刃奈は門脇家に招かれたのだった。
「……ここです、刃奈さん。じゃあ、私は家の外で待っているので……」
「うん。お願いね。……瑞菜ちゃん、きっと椎穂ちゃんに知られたくないこともあるだろうから」
「……はい」
椎穂ちゃんは本当に聞き分けが良い子だ。そんなことを言われれば気になって覗きに来るのが小学生だろうに、瑞菜ちゃんの心を気にかけて本当に外で待つ気でいる。
……こんな子に慕われているの、今更ながら幸せだなあ。
慕ってくれる椎穂ちゃんのためにも……そして瑞菜ちゃん自身のためにも。ちゃんと瑞菜ちゃんと話してみないと。
「…………誰?」
ゆっくりとドアを開けると、キィと音を立て、暗い部屋に少しの光が差し込んだ。
瑞菜ちゃんは、ベッドに腰掛けてただ座っていた。何をするでもなく、俯いて。
「瑞菜ちゃん。私だよ」
「…………そう」
瑞菜ちゃんは、私を見なかった。声だけで私だと察したのだろう。顔を上げるでもなく、それだけ口に出した。
「……どうしたのさ?みんな心配してるよ?椎穂ちゃんも」
「…………」
座っている瑞菜ちゃんと視線の高さが合うように、膝をついた。やはり目を合わせたくないのか、瑞菜ちゃんはそっぽを向く。
「……別に、元気よ。心配とか、いらないから」
「元気な人の声じゃないよ……いつもの自信満々な瑞菜ちゃんが可愛いんだから」
ぴくり、と眉が動いたのがわかった。琴線に触れた言葉があったのだろう。
「……瑞菜ちゃん、最近顔出してくれないのってさ。この前のアレのせい?」
「…………」
その質問には答えず、「はぁ」と重たい息を吐いた瑞菜ちゃんは、やはり私の目は見ないまま、口を開いた。
「……もういいでしょ?そろそろ出て」
「かわいいよ、瑞菜ちゃんは」
「────」
言葉は、続かなかった。口をパクパクとさせ、数瞬した後、瑞菜ちゃんは顔を赤に染めて目を大きく開いた。
「は……はぁ!?」
「あ、やっとこっち見てくれた♡」
「っ──なによ!揶揄わないで!思ってもないくせに!」
「思ってもないことなんて言わないよ。私、女の子には嘘つかないんだから。……瑞菜ちゃんはかわいいよ、瑞菜ちゃんがどう思ってようとね」
瑞菜ちゃんに近づいて、その両頬を手で包む。そのまま顔を持ち上げると……かわいいかわいい、瑞菜ちゃんの顔があった。
「うん、やっぱりかわいい♡」
「…………なによぉ…………」
ああ、泣き出してしまった。……そっか。そんなに溜め込んでたんだ、瑞菜ちゃん。
抱きしめると、瑞菜ちゃんは私の胸に顔を押し付け、嗚咽を漏らしていた。
私はそんな彼女の頭を撫でて、瑞菜ちゃんが落ち着くのを待つのだった。
「……みんな、椎穂のことかわいいかわいいって言うじゃない」
落ち着いたらしい瑞菜ちゃんは、まだ少しスンスンと鼻を鳴らしながらも、自分のことを話し始めてくれた。
「私だってそう思うわ。椎穂はかわいい。私の大切で、大好きな妹よ。……それは、いつだって変わらない。未来永劫そうだって誓えるわ」
「……椎穂ちゃんばっかり、かわいいって言われてたの?」
そう訊くと、瑞菜ちゃんはバツの悪そうな顔をした。
「……別にいいの。椎穂は良い子よ。人の役に立つのが好きで、優しくて。あんな良い子がみんなに愛されなくてどうするのよ」
「まあそれは同意だけど、思うところはあったんじゃない?」
「……それは」
言葉を探すように、瑞菜ちゃんの目が宙を彷徨った。次の言葉を待つ。瑞菜ちゃんが、瑞菜ちゃん自身の言葉で言ってくれないと、意味のないことだから。
「私は……その、私には縁のない言葉だなって」
「『かわいい』が?なんで?」
「だって私、野菜の収穫でいつも泥だらけだし。土の匂いは落ちないし、ガサツだし、こんな口調だし。椎穂と比べたら、私なんて」
「そっか。……ちょっと嗅いでみて良い?」
「は?あん、何を……!」
瑞菜ちゃんの髪に顔を埋めてみる。なんとも芳しい香りだ。なんて表現すればいいんだろう、和室……いやもっと濃いな。こういう匂いを表現する語彙がないのが残念だ。ハマりそう。
「すんすんすん……」
「なっ、ちょ、やめ……」
首筋の匂いとかも嗅いでみる。うーん最高。帰ったばかりだからか、少しだけ汗のしょっぱい匂い。水菜ちゃんの言うような土の匂い……というよりは、女の子特有のフェロモンのような何かだろうか。ずっと吸っていたくなる。
「ひゃっ♡やめ、やめなさいってば……!」
ペロリと舐めると、やはり汗の味。でも甘い。女の子特有の甘ったるい匂いと味がする。
よし、結論は出た。
「瑞菜ちゃん!」
「な、な……!」
「やっぱり瑞菜ちゃんはかわいい女の子だよ!」
「何してくれとんじゃボケーーーっ!!!」
引っ叩かれた。
「あのね、デリカシーとかないわけ!?そんなので椎穂を任せられると思ってるの!?」
「でも椎穂ちゃんは私にメロメロじゃん?」
「だまらっしゃい!!」
フーッ!フーッ!と威嚇するように息を荒げる瑞菜ちゃん。かわいい。
「ほら落ち着いてって。大丈夫だから」
「何が大丈夫なのよ……ほんとにもう」
ジト目はしつつも、瑞菜ちゃんはどうやら少し落ち着いてきたらしい。というより……頬が赤くなっている。さっきの言葉が効いてきたのだろうか。
「ねぇ瑞菜ちゃん。瑞菜ちゃん自身はどう思ってるかわかんないけどさ、私から見れば瑞菜ちゃんもすごくかわいいんだよ?」
「……なによ、それ」
「ずっと我慢してきたんだよね?椎穂ちゃんばっかり可愛がられるのをさ」
ほとんど確信に近い予想をぶつけると、瑞菜ちゃんは悲しそうな顔をした。
「……でも、怖いの。だってその気持ちを認めちゃったら、私、椎穂のこと……き、嫌いになっちゃうんじゃないかって」
「瑞菜ちゃん……」
「椎穂のこと嫌いになんてなりたくない!ずっと好きでいたいの。だって、私は
……すごいなぁ。瑞菜ちゃんはどこまでも椎穂ちゃんのお姉ちゃんなんだ。椎穂ちゃんのお姉ちゃんでいたいし、お姉ちゃんであること自体が好きなんだ。でも、それが瑞菜ちゃんの心を締め付けてしまっている。
なら、私にできることは。
「瑞菜ちゃん、おいで。お姉ちゃんがいっぱい可愛がってあげるから」
「…………ふぇ?」
「私が瑞菜ちゃんを甘やかしてあげる。かわいいかわいいって言い続けてあげる。いっぱい褒めてあげる」
「な……何を言ってるのよ!?だって、刃奈さんは椎穂のことが好きで、椎穂は刃奈さんのことが……!」
……瑞菜ちゃんがサッカーに来なくなった原因はこれだろう。私が不用意にかわいいかわいいと瑞菜ちゃんを褒め、それを受け入れそうになったタイミングで椎穂ちゃんと私の関係が進んでしまった。それに私たちとの距離ができてしまったように感じたのだろう。
「大丈夫だよ。私、何人でも愛せるから」
「……何よそれ。私も愛してやるって?」
「そんな恩着せがましいことしないよ。私が愛したいから愛すの。瑞菜ちゃんが受け入れてくれるならね」
無理強いは好きじゃない。私は愛する子には愛してほしい。
だから私は、腕を広げて、ただ待つ。「私なら他の誰よりも可愛がれる」という自信を携えて。
「──ほら、おいで」
「…………っ」
瑞菜ちゃんはしばらく、私の顔と広げた腕とを見比べて、葛藤しているようだった。
しかし、一歩踏み出すと、その足は止まらなかった。
「ふふ、かわいいね瑞菜ちゃん♡」
刃奈さんの腕の中に、飛び込んでしまった。まるであの時の椎穂みたいに。
刃奈さんの手が、優しく私の頭を撫でる。お母さんとは少し違う感じ。……これが、お姉ちゃんがいる感覚なのだろうか。
「緑色の髪も、くりくりのおめめも、すっごくかわいい♡」
「うう……♡」
髪を漉く手がくすぐったい。
「かわいい」「かわいい」。耳元で囁かれると、言葉が思考を通り抜けて脳を直接溶かしていく。そう言われながら撫でられるたびに、感じたことのない幸福感で眩暈がしそうになる。
「かわいいよ瑞菜ちゃん……♡」
おでこに、柔らかい感覚が落とされた。キスだろうか。愛おしげに、慈しみを持って、何度も何度も。
あたまがとろけていく。わたし、うれしいんだ。やっぱりかわいいって言われたかったんだ。……椎穂みたいに、言われてみたかったんだ。
「はな、さ……♡」
「いいんだよ、瑞菜ちゃん。瑞菜ちゃんが受け入れてくれるなら、求めてくれるなら私がいくらでも愛してあげる。かわいいって言ってあげる。もう我慢なんて、しなくていいからね」
背中に回された腕が、あたたかい。刃奈さんの体温が、あたたかい。
いいのかな。私、椎穂の好きな人にこんなことしてもらって。
ああ、でもあったかい。ここから出たくない。
「瑞菜ちゃんが椎穂ちゃんのことが大好きなのは、よくわかるよ。けど、だからって瑞菜ちゃん自身の幸せを諦める必要はないんじゃないかな」
「はにゃさん……」
「ふふ、もう
……こんなに可愛いのに誰もかわいいって思わないなら、私が貰っちゃってもいいよね?♡」
ぬらりと、暖かい感触が耳を襲った。「ひぅっ♡」と声が漏れる。
「あ〜♡かわいいねぇ瑞菜ちゃん♡かわいすぎていじめたくなっちゃう♡」
「あっ♡あっ♡はにゃしゃん♡みみだめ♡へんになるっ♡」
「へんになったらもっとかわいいから大丈夫だよ♡」
「ほんとっ?♡も、もっとほめてくれる?♡かわいいっていってくれるっ?♡」
「うんうん♡いくらでも言ってあげるからね♡だから私のものになろ?♡見る目がない人間なんて放っておいて、私としあわせになろ?♡」
「で、でもっ……しぃほが……♡」
「大丈夫だよ♡しいほちゃんと一緒にしあわせにしてあげるからね♡一緒にいっぱい愛してあげる♡」
かわいい。そう言われる度に感じる幸福感に、ついにわたしは思ってしまった。
椎穂ばっかりずるい。わたしだって愛してほしい。……でも、椎穂に幸せになってほしい気持ちも、椎穂のことが好きな気持ちも、ちゃんとそのままだ。
──ああ。じゃあ、いいか。
「しいほと、しあわせになれる?」
「絶対しあわせにするよ♡」
しあわせ。もっとしあわせになりたい。はなさんにほめられたい。かわいいっていわれたい。だってこんなにきもちいいんだもん。だってこんなに……うれしいんだもん。
「なるっ♡なりましゅ♡はなしゃんとずっといっしょにいたい♡あいしてほしいっ♡」
「…………かわいすぎるよ、もう♡」
「パスパース」
「いくよー」
「こっちー」
瑞菜ちゃんは、サッカーチームに戻ってきた。「ありがとうございます!!」と椎穂ちゃんには泣いて喜ばれたが、どうやって瑞菜ちゃんを引っ張り出してきたのかはまだ話していない。
「刃奈さん。こっちも練習しましょ」
「あ、うん。やろっか」
当の瑞菜ちゃんはと言えば、すっかり元の調子を取り戻して調子がよさそうだ。気持ち、前よりもさっぱりしたような印象。無論、サッカーの方も変わらぬ切れ味だ。
だが……
「……ねぇ、刃奈さん」
「どうしたの?」
「その……何か言うことある?」
練習の途中、瑞菜ちゃんは私に近付いてそう言った。遠くには別で練習しているすーちゃんや椎穂ちゃんたちが見える。この距離なら、会話は聞かれなさそうだ。
「今日は……服、変えたんだ?初めて見るやつだけど」
「!う、うんっ!あの、この服どうかしら……?」
これまで野菜一筋で服のことなど無頓着だった瑞菜ちゃんだが、最近は椎穂ちゃんに教えてもらったりしてかわいい服を着てきたりもする。その目的は、もちろん一つだ。
「うん、
「……っ♡」
そう評価すると、先ほどまでキリッと引き締まっていた水菜ちゃんの顔が、トロッと崩れた。
「えへ……そ、そう?♡えへへ♡はなさんこういう服すき?♡」
「うん。
「よかったぁ♡えへへ♡」
そう言うと、瑞菜ちゃんは身体を私に擦り寄せてきた。もちろん、他のみんなには見えないような角度で。
こうしてとろけ切った顔は、椎穂ちゃんと似ているところがある。なんとも可愛くて扇情的な姉妹だ。あまり理性がもたないかもしれない。
「あの、ちゅーしたい♡ちゅーしたいです♡」
……普段はいつも通りの凛々しくて尊大な瑞菜ちゃんに見えるのだが、私と二人きりの時、瑞菜ちゃんは「かわいい」という一言でラブラブモードに切り替わるようになってしまった。他人に見られていない時、瑞菜ちゃんはかなり積極的だ。今まで我慢してきた分の反動なんだろう。だからこれは仕方ない。瑞菜ちゃんの気持ちを考えれば、応えてあげなければならないのだ。
「はっ♡はっ♡はなさん♡はにゃしゃんっ♡」
瑞菜ちゃんのご要望通り、キスをする。他の人に見えないように、私の身体で隠す形で。
瑞菜ちゃんは必死に背伸びをして、啄むように何度も口づけを交わす。
その必死さが、私の心をキュンキュンとくすぐってくる。この子、本当に可愛すぎる。
椎穂ちゃんの健気さとも、すーちゃんの執着とも違う、『己の情動をどうやったら発散できるかわかっていない子が精一杯それを発散しようともがいている』感じ。ゾクゾクしてしまう。
もちろん、許されるならもう手を出してしまいたいところだが、この子も残念ながらまだ椎穂ちゃんと同じ小学生だ。私の理性ブレーキがストップをかけるため、キスまでが限度だ。くそう、ムラムラする。
……椎穂ちゃんの時はマウストゥマウスのキスは早すぎるって話をしたって?もう保たないんだよ私の理性が!襲ってないどころかキスがディープじゃないだけ頑張ってると思ってくださいほんとに。
「瑞菜ちゃん……♡」
「もっと♡もっとしてたい♡…………んだけど」
と、唐突に瑞菜ちゃんが唇を離す。何を……と思ったが、すぐにその答えはわかった。
「刃奈さーん!あの、こっちの練習なんですけど……あれ?お姉ちゃん、何してたの?」
椎穂ちゃんが近付いてきていたらしい。瑞菜ちゃんは慌てる様子もなく、口を開いた。
「ああ、今は必殺技のコツを教えてもらっていたの。刃奈さんはうちのチームで二人だけの必殺技成功者だし」
「そうなんだ。私も必殺技使えるようになりたいなぁ。お姉ちゃんや刃奈さんと合体技なんかもしたいし」
「そうね。椎穂となら必ずやれるわ。また一緒に練習しましょう」
先ほどまでの表情はどこへやら、水菜ちゃんは完全に対応を切り替えていた。凄まじい。
椎穂ちゃんが相談を終えて背を向けると、瑞菜ちゃんは私の袖をひいて、「しぃー♡」と二人の関係を秘密にするためのジェスチャーを見せた。可愛すぎる。
その後、私たちは適度に練習しつつ、合間にイチャついて……逆だったかもしれないが、そんなことを繰り返してサッカー練習に明け暮れるのであった。